第12話『帰省と女王貝』
それから数日が経ってから、オーちゃんとチャリティがほんの半日姿を消していたことがあったのだが、チャリティは何食わぬ顔で戻ってきたがオーちゃんの行方を知る物はいなかった。
捜索をしようという意見も出たが、チャリティが何の根拠もないまま放っておいても大丈夫だというので、そのままオーちゃんの捜索は打ち切られ思い出の人物となった。
「てな訳だ」
ブライトはここまで昔話を話し終わると、全員ジークを見た。
「あんた、変わりすぎじゃない?」
ヒルダはジト目で言うと、ジークは肘を自分の太股についた。
「どこがだよ?つうか、ルル。そんなところじゃ寒いだろ?隣来いよ」
ジークは隣に座っているジンを押しのけたが対面でマオの隣に座っているルルはそっぽを向いた。
「私はここで良いの!」
その様子を見て一同は今ブライトの話に出てきたジークとルルが、現在の2人とあまりにもかけ離れているため全員ブライトを疑った。
「お、俺は嘘は言ってねぇぞ?ここまで話したんだからルルも思い出しただろ?」
ブライトは冷や汗をかきながらルルに確認したが、彼女は相変わらず眉間にシワを作っていた。
「思い出したような……そうでもないような?」
「あれだけ振り回しておいて忘れるなんて、よっぽどあの時兄さんに褒められたのが―――」
自分のポジションを死守することができたジンが笑いながら言っている途中、ルルの伸ばした如意棒に鳩尾を突かれ、後ろにひっくり返ってしまった。
それをジークが助け起こしていると、何時の間にやら夜も更けてきたため簡単に食事を済ませ、各々の船室へ戻っていった。
そして翌日の昼頃、船は大きな岩山の前を通りかかった。
その岩山は大陸にある山とは違い三角形になっておらず、プリンのような形をしていた。
エアーズロックをイメージしてもらうと早い。
「な、なんだこりゃ〜……」
船首にいたティトレイが大きな口を開けていると、隣のブライトは腕を組みながらニヤリと笑った。
「そろそろ降りる準備をしろよ?いよいよ到着だ!」
どうやらこの楕円形の岩山がジーク達の故郷である島の目印らしく、ティトレイは急いで全員に降りる準備をするよう伝えに行った。
それから船は岩山をぐるりと旋回し、裏に廻りこむと、そこには縦長の島が繋がっていた。
広さは大体キョグエンからノルゼンまでの大陸を抜き取ったような広さで、形も縦長だった。
先程見た岩山の直径はこれの大体半分である。
港についたヴェイグ達は久しぶりの大地に背伸びをしながら降り立ち、辺りを見回してみた。
すると、空は青く澄み渡っており、街には何本もの河が流れていた。
しかし、それは河ではないらしく、この島は小さな浮島一つ一つを橋で繋げることで一つで島として形成されており、街というよりは集落に近いと説明された。
そのため、この集落の長は酋長(しゅうちょう)と呼ばれている。
そんな説明をブライトがしていると、遅れてマティアスも欠伸をしながら降りてきた。
「ようやく着いたのね。ていうか、ヒトが少ない気がするのは私だけかしら?」
マティアスに言われてみると、確かに集落に住むヒトが全然見当たらなかった。
普通港とは活気があり街人も何人か賑わっているはずなのだが、ここには誰1人としていなかった。
「妙だな、いつもなら外のヒト珍しさに何人かは見物に来ているはずなんだが……。これも思念の影響か?」
ブライトは周辺に散在する木材の欠片や壁の傷を見ながら一騒動あったのだろうと推測した。
「少しいいか?さっきっから気になる事があるのだが……」
ヴェイグは先程から存在感を遠慮なく発揮している岩山を指差した。
「あの山は何なんだ?普通の山とは形が違うようだが……」
「あぁ、あれか?あれは元々山じゃねぇんだ。1年前まではここらの島と同じ高さだったんだが、急に隆起したんだ。ちなみにあそこには女王貝っていう集落のシンボルが祀られててな?満月の日に祈りを捧げると願い事が叶うって言われてんだ」
「ちょっと待ってください?女王貝って確か……」
