長編「シノンとハノン」 第3話「親子喧嘩」
「え……養子?」
例の魔物騒動から2年後。
7歳になったシノンは両親から聞かされた話にきょとんとしていた。
「グランコクマにいるご夫婦が、あなたを養子として引き取りたいといってるの」
「養子ってなんなの?」
「…こことは違う場所で、違う家の子供になるっちゅうことじゃ」
「え?」
父の言葉に、シノンは目を丸くする。
「違う家の子供って…?シノンはパパとママの子供だよ?」
「心配すんなシノン。向こうのご夫婦はお前さんのことをきっと可愛がってくれるじゃろ」
シノンのつぶやきを無視して父は話を進める。
「なんでそんなこと言うの!?シノンはパパとママの子供だもん!ほかの家の子供になんかならないもん!」
「しかしのう、こんな人里離れた辺鄙な森じゃ友達もおらんでさびしいじゃろうし、それに街にはいろいろ面白いもんもあるんじゃぞ?」
「この森はシノンの故郷だよ!?ここにだって面白いものいっぱいあるし、友達だっていっぱいいるからさびしくないもん!!」
「…お前のためなんじゃ!分かってくれシノン!!」
言い合いを始める父とシノン。
母は二人の剣幕に会話に入り込めず、ただただ様子を見守っている。
「もう知らない!パパなんて大っ嫌い!!」
やがて、シノンはそういうと家を飛び出していった。
その様子を見ながらシノンの父は、はあ、とため息をついた。
「……落ち着いた?」
「すまん、カッとなりすぎた」
妻の言葉に意気消沈した様子で答える。
「いきなりあんな話されて、シノンが怒るのも当然よ」
元々この話を進めていったのは夫の方である。
彼はわざわざグランコクマまで行き、シノンを引き取ってくれる家をひそかに探しにいっていたのだ。
「…そげいなこと分かっとる。それでも…あの子には自由に生きてほしいんじゃ」
自分も妻も魔獣使いである。
ゆえに町や村では当然暮らせない。
こんな森の中で暮らしていたら、シノンの将来の幅をせばめてしかねない。
故に彼は、シノンを外の世界へ解放し、その幅を広げてやるべきだと考えたのだ。
「…人は掟や預言なんかに縛られるべきやない。自由に生きるべきなんじゃ」
彼はかつて、魔獣使いの集落を抜け出した。
理由は集落の掟に縛られ、決められた生き方を強制されることに窮屈さを感じたからだ。
「…お前は後悔してないんか?ワイについてきて」
彼は妻の方を向くと尋ねた。
彼女は族長の娘であり、かつ幼馴染であった。
そして、集落を抜け出した自分についてきて共に集落を抜け出し、今日までかいがいしく自分を支えてくれていた。
時々、自分もまた彼女を縛り付けているのではないかと不安になるのだ。
そんな話をすると、妻は呆れたようにため息をついた。
「あなたと共に生きることが私の幸せ。誰に強制されたわけでもなく、私が選んだ生き方よ」
「……ありがとな」
妻の言葉を聞き、彼は短く礼を言った。
そして、妻の体を思いっきり抱きしめると、そっと優しく口づけをした。
「…そろそろ日も暮れるわ、とりあえず急いでシノンを探しましょう」
「おう、そうじゃな!」
二人はシノンを探すべく、家を飛び出て駆け出した。
例の魔物騒動から2年後。
7歳になったシノンは両親から聞かされた話にきょとんとしていた。
「グランコクマにいるご夫婦が、あなたを養子として引き取りたいといってるの」
「養子ってなんなの?」
「…こことは違う場所で、違う家の子供になるっちゅうことじゃ」
「え?」
父の言葉に、シノンは目を丸くする。
「違う家の子供って…?シノンはパパとママの子供だよ?」
「心配すんなシノン。向こうのご夫婦はお前さんのことをきっと可愛がってくれるじゃろ」
シノンのつぶやきを無視して父は話を進める。
「なんでそんなこと言うの!?シノンはパパとママの子供だもん!ほかの家の子供になんかならないもん!」
「しかしのう、こんな人里離れた辺鄙な森じゃ友達もおらんでさびしいじゃろうし、それに街にはいろいろ面白いもんもあるんじゃぞ?」
「この森はシノンの故郷だよ!?ここにだって面白いものいっぱいあるし、友達だっていっぱいいるからさびしくないもん!!」
「…お前のためなんじゃ!分かってくれシノン!!」
言い合いを始める父とシノン。
母は二人の剣幕に会話に入り込めず、ただただ様子を見守っている。
「もう知らない!パパなんて大っ嫌い!!」
やがて、シノンはそういうと家を飛び出していった。
その様子を見ながらシノンの父は、はあ、とため息をついた。
「……落ち着いた?」
「すまん、カッとなりすぎた」
妻の言葉に意気消沈した様子で答える。
「いきなりあんな話されて、シノンが怒るのも当然よ」
元々この話を進めていったのは夫の方である。
彼はわざわざグランコクマまで行き、シノンを引き取ってくれる家をひそかに探しにいっていたのだ。
「…そげいなこと分かっとる。それでも…あの子には自由に生きてほしいんじゃ」
自分も妻も魔獣使いである。
ゆえに町や村では当然暮らせない。
こんな森の中で暮らしていたら、シノンの将来の幅をせばめてしかねない。
故に彼は、シノンを外の世界へ解放し、その幅を広げてやるべきだと考えたのだ。
「…人は掟や預言なんかに縛られるべきやない。自由に生きるべきなんじゃ」
彼はかつて、魔獣使いの集落を抜け出した。
理由は集落の掟に縛られ、決められた生き方を強制されることに窮屈さを感じたからだ。
「…お前は後悔してないんか?ワイについてきて」
彼は妻の方を向くと尋ねた。
彼女は族長の娘であり、かつ幼馴染であった。
そして、集落を抜け出した自分についてきて共に集落を抜け出し、今日までかいがいしく自分を支えてくれていた。
時々、自分もまた彼女を縛り付けているのではないかと不安になるのだ。
そんな話をすると、妻は呆れたようにため息をついた。
「あなたと共に生きることが私の幸せ。誰に強制されたわけでもなく、私が選んだ生き方よ」
「……ありがとな」
妻の言葉を聞き、彼は短く礼を言った。
そして、妻の体を思いっきり抱きしめると、そっと優しく口づけをした。
「…そろそろ日も暮れるわ、とりあえず急いでシノンを探しましょう」
「おう、そうじゃな!」
二人はシノンを探すべく、家を飛び出て駆け出した。
■作者メッセージ
第3話です。
あらためて読んでみても、この親が養子に出そうとするって展開は結構突飛な発想と思わないでもない
あらためて読んでみても、この親が養子に出そうとするって展開は結構突飛な発想と思わないでもない