長編「シノンとハノン」 第6話「決着、そして…」
「おはようパパ、今日も修行お願い!」
早朝。
10歳となったハノンは、意気揚々と父に挨拶する。
「おおシノン、悪いんじゃが今日は修行は休みじゃ」
「え?」
「その代わり今日はちょっとやることがあるんじゃ、ついてこい」
シノンが父に連れられてきたのは森からそう遠くない場所にある原っぱだった。
そこにはすでに母と、そしてハノンの姿があった。
「シノン、今からハノンと戦ってもらう」
「ええ!?どういうこと!?」
突然の父の言葉に驚くシノン。
「魔獣使いになるっちゅうこととは魔物に認められんといかん。つまりこれは……お前がハノンのパートナーになるための試験じゃ」
「ハノンのパートナーになる…試験……」
シノンはしばらく戸惑っていたが、覚悟を決めるのにそう時間はかからなかった。
「分かった!ハノン…行くよ!!」
「みゅみゅ!!」
シノンの言葉と共に、ハノンは戦闘の態勢を整える。
おそらく、既に母から話は聞いているのだろう。
「それじゃあ行くわよ、シノンVSハノン……始め!」
「焔!」
炎をまとったナイフが、ハノンめがけて放たれる。
それをハノンは、高い跳躍でかわす。
「え!?」
シノンは驚きの声を上げる。
そう…それは跳躍でじゃなかった。
ハノンは耳を上下に動かし、空を飛んでいたのだ。
ウイング。
それは、3年前の魔物襲撃の後、長老ミュウの見よう見まねで習得したハノンの新技であった。
そして、新技はもう一つあった。
「みゅみゅーーー!!」
アタック。
これもまた長老ミュウの見よう見まねで習得した技だ。
「くっ!……きゃああ!」
ハノンの体当たりを、なんとか防御で受け止めるシノン。
しかし強い衝撃に防御しきれず思いっきり吹っ飛ばされる。
「みゅみゅぅぅ!!」
体勢を崩したシノンに、ハノンは畳み掛けるように再びアタックを放つ。
しかし……
「みゅみゅ!?」
ハノンの攻撃は、シノンのいる方向とは違うあらぬ方向へと放たれた。
ハノン本人も驚いている。
この技は習得して間もなく、威力はともかくコントロールが完全ではなかったのだ。
おそらく完全に使いこなすには、もう2、3年はかかるであろう。
「そこだよ!氷樹!」
攻撃を外して大きく隙のできたハノンに、シノンの攻撃が炸裂する。
氷をまとったナイフの攻撃に、ハノンの動きが止まる。
「レイトラスト!」
「みゅみゅう!」
そこへさらにチャクラムによる攻撃が命中し、今度はハノンの体が吹っ飛んだ。
「ハノン…まだまだ勝負はこれからだよ!」
「みゅう!」
戦いから数分。
両者はなお一進一退の攻防を続けていた。
「雷電!」
雷を纏ったナイフがハノンを襲う。
ハノンはそれを紙一重でかわすと、ジャンプしてシノンの体に飛びついた。
「え?え?」
シノンの体に飛びついたハノンはウイングでゆっくりとシノンの体を持ち上げていった。
シノンも抵抗するが、ハノンは離さない。
そして…
「みゅみゅ―――!!」
至近距離からのアタック。
加速度がない分威力はそこまでないが、逆にはずす心配はない。
それに…
「がはっ!!」
シノンが飛ばされた方向には岩があったのだ。
岩に体を叩き付けられたシノンは、大ダメージを負う。
「みゅみゅーー!」
とどめとばかりに、ハノンは火を噴いた。
(だめ!やられる!)