ブライトが女々しいこと言っちまったぜと照れている傍らでアニーはディスカバリー図鑑を開いた。
そして迷うことなくページをめくると、一つの項目を指差した。
「あった……。これですよね!?」
アニーが開いたページには確かに女王貝と書かれた文字の下に写真が載せられていた。
そして、それをワールドマップと照らし合わせるとそのディスカバリーは地図の遥か南東の隅に点となって記されていた。
「今私達がいるのって、ここってことですよね?」
「おぉそうだな。改めてみるとちっせぇな〜」
「どうりで遠い訳だぜ〜」
ブライトは眼を細めながら地図を眺め、ティトレイは肩をグルグルとまわした。
すると、ルルもその地図を覗き込んだ。
「女王貝を知ってるってことは、一度来たことあったの?」
「あぁ。1年前、空を飛べるやつが仲間にいてな。そいつと一緒にディスカバリーを探している時にここに来たようだ」
(1年前って、世界が大変な時に何やってたんだよ……。しかもこんな所まで飛ばされて、そいつ疲れなかったのか?)
ジークはディスカバリーブックを見て懐かしむヴェイグ達をジト目で眺めながら心の中で突っ込んだ。
「そういえば誰かが龍を見たって言ってたのも調度1年前だったよね?あれってもしかしてヴェイグ達だったんじゃない?」
それを聞いた瞬間、マティアスはジンの胸倉を掴んだ。
「龍を見たって本当なの!?どんなのだった!?」
「し、知らないよ……ただの噂だし……」
マティアスは「そう」と短く呟き、ジンを離した。
ジークはジンに駆け寄り、ジンの安否を確認した後マティアスを睨んだ。
しかしブライトがジークの視界を遮る。
「いろいろと話したいことや聞きたいこともあるだろうが後回しだ。今は俺とユージーンの都合を優先させてもらう。文句ねぇよな?」
ブライトを見るとえらく毛並みが逆立っていた。
表情には出さないが思念に必死に耐えているのだろう。
ユージーンも今は冷静だが彼は思念が浄化される瞬間まで平静を取り繕っていられる強靭な精神の持ち主である。
内心では想像もつかない衝動から必死に耐えているのだろう。
ヴェイグ達は黙って頷くと、ブライトに案内されるまま一同は橋を渡った。
石畳の道を歩き、大人の腰程の高さの欄干が設置されている石橋を渡り、太陽が赤く染まる頃にようやく学校が見えてきた。
「着いたぞ」
「着いたって……もう夕方なんですケド」
そういえば船で聞いた時ブライトは夕方頃に着くと言っていたが、それは目的地に着くのが夕方だったのかと、ヴェイグは納得した。
最早文句の一つも言う気になれないフィオナは、想像していたよりも小さく木製で造られたアーチの校門らしきものに寄りかかっていると、グラウンドより箒を持った栗色の女性が歩み寄ってきた。
「あの……どうかされましたか?」
「リ、リノア先生!?」
この人がブライトの話しに出てきたリノアという人らしく、ブライトは何故か慌てたが彼女は微笑みながら首を傾げ、それに伴って豊満な胸が少し揺れた気がした。
ブライトは一回咳払いをしてから何とか平静を取り繕った。
「リノア先生は大丈夫だったんですか?ここまで来る間にあちこちで暴動が起きたような跡がありましたが……」
「あ…はい、私は平気でした!でも学校が……」
リノアが悲しそうな目で見る目線の先には全ての窓のガラスが割れた一回建ての木造校舎があった。
「先日の朝学校に来たら生徒達が喧嘩していたんです。なんとか私とイーリスちゃんで止めたんですけど、落ち着いたら今度は合わせる顔がないような事を言ってみんなお家へ帰ったままそれきりなんです……」
「先生!イーリスは無事なんですか!?」
突然ジンが血相を変えて訊ねたため、ヴェイグ達は驚いたがそれまで悲しそうな表情をしていたリノアは一変して笑顔へと表情を変えた。
「うん、傷一つ無いよ?さっき酋長さんに呼ばれていたみたいだから今は酋長さんの所にいるんじゃないかな?」
ジンはそれを聞いて胸を撫で下ろすと、ブライトは舌打ちをした。
