第85話『崩壊と新王とエピローグ』
「ジーク……」
瓦礫の山と化した塔をレムナントの中からフィオナが見下ろす傍らでルルは泣いていた。
逆にジンは窓から空を見上げていた。
「ねぇ、何だか空が明るくない?」
この地方は1年中雪が降っているため晴れる日はない。
そのため明るくなることはないため不審に思った一同は窓から空を見上げる。
すると、ピンクの球体が黒い霧を吸い込みながら発光していた。
「あれはさっきユリスが入ってた球体じゃない!?」
マオの言うとおり、間違いなくユリスの物だ。
その球体は一頻(ひとしき)り黒い霧を吸い込むと、亀裂が入り始めた。
「おいおい、どっかで見たぜ?このパターン」
ティトレイが冷や汗を流す。
球体に亀裂が一周入ると、卵から雛が孵るように球体がバラバラに飛び散った。
「おはよう、劣等種共」
球体の元主は殻を破って早々低音で挨拶をしてきた。
身長は190はあるかという巨漢に白い髪のオールバック、そして白い髭を生やしている。
今までは全裸か半裸であったが今は白いコートを着ている。
だが、周囲にピンクの目玉が二つ浮遊していることから彼がユリスだということは一目瞭然だった。
「今度はえらく成長したものね」
ヒルダが皮肉交じりに言うと、ユリスは視線を斜め下を旋回飛行しているレムナントに向ける。
「安心しろ、これが完全体だ。もうこれ以上は成長しねぇよ」
「ここからの声が聞こえた!?」
カインが驚愕するとユリスは鼻で笑った。
「さっき言ったはずだぜ?俺は108つのフォルスを持ってると。そのうちの1つを使えば造作もない」
「冗談にも程ってものがあんだろ……」
ブライトが呟くがユリスはおもむろにレムナントの下を指差す。
「俺にばっかり気をとられてねぇで下も見みてみろよ」
ユリスに言われて思わず全員下を見る。
すると、空に居て気付かなかったが瓦礫の山が小刻みに揺れており、地上では地震が起きているようだった。
だが地震にしては定期的に揺れが止み、次に振動する度にその揺れ幅は大きくなっていった。
まるで、地下から何かが出てこようとしているようだ。
「何故ここがネレグの塔と呼ばれているか知っているか?」
ユリスは淡々と続ける。
「聖獣王ゲオルギアスに従う6体の聖獣。だが、聖獣になれなかったやつがいた」
振動が激しくなるとついに瓦礫の山が地中の中から打ち上げられる。
「そいつは聖獣には似つかわしくない姿をしていたため迫害され、魔獣へと堕ちた」
ユリスが手を広げるのと同時に地下から巨大なカニの鋏(はさみ)のような物が二本出現した。
そして、左右合計8本の足で地上に出ると尻尾の先端についてる針のような物を天高く突き上げた。
「そう、それがこのネレグだ!」
まるで蠍(さそり)のような姿をした魔獣は雄叫びを上げる。
「この塔は魔獣へ変貌したネレグを封じるためにゲオルギアスが施した封印だったのさ!さすがにこればかりは聖獣でないかぎり解けねぇ!だが、聖獣王は考えなかった!そんなセオリーさえもぶっ壊すヒトが出現するなんてなぁ!!ハッハッハッハ!!間抜けなやつだぜ!!」
「よもや聖獣達への腹いせのためにここに拠点を構え、俺達をおびき出したというのか!?」
ユージーンが訪ねるとユリスは腕を組んだ。
「勿論それだけじゃねぇ。俺様のペットは確かに聖獣にはなれなかったが成り得る存在ではあった。つまり、思念を浄化することが聖獣にできるならその逆も可能ってわけだ!」
突然ネレグの尻尾部分が発光すると広範囲に向かって光が拡散した。
そして、ほんの数秒後には拡散した光とは反対に大量の黒い霧がユリスの元へと集まってきた。
「今の一瞬でこれだけ思念が増幅されたってこと!?」
