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炎から鳥へ

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  • 炎から鳥へ


     *この作品はモンスターハンターライズ&サンブレイク、モンスターハンターワイルズの序盤の一部ネタバレがございます。ネタバレが嫌と言う方はすぐにバックしてください。



     人の気配がない場所で行われた、里の存亡をかけた決戦。
     イブシマキヒコと呼ばれる、対の1体である古龍が暴風を生み出し、自分達に襲い掛かる人間を潰そうとする。
     しかし、彼女は動く。暴風を飛び上がって避けて宙を舞い、空高くから地面へと垂直に放たれた、その一筋の閃光にも似た攻撃は――。



    「我が愛弟子が繰り出した渾身の急降下の一撃ッ!! それがイブシマキヒコの胴体を穿ち、巨体が轟音と共に地底の底に落ちた!! そんな愛弟子を見て俺は自分の直感を改めて思い出したんだ!! この子は絶対に誰よりも強いハンターになるとぉ!!」
    「おおおおおお!! 流石は猛き炎!! それで、どうなったんですかっ!?」

     ハンター達が集う観測地の茶屋。その一角でカムラの里でハンターの教官役であるウツシとエルガドに配属された若き王国騎士のジェイが盛り上がる。
     興奮した様子で武勇伝を語り、聞き入れる2人の姿を、エルガドで教官役を務めるアルローが茶屋のテーブルに寄り掛かりながら呆れた様子で眺めていた。

    「ったく、あっちは暑苦しいしうるさいし年寄りの俺には付き合いきれんな」
    「まあいいじゃないですか。数々の危機を救ったカムラの英雄の武勇伝、私も興味がありました。この茶屋で団子片手に聞くと言うのも、最初こそは戸惑ったがなかなかいいものだ」

     このエルガドの王国騎士の1人であるフィオレーネが宥め、今もなお熱く興奮する2人を見て笑い出す。
     そんな彼女を一瞥したアルローは、今度は茶屋の中央にあるカウンターに目を向けた。

    「自分の生まれ育った里だけでなく、この国までも救った猛き炎と呼ばれるハンター。それがあそこで団子食ってる奴だとは誰も思わんだろうな」

     アルローの見る先にいたのは、カムラの里で受付嬢を務めるヒノエとミノトの竜人族の双子と共にうさ団子を食べきった、肩に紫の長髪が掛かった女性ハンターだ。食事の邪魔になるからと頭装備の猫耳フードを近くに立て掛けてある愛用武器の操虫棍に引っ掛けている。

    「はー、食べた食べたっ!」
    「はい、ごちそうさまでした」
    「流石はヒノエ姉様、今日もよい食べっぷりでした」

     串の数は圧倒的にヒノエが多いのだが、何時もの事なのか気にすることなく3人で食後のお茶を嗜む。
     そうして一服していると、ウツシと話していたジェイが興奮を抑えきれないまま近づいてきた。

    「くぅー! 大量のモンスター、ジンオウガ、ナルカクルガ、ディアボロス、ラージャン、因縁のマガイマガドに古龍をも狩りつくしたハンター!! 英雄と呼ばれる人はやっぱ違うなぁ!!」
    「もー、大げさだよジェイくん。私はそんなんじゃないって」
    「ふふ。我らの英雄は、エルガドでも大人気ですね」

     謙遜する彼女に対し、ヒノエは嬉しそうに微笑みかける。
     この様子に、ふとミノトが思い出したように彼女に話しかける。


    「そう言えば――弟さん、今どうしていらっしゃるんでしょうね?」


     ミノトの口から飛び出した言葉に、フィオレーネ、ジェイ、アルローのエルガド組が固まる。
     いち早く我に返ったのはフィオレーネだった。

    「君に弟がいたのか!? ロンディーネからはそのような情報聞いてなかったぞ!?」
    「弟さんは、ロンディーネさんが来る数年も前にカムラの里を出ましたから。ここ最近は百竜夜行で緊迫した状態ではありましたが、別に里は閉鎖している訳ではないですので、里の者でも普通に故郷を出て別の場所でハンターの所属になる人くらいはいますよ」

     妹の情報が不足してた理由を、ミノトが話す。
     実際に一部の里の者はカムラの文化を広める為に外で活動をしたり、逆に外の人間がカムラの里の住み心地の良さに移住したりもしている。ハンター活動に関してもちゃんと他のギルドと通じてるしで、閉鎖的に見えて外との繋がりはちゃんとあるのだ。
     自身の弟が話題に上がったからだろう。彼女は弟との思い出を話し始める。

    「そうそう。私の弟もハンターの才能はあったって事で、ウツシ教官の修行も一緒にしてたの。その時に里を守ると決めた私と違って、弟は外の世界に行く事を決めた。ただそれだけ」
    「そう!! 弟くんにも修行もつけたけど、彼も本当に筋が良かった!! 彼も愛弟子と負けず劣らずの操虫棍と双剣捌きなんだが、大剣にスラッシュアックスが使いたいからとそちらの修業を頑張っていてね!! 使い慣れない武器を懸命に持ち上げ、やがて巨大な刃から繰り出された技を出した時は見事としか言いようがなくてね!! 里を出る際はガルグもアイルーもつけないまま1人で巣立ってしまったんだが、ガルグともアイルーとも息ピッタリの相性で――!!」

