キングダムハーツ【Five・Blade/Special・Episode1】『ライガの約束』
クロナ達が夢の世界へ行っている頃、俺はドナイタウンの町外れの森でただ一人夜空を見上げていた。
今日の夜空は星が何時もより綺麗で、あの一つ一つがそれぞれ違う世界だと考えると、何だか妙に嬉しくなる。もしそれが本当なら、あのたくさんの世界に住むたくさんの人と友達になれるかもしれないから。
「ライガ!」
俺の名前を呼ぶ声。俺を呼んだのはソラだった。こんな夜中にアースの森にいるという疑問が俺の頭を過ったまさにその時にソラが俺に言った。
「眠れないのか?」
「あぁ、まぁな。」
俺は近くにあった湖に写る自分の姿を見た。ピンク色のポニーテール、青緑色の瞳、女々しい顔立ち。何時もと変わらぬ俺――霧風ライガだ。俺は湖の中の自分から目を離さないようにしてソラに聞いた。
「どうしてここに?もう11時だぞ?」
「承認試験の前にここに来たかったんだ。」
承認試験――それは恐らく【マスター承認試験】の事だろう。ソラとリクは少し前にイエン・シッド様から呼び出され、明日それを行うらしい。俺も噂くらいは聞いていたからある程度予想は付いていた。だから俺はあえて何も言わず頷いた。
「俺、旅立つまえにあいつとまた約束したんだ。」
その言葉を聞いて俺はやっと湖の中の自分から目を反らし、ソラの方に目をやった。
「必ずまた帰るって。ほら。」
ソラは俺にとあるお守りを見せてくれた。ピンク色の星みたいな形のお守り。聞いたところによるとこれは約束のお守りと言う物らしい。
「約束か……懐かしいな。」
「えっ?」
俺は何時もより儚げな声で言った。
「懐かしいって?」
俺の様子に疑問を抱けない訳が無く、ソラは俺に質問をした。俺は夜空の満月を見上げて言った。
「俺も………約束があるんだ……大切な……約束(ロザラワーゼ)が。」
あれは、今から五年ほど前の事だ。俺が十一才の時だな。
俺は丁度この時期にこのレイベス地方―レイ達の故郷―に引っ越し、新しい生活が始まろうとしていた。だが、初めての場所だから、不安だらけだったんだ。
ドナイタウンでは、町の人達に全く溶け込めず、
学校でも、同じクラスの子達が外で遊んでいるのを窓から見ているだけだった。
そんな日々が半年続いたある日―。
「……あいつら……。」
当時十一才の俺は何時ものように窓から校庭でサッカーやかけっこなどで遊んでいる生徒を見つめていた。あいつらを見る度に、俺は必ずこう呟いてしまう。
「……羨ましいな。」
机に肘を突いて窓から外を見詰める日常。それが当たり前になりかけてきたのは丁度この頃だったか。俺がつまらなさそうな表情をしていると、一人の少女がこちらを見詰めている事に気づいた。
俺と大して席も遠くなく、俺より二つ後ろくらいの席に座っているその少女は不思議な雰囲気を放っていた。金髪のショートヘアで、水色の瞳。俺は一瞬彼女の姿に見入ってしまった。
「?」
少女はこちらが見ている事に気付いたのか、首を傾げた。俺は何故かその時ドキッとして、彼女から急いで目を反らし、カバンを持って一目散に走り出した。
その後俺は現在の住居である祖母の家の俺の部屋のベッドに寝転がり、天井を見つめていた。
「何なんだ……この気持ちは?」
その日はまだわからなかったんだ。この熱い感情が……何かを。
次の日、授業も終わり、カバンを取っていつも通り帰ろうとした時、誰かが後ろから俺の肩を軽く突っついた。振り向くと昨日の少女がいた。彼女をみると何故か俺の顔が赤くなる。
「ねぇ、昨日私の事見てたよね?」
「あ、あぁ……。」
「私も君の事見てたよ!今までずっと!」
「今まで?」