カイトは霧にコックピッドの視界を遮断されないよう操縦しながら驚く。
「後はこのネレグにカレギア中を歩かせれば恐怖に怯えた心により更に思念は増加する!そうすればお前等はそのうち誰も信じられなくなる!人間共の同士討ちの始まりだぜぇ!!ハーハッハッハッハ!!!」
「そうはさせない」
ユリスの笑い声をヴェイグの冷静な一声が遮断する。
「あ?」
「俺達はここでお前を討つために仲間を犠牲にしたんだ!これ以上貴様の思い通りにはさせない!!」
ヴェイグが言い切るとユリスは驚いたように目を見開くが、直後に吹き出した。
「ハッハッハッハ!これ以上ってお前、さっきも言ったがお前が言ってもギャグにしかならねぇんだって!ヴェイグちゃんよぉ!!」
「カイト、ネレグに向かって急降下できるか?」
「心中するつもり?」
ヴェイグはユリスに構わず首を横に振る。
「すれすれの所で回避してくれればそれで良い。後は俺達でやる」
そう言ってヴェイグは背中の大剣に手をかける。
「分かった」
カイトはヴェイグ達の身を案じ眉をひそめるが頷いた。
「俺のペットを傷付けようたってそうはいかねぇぜ?」
ユリスは指をパチンと鳴らす。
するとネレグは突然奇声を発し始めた。
「何だこの音は!?」
あまりの騒音にティトレイを始め全員が耳を塞ぐ。
すると、レムナントが突然グラっと揺れバランスを崩した。
「カイト!?」
フィオナはすぐにコックピッドに目をやる。
「だ、大丈夫!こんな時のために備えはしてあるから!」
見るとカイトはヘッドホンで耳を覆っていた。
「でもおかしいんだ!しっかり舵を握っているのに機体が安定しないなんて!」
カイトはバランス計を確認する。
するとあることに気付いた。
「もしかしてエンジンの重みで傾いてる……?」
カイトの声が僅かだが聞こえたニノンはエンジンが収納されている位置に手を当てる。
すると、
「だ、ダメです!フォルスがちゃんと使えません!」
「何!?」
ブライトもニノンの羽の上に手を添えて重力のフォルスを流す。
だが、思うようにフォルスが流れない。
「分かったか?聖獣の力ってのはフォルスの制御にも使えるんだよ!」
ユリスは天に手をかざす。
すると紫のエネルギー弾が掌に収束していく。
「じゃあな」
ユリスが言い終わるのと同時にエネルギーが弾け、大粒の雨のように降り注ぐ。
そのエネルギー弾の雨がレムナントに直撃する度に衝撃が機内に伝わり余計にバランスがとれなくなる。
「一旦この場から離れる!カイト、バルカに向かえ!」
「了解!!」
ユージーンの号令によりカイトは舵を一気に傾け機体を旋回させ、ノルゼン地方から離脱した。
「思った以上に頑丈な機体だったな……。だがまぁ良い、お楽しみはこれからだ!」
ユリスの高笑いが、曇天の空に木霊した。
* * *
ノルゼン地方から離脱するとすぐに期待は安定し、バルカへは数分で到着した。
レムナントを降り街へ入ると一同を待っていたのはバイラスの大量の死体だった。
「これは一体……?」
ヴェイグが周囲の様子を確認していると、城のほうから甲冑が擦れる音を響かせながらミルハウストが走ってきた。
「貴様等か。未知の飛行体が飛来したと聞いて再びバイラスが来たのかと思ったぞ」
「そのバイラスの件についてなんだが、この有様は何だ?」
ユージーンがバイラスの死体の山を指して訪ねる。
「これは先程突然攻めてきたバイラスの群れだったものだ。王の剣が助力してくれたおかげもあって市民に怪我はない」
「そうか……」
恐らく先程の増幅された思念の影響だろうとユージーンは心の中で推測する。
「私からも良いだろうか?ユージーン、貴様等はユリス討伐に行ったと剣のメンバーから報告を受けていたのだが……やったのか?」