「酋長の所だと通り過ぎちまったな……。俺達も酋長の所へ行ってみます。リノア先生、何が起こるか分かりませんから十分注意してください。それと外出もなるべく控えて。生徒のことは後で俺に任せてください」
ブライトはベラベラとリノアに注意を促すと、彼女は一つ一つに「はい」と笑顔で返した。
「ブライト先生?あんまり長くお話しているとお仲間が待ちくたびれてしまいますよ?」
ブライトが後ろを振り向くと、全員壁に寄りかかるか地面に座り込むかしていた。
「ルルちゃんまた新しい友達ができたんだね?後で先生にも紹介してね?」
ルルが元気良く返事をすると、リノアに別れを告げ一同は酋長の家に向かうために来た道を引き返した。
「ふぅ〜ん?貴方もヒト並みに敬語を使えるのねぇ?」
「う、うるせぇ!!俺だって教師だ、敬語くらい使えなくてどうする!?」
マティアスが茶化すように言うとブライトは目を逸らしながら反論し、その新鮮な態度にマティアスは更に追い討ちをかけるように「ふぅ〜ん?」と言いながら彼の周囲をウロチョロした。
恐らく今のブライトにこのような態度が許されるのはマティアスだけであろう。
そのため道案内はジークに任せ、マオは他の話題を振った。
「さっきリノア先生が喧嘩を止めたって言ってたけど、何か特別なフォルスを持ってるの?だって思念に取り付かれたヒトの心を惹くのってとっても大変なことなんだよ?」
1年前、各地の村や街で人々が争うのを必死に止めたのをマオは思い出しながら言った。
一度思念に取り付かれてしまったヒトは、他人の言葉に耳をかさず同族のみが仲間だと信じ、その他を除外しようとしていた。
今回も同様の事が起きているのは間違いない。
「リノア先生のフォルスは慈愛のフォルスだから、少しは関係あるかもね。先生って優しいから怒っても全然恐くないんだけど、なんか怒らせたら悪いっていう気分になるんだよね」
「なるほどね。それで貴方はそんなリノア先生に惚れてしまった訳ね?見かけによらず純粋ですこと」
マティアスはオホホホホと笑い、更にブライトを茶化した。
「うっせぇな!別に…惚れてねぇよ……。確かに?同業者として尊敬は……してるがな?第一!リノア先生はヒューマだぞ!先生にとっても迷惑だろうが……」
それを聞いてヒルダは指を唇に当てた。
「あら、ジークのようなハーフがいるということはこの集落は異族間の恋愛は禁止されていないんでしょう?だったら拒む必要は無いと思うのだけれど?」
「……この集落は見ての通りコミュニティが狭いからな。大陸のように街と街との間でヒトの入れ替わりがあれば別だが、出会いが少ない分ガジュマとかヒューマとか気にしていられなくなんだよ。そういった意味ではこの集落は良い所だと思う」
ブライトがしみじみと語っていると、他の橋とは違い広さはこれまでの橋の3本分はあり、多彩な色のガラスで装飾された欄干のある橋の前まで来た。
そしてその橋の先には宮殿のような建物が見えた。
「あれが酋長の家なのか?」
ユージーンが訊ねると、ジークは頷いた。
酋長というとヴェイグ達にはビビスタの酋長のイメージがあり、勝手に彼の質素な家を重ねていたため驚いてしまった。
一同は大きな橋を渡ると、宮殿の前で足を止めた。
〜続く〜
捜索をしようという意見も出たが、チャリティが何の根拠もないまま放っておいても大丈夫だというので、そのままオーちゃんの捜索は打ち切られ思い出の人物となった。
「てな訳だ」
ブライトはここまで昔話を話し終わると、全員ジークを見た。
「あんた、変わりすぎじゃない?」
ヒルダはジト目で言うと、ジークは肘を自分の太股についた。
「どこがだよ?つうか、ルル。そんなところじゃ寒いだろ?隣来いよ」
ジークは隣に座っているジンを押しのけたが対面でマオの隣に座っているルルはそっぽを向いた。
「私はここで良いの!」
その様子を見て一同は今ブライトの話に出てきたジークとルルが、現在の2人とあまりにもかけ離れているため全員ブライトを疑った。
「お、俺は嘘は言ってねぇぞ?ここまで話したんだからルルも思い出しただろ?」
