第5話『教義と襲撃』
気を抜いていたからとは言え、自陣の中央に一瞬にして侵入を許してしまった。
ヴェイグとユージーンは瞬時に振り返り、大剣を槍を突き出した。
それをブライトは跳躍することで回避し、それを読んでいたヴェイグはブライトを追うように跳躍した。
「絶翔斬!」
大剣を下段から上へ振り上げながら跳躍するヴェイグだったが、ブライトは既に遥か上空へと跳躍しており、そのまま最初の位置へと着地するのをヴェイグも着地しながら見送った。
「重力のフォルスか……」
「厄介だな」
あれ程までの跳躍距離は彼の周囲だけ無重力状態にしたことによるものだろうと推測したヴェイグは再びユージーンと共に武器を構えた。
更に、ここで瞬時に追い討ちをかけないのは既に手は打ってあるからこそであった。
「最初に飛び込んで来るのはてめぇだろうな」
ブライトは腰を落とし、ファイティングポーズをとると腕に力を込める。
「うおおおおおお!!」
「ティトレイ!!」
ティトレイは足を踏ん張り渾身の拳を突き出すと、ブライトの拳と激突した。
ぶつかりあった拳圧により周囲に突風が吹き、衝撃に耐えかねたブライトの腕が痺れを感じた。
ブライトは顔をしかめてバックステップをするが、体が思うように動かず大した距離を稼ぐことができなかった。
そこをティトレイの飛び蹴りが襲うがブライトは彼の足をしっかりと掴むと放り投げた。
どうも違和感の正体は背中にあるらしく、目視で確認してみると背中から腰にかけて凍っていた。
これでは背中を曲げることができず、思うように跳ねることができないのも当然である。
「あの時か……」
ブライトは自分を追って跳躍してきたヴェイグを思い出していた。
あの時確かに斬撃はかわしたが、その斬撃により飛翔したフォルスまではかわせていなかった。
ブライトは正面を見据えると槍を構えたユージーンが接近してきていた。
だが彼にとってのその距離は既に射程範囲内であり、危機を察知したブライトはすぐさま体を捻らせ、ユージーンの突きを回避した。
本来ならばバックステップで距離を取り、瞬時に反撃をしかけたかったが背中の氷は暫く溶けないことが明白なため、それは諦めた。
それでもブライトは背中ががら空きのユージーンに肘で攻撃をし、ユージーンを怯ませるが、それでも肘に衝撃が返ってきた。
(どんだけ硬ぇんだよコイツ……!!)
鋼のフォルスにより鎧が硬化されており、ブライトは痺れる両手を一回振り横凪に振りかぶるユージーンの槍を両手で掴んだ。
そんな状況を、ジーク、ジン、ルル、フィオナ、カインの5人はただ見ているだけだったが、ジークがおもむろに怒鳴った。
「おい先生!!本当に誰か死んだらシャレにならねーだろうが!!」
勿論その誰かのうちにブライトも含まれている。
「うるせぇ!!てめぇらは黙って見てろ!!」
ブライトは槍を払い懐に両手で掌底を打ち込むとユージーンは後ずさり、しかしそこへヴェイグの一太刀がブライトの背中に浴びせられる。
背中に氷の盾があっため、直接ダメージには至っていないが、それでも激痛がブライトの体に走る。
「大丈夫だよ、ジーク君。もし最悪の場合になっても、ちゃんと僕が再生するから!」
『おかげで背中が軽くなったぜ』とブライトが威勢を張る中、カインは微笑みかけた。
「んなこと言ったってお前……」
「それより、これが教育ってどういうことなのよ?」
ジークとカインが話しているところへフィオナに割り込まれ、カインはフィオナを睨んだ。
「あいつは生徒相手に銃は使わない。何でも、拳じゃないと分からないこともあるんだとよ」
「ふぅ〜ん。……カイン、いい加減睨むのやめてくれない?」
(もし、今の俺がブライトの代わりにあそこに立ってたらどれ位通用するんだろうな…?)