ミツハウストの質問に全員が渋い顔をした。
「実は……」
先程まであった出来事をヴェイグが代表してミルハウストに伝える。
「ユリスの完全体だと!?それにネレグというのもなかなか厄介だな……」
ミルハウストの眉間に皺が寄る。
「概ね理解した。無駄な争いを起こさせぬようバルカの市民には極力外出を控えるよう呼びかけておこう」
「頼む」
ユージーンが頷くと、マオが人差し指を立てる。
「じゃあ次はこれからどうするかだね。まずはユリスをどうするか考えないと」
「待てよ」
そこへティトレイが割り込む。
「ジークのことはどうすんだよ!?あのまま放っておくのか!?」
「今探しに行けばまだ生きてるかもしれないわね」
ヒルダもティトレイに同調すると、今まで俯いていたフィオナとルルが顔を上げた。
「ティトレイ、お前の言い分も分かる。だが、ユリスをこのまま野放しにしておけば犠牲者は増えるばかりだ。もしかしたら次はスールズに現れるかもしれない。ペトナジャンカに現れる可能性だってあるんだぞ」
「そうだけどよぉ……!」
ヴェイグの言葉に言い返せずティトレイは前髪をぐしゃっと片手で掴む。
姉のことが脳をよぎってしまったら何も言い返せない。
「まずはカレギアの民の心の安寧を図るべきだろう」
「具体的な方法があるのか?」
ユージーンの提案にブライトは首を傾げる。
「先代、アガーテ女王から空席になっている王の座を埋める。国を導くトップがいるだけで民の不安も少しは緩和されるはずだ」
それを聞いてジンは手をポンと叩く。
「そっか!オーちゃんを連れてきて王にするってことか!」
「いや、残念ながらルーベルトではない」
「え……」
「まぁ、そうでしょうね」
ヒルダが髪をかきあげる。
「今ここに居ないということはまた迷子にでもなっているのかしらね。そんな今何処に居るかも分からないヒトに頼ることは賢明とはいえないわ」
「でもオーチャンは王位継承権だって持ってるしそもそも月のフォルスの能力者って他にいんの?」
「この際、フォルスは問題じゃないのよ。私が言うのもなんだけどルーベルトはハーフなのよ?ハーフが王位についたらハーフとガジュマ、両方から反感をかって最悪デモが起きてもおかしくない。良い?それこそユリスの望む同士討ちに近付くことになるのよ」
「そ、そうか……」
がっかりしたようにジンの犬耳が下に垂れる。
「ハーフとガジュマ、両方から信頼され王位を継ぐにふさわしい人物か……。私には到底心当たりがないが今からどうやって探すつもりだ?」
ミルハウストがヴェイグ達を見ると、全員がミルハウストを見ていた。
「おいまさか……」
ヴェイグがミルハウストの肩に手を置く。
「王になるのはお前だ、ミルハウスト。いや、お前しかいない。お前は民からの信頼も厚い上にたとえガジュマから反対されても相手が1種族だけならなんとかなる」
「何……だと……?」
呆然とするミルハウストだったがこの数日後、ミルハウストの戴冠式が行われた。
〜最終部へ続く〜
瓦礫の山と化した塔をレムナントの中からフィオナが見下ろす傍らでルルは泣いていた。
逆にジンは窓から空を見上げていた。
「ねぇ、何だか空が明るくない?」
この地方は1年中雪が降っているため晴れる日はない。
そのため明るくなることはないため不審に思った一同は窓から空を見上げる。
すると、ピンクの球体が黒い霧を吸い込みながら発光していた。
「あれはさっきユリスが入ってた球体じゃない!?」
マオの言うとおり、間違いなくユリスの物だ。
その球体は一頻(ひとしき)り黒い霧を吸い込むと、亀裂が入り始めた。
「おいおい、どっかで見たぜ?このパターン」
ティトレイが冷や汗を流す。