ブライトは冷や汗をかきながらルルに確認したが、彼女は相変わらず眉間にシワを作っていた。
「思い出したような……そうでもないような?」
「あれだけ振り回しておいて忘れるなんて、よっぽどあの時兄さんに褒められたのが―――」
自分のポジションを死守することができたジンが笑いながら言っている途中、ルルの伸ばした如意棒に鳩尾を突かれ、後ろにひっくり返ってしまった。
それをジークが助け起こしていると、何時の間にやら夜も更けてきたため簡単に食事を済ませ、各々の船室へ戻っていった。
そして翌日の昼頃、船は大きな岩山の前を通りかかった。
その岩山は大陸にある山とは違い三角形になっておらず、プリンのような形をしていた。
エアーズロックをイメージしてもらうと早い。
「な、なんだこりゃ〜……」
船首にいたティトレイが大きな口を開けていると、隣のブライトは腕を組みながらニヤリと笑った。
「そろそろ降りる準備をしろよ?いよいよ到着だ!」
どうやらこの楕円形の岩山がジーク達の故郷である島の目印らしく、ティトレイは急いで全員に降りる準備をするよう伝えに行った。
それから船は岩山をぐるりと旋回し、裏に廻りこむと、そこには縦長の島が繋がっていた。
広さは大体キョグエンからノルゼンまでの大陸を抜き取ったような広さで、形も縦長だった。
先程見た岩山の直径はこれの大体半分である。
港についたヴェイグ達は久しぶりの大地に背伸びをしながら降り立ち、辺りを見回してみた。
すると、空は青く澄み渡っており、街には何本もの河が流れていた。
しかし、それは河ではないらしく、この島は小さな浮島一つ一つを橋で繋げることで一つで島として形成されており、街というよりは集落に近いと説明された。
そのため、この集落の長は酋長(しゅうちょう)と呼ばれている。
そんな説明をブライトがしていると、遅れてマティアスも欠伸をしながら降りてきた。
「ようやく着いたのね。ていうか、ヒトが少ない気がするのは私だけかしら?」
マティアスに言われてみると、確かに集落に住むヒトが全然見当たらなかった。
普通港とは活気があり街人も何人か賑わっているはずなのだが、ここには誰1人としていなかった。
「妙だな、いつもなら外のヒト珍しさに何人かは見物に来ているはずなんだが……。これも思念の影響か?」
ブライトは周辺に散在する木材の欠片や壁の傷を見ながら一騒動あったのだろうと推測した。
「少しいいか?さっきっから気になる事があるのだが……」
ヴェイグは先程から存在感を遠慮なく発揮している岩山を指差した。
「あの山は何なんだ?普通の山とは形が違うようだが……」
「あぁ、あれか?あれは元々山じゃねぇんだ。1年前まではここらの島と同じ高さだったんだが、急に隆起したんだ。ちなみにあそこには女王貝っていう集落のシンボルが祀られててな?満月の日に祈りを捧げると願い事が叶うって言われてんだ」
「ちょっと待ってください?女王貝って確か……」
ブライトが女々しいこと言っちまったぜと照れている傍らでアニーはディスカバリー図鑑を開いた。
そして迷うことなくページをめくると、一つの項目を指差した。
「あった……。これですよね!?」
アニーが開いたページには確かに女王貝と書かれた文字の下に写真が載せられていた。
そして、それをワールドマップと照らし合わせるとそのディスカバリーは地図の遥か南東の隅に点となって記されていた。
「今私達がいるのって、ここってことですよね?」
「おぉそうだな。改めてみるとちっせぇな〜」
「どうりで遠い訳だぜ〜」
ブライトは眼を細めながら地図を眺め、ティトレイは肩をグルグルとまわした。
すると、ルルもその地図を覗き込んだ。
「女王貝を知ってるってことは、一度来たことあったの?」
「あぁ。1年前、空を飛べるやつが仲間にいてな。そいつと一緒にディスカバリーを探している時にここに来たようだ」
(1年前って、世界が大変な時に何やってたんだよ……。しかもこんな所まで飛ばされて、そいつ疲れなかったのか?)