「うん、君転校してから誰にも馴染めて無かったようだし、私が友達になろうか?」
そう言って彼女は手を差し出し言った。
「私はルミナ・シーユ!」
俺はここに来てから初めての笑顔を作り、ルミナの手を取った。
「俺は霧風ライガ。」
それが俺達の始まりだった。
ルミナと友達になってからは毎日が楽しくなって行ったんだ。
俺達はどんなときも必ず二人で行動し、ルミナを通じてたくさんの友達が出来て行った。
悲しむ事なんてこれっぽっちも無くって、何時も笑顔が溢れていた。特に俺とルミナは………
「ラーイガ!テストどうだった?」
「95点。そっちは?」
「……35点。ライガお願い、勉強教えて。」
「フッ、わかった!」
お互いに足りない部分は埋めあって、
「調理実習…!なんで玉ねぎなんかが…!」
「どうしたのライガ?玉ねぎ切らないの?」
「…俺、玉ねぎ切れないんだよ。」
「フフッ、ライガって案外可愛い所あるんだね!」
短所を笑い話として笑いあった事もあった。
そんなある日、ルミナが突然『見せたい物がある』と言って、図書館に俺を連れてきた。暫く待っていると、ルミナが一冊の本を持ってきた。それは世界各地の花が描かれた分厚い本だった。ルミナは机にそれを置き、大体600ページの所を開いた。右側のページの上側に描かれている虹色のバラを指差し、ルミナは言った。
「これは【ロザラワーゼ】。珍しい花で、この世に数百しか咲いてないんだって……。」
この世に数百しか咲いてないの言われている稀少な花、ロザラワーゼ。俺はその名前すら聞いたことが無かった。俺はルミナに花のあることを聞いた。
「その……花言葉は?」
俺が質問をするとルミナは1つ深呼吸をし、その数秒後に答えた。
「【空の言葉】だよ。」
「空の……言葉?」
「うん。この花を持っていると、空から声が聞こえてくるんだって。」
それじゃあ本当に花言葉だろうと突っ込みたくなったが、突っ込む前にルミナが俺の手を両手で握り、言った。
「ねぇ、今度の春……二人でこれを探しにいこうよ!」
ルミナの頼み。それは他でもない大切な友達の頼みだった。当然俺は断る事は無く、強く頷き言った。
「あぁ……二人で絶対に空の声を聞こう!」
「うん!」
ルミナはとても喜んでくれた。その笑顔は俺に強い光を与えてくれた。
こうして、俺達の大切な約束が生まれた。
約束が生まれて以降、俺達の仲は更に良くなって行った。お互いの顔を見るだけで笑顔になれる程に。俺はこの時から、とある事を計画していた。
ロザラワーゼを手にいれたら、告白をしようと……
正月のある日、俺はドナイタウンの町外れの森を歩いていた。これから家に帰る所だ。
「君。」
突然後ろから声がした。振り向くとそこにはとっても大きくて丸い黒い耳、俺の足よりも小さい身長のネズミがいた。そのネズミは笑顔でこちらを見つめて言った。
「はじめまして!僕はミッキー!」
「ミッキー?」
ミッキーと名乗るそのネズミは何故か右手を前にかざした。何をしているのかと疑問を抱いたその時、ミッキーのその右手が輝き出し、ミッキーの右手に鍵のような形をした剣が握られていた。
「これを手にしてみて。」
「えっ?」
「このキーブレードは君に力を与え、君の大切な人を守る力になる!」
ミッキーの言っている事が今一つ見えない。キーブレード?当時の俺には全くわからなかった。
「どうして……俺なんだ?その……キーブレードって言うやつの力を譲るなら、もっと強いやつがいるだろう?」
「君じゃなくっちゃ駄目なんだ!」
俺の質問にミッキーは速答した。何故俺でなくてはならないのかはわからないが、俺はミッキーの持つキーブレードを握ってみた。すると、キーブレードから不思議な力が俺に流れてくる―そんな気がした。