球体に亀裂が一周入ると、卵から雛が孵るように球体がバラバラに飛び散った。
「おはよう、劣等種共」
球体の元主は殻を破って早々低音で挨拶をしてきた。
身長は190はあるかという巨漢に白い髪のオールバック、そして白い髭を生やしている。
今までは全裸か半裸であったが今は白いコートを着ている。
だが、周囲にピンクの目玉が二つ浮遊していることから彼がユリスだということは一目瞭然だった。
「今度はえらく成長したものね」
ヒルダが皮肉交じりに言うと、ユリスは視線を斜め下を旋回飛行しているレムナントに向ける。
「安心しろ、これが完全体だ。もうこれ以上は成長しねぇよ」
「ここからの声が聞こえた!?」
カインが驚愕するとユリスは鼻で笑った。
「さっき言ったはずだぜ?俺は108つのフォルスを持ってると。そのうちの1つを使えば造作もない」
「冗談にも程ってものがあんだろ……」
ブライトが呟くがユリスはおもむろにレムナントの下を指差す。
「俺にばっかり気をとられてねぇで下も見みてみろよ」
ユリスに言われて思わず全員下を見る。
すると、空に居て気付かなかったが瓦礫の山が小刻みに揺れており、地上では地震が起きているようだった。
だが地震にしては定期的に揺れが止み、次に振動する度にその揺れ幅は大きくなっていった。
まるで、地下から何かが出てこようとしているようだ。
「何故ここがネレグの塔と呼ばれているか知っているか?」
ユリスは淡々と続ける。
「聖獣王ゲオルギアスに従う6体の聖獣。だが、聖獣になれなかったやつがいた」
振動が激しくなるとついに瓦礫の山が地中の中から打ち上げられる。
「そいつは聖獣には似つかわしくない姿をしていたため迫害され、魔獣へと堕ちた」
ユリスが手を広げるのと同時に地下から巨大なカニの鋏(はさみ)のような物が二本出現した。
そして、左右合計8本の足で地上に出ると尻尾の先端についてる針のような物を天高く突き上げた。
「そう、それがこのネレグだ!」
まるで蠍(さそり)のような姿をした魔獣は雄叫びを上げる。
「この塔は魔獣へ変貌したネレグを封じるためにゲオルギアスが施した封印だったのさ!さすがにこればかりは聖獣でないかぎり解けねぇ!だが、聖獣王は考えなかった!そんなセオリーさえもぶっ壊すヒトが出現するなんてなぁ!!ハッハッハッハ!!間抜けなやつだぜ!!」
「よもや聖獣達への腹いせのためにここに拠点を構え、俺達をおびき出したというのか!?」
ユージーンが訪ねるとユリスは腕を組んだ。
「勿論それだけじゃねぇ。俺様のペットは確かに聖獣にはなれなかったが成り得る存在ではあった。つまり、思念を浄化することが聖獣にできるならその逆も可能ってわけだ!」
突然ネレグの尻尾部分が発光すると広範囲に向かって光が拡散した。
そして、ほんの数秒後には拡散した光とは反対に大量の黒い霧がユリスの元へと集まってきた。
「今の一瞬でこれだけ思念が増幅されたってこと!?」
カイトは霧にコックピッドの視界を遮断されないよう操縦しながら驚く。
「後はこのネレグにカレギア中を歩かせれば恐怖に怯えた心により更に思念は増加する!そうすればお前等はそのうち誰も信じられなくなる!人間共の同士討ちの始まりだぜぇ!!ハーハッハッハッハ!!!」
「そうはさせない」
ユリスの笑い声をヴェイグの冷静な一声が遮断する。
「あ?」
「俺達はここでお前を討つために仲間を犠牲にしたんだ!これ以上貴様の思い通りにはさせない!!」
ヴェイグが言い切るとユリスは驚いたように目を見開くが、直後に吹き出した。
「ハッハッハッハ!これ以上ってお前、さっきも言ったがお前が言ってもギャグにしかならねぇんだって!ヴェイグちゃんよぉ!!」