     急にウツシも思い出話に参戦した事で一気に五月蠅くなってしまう中、またまた波長が合うジェイは興奮したように「凄い、他には!?」と弟の修業時代の話を催促してしまう。
     常に慣れているカムラの民はともかく、アルローは限界なのかしかめっ面で両耳を押さえている。少しでもフォローしようと、フィオレーネは話題を変える事にした。

    「き、貴殿の弟は、今何を?」
    「さあ? 里を出てから手紙のやり取りしている訳でもないから分かんないや」
    「そんな無責任な。弟さん心配じゃないんですか?」

     まるで自分の事の様にジェイが心配すると、彼女はうーんと腕を組んで考え込む。

    「心配と言うか――今もハンターをしているのは確かだから」

     座ったまま右腕を上げる。それに反応してどこからともなくフクズクが飛んでくる。
     バサッと音を立てて腕に止まったフクズクに、軽く頭を撫でつつ空を見上げる。

    「まあ元気でやってるでしょう」

     彼女は腕を大きく振り上げてフクズクを飛ばす。
     どこまでも広がる空に、1羽の鳥が翼を広げて飛び去って行く。
     そんな自分のフクズクの姿は、ハンターとして旅立った弟にどことなく似ていた。



     様々な生物が動き回る自然豊かな森の中を、鳥類のような生物――2匹のセクレトが駆ける。
     その背に乗っているのは眼鏡をかけた女性のアルマと、先端が白で根元が黒の短い髪をしたスラッシュアックスを背に抱える男性ハンターだ。

    「ボクも乗るー!」
    「おっと」

     セクレトの尻尾にしがみつく様に飛び乗った男性の相棒のアイルー。バランスを崩したが、すぐに手綱を操作して持ち直す。
     やがて奥地に来ると、樹海と滝の美しい光景が広がる。キラキラと輝く景色に、相棒とアルマの目が輝く。

    「わぁ〜、すごい景色!」
    「本当ですね」
    「ああ」
    「ボク、禁足地の調査隊に志願した相棒に着いてきて良かった。ねえ、相棒は?」

     尻尾から背中に移動する相棒の純粋な問いかけに、彼も偽りなく答える。

    「俺もだ。……世界は広いな」

     ぶっきらぼうな答え方だが、ずっと傍にいたからだろう。ちゃんと分ってくれたようで「うん!」と大きく頷く。
     その時、背後で大きなモンスターの鳴き声が響く。そちらに振り返ると、木々の間から移動をしている大型モンスターの姿が見える。

    「いた、ターゲットだよ!」
    「アルマは下がってろ。――行くぞ」

     相棒の声と共に彼女に指示を出して遠くに行かせると、探していた標的に彼は目を細める。
     後ろの相棒を見ると、やる気満々で大きく頷く。彼は握る手綱を思いっきり振り下ろし、セクレトと共に移動しているモンスターの背後へと迫ったのだった。

    25/04/01 16:22 NANA   

    ■作者メッセージ
     登場ハンター設定(身バレ防ぎの為に、衣装は大雑把に書いてます)

     猛き炎ハンター
     生まれ育ったカムラの里に王都をも救った女性ハンター。猫耳フードと腰のヒラヒラ部分の衣装を愛用している。
     今日も元気にうさ団子を食べては他ハンターのサポートに向かったり古龍の狩猟に出かけたりと気ままなハンター生活を楽しんでる。
     得意武器は操虫棍と双剣とライトボウガン。強力な攻撃で屠るより回避重視で倒れない戦い方をするのが得意。
     数年前に里から旅立ったハンターの弟がいる。「まあ元気でやってるでしょう」


     鳥の隊ハンター
     禁足地の調査隊に任命されたハンター。服はホープとレザー初期装備のシンプルな軽装を好む。
     詳しい経歴は不明だが、現在は腕の立つハンターとして相棒(アイルー)と共に禁足地のあちこちを飛び回っている。
     使用武器は大剣とスラッシュアックス。見た目のかっこよさに憧れた事から選んだのは内緒。強力な溜め攻撃をぶつける戦法だが、たまに「これが―――だったらまだ早く立ち回れるのに…!」と文句が漏れる事があるとかないとか。
     カムラの里に猛き炎と呼ばれる姉がいる。「まあ元気でいるだろう」


     裏設定
     *この小説での鳥の隊ハンターがカムラの里出身はこちらの妄想です。本編でも歴戦ハンターのようですが、どのような経緯になるかは恐らくG級解放辺りで判明するかもと予測してます。
     *ワイルズをするに当たって、ライズでは中の人が操虫棍や軽量武器が得意でずっと使っていたので、下位クリアまで今まで使った事ない武器でチャレンジしようと大剣とスラアクで縛りプレイをしていました。めっちゃ使いにくいし操作慣れるの大変でした。その体験をこのような形で鳥の隊の設定で作りました。今は上位解禁と同時に得意武器も解禁してプレイしてます。
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