俺はキーブレードをミッキーに返した。
「ありがとう!君とはまた何処かで会えそうだね!」
そう言ってミッキーは何処かに走り去ってしまった。その後ろ姿を見て俺は呟いた。
「何だったんだ?」
今思えば不思議な出来事だった。
それから1ヶ月後、バレンタインデーの日に俺は待ち合わせをしていた。相手はもちろんルミナだ。もしこれでチョコをもらえれば春に告白したときに結ばれる確立が明確だ。少し緊張してきた。
待ち合わせ場所に到着してからもうすでに六時間は経過していた。俺は流石に待ちきれなくなり、ルミナの家を訪ねる事にした。
ルミナの家に招き入れてもらう事に成功し、ルミナの部屋に急いで入ってみると、衝撃的な光景がそこにはあった。それはルミナが息1つせず眠っている姿だった。
「ルミナ……!?」
俺が眠っているルミナを見て驚愕していると、部屋にルミナの母親が入ってきた。母親は俺を心配そうに見て言った。
「ルミナは…元々病気だったの。」
「病気だって!?」
「えぇ、ルミナは1年前、正体不明の病気に侵されている事が発覚したの。その病気のせいで、ルミナの寿命は後一年にも満たない状態になってしまった…!」
「そんな……!」
「せめて死ぬ前に思い出を作ろうと、今まで出来た事の無かった親友を見つけ出した。それがライガ君、貴方だったのよ。」
「ルミナは貴方の事になるともう夢中で話していた。そう、ルミナは貴方の事が好きだったのよ。」
「だから死ぬ寸前まで、好きな人の傍にいて、生きた証を作りたかったんじゃないかしら?」
ルミナの母親の言葉を聞くたびに、俺は涙を流すしか無かった。俺は声も出せないまま家に帰り、自分の部屋で一晩中泣いて嘆いた。ルミナの―大切な人の死を。
その1ヶ月後、春の季節。二人が約束をしていた日に、俺は町外れの森の深い所のさらに深い所にある、【フラワーガーデン】と言う場所に来ていた。ルミナがあのとき見せてくれた本を何度も読み返し、ロザラワーゼがある場所がこのフラワーガーデンだと突き止めたのだ。
俺は約束の事を思い出し、一ヶ月前のような大量の涙を流した。しかし前と違い、今回はなんとか声は出せる。俺は悲しみの感情を露にして思いきり叫んだ。
「サヨナラを……言えなかったっ!!!」
俺はフラワーガーデンの奥を目指し、叫びを決して止めずに懸命に走り出した。
「うおぉぉぉぉぉぉぉおお!!!」
どれだけ叫んでも涙は止まらない。それどころかむしろ溢れるばかりだ。この消せない寂しさを俺は認められなかった。いや、認めたくなかった。あいつのいない世界なんて、俺には考えられない。
「(あいつがいなきゃ……今の俺はいないっ!あいつがいたから今俺は生きているっ!だから……せめて、せめてあいつと交わした約束を守り抜くっ!!!)」
ただひたすらに走り続けるしか無かった。俺はあいつと交わした約束を守り抜く為に、奥を目指し走り続けた。
やがて、奥の部屋にたどり着いた。そこはたくさんの花々が咲き誇る幻想的な場所で、その中心にはロザラワーゼが咲き誇っていた。こうしてみると写真で見るよりも美しかった。
「……これをルミナにも見せたかった……!」
その時だった。突如俺を囲むようにして謎の黒い化け物達が現れた。当時の俺はこいつらがハートレスである事はわからなかった。
「なんだ……こいつら?」
ハートレス達は爪を構え、俺に襲いかかってきた―ように見えたが、一斉にロザラワーゼを刈り取り始めた。その様子を見た俺は激昂する。
「っ!止めろぉーーーっ!!!」
その時、俺の脳裏にミッキーのあのときの言葉が響いた。
このキーブレードは君に力を与え、君の大切な人を守る力になる!