「カイト、ネレグに向かって急降下できるか?」
「心中するつもり?」
ヴェイグはユリスに構わず首を横に振る。
「すれすれの所で回避してくれればそれで良い。後は俺達でやる」
そう言ってヴェイグは背中の大剣に手をかける。
「分かった」
カイトはヴェイグ達の身を案じ眉をひそめるが頷いた。
「俺のペットを傷付けようたってそうはいかねぇぜ?」
ユリスは指をパチンと鳴らす。
するとネレグは突然奇声を発し始めた。
「何だこの音は!?」
あまりの騒音にティトレイを始め全員が耳を塞ぐ。
すると、レムナントが突然グラっと揺れバランスを崩した。
「カイト!?」
フィオナはすぐにコックピッドに目をやる。
「だ、大丈夫!こんな時のために備えはしてあるから!」
見るとカイトはヘッドホンで耳を覆っていた。
「でもおかしいんだ!しっかり舵を握っているのに機体が安定しないなんて!」
カイトはバランス計を確認する。
するとあることに気付いた。
「もしかしてエンジンの重みで傾いてる……?」
カイトの声が僅かだが聞こえたニノンはエンジンが収納されている位置に手を当てる。
すると、
「だ、ダメです!フォルスがちゃんと使えません!」
「何!?」
ブライトもニノンの羽の上に手を添えて重力のフォルスを流す。
だが、思うようにフォルスが流れない。
「分かったか?聖獣の力ってのはフォルスの制御にも使えるんだよ!」
ユリスは天に手をかざす。
すると紫のエネルギー弾が掌に収束していく。
「じゃあな」
ユリスが言い終わるのと同時にエネルギーが弾け、大粒の雨のように降り注ぐ。
そのエネルギー弾の雨がレムナントに直撃する度に衝撃が機内に伝わり余計にバランスがとれなくなる。
「一旦この場から離れる!カイト、バルカに向かえ!」
「了解!!」
ユージーンの号令によりカイトは舵を一気に傾け機体を旋回させ、ノルゼン地方から離脱した。
「思った以上に頑丈な機体だったな……。だがまぁ良い、お楽しみはこれからだ!」
ユリスの高笑いが、曇天の空に木霊した。
* * *
ノルゼン地方から離脱するとすぐに期待は安定し、バルカへは数分で到着した。
レムナントを降り街へ入ると一同を待っていたのはバイラスの大量の死体だった。
「これは一体……?」
ヴェイグが周囲の様子を確認していると、城のほうから甲冑が擦れる音を響かせながらミルハウストが走ってきた。
「貴様等か。未知の飛行体が飛来したと聞いて再びバイラスが来たのかと思ったぞ」
「そのバイラスの件についてなんだが、この有様は何だ?」
ユージーンがバイラスの死体の山を指して訪ねる。
「これは先程突然攻めてきたバイラスの群れだったものだ。王の剣が助力してくれたおかげもあって市民に怪我はない」
「そうか……」
恐らく先程の増幅された思念の影響だろうとユージーンは心の中で推測する。
「私からも良いだろうか?ユージーン、貴様等はユリス討伐に行ったと剣のメンバーから報告を受けていたのだが……やったのか?」
ミツハウストの質問に全員が渋い顔をした。
「実は……」
先程まであった出来事をヴェイグが代表してミルハウストに伝える。
「ユリスの完全体だと!?それにネレグというのもなかなか厄介だな……」
ミルハウストの眉間に皺が寄る。
「概ね理解した。無駄な争いを起こさせぬようバルカの市民には極力外出を控えるよう呼びかけておこう」
「頼む」
ユージーンが頷くと、マオが人差し指を立てる。
「じゃあ次はこれからどうするかだね。まずはユリスをどうするか考えないと」
「待てよ」
そこへティトレイが割り込む。
「ジークのことはどうすんだよ!?あのまま放っておくのか!?」
「今探しに行けばまだ生きてるかもしれないわね」
