長編「シノンとハノン」 第5話「シノンの決意」
「調子はどう?シノン」
「う〜、まだ体が熱い…」
魔物の襲撃から一週間。
シノンは熱を出していた。
あの後ハノンは数日で元気に動けるようになっていた。
しかし、そのことで張りつめていた緊張が解けた為か、翌日からシノンは熱を出して寝込んでしまったのだ。
「これ食べて早く元気になりなさい」
「これ…スープ?」
「ええ、これはルグニカ紅テングダケっていうキノコで作ったスープなのよ」
母の話によれば、キノコロードという森で採れるらしく、昨日の晩父が見つけてきてくれたらしい。
「ルグニカ紅テングダケはどんな病気も治してしまうのよ」
「へー、すごいね」
「だから、これ食べて病気なくして、早くハノンに元気な姿を見せてあげなさい」
「うん!」
「みゅうみゅう!」
玄関から声が聞こえてくる。
噂をすればなんとやらだ。
「あら、今日も来たみたいね」
声に気付いたシノンの母は、玄関のドアを開けに行った。
「いらっしゃいハノン、毎日お見舞いありがとうね」
「みゅうみゅう!」
ハノンは元気よく挨拶をすると、シノンのもとへ駆け寄った。
「みゅうみゅう?」
「ハノン…おはよう……私は大丈夫だから」
心配そうに顔を覗き込んでくるハノンに、シノンは薄く微笑んでそういった。
実際は、意識が半分朦朧としかけているのだが。
「みゅみゅう!」
ハノンが威勢のいい声を出す。
きっと励ましてくれているのだろう。
「ハノンごめんね、ハノンが頑張って戦ってる間、私は何もできなかった…」
「みゅうみゅう!」
シノンの言葉にハノンは首を振った。
しかしシノンの言葉は止まらない。
「友達なのに…大切な、友達なのに……私は、怖がってばっかりで、見てるだけで……!」
言葉を紡ぐシノンの瞳から、涙がたまる。
ハノンはそんなシノンに近づくと、その小さな手で涙をぬぐう。
「……ありがとう。ハノンは本当に優しいね」
翌日。
母の作ったスープの効果もあり、シノンはすっかり元気になった。
「お父さん」
「おおシノン、元気になったんか」
そりゃよかったと、カラカラと笑う父。
「お父さんにお願いがあるの」
対するシノンの表情は、真剣そのものだった。
娘の表情になにかを感じ取った父も、顔を引き締めて話の続きを待った。
「魔獣使いになりたい、じゃと?」
驚きの表情を浮かべながら聞き返す父。
「うん、だからそのための訓練をつけてほしいの」
相変わらずの真剣な表情で、シノンは話す。
「別にワイや母さんの真似する必要はないんじゃぞ?」
「そんなんじゃない、私がなりたいからなりたいって言ってるの」
「どうして、そんなこといきなり……」
「守りたいの」
守りたい。
たったそれだけの言葉なのに、シノンの言葉には驚くほどの迫力があった。
「先週の魔物との戦闘で、ハノンはいっぱい怪我をした」
「ハノンは優しいから…きっとまた私のためにいっぱい怪我する。そんなの嫌なの!」
「私は…ハノンを支えてあげたい。パートナーとして……友達として!」
「守り守られる一方的な関係じゃない…対等な友達として!!」
すさまじい勢いでまくしたてるシノンに、父は一言も言葉をはさめないまま、話が終わってもしばし呆然としていた。
やがて我に返ると、真剣なシノンの表情を見つめ返しながら尋ねた。
「本気、なんか」
父の短い問いに、シノンはこくりとうなずいた。
それを見て父は、ふっと表情を緩めると、
「分かった、ワイがみっちり修行つけちゃる」
「本当!?」
「ああ…つっても病み上がりじゃしな、修行開始は3日後からじゃ。それまで体休めとくんじゃぞ」
「うん!ありがとうパパ!」
シノンは礼を言うと、うれしそうな表情で外へ出て行った。
元気になった姿を、ハノンに見せに行くつもりだろう。
「これで良かったの?あなた」
そばで一部始終を見ていたシノンの母が尋ねた。
「…シノンが決めた道じゃ、良いに決まっとるじゃろ!」
こうしてシノンの特訓が始まった。
特訓は主に早朝に行われた。
昼は今まで通りハノンと遊んでいる。
パートナーとのコミュニケーションも大事だからだ。
寝る前には母が魔獣使いとしての知識や心構えなどを教えてくれていた。
ちなみに養子の話はシノンが魔獣使いになることを決めたために、断ることになった。
そうした日々が続いて、3年の月日が流れ。
その日は突然やってきた。
「う〜、まだ体が熱い…」
魔物の襲撃から一週間。
シノンは熱を出していた。