「うおぉぉぉお!!!」
いつの間にか俺の右手にはミッキーの物とはまた違ったキーブレードが握られていて、俺は無我夢中でキーブレードを操り、ハートレスを全滅させた。
俺はロザラワーゼの花がある場所を見た。ほとんど刈り取られてしまっているが、10本ほど残っていた。
「ルミナ………!」
4月1日
俺はルミナの墓参りに来ていた。もちろん、とある物を持って。俺はそのとある物をルミナの墓の前に置いた。それはロザラワーゼの花束だった。二人で探しに行くと約束した、二人の花束。
「ルミナ……君は何時でも傍にいる……これからもずっと、必ず、絶対にいるんだ……!」
俺はその日、無数の涙を墓場に流した。決して止まらない悲しみと共に。俺はロザラワーゼの花束を見つめて、言った。
「ロザラワーゼの花言葉………空の言葉……これを持っていると、空の声が聞こえる……!」
「ルミナ……聞こえたよ。」
俺は泣くのを止め、今は亡きルミナがいるであろう天国に向かって言った。
「聞こえたよ、『空の言葉』。」
俺はその時、空を見つめていた。あの何処までも続く空を。その時空の声と共にもう1つの声が聞こえたような気がした。その声は―――
Special・Episode1
The・End
今日の夜空は星が何時もより綺麗で、あの一つ一つがそれぞれ違う世界だと考えると、何だか妙に嬉しくなる。もしそれが本当なら、あのたくさんの世界に住むたくさんの人と友達になれるかもしれないから。
「ライガ!」
俺の名前を呼ぶ声。俺を呼んだのはソラだった。こんな夜中にアースの森にいるという疑問が俺の頭を過ったまさにその時にソラが俺に言った。
「眠れないのか?」
「あぁ、まぁな。」
俺は近くにあった湖に写る自分の姿を見た。ピンク色のポニーテール、青緑色の瞳、女々しい顔立ち。何時もと変わらぬ俺――霧風ライガだ。俺は湖の中の自分から目を離さないようにしてソラに聞いた。
「どうしてここに?もう11時だぞ?」
「承認試験の前にここに来たかったんだ。」
承認試験――それは恐らく【マスター承認試験】の事だろう。ソラとリクは少し前にイエン・シッド様から呼び出され、明日それを行うらしい。俺も噂くらいは聞いていたからある程度予想は付いていた。だから俺はあえて何も言わず頷いた。
「俺、旅立つまえにあいつとまた約束したんだ。」
その言葉を聞いて俺はやっと湖の中の自分から目を反らし、ソラの方に目をやった。
「必ずまた帰るって。ほら。」
ソラは俺にとあるお守りを見せてくれた。ピンク色の星みたいな形のお守り。聞いたところによるとこれは約束のお守りと言う物らしい。
「約束か……懐かしいな。」
「えっ?」
俺は何時もより儚げな声で言った。
「懐かしいって?」
俺の様子に疑問を抱けない訳が無く、ソラは俺に質問をした。俺は夜空の満月を見上げて言った。
「俺も………約束があるんだ……大切な……約束(ロザラワーゼ)が。」
あれは、今から五年ほど前の事だ。俺が十一才の時だな。
俺は丁度この時期にこのレイベス地方―レイ達の故郷―に引っ越し、新しい生活が始まろうとしていた。だが、初めての場所だから、不安だらけだったんだ。
ドナイタウンでは、町の人達に全く溶け込めず、
学校でも、同じクラスの子達が外で遊んでいるのを窓から見ているだけだった。
そんな日々が半年続いたある日―。
「……あいつら……。」
当時十一才の俺は何時ものように窓から校庭でサッカーやかけっこなどで遊んでいる生徒を見つめていた。あいつらを見る度に、俺は必ずこう呟いてしまう。
「……羨ましいな。」
机に肘を突いて窓から外を見詰める日常。それが当たり前になりかけてきたのは丁度この頃だったか。俺がつまらなさそうな表情をしていると、一人の少女がこちらを見詰めている事に気づいた。
俺と大して席も遠くなく、俺より二つ後ろくらいの席に座っているその少女は不思議な雰囲気を放っていた。金髪のショートヘアで、水色の瞳。俺は一瞬彼女の姿に見入ってしまった。
「?」
少女はこちらが見ている事に気付いたのか、首を傾げた。俺は何故かその時ドキッとして、彼女から急いで目を反らし、カバンを持って一目散に走り出した。
その後俺は現在の住居である祖母の家の俺の部屋のベッドに寝転がり、天井を見つめていた。
「何なんだ……この気持ちは?」
その日はまだわからなかったんだ。この熱い感情が……何かを。