シノンが起き上がったとき、ハノンの炎はすでに目の前まで迫って来ていた。
このダメージであれをくらえば…おそらく戦闘不能は間違いないだろう。
(でも………)
シノンは思い起こす。
自分が修行を始めた理由。
それはハノンのパートナーになるためだ。
そしてそのためにはこの試練に打ち勝たなければならない。
だから……
「私は…絶対に負けない!」
次の瞬間、シノンの姿は消えた。
「な…何が起こったの!?」
シノンの母は驚きの声を上げた。
シノンの姿が消えたかと思えば、いきなりハノンの体が思いっきり吹っ飛ばされたのだ。
「シノンのやつがハノンに近づいて、チャクラムで殴りつけたんじゃ」
「ええ!?私には全然見えなかったわよ!?それに火を噴いてて無防備だったとはいえ、ハノンの体をあんなに吹っ飛ばすなんて…」
「火事場の馬鹿力ってやつじゃろ!カッカッカ!」
ともかく。
吹っ飛ばされたハノンは起き上がらない。
つまり……
「勝負あり!この勝負…シノンの勝ちじゃ!」
「ハノン!大丈夫!?」
戦いが終わると、すぐさまシノンはハノンに駆け寄った。
「みゅう…みゅうみゅうみゅうみゅう」
「え?何?なんて言ってるの?」
弱弱しい声で何かを伝えようとしているハノンに、シノンは聞き返す。
「すごい戦いだったですの」
「え!?長老様!?」
そこに突然現れたのはチーグルの長、ミュウであった。
高齢で最近はあまり体調も良くなかったのだが、こっそりどこかで戦いを見ていたらしい。
「ハノンは言ってるですの…シノンをパートナーと認める、と…」
「本当!?ハノン!」
シノンの言葉にハノンはこくりと頷いた。
シノンは歓喜の表情でハノンを抱きしめた。
「これからもよろしくね!ハノン!」
「みゅう!」
こうして、小さな魔獣使いとチーグルはパートナーとなった。
それから2年。
チーグルの森に危機が訪れていた。
ことの発端は、アランという青年を見たこともない魔物から助けたことだ。
アランを見張っていたと思われるその魔物は突然暴れだした。
両親が懸命に戦いなんとか一時的に退けたのだが、またいつ襲ってくるかわからない。
父の話によれば、あの魔物は何者かにより操られているらしい。
その話を聞いて、シノンは憤った。
魔物を操って従わせるなんて、魔獣使いとしては許せないことだった。
その上森をめちゃくちゃにされたとあっては、我慢ならない。
(でも…どうしたらいいんだろう)
両親は先程の戦闘で重傷を負ってしまった。
自分一人ではとうていかなう相手ではない。
シノンの心の中で不安が広がっていく。
「みゅみゅ!」
突然の声に、シノンは驚く。
声の主はハノンであった。
その表情から、自分を励ましてくれているんだと分かった。
「…ごめん、ハノン。こんな弱気じゃだめだよね!」
そうだ。
自分は一人ではない。
ハノンがいるのだ。
ハノンが一緒なら…なにも怖いことなんてない!
「とりあえず…あの魔物がまた近くまで来てるかもしれない。行こうハノン!」
「みゅみゅう!」
シノンとハノンは巣の外へと飛び出した。
「捕まえた!」
「ふぇ!?だ、誰!?」
「みゅみゅ!?」
――真の平和を紡ぐ少女とチーグルの物語は、ここから始まる――
早朝。
10歳となったハノンは、意気揚々と父に挨拶する。
「おおシノン、悪いんじゃが今日は修行は休みじゃ」
「え?」
「その代わり今日はちょっとやることがあるんじゃ、ついてこい」
シノンが父に連れられてきたのは森からそう遠くない場所にある原っぱだった。
そこにはすでに母と、そしてハノンの姿があった。
「シノン、今からハノンと戦ってもらう」
「ええ!?どういうこと!?」
突然の父の言葉に驚くシノン。
「魔獣使いになるっちゅうこととは魔物に認められんといかん。つまりこれは……お前がハノンのパートナーになるための試験じゃ」
「ハノンのパートナーになる…試験……」
シノンはしばらく戸惑っていたが、覚悟を決めるのにそう時間はかからなかった。
「分かった!ハノン…行くよ!!」
「みゅみゅ!!」
シノンの言葉と共に、ハノンは戦闘の態勢を整える。
おそらく、既に母から話は聞いているのだろう。
「それじゃあ行くわよ、シノンVSハノン……始め!」
「焔!」
炎をまとったナイフが、ハノンめがけて放たれる。
それをハノンは、高い跳躍でかわす。
「え!?」
シノンは驚きの声を上げる。
そう…それは跳躍でじゃなかった。
ハノンは耳を上下に動かし、空を飛んでいたのだ。
ウイング。
それは、3年前の魔物襲撃の後、長老ミュウの見よう見まねで習得したハノンの新技であった。
そして、新技はもう一つあった。
「みゅみゅーーー!!」
アタック。
これもまた長老ミュウの見よう見まねで習得した技だ。
「くっ!……きゃああ!」
ハノンの体当たりを、なんとか防御で受け止めるシノン。
しかし強い衝撃に防御しきれず思いっきり吹っ飛ばされる。
「みゅみゅぅぅ!!」
体勢を崩したシノンに、ハノンは畳み掛けるように再びアタックを放つ。
しかし……
「みゅみゅ!?」
ハノンの攻撃は、シノンのいる方向とは違うあらぬ方向へと放たれた。
ハノン本人も驚いている。
この技は習得して間もなく、威力はともかくコントロールが完全ではなかったのだ。
おそらく完全に使いこなすには、もう2、3年はかかるであろう。
「そこだよ!氷樹!」
攻撃を外して大きく隙のできたハノンに、シノンの攻撃が炸裂する。
氷をまとったナイフの攻撃に、ハノンの動きが止まる。
「レイトラスト!」
「みゅみゅう!」
そこへさらにチャクラムによる攻撃が命中し、今度はハノンの体が吹っ飛んだ。
「ハノン…まだまだ勝負はこれからだよ!」
「みゅう!」
戦いから数分。
両者はなお一進一退の攻防を続けていた。
「雷電!」
雷を纏ったナイフがハノンを襲う。
ハノンはそれを紙一重でかわすと、ジャンプしてシノンの体に飛びついた。
「え?え?」
シノンの体に飛びついたハノンはウイングでゆっくりとシノンの体を持ち上げていった。
シノンも抵抗するが、ハノンは離さない。
そして…
「みゅみゅ―――!!」
至近距離からのアタック。
加速度がない分威力はそこまでないが、逆にはずす心配はない。
それに…
「がはっ!!」
シノンが飛ばされた方向には岩があったのだ。
岩に体を叩き付けられたシノンは、大ダメージを負う。
「みゅみゅーー!」
とどめとばかりに、ハノンは火を噴いた。
(だめ!やられる!)
