短編『仮面が二つ』
それは、レイノス達がシュレーの丘での戦いを終えた夜の事。
セントビナーの街は、住人が戻ってきたことを祝して軽い宴会が開かれており、盛り上がっていた。
そんな中、二人の男がニヤニヤしながら歩いていた。
「イヤ〜、見ものだったネえ!」
「ああ、まさかリンがあんな大胆なことしでかすとはなあ!」
男のうち一人はまだ子供…に見えるが、その年齢は既に27を迎える。
そしてもう一人は、何故か仮面で顔を隠していた。
なんとも奇妙なコンビだ。
二人は、つい先ほど旅の仲間である少女が、同じく旅の仲間である幼馴染の少年との逢瀬を目撃し、盛り上がっていた。
「ところで仮面さん」
「なんだ、クノン」
クノンと呼ばれた子供っぽい27歳の男は、仮面の男、ミステリアス・ソルジャーに声をかける。
「シュレーの丘で言ってたよね、『悪党にはお似合いの姿だ』って。あの二人にさ」
「…それがどうした?」
それは、シュレーの丘で賊と戦った時の事。
彼ら二人は、アテネとアレンという強敵と戦い、二人を殺害することとなった。
ほとんど正当防衛に近い為、おそらく罪に問われることはないだろうが、自分達と共に戦った女性陣たちはそのことをかなり気に病んでいるようだった。
そんな中、ミステリアスはアテネとアレンの死体を眺めながら、言ったのだ。
『…ふん、人殺しの悪党にはお似合いの姿だぜ』
「イや〜、仮面さんってああいう奴ラのこと嫌いなのかなあッテ」
「好きな奴なんていないと思うが?」
「う〜ん、ソウなんだけどさ…なんというか、さ」
クノンにしては珍しく、言葉を濁している。
なにか、聞くのをためらっているかのようにね。
「あの時の仮面さん、なんていうかすごい声色が冷たかったっていうか、憎しみすら感じたからさ。それでちょっと気になっちゃって」
そう、あの時聞いたミステリアスの言葉は、非常に冷たいものだった。
それでいて、なにか胸の奥に激情を押し隠したかのような響きがあって…クノンは思わず戦慄していた。
仮面で表情は分からないが、きっとあの時はとてもおっかない顔をしていただろうとクノンは想像している。
「…ああ、憎んでるさ。犯罪者…それも、人を傷つけるような奴らは許せねえ。あいつらは、人に悲しみを植え付けるだけのクズ野郎だ。平和を乱す、生きている価値のない人間なんだよ!」
「か、仮面さん…」
「…悪い、気が立ってるみたいだ。ちょっと頭冷やしてくるわ」
「ウ、ウン…」
そうして、ミステリアスは一人どこかへ行ってしまった。
一人残されたクノンは、その様子を黙って見送った。
その表情には、少し怯えが感じられた。
(ミステリアス・ソルジャー、か…あの仮面の下に、いったいどんな想いを隠してるんだろうね)
普段、一緒にレイノスやリンをからかったりしてミステリアスと行動していると、感じるのだ。
彼はその顔面だけでなく、心にも『仮面』をつけていると。
今回は、その仮面の一端を覗くことができたような気がする。
(まあ、人のことは言えないんだけどね)
クノンもまた、心に『仮面』を着けている。
ギンジとノエルに拾われた、あの日から。
(『クノン』の言葉の意味は古代イスパニア語で仮面…ハハ、まさにピッタリだね)
ともかく、ミステリアスの『仮面』については、これ以上触れるのはやめておこう。
下手に触れようものなら…自分の『仮面』が剥がされることになりかねない。
「ま、同じ『仮面』仲間同士、これからも仲良くしようね、仮面サン♪」
セントビナーの街は、住人が戻ってきたことを祝して軽い宴会が開かれており、盛り上がっていた。
そんな中、二人の男がニヤニヤしながら歩いていた。
「イヤ〜、見ものだったネえ!」
「ああ、まさかリンがあんな大胆なことしでかすとはなあ!」
男のうち一人はまだ子供…に見えるが、その年齢は既に27を迎える。
そしてもう一人は、何故か仮面で顔を隠していた。
なんとも奇妙なコンビだ。
二人は、つい先ほど旅の仲間である少女が、同じく旅の仲間である幼馴染の少年との逢瀬を目撃し、盛り上がっていた。
「ところで仮面さん」