ジークは歯痒そうに拳を握り、背中の氷を払うブライトを見た。
「ハハッ、良い感じになってきたじゃねぇの」
「何?」
ブライトの言葉にユージーンとヴェイグの2人は攻撃の手を止め、そこへブライトは地面を強打した。
すると、地面に亀裂が入り足場が崩れたユージーンとヴェイグはその地割れに挟まってしまった。
ブライト「最初からそうやって本気だせよ、出し惜しみしてんじゃねぇ。良いか?ヒトってのは一度手を抜くとそれが癖になっちまうんだ。お前等はまだ、そんな癖を付ける時期でも場合でもねぇだろ?」
ブライトはそれが言いたかったらしく、言い終わるとヴェイグとユージーンを地割れの隙間から引きずりだした。
「確かに、出し惜しみしてる場合ではなかったな」
ヴェイグはユージーンに言うと、彼も深く頷いた。
「それじゃ!ここからはボクも本気でいくヨ!!」
じゃ〜ん!と言いたげにマオはトンファーを掲げると、詠唱に入った。
「三人一緒に攻撃してこなかったのはこのためかよ?」
ブライトは鼻で笑うと、アニーに蘇生されたヒルダも詠唱に入った。
そう、ヴェイグ、ユージーン、ティトレイの三人の前衛のうち2人だけでブライトを攻撃していたのはアニーが2人の後衛を蘇生させる時間を稼ぐためであった。
そのため最初はヴェイグが後衛から離れずブライトの奇襲に備え、ティトレイがブライトに放り投げられた後、即座に復帰した彼はヴェイグと前衛を交代していたのである。
ブライトの敗因は、アニーを倒さなかったという詰めの甘さにあった。
「だがまだ負けるつもりはねぇ!!ジーク!お前も来い!!」
さっきは見ていろと言ったくせにと思いながらジークはリストを装着し、ヴェイグとユージーン、そしてティトレイの三人と対峙した。
(いや無理だろこれ……)
「俺はもう両手が使えねぇからな。しっかりと護れよ?」
そう言ってブライトも詠唱に入った。
実はユージーンに両手で掌底を打ち込んだ時にブライトの両手は既に悲鳴をあげていたらしい。
「いくらジークでも、手加減はしねぇぜ?うりゃ!」
そういってティトレイは拳を突き出すと、ジークは必死に横へ回避しユージーンの横凪の槍をしゃがんで過ごすと、ヴェイグが振り下ろす大剣を横に跳躍することで回避した。
そのようなことを繰り返し、なんとか回避はしていたが反撃するチャンスも余裕もなかった。
「ジークって……案外避けるの上手いわね」
「ジーク君は避けるのが上手いんじゃなくて早いんだ!なんせ村一番の俊足の持ち主だからね!」
フィオナが関心したように言うと、カインは自慢気に返した。
「と言っても、ジーク兄さんの戦いで使える取り柄ってそれだけだけどね」
「ルル、それ言っちゃだめだって……」
ジンはルルの頭をポンと叩いた後、戦闘中の仲間達を見た。
そろそろどちらかの詠唱が終わる頃だ。
どちらも詠唱の長さからして中級以上の導術を狙っているのは明らかだ。
ということは、先に詠唱を終わらせた方がこの勝負の勝敗を握ることになる。
そして、1人の男がイレギュラーな動きに出る。
「むっ!!」
ユージーンは眼を光らせると突然ヴェイグとティトレイの前を旋回し、ブライトの側面に駆け寄った。
「しまっ……」
ジークは呆気にとられ後方への進入を許してしまうが無理もない。
突然目の前を横切られたことにより攻撃を中断せざるを得なくなったヴェイグとティトレイでさえも呆気に取られてしまったのだから。
そして、槍の射程範囲に入ったユージーンだったが突然反転し、槍を地面に刺した。
「むぉおおおおお!!!」
ユージーンは地面にフォルスを注ぐと等身大の鋼の壁が地面より出現した。
しかし、その刹那。