ヒルダもティトレイに同調すると、今まで俯いていたフィオナとルルが顔を上げた。
「ティトレイ、お前の言い分も分かる。だが、ユリスをこのまま野放しにしておけば犠牲者は増えるばかりだ。もしかしたら次はスールズに現れるかもしれない。ペトナジャンカに現れる可能性だってあるんだぞ」
「そうだけどよぉ……!」
ヴェイグの言葉に言い返せずティトレイは前髪をぐしゃっと片手で掴む。
姉のことが脳をよぎってしまったら何も言い返せない。
「まずはカレギアの民の心の安寧を図るべきだろう」
「具体的な方法があるのか?」
ユージーンの提案にブライトは首を傾げる。
「先代、アガーテ女王から空席になっている王の座を埋める。国を導くトップがいるだけで民の不安も少しは緩和されるはずだ」
それを聞いてジンは手をポンと叩く。
「そっか!オーちゃんを連れてきて王にするってことか!」
「いや、残念ながらルーベルトではない」
「え……」
「まぁ、そうでしょうね」
ヒルダが髪をかきあげる。
「今ここに居ないということはまた迷子にでもなっているのかしらね。そんな今何処に居るかも分からないヒトに頼ることは賢明とはいえないわ」
「でもオーチャンは王位継承権だって持ってるしそもそも月のフォルスの能力者って他にいんの?」
「この際、フォルスは問題じゃないのよ。私が言うのもなんだけどルーベルトはハーフなのよ?ハーフが王位についたらハーフとガジュマ、両方から反感をかって最悪デモが起きてもおかしくない。良い?それこそユリスの望む同士討ちに近付くことになるのよ」
「そ、そうか……」
がっかりしたようにジンの犬耳が下に垂れる。
「ハーフとガジュマ、両方から信頼され王位を継ぐにふさわしい人物か……。私には到底心当たりがないが今からどうやって探すつもりだ?」
ミルハウストがヴェイグ達を見ると、全員がミルハウストを見ていた。
「おいまさか……」
ヴェイグがミルハウストの肩に手を置く。
「王になるのはお前だ、ミルハウスト。いや、お前しかいない。お前は民からの信頼も厚い上にたとえガジュマから反対されても相手が1種族だけならなんとかなる」
「何……だと……?」
呆然とするミルハウストだったがこの数日後、ミルハウストの戴冠式が行われた。
〜最終部へ続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート65】
takeshi「ども〜!ついに第2部を完結させたtakeshiです!」
チャリティ「おめでとう」
ヤコ「おめでとう」
マティアス「おめでとう」
takeshi「打ち切り感出すのやめてもらえます?」
チャリティ「何よ、せっかくお祝いしてあげたのに」
takeshi「でも本当に打ち切りにならなくて良かったです!今月の頭に入院した時はこれから先何がどうなるか分からないから一気にユリスを倒して終わりにしようかとか考えていたのですが、とりあえず最悪の状況だけは回避できたのでこうやって第3部へと繋ぐことができました!」
ヤコ「ここで終わったら私死に損なんだけど」
takeshi「打ち切りにする場合はヤコさん死にませんよ。火の鳥みたいな姿をした導術がヤコさんに迫った時にそれをウォーレスが切り裂くという予定でしたから」
マティアス「どっかで見た内容ね」
チャリティ「そうね」
ヤコ「デジャビュ?」
takeshi「何……だと……!?」
ヤコ「あ、そうだチャリティ」
チャリティ「何?」
ヤコ「前回言い忘れてたんだけど、ちゃんとジークを護らないとだめじゃない」
チャリティ「仕方ないでしょ?新月でフォルスの調子が安定しないんだから」
takeshi「そんなこと言ってたら本当に私の調子も悪くなりましたけどね……」