次の日、授業も終わり、カバンを取っていつも通り帰ろうとした時、誰かが後ろから俺の肩を軽く突っついた。振り向くと昨日の少女がいた。彼女をみると何故か俺の顔が赤くなる。
「ねぇ、昨日私の事見てたよね?」
「あ、あぁ……。」
「私も君の事見てたよ!今までずっと!」
「今まで?」
「うん、君転校してから誰にも馴染めて無かったようだし、私が友達になろうか?」
そう言って彼女は手を差し出し言った。
「私はルミナ・シーユ!」
俺はここに来てから初めての笑顔を作り、ルミナの手を取った。
「俺は霧風ライガ。」
それが俺達の始まりだった。
ルミナと友達になってからは毎日が楽しくなって行ったんだ。
俺達はどんなときも必ず二人で行動し、ルミナを通じてたくさんの友達が出来て行った。
悲しむ事なんてこれっぽっちも無くって、何時も笑顔が溢れていた。特に俺とルミナは………
「ラーイガ!テストどうだった?」
「95点。そっちは?」
「……35点。ライガお願い、勉強教えて。」
「フッ、わかった!」
お互いに足りない部分は埋めあって、
「調理実習…!なんで玉ねぎなんかが…!」
「どうしたのライガ?玉ねぎ切らないの?」
「…俺、玉ねぎ切れないんだよ。」
「フフッ、ライガって案外可愛い所あるんだね!」
短所を笑い話として笑いあった事もあった。
そんなある日、ルミナが突然『見せたい物がある』と言って、図書館に俺を連れてきた。暫く待っていると、ルミナが一冊の本を持ってきた。それは世界各地の花が描かれた分厚い本だった。ルミナは机にそれを置き、大体600ページの所を開いた。右側のページの上側に描かれている虹色のバラを指差し、ルミナは言った。
「これは【ロザラワーゼ】。珍しい花で、この世に数百しか咲いてないんだって……。」
この世に数百しか咲いてないの言われている稀少な花、ロザラワーゼ。俺はその名前すら聞いたことが無かった。俺はルミナに花のあることを聞いた。
「その……花言葉は?」
俺が質問をするとルミナは1つ深呼吸をし、その数秒後に答えた。
「【空の言葉】だよ。」
「空の……言葉?」
「うん。この花を持っていると、空から声が聞こえてくるんだって。」
それじゃあ本当に花言葉だろうと突っ込みたくなったが、突っ込む前にルミナが俺の手を両手で握り、言った。
「ねぇ、今度の春……二人でこれを探しにいこうよ!」
ルミナの頼み。それは他でもない大切な友達の頼みだった。当然俺は断る事は無く、強く頷き言った。
「あぁ……二人で絶対に空の声を聞こう!」
「うん!」
ルミナはとても喜んでくれた。その笑顔は俺に強い光を与えてくれた。
こうして、俺達の大切な約束が生まれた。
約束が生まれて以降、俺達の仲は更に良くなって行った。お互いの顔を見るだけで笑顔になれる程に。俺はこの時から、とある事を計画していた。
ロザラワーゼを手にいれたら、告白をしようと……
正月のある日、俺はドナイタウンの町外れの森を歩いていた。これから家に帰る所だ。
「君。」
突然後ろから声がした。振り向くとそこにはとっても大きくて丸い黒い耳、俺の足よりも小さい身長のネズミがいた。そのネズミは笑顔でこちらを見つめて言った。
「はじめまして!僕はミッキー!」
「ミッキー?」
ミッキーと名乗るそのネズミは何故か右手を前にかざした。何をしているのかと疑問を抱いたその時、ミッキーのその右手が輝き出し、ミッキーの右手に鍵のような形をした剣が握られていた。
「これを手にしてみて。」
「えっ?」
「このキーブレードは君に力を与え、君の大切な人を守る力になる!」
ミッキーの言っている事が今一つ見えない。キーブレード?当時の俺には全くわからなかった。
「どうして……俺なんだ?その……キーブレードって言うやつの力を譲るなら、もっと強いやつがいるだろう?」
「君じゃなくっちゃ駄目なんだ!」
俺の質問にミッキーは速答した。何故俺でなくてはならないのかはわからないが、俺はミッキーの持つキーブレードを握ってみた。すると、キーブレードから不思議な力が俺に流れてくる―そんな気がした。
俺はキーブレードをミッキーに返した。
「ありがとう!君とはまた何処かで会えそうだね!」
そう言ってミッキーは何処かに走り去ってしまった。その後ろ姿を見て俺は呟いた。
「何だったんだ?」
今思えば不思議な出来事だった。
それから1ヶ月後、バレンタインデーの日に俺は待ち合わせをしていた。相手はもちろんルミナだ。もしこれでチョコをもらえれば春に告白したときに結ばれる確立が明確だ。少し緊張してきた。