鋼の壁は光に包まれたエネルギー波によって簡単に貫かれユージーンの体へ直撃した。
そのエネルギーは四散したが、あまりの衝撃にユージーンは吹き飛ばされ、その背後にいたブライトも吹き飛んできたユージーンの体を受け止めらずに地面に背中を打ちつけた。
「ユージーン!!」
すぐにユージーンの下から這い出たブライトはユージーンを呼びかけるが、彼の屈強の体はボロボロになっていた。
そこへアニーが即座に駆け寄り、カインもまたユージーンのもとへ走った。
「マオ!あそこよ!!」
エネルギーの発進源を探していたフィオナは先程自分達が出てきた東門近くに1人の人影を発見すると、指差した。
武器のような物を持っているところをみると、ヤツで間違いないだろう。
「来たれ爆炎、焼き尽くせ!」
調度詠唱が終了したマオが狙いを定める。
まだ影に動きはない。
「バーンストライク!!」
上空に炎が凝縮すると、その炎達は次々に例の人影へと降り注ぐ。
すると、その人影は武器を横に降ると炎はすべてかき消された。
だが、ただかき消されたのではなく、まるで三つの鍵爪をもった巨大な手のようなものに払われたかのようにも見えた。
そう、まるで龍の腕のようなものに。
「嘘!?」
マオが驚愕する中ヒルダの詠唱も終わる。
「降り注げ閃光、我が敵を葬れ!」
ヒルダはバッと腕を下にクロスさせる。
「シャイニングレイ!!」
光の雨が容赦なく降り注ぐ。
しかし、そこには既に先程の人影はなくなっていた。
そして気付いた時には再生しようとしているカインの真後ろに見知らぬ女性が薙刀を突きの体勢でジークに止められていた。
「よく気付いたじゃない?」
赤紫の長く伸びた髪をツインテールにしている女性は不適に笑ったが、ジークは薙刀を止めるのだけで精一杯だった。
「カイン…!!早くユージーンを……」
カインは頷くと両手が白く光始めた。
「はぁぁああああ!!!」
カインとユージーンの体が眩い光に包まれると、ユージーンの体はみるみるうちに再生されていった。
「へぇ〜、これが再生のフォルスなのね」
ジークが驚愕の表情を浮かべると同時に、ティトレイのフォルスによるツタが女性の足に絡みつき、フィオナとルルは次の詠唱に入ったマオとヒルダの援護にまわった。
そしてティトレイのツタにより身動きのとれなくなった女性にティトレイのボウガンとジンの剣の切っ先が向けられ、ヴェイグの大剣が首元に突きつけられた。
「貴様……何者だ?何故カインのフォルスを知っている?」
「私の仲間に情報収集に長けてる子がいるの。その子のお陰よ?」
こんな状況でも眉一つ動じない女性を見て、全員が只者ではないことが理解できた。
ヴェイグは剣に精神を集中させ、剣からは冷気により白い霜が上がっていた。
それを見た女性は一息溜息をつくと、薙刀を地面に捨て両手を上に挙げた。
「あ〜もう、やめやめ。降参よ降参」
突然降参と言われても信じられる筈もなく、全員はそのまま牽制(けんせい)を維持した。
「そもそも私がここに来た理由は街の住人から外で暴動が起きてるっていう報告がきたから止めにきただけ。この前の一件もあるのに、こんなところで乱闘してたらあんたら殺されても文句言えないわよ?」
「だ、だからって、本当に殺さなくても……」
俯きながら言うアニーの言葉から察するにどうやらアニーの診断では本当にユージーンは殺されてしまっていたらしい。
再生を続けるカインの光は少しずつ消えていき、完全に消滅するのと同時に目を覚ました。
「……分かったわよ、ちゃんと話してあげる。その代わり、あんた達も武器をしまってちょうだい?勿論、マオ大佐もね」
女性はマオにウィンクを飛ばすとマオは渋々ながらも詠唱を止め、ヴェイグ達も武器をしまった。