シノンが起き上がったとき、ハノンの炎はすでに目の前まで迫って来ていた。
このダメージであれをくらえば…おそらく戦闘不能は間違いないだろう。
(でも………)
シノンは思い起こす。
自分が修行を始めた理由。
それはハノンのパートナーになるためだ。
そしてそのためにはこの試練に打ち勝たなければならない。
だから……
「私は…絶対に負けない!」
次の瞬間、シノンの姿は消えた。
「な…何が起こったの!?」
シノンの母は驚きの声を上げた。
シノンの姿が消えたかと思えば、いきなりハノンの体が思いっきり吹っ飛ばされたのだ。
「シノンのやつがハノンに近づいて、チャクラムで殴りつけたんじゃ」
「ええ!?私には全然見えなかったわよ!?それに火を噴いてて無防備だったとはいえ、ハノンの体をあんなに吹っ飛ばすなんて…」
「火事場の馬鹿力ってやつじゃろ!カッカッカ!」
ともかく。
吹っ飛ばされたハノンは起き上がらない。
つまり……
「勝負あり!この勝負…シノンの勝ちじゃ!」
「ハノン!大丈夫!?」
戦いが終わると、すぐさまシノンはハノンに駆け寄った。
「みゅう…みゅうみゅうみゅうみゅう」
「え?何?なんて言ってるの?」
弱弱しい声で何かを伝えようとしているハノンに、シノンは聞き返す。
「すごい戦いだったですの」
「え!?長老様!?」
そこに突然現れたのはチーグルの長、ミュウであった。
高齢で最近はあまり体調も良くなかったのだが、こっそりどこかで戦いを見ていたらしい。
「ハノンは言ってるですの…シノンをパートナーと認める、と…」
「本当!?ハノン!」
シノンの言葉にハノンはこくりと頷いた。
シノンは歓喜の表情でハノンを抱きしめた。
「これからもよろしくね!ハノン!」
「みゅう!」
こうして、小さな魔獣使いとチーグルはパートナーとなった。
それから2年。
チーグルの森に危機が訪れていた。
ことの発端は、アランという青年を見たこともない魔物から助けたことだ。
アランを見張っていたと思われるその魔物は突然暴れだした。
両親が懸命に戦いなんとか一時的に退けたのだが、またいつ襲ってくるかわからない。
父の話によれば、あの魔物は何者かにより操られているらしい。
その話を聞いて、シノンは憤った。
魔物を操って従わせるなんて、魔獣使いとしては許せないことだった。
その上森をめちゃくちゃにされたとあっては、我慢ならない。
(でも…どうしたらいいんだろう)
両親は先程の戦闘で重傷を負ってしまった。
自分一人ではとうていかなう相手ではない。
シノンの心の中で不安が広がっていく。
「みゅみゅ!」
突然の声に、シノンは驚く。
声の主はハノンであった。
その表情から、自分を励ましてくれているんだと分かった。
「…ごめん、ハノン。こんな弱気じゃだめだよね!」
そうだ。
自分は一人ではない。
ハノンがいるのだ。
ハノンが一緒なら…なにも怖いことなんてない!
「とりあえず…あの魔物がまた近くまで来てるかもしれない。行こうハノン!」
「みゅみゅう!」
シノンとハノンは巣の外へと飛び出した。
「捕まえた!」
「ふぇ!?だ、誰!?」
「みゅみゅ!?」
――真の平和を紡ぐ少女とチーグルの物語は、ここから始まる――
■作者メッセージ
というわけでシノンとハノンの物語、最終回でした
ここから本編のシノンたちの初登場に繋がります
また機会があったら、こういう番外編的な話をこちらに書きたいですね
ちなみに術技一覧の方にはシノンの術技を追加してます
それでは本編の方もお楽しみに!
ここから本編のシノンたちの初登場に繋がります
また機会があったら、こういう番外編的な話をこちらに書きたいですね
ちなみに術技一覧の方にはシノンの術技を追加してます
それでは本編の方もお楽しみに!