あの後ハノンは数日で元気に動けるようになっていた。
しかし、そのことで張りつめていた緊張が解けた為か、翌日からシノンは熱を出して寝込んでしまったのだ。
「これ食べて早く元気になりなさい」
「これ…スープ?」
「ええ、これはルグニカ紅テングダケっていうキノコで作ったスープなのよ」
母の話によれば、キノコロードという森で採れるらしく、昨日の晩父が見つけてきてくれたらしい。
「ルグニカ紅テングダケはどんな病気も治してしまうのよ」
「へー、すごいね」
「だから、これ食べて病気なくして、早くハノンに元気な姿を見せてあげなさい」
「うん!」
「みゅうみゅう!」
玄関から声が聞こえてくる。
噂をすればなんとやらだ。
「あら、今日も来たみたいね」
声に気付いたシノンの母は、玄関のドアを開けに行った。
「いらっしゃいハノン、毎日お見舞いありがとうね」
「みゅうみゅう!」
ハノンは元気よく挨拶をすると、シノンのもとへ駆け寄った。
「みゅうみゅう?」
「ハノン…おはよう……私は大丈夫だから」
心配そうに顔を覗き込んでくるハノンに、シノンは薄く微笑んでそういった。
実際は、意識が半分朦朧としかけているのだが。
「みゅみゅう!」
ハノンが威勢のいい声を出す。
きっと励ましてくれているのだろう。
「ハノンごめんね、ハノンが頑張って戦ってる間、私は何もできなかった…」
「みゅうみゅう!」
シノンの言葉にハノンは首を振った。
しかしシノンの言葉は止まらない。
「友達なのに…大切な、友達なのに……私は、怖がってばっかりで、見てるだけで……!」
言葉を紡ぐシノンの瞳から、涙がたまる。
ハノンはそんなシノンに近づくと、その小さな手で涙をぬぐう。
「……ありがとう。ハノンは本当に優しいね」
翌日。
母の作ったスープの効果もあり、シノンはすっかり元気になった。
「お父さん」
「おおシノン、元気になったんか」
そりゃよかったと、カラカラと笑う父。
「お父さんにお願いがあるの」
対するシノンの表情は、真剣そのものだった。
娘の表情になにかを感じ取った父も、顔を引き締めて話の続きを待った。
「魔獣使いになりたい、じゃと?」
驚きの表情を浮かべながら聞き返す父。
「うん、だからそのための訓練をつけてほしいの」
相変わらずの真剣な表情で、シノンは話す。
「別にワイや母さんの真似する必要はないんじゃぞ?」
「そんなんじゃない、私がなりたいからなりたいって言ってるの」
「どうして、そんなこといきなり……」
「守りたいの」
守りたい。
たったそれだけの言葉なのに、シノンの言葉には驚くほどの迫力があった。
「先週の魔物との戦闘で、ハノンはいっぱい怪我をした」
「ハノンは優しいから…きっとまた私のためにいっぱい怪我する。そんなの嫌なの!」
「私は…ハノンを支えてあげたい。パートナーとして……友達として!」
「守り守られる一方的な関係じゃない…対等な友達として!!」
すさまじい勢いでまくしたてるシノンに、父は一言も言葉をはさめないまま、話が終わってもしばし呆然としていた。
やがて我に返ると、真剣なシノンの表情を見つめ返しながら尋ねた。
「本気、なんか」
父の短い問いに、シノンはこくりとうなずいた。
それを見て父は、ふっと表情を緩めると、
「分かった、ワイがみっちり修行つけちゃる」
「本当!?」
「ああ…つっても病み上がりじゃしな、修行開始は3日後からじゃ。それまで体休めとくんじゃぞ」
「うん!ありがとうパパ!」
シノンは礼を言うと、うれしそうな表情で外へ出て行った。
元気になった姿を、ハノンに見せに行くつもりだろう。
「これで良かったの?あなた」
そばで一部始終を見ていたシノンの母が尋ねた。
「…シノンが決めた道じゃ、良いに決まっとるじゃろ!」
こうしてシノンの特訓が始まった。
特訓は主に早朝に行われた。
昼は今まで通りハノンと遊んでいる。
パートナーとのコミュニケーションも大事だからだ。
寝る前には母が魔獣使いとしての知識や心構えなどを教えてくれていた。
ちなみに養子の話はシノンが魔獣使いになることを決めたために、断ることになった。
そうした日々が続いて、3年の月日が流れ。
その日は突然やってきた。
■作者メッセージ
第5話です。
ハノンの姿を見て、シノンもまた決意を固めました。
ちなみにルグニカ紅テングダケは後々本編にも関わってきます
ハノンの姿を見て、シノンもまた決意を固めました。
ちなみにルグニカ紅テングダケは後々本編にも関わってきます