彼女の正体とは一体……。
〜続く〜
ヴェイグとユージーンは瞬時に振り返り、大剣を槍を突き出した。
それをブライトは跳躍することで回避し、それを読んでいたヴェイグはブライトを追うように跳躍した。
「絶翔斬!」
大剣を下段から上へ振り上げながら跳躍するヴェイグだったが、ブライトは既に遥か上空へと跳躍しており、そのまま最初の位置へと着地するのをヴェイグも着地しながら見送った。
「重力のフォルスか……」
「厄介だな」
あれ程までの跳躍距離は彼の周囲だけ無重力状態にしたことによるものだろうと推測したヴェイグは再びユージーンと共に武器を構えた。
更に、ここで瞬時に追い討ちをかけないのは既に手は打ってあるからこそであった。
「最初に飛び込んで来るのはてめぇだろうな」
ブライトは腰を落とし、ファイティングポーズをとると腕に力を込める。
「うおおおおおお!!」
「ティトレイ!!」
ティトレイは足を踏ん張り渾身の拳を突き出すと、ブライトの拳と激突した。
ぶつかりあった拳圧により周囲に突風が吹き、衝撃に耐えかねたブライトの腕が痺れを感じた。
ブライトは顔をしかめてバックステップをするが、体が思うように動かず大した距離を稼ぐことができなかった。
そこをティトレイの飛び蹴りが襲うがブライトは彼の足をしっかりと掴むと放り投げた。
どうも違和感の正体は背中にあるらしく、目視で確認してみると背中から腰にかけて凍っていた。
これでは背中を曲げることができず、思うように跳ねることができないのも当然である。
「あの時か……」
ブライトは自分を追って跳躍してきたヴェイグを思い出していた。
あの時確かに斬撃はかわしたが、その斬撃により飛翔したフォルスまではかわせていなかった。
ブライトは正面を見据えると槍を構えたユージーンが接近してきていた。
だが彼にとってのその距離は既に射程範囲内であり、危機を察知したブライトはすぐさま体を捻らせ、ユージーンの突きを回避した。
本来ならばバックステップで距離を取り、瞬時に反撃をしかけたかったが背中の氷は暫く溶けないことが明白なため、それは諦めた。
それでもブライトは背中ががら空きのユージーンに肘で攻撃をし、ユージーンを怯ませるが、それでも肘に衝撃が返ってきた。
(どんだけ硬ぇんだよコイツ……!!)
鋼のフォルスにより鎧が硬化されており、ブライトは痺れる両手を一回振り横凪に振りかぶるユージーンの槍を両手で掴んだ。
そんな状況を、ジーク、ジン、ルル、フィオナ、カインの5人はただ見ているだけだったが、ジークがおもむろに怒鳴った。
「おい先生!!本当に誰か死んだらシャレにならねーだろうが!!」
勿論その誰かのうちにブライトも含まれている。
「うるせぇ!!てめぇらは黙って見てろ!!」
ブライトは槍を払い懐に両手で掌底を打ち込むとユージーンは後ずさり、しかしそこへヴェイグの一太刀がブライトの背中に浴びせられる。
背中に氷の盾があっため、直接ダメージには至っていないが、それでも激痛がブライトの体に走る。
「大丈夫だよ、ジーク君。もし最悪の場合になっても、ちゃんと僕が再生するから!」
『おかげで背中が軽くなったぜ』とブライトが威勢を張る中、カインは微笑みかけた。
「んなこと言ったってお前……」
「それより、これが教育ってどういうことなのよ?」
ジークとカインが話しているところへフィオナに割り込まれ、カインはフィオナを睨んだ。
「あいつは生徒相手に銃は使わない。何でも、拳じゃないと分からないこともあるんだとよ」
「ふぅ〜ん。……カイン、いい加減睨むのやめてくれない?」
(もし、今の俺がブライトの代わりにあそこに立ってたらどれ位通用するんだろうな…?)