待ち合わせ場所に到着してからもうすでに六時間は経過していた。俺は流石に待ちきれなくなり、ルミナの家を訪ねる事にした。
ルミナの家に招き入れてもらう事に成功し、ルミナの部屋に急いで入ってみると、衝撃的な光景がそこにはあった。それはルミナが息1つせず眠っている姿だった。
「ルミナ……!?」
俺が眠っているルミナを見て驚愕していると、部屋にルミナの母親が入ってきた。母親は俺を心配そうに見て言った。
「ルミナは…元々病気だったの。」
「病気だって!?」
「えぇ、ルミナは1年前、正体不明の病気に侵されている事が発覚したの。その病気のせいで、ルミナの寿命は後一年にも満たない状態になってしまった…!」
「そんな……!」
「せめて死ぬ前に思い出を作ろうと、今まで出来た事の無かった親友を見つけ出した。それがライガ君、貴方だったのよ。」
「ルミナは貴方の事になるともう夢中で話していた。そう、ルミナは貴方の事が好きだったのよ。」
「だから死ぬ寸前まで、好きな人の傍にいて、生きた証を作りたかったんじゃないかしら?」
ルミナの母親の言葉を聞くたびに、俺は涙を流すしか無かった。俺は声も出せないまま家に帰り、自分の部屋で一晩中泣いて嘆いた。ルミナの―大切な人の死を。
その1ヶ月後、春の季節。二人が約束をしていた日に、俺は町外れの森の深い所のさらに深い所にある、【フラワーガーデン】と言う場所に来ていた。ルミナがあのとき見せてくれた本を何度も読み返し、ロザラワーゼがある場所がこのフラワーガーデンだと突き止めたのだ。
俺は約束の事を思い出し、一ヶ月前のような大量の涙を流した。しかし前と違い、今回はなんとか声は出せる。俺は悲しみの感情を露にして思いきり叫んだ。
「サヨナラを……言えなかったっ!!!」
俺はフラワーガーデンの奥を目指し、叫びを決して止めずに懸命に走り出した。
「うおぉぉぉぉぉぉぉおお!!!」
どれだけ叫んでも涙は止まらない。それどころかむしろ溢れるばかりだ。この消せない寂しさを俺は認められなかった。いや、認めたくなかった。あいつのいない世界なんて、俺には考えられない。
「(あいつがいなきゃ……今の俺はいないっ!あいつがいたから今俺は生きているっ!だから……せめて、せめてあいつと交わした約束を守り抜くっ!!!)」
ただひたすらに走り続けるしか無かった。俺はあいつと交わした約束を守り抜く為に、奥を目指し走り続けた。
やがて、奥の部屋にたどり着いた。そこはたくさんの花々が咲き誇る幻想的な場所で、その中心にはロザラワーゼが咲き誇っていた。こうしてみると写真で見るよりも美しかった。
「……これをルミナにも見せたかった……!」
その時だった。突如俺を囲むようにして謎の黒い化け物達が現れた。当時の俺はこいつらがハートレスである事はわからなかった。
「なんだ……こいつら?」
ハートレス達は爪を構え、俺に襲いかかってきた―ように見えたが、一斉にロザラワーゼを刈り取り始めた。その様子を見た俺は激昂する。
「っ!止めろぉーーーっ!!!」
その時、俺の脳裏にミッキーのあのときの言葉が響いた。
このキーブレードは君に力を与え、君の大切な人を守る力になる!
「うおぉぉぉお!!!」
いつの間にか俺の右手にはミッキーの物とはまた違ったキーブレードが握られていて、俺は無我夢中でキーブレードを操り、ハートレスを全滅させた。
俺はロザラワーゼの花がある場所を見た。ほとんど刈り取られてしまっているが、10本ほど残っていた。
「ルミナ………!」
4月1日
俺はルミナの墓参りに来ていた。もちろん、とある物を持って。俺はそのとある物をルミナの墓の前に置いた。それはロザラワーゼの花束だった。二人で探しに行くと約束した、二人の花束。
「ルミナ……君は何時でも傍にいる……これからもずっと、必ず、絶対にいるんだ……!」
俺はその日、無数の涙を墓場に流した。決して止まらない悲しみと共に。俺はロザラワーゼの花束を見つめて、言った。
「ロザラワーゼの花言葉………空の言葉……これを持っていると、空の声が聞こえる……!」
「ルミナ……聞こえたよ。」
俺は泣くのを止め、今は亡きルミナがいるであろう天国に向かって言った。
「聞こえたよ、『空の言葉』。」
俺はその時、空を見つめていた。あの何処までも続く空を。その時空の声と共にもう1つの声が聞こえたような気がした。その声は―――
Special・Episode1
The・End