マティアス「それはただの偶然ね」
takeshi「でしょうよ。それと本編でついに空白だった王が選定されました!」
マティアス「これもどっかで見た設定ね」
チャリティ「そうね」
ヤコ「デジャビュ?」
takeshi「ペッパーさんが未だにこの小説を読んでくださっているのか分かりませんが、実は同じこと考えてたんです!!リバースに焦点を当てた回を読んだ時に「ミルハウストしかいませんよねー!」ってえらく共感したのを覚えてます!」
チャリティ「ていう後付なんでしょ?」
マティアス「後からなら何とでも言えるものね」
ヤコ「盗作は良くないよ?」
takeshi「誤解だぁああああ!!!!」
チャリティ「何はともあれ、こんな所かしらね?」
takeshi「何か言い残したことがあるような気がしますが、思い出したら後で編集します」
ヤコ「出た、後付け」
takeshi「だから誤解なんですって!!」
マティアス「私は次章もいるのかしら?」
takeshi「多分いると思います。ではそんなわけで皆様1年間ご愛読(?)くださりありがとうございました!」
チャリティ&ヤコ&マティアス「「「良いお年を〜」」」
takeshi「ども〜!ついに第2部を完結させたtakeshiです!」
チャリティ「おめでとう」
ヤコ「おめでとう」
マティアス「おめでとう」
takeshi「打ち切り感出すのやめてもらえます?」
チャリティ「何よ、せっかくお祝いしてあげたのに」
takeshi「でも本当に打ち切りにならなくて良かったです!今月の頭に入院した時はこれから先何がどうなるか分からないから一気にユリスを倒して終わりにしようかとか考えていたのですが、とりあえず最悪の状況だけは回避できたのでこうやって第3部へと繋ぐことができました!」
ヤコ「ここで終わったら私死に損なんだけど」
takeshi「打ち切りにする場合はヤコさん死にませんよ。火の鳥みたいな姿をした導術がヤコさんに迫った時にそれをウォーレスが切り裂くという予定でしたから」
マティアス「どっかで見た内容ね」
チャリティ「そうね」
ヤコ「デジャビュ?」
takeshi「何……だと……!?」
ヤコ「あ、そうだチャリティ」
チャリティ「何?」
ヤコ「前回言い忘れてたんだけど、ちゃんとジークを護らないとだめじゃない」
チャリティ「仕方ないでしょ?新月でフォルスの調子が安定しないんだから」
takeshi「そんなこと言ってたら本当に私の調子も悪くなりましたけどね……」
マティアス「それはただの偶然ね」
takeshi「でしょうよ。それと本編でついに空白だった王が選定されました!」
マティアス「これもどっかで見た設定ね」
チャリティ「そうね」
ヤコ「デジャビュ?」
takeshi「ペッパーさんが未だにこの小説を読んでくださっているのか分かりませんが、実は同じこと考えてたんです!!リバースに焦点を当てた回を読んだ時に「ミルハウストしかいませんよねー!」ってえらく共感したのを覚えてます!」
チャリティ「ていう後付なんでしょ?」
マティアス「後からなら何とでも言えるものね」
ヤコ「盗作は良くないよ?」
takeshi「誤解だぁああああ!!!!」
チャリティ「何はともあれ、こんな所かしらね?」
takeshi「何か言い残したことがあるような気がしますが、思い出したら後で編集します」
ヤコ「出た、後付け」
takeshi「だから誤解なんですって!!」
マティアス「私は次章もいるのかしら?」
takeshi「多分いると思います。ではそんなわけで皆様1年間ご愛読(?)くださりありがとうございました!」
チャリティ&ヤコ&マティアス「「「良いお年を〜」」」