ジークは歯痒そうに拳を握り、背中の氷を払うブライトを見た。
「ハハッ、良い感じになってきたじゃねぇの」
「何?」
ブライトの言葉にユージーンとヴェイグの2人は攻撃の手を止め、そこへブライトは地面を強打した。
すると、地面に亀裂が入り足場が崩れたユージーンとヴェイグはその地割れに挟まってしまった。
ブライト「最初からそうやって本気だせよ、出し惜しみしてんじゃねぇ。良いか?ヒトってのは一度手を抜くとそれが癖になっちまうんだ。お前等はまだ、そんな癖を付ける時期でも場合でもねぇだろ?」
ブライトはそれが言いたかったらしく、言い終わるとヴェイグとユージーンを地割れの隙間から引きずりだした。
「確かに、出し惜しみしてる場合ではなかったな」
ヴェイグはユージーンに言うと、彼も深く頷いた。
「それじゃ!ここからはボクも本気でいくヨ!!」
じゃ〜ん!と言いたげにマオはトンファーを掲げると、詠唱に入った。
「三人一緒に攻撃してこなかったのはこのためかよ?」
ブライトは鼻で笑うと、アニーに蘇生されたヒルダも詠唱に入った。
そう、ヴェイグ、ユージーン、ティトレイの三人の前衛のうち2人だけでブライトを攻撃していたのはアニーが2人の後衛を蘇生させる時間を稼ぐためであった。
そのため最初はヴェイグが後衛から離れずブライトの奇襲に備え、ティトレイがブライトに放り投げられた後、即座に復帰した彼はヴェイグと前衛を交代していたのである。
ブライトの敗因は、アニーを倒さなかったという詰めの甘さにあった。
「だがまだ負けるつもりはねぇ!!ジーク!お前も来い!!」
さっきは見ていろと言ったくせにと思いながらジークはリストを装着し、ヴェイグとユージーン、そしてティトレイの三人と対峙した。
(いや無理だろこれ……)
「俺はもう両手が使えねぇからな。しっかりと護れよ?」
そう言ってブライトも詠唱に入った。
実はユージーンに両手で掌底を打ち込んだ時にブライトの両手は既に悲鳴をあげていたらしい。
「いくらジークでも、手加減はしねぇぜ?うりゃ!」
そういってティトレイは拳を突き出すと、ジークは必死に横へ回避しユージーンの横凪の槍をしゃがんで過ごすと、ヴェイグが振り下ろす大剣を横に跳躍することで回避した。
そのようなことを繰り返し、なんとか回避はしていたが反撃するチャンスも余裕もなかった。
「ジークって……案外避けるの上手いわね」
「ジーク君は避けるのが上手いんじゃなくて早いんだ!なんせ村一番の俊足の持ち主だからね!」
フィオナが関心したように言うと、カインは自慢気に返した。
「と言っても、ジーク兄さんの戦いで使える取り柄ってそれだけだけどね」
「ルル、それ言っちゃだめだって……」
ジンはルルの頭をポンと叩いた後、戦闘中の仲間達を見た。
そろそろどちらかの詠唱が終わる頃だ。
どちらも詠唱の長さからして中級以上の導術を狙っているのは明らかだ。
ということは、先に詠唱を終わらせた方がこの勝負の勝敗を握ることになる。
そして、1人の男がイレギュラーな動きに出る。
「むっ!!」
ユージーンは眼を光らせると突然ヴェイグとティトレイの前を旋回し、ブライトの側面に駆け寄った。
「しまっ……」
ジークは呆気にとられ後方への進入を許してしまうが無理もない。
突然目の前を横切られたことにより攻撃を中断せざるを得なくなったヴェイグとティトレイでさえも呆気に取られてしまったのだから。
そして、槍の射程範囲に入ったユージーンだったが突然反転し、槍を地面に刺した。
「むぉおおおおお!!!」
ユージーンは地面にフォルスを注ぐと等身大の鋼の壁が地面より出現した。
しかし、その刹那。
鋼の壁は光に包まれたエネルギー波によって簡単に貫かれユージーンの体へ直撃した。
そのエネルギーは四散したが、あまりの衝撃にユージーンは吹き飛ばされ、その背後にいたブライトも吹き飛んできたユージーンの体を受け止めらずに地面に背中を打ちつけた。
「ユージーン!!」
すぐにユージーンの下から這い出たブライトはユージーンを呼びかけるが、彼の屈強の体はボロボロになっていた。
そこへアニーが即座に駆け寄り、カインもまたユージーンのもとへ走った。
「マオ!あそこよ!!」
エネルギーの発進源を探していたフィオナは先程自分達が出てきた東門近くに1人の人影を発見すると、指差した。
武器のような物を持っているところをみると、ヤツで間違いないだろう。