「なんだ、クノン」
クノンと呼ばれた子供っぽい27歳の男は、仮面の男、ミステリアス・ソルジャーに声をかける。
「シュレーの丘で言ってたよね、『悪党にはお似合いの姿だ』って。あの二人にさ」
「…それがどうした?」
それは、シュレーの丘で賊と戦った時の事。
彼ら二人は、アテネとアレンという強敵と戦い、二人を殺害することとなった。
ほとんど正当防衛に近い為、おそらく罪に問われることはないだろうが、自分達と共に戦った女性陣たちはそのことをかなり気に病んでいるようだった。
そんな中、ミステリアスはアテネとアレンの死体を眺めながら、言ったのだ。
『…ふん、人殺しの悪党にはお似合いの姿だぜ』
「イや〜、仮面さんってああいう奴ラのこと嫌いなのかなあッテ」
「好きな奴なんていないと思うが?」
「う〜ん、ソウなんだけどさ…なんというか、さ」
クノンにしては珍しく、言葉を濁している。
なにか、聞くのをためらっているかのようにね。
「あの時の仮面さん、なんていうかすごい声色が冷たかったっていうか、憎しみすら感じたからさ。それでちょっと気になっちゃって」
そう、あの時聞いたミステリアスの言葉は、非常に冷たいものだった。
それでいて、なにか胸の奥に激情を押し隠したかのような響きがあって…クノンは思わず戦慄していた。
仮面で表情は分からないが、きっとあの時はとてもおっかない顔をしていただろうとクノンは想像している。
「…ああ、憎んでるさ。犯罪者…それも、人を傷つけるような奴らは許せねえ。あいつらは、人に悲しみを植え付けるだけのクズ野郎だ。平和を乱す、生きている価値のない人間なんだよ!」
「か、仮面さん…」
「…悪い、気が立ってるみたいだ。ちょっと頭冷やしてくるわ」
「ウ、ウン…」
そうして、ミステリアスは一人どこかへ行ってしまった。
一人残されたクノンは、その様子を黙って見送った。
その表情には、少し怯えが感じられた。
(ミステリアス・ソルジャー、か…あの仮面の下に、いったいどんな想いを隠してるんだろうね)
普段、一緒にレイノスやリンをからかったりしてミステリアスと行動していると、感じるのだ。
彼はその顔面だけでなく、心にも『仮面』をつけていると。
今回は、その仮面の一端を覗くことができたような気がする。
(まあ、人のことは言えないんだけどね)
クノンもまた、心に『仮面』を着けている。
ギンジとノエルに拾われた、あの日から。
(『クノン』の言葉の意味は古代イスパニア語で仮面…ハハ、まさにピッタリだね)
ともかく、ミステリアスの『仮面』については、これ以上触れるのはやめておこう。
下手に触れようものなら…自分の『仮面』が剥がされることになりかねない。
「ま、同じ『仮面』仲間同士、これからも仲良くしようね、仮面サン♪」
■作者メッセージ
えー、今回はシュレーの丘での戦い終了後の夜、具体的には9章1の後のクノンとミステリアスのお話です
今後の話の伏線として、ミステリアスが犯罪者を憎んでいるという点を描写しました。
本当なら第一部でもっと描写するべきだったんですが、ミステリアスの設定は今もまだ構想を練っている最中な所があって、ちょっと後付くさくなってしまい、すみません
後、『…ふん、人殺しの悪党にはお似合いの姿だぜ』というミステリアスの台詞は、第一部8章1にこれまた後付けで追加させたので、よければ読みに来てください
…とまあこんな風に、かなりグダグダな進行となっていますが、今後もなんとか頑張って書いていきたいです
今後の話の伏線として、ミステリアスが犯罪者を憎んでいるという点を描写しました。
本当なら第一部でもっと描写するべきだったんですが、ミステリアスの設定は今もまだ構想を練っている最中な所があって、ちょっと後付くさくなってしまい、すみません
後、『…ふん、人殺しの悪党にはお似合いの姿だぜ』というミステリアスの台詞は、第一部8章1にこれまた後付けで追加させたので、よければ読みに来てください
…とまあこんな風に、かなりグダグダな進行となっていますが、今後もなんとか頑張って書いていきたいです