「来たれ爆炎、焼き尽くせ!」
調度詠唱が終了したマオが狙いを定める。
まだ影に動きはない。
「バーンストライク!!」
上空に炎が凝縮すると、その炎達は次々に例の人影へと降り注ぐ。
すると、その人影は武器を横に降ると炎はすべてかき消された。
だが、ただかき消されたのではなく、まるで三つの鍵爪をもった巨大な手のようなものに払われたかのようにも見えた。
そう、まるで龍の腕のようなものに。
「嘘!?」
マオが驚愕する中ヒルダの詠唱も終わる。
「降り注げ閃光、我が敵を葬れ!」
ヒルダはバッと腕を下にクロスさせる。
「シャイニングレイ!!」
光の雨が容赦なく降り注ぐ。
しかし、そこには既に先程の人影はなくなっていた。
そして気付いた時には再生しようとしているカインの真後ろに見知らぬ女性が薙刀を突きの体勢でジークに止められていた。
「よく気付いたじゃない?」
赤紫の長く伸びた髪をツインテールにしている女性は不適に笑ったが、ジークは薙刀を止めるのだけで精一杯だった。
「カイン…!!早くユージーンを……」
カインは頷くと両手が白く光始めた。
「はぁぁああああ!!!」
カインとユージーンの体が眩い光に包まれると、ユージーンの体はみるみるうちに再生されていった。
「へぇ〜、これが再生のフォルスなのね」
ジークが驚愕の表情を浮かべると同時に、ティトレイのフォルスによるツタが女性の足に絡みつき、フィオナとルルは次の詠唱に入ったマオとヒルダの援護にまわった。
そしてティトレイのツタにより身動きのとれなくなった女性にティトレイのボウガンとジンの剣の切っ先が向けられ、ヴェイグの大剣が首元に突きつけられた。
「貴様……何者だ?何故カインのフォルスを知っている?」
「私の仲間に情報収集に長けてる子がいるの。その子のお陰よ?」
こんな状況でも眉一つ動じない女性を見て、全員が只者ではないことが理解できた。
ヴェイグは剣に精神を集中させ、剣からは冷気により白い霜が上がっていた。
それを見た女性は一息溜息をつくと、薙刀を地面に捨て両手を上に挙げた。
「あ〜もう、やめやめ。降参よ降参」
突然降参と言われても信じられる筈もなく、全員はそのまま牽制(けんせい)を維持した。
「そもそも私がここに来た理由は街の住人から外で暴動が起きてるっていう報告がきたから止めにきただけ。この前の一件もあるのに、こんなところで乱闘してたらあんたら殺されても文句言えないわよ?」
「だ、だからって、本当に殺さなくても……」
俯きながら言うアニーの言葉から察するにどうやらアニーの診断では本当にユージーンは殺されてしまっていたらしい。
再生を続けるカインの光は少しずつ消えていき、完全に消滅するのと同時に目を覚ました。
「……分かったわよ、ちゃんと話してあげる。その代わり、あんた達も武器をしまってちょうだい?勿論、マオ大佐もね」
女性はマオにウィンクを飛ばすとマオは渋々ながらも詠唱を止め、ヴェイグ達も武器をしまった。
彼女の正体とは一体……。
〜続く〜
■作者メッセージ
ども〜!ここまで長かったtakeshiです。
今回のブライトの台詞はこの物語を書こうと決意した時から書きたかったことだったので、その願いが3年越しに果たされ今はほっとしています;
ところで、このコメント欄って文字制限何文字くらいなのでしょうか?
1000字くらいあるのであれば、オマケでも付けたいな〜と考えているのですが、多分本編とは全然まったく関係無いものなので却下されそうですね。
ただ、オマケとテイルズ大集合をこよなく愛する私としてはやらずにいられないというか何と言うか・・・;
折り合いを見て、隙があればいつかやろうと思います!!
長々とすみませんでした!
ではまた〜
今回のブライトの台詞はこの物語を書こうと決意した時から書きたかったことだったので、その願いが3年越しに果たされ今はほっとしています;
ところで、このコメント欄って文字制限何文字くらいなのでしょうか?
1000字くらいあるのであれば、オマケでも付けたいな〜と考えているのですが、多分本編とは全然まったく関係無いものなので却下されそうですね。
ただ、オマケとテイルズ大集合をこよなく愛する私としてはやらずにいられないというか何と言うか・・・;
折り合いを見て、隙があればいつかやろうと思います!!
長々とすみませんでした!
ではまた〜