ジークはディスカバリーブックを見て懐かしむヴェイグ達をジト目で眺めながら心の中で突っ込んだ。
「そういえば誰かが龍を見たって言ってたのも調度1年前だったよね?あれってもしかしてヴェイグ達だったんじゃない?」
それを聞いた瞬間、マティアスはジンの胸倉を掴んだ。
「龍を見たって本当なの!?どんなのだった!?」
「し、知らないよ……ただの噂だし……」
マティアスは「そう」と短く呟き、ジンを離した。
ジークはジンに駆け寄り、ジンの安否を確認した後マティアスを睨んだ。
しかしブライトがジークの視界を遮る。
「いろいろと話したいことや聞きたいこともあるだろうが後回しだ。今は俺とユージーンの都合を優先させてもらう。文句ねぇよな?」
ブライトを見るとえらく毛並みが逆立っていた。
表情には出さないが思念に必死に耐えているのだろう。
ユージーンも今は冷静だが彼は思念が浄化される瞬間まで平静を取り繕っていられる強靭な精神の持ち主である。
内心では想像もつかない衝動から必死に耐えているのだろう。
ヴェイグ達は黙って頷くと、ブライトに案内されるまま一同は橋を渡った。
石畳の道を歩き、大人の腰程の高さの欄干が設置されている石橋を渡り、太陽が赤く染まる頃にようやく学校が見えてきた。
「着いたぞ」
「着いたって……もう夕方なんですケド」
そういえば船で聞いた時ブライトは夕方頃に着くと言っていたが、それは目的地に着くのが夕方だったのかと、ヴェイグは納得した。
最早文句の一つも言う気になれないフィオナは、想像していたよりも小さく木製で造られたアーチの校門らしきものに寄りかかっていると、グラウンドより箒を持った栗色の女性が歩み寄ってきた。
「あの……どうかされましたか?」
「リ、リノア先生!?」
この人がブライトの話しに出てきたリノアという人らしく、ブライトは何故か慌てたが彼女は微笑みながら首を傾げ、それに伴って豊満な胸が少し揺れた気がした。
ブライトは一回咳払いをしてから何とか平静を取り繕った。
「リノア先生は大丈夫だったんですか?ここまで来る間にあちこちで暴動が起きたような跡がありましたが……」
「あ…はい、私は平気でした!でも学校が……」
リノアが悲しそうな目で見る目線の先には全ての窓のガラスが割れた一回建ての木造校舎があった。
「先日の朝学校に来たら生徒達が喧嘩していたんです。なんとか私とイーリスちゃんで止めたんですけど、落ち着いたら今度は合わせる顔がないような事を言ってみんなお家へ帰ったままそれきりなんです……」
「先生!イーリスは無事なんですか!?」
突然ジンが血相を変えて訊ねたため、ヴェイグ達は驚いたがそれまで悲しそうな表情をしていたリノアは一変して笑顔へと表情を変えた。
「うん、傷一つ無いよ?さっき酋長さんに呼ばれていたみたいだから今は酋長さんの所にいるんじゃないかな?」
ジンはそれを聞いて胸を撫で下ろすと、ブライトは舌打ちをした。
「酋長の所だと通り過ぎちまったな……。俺達も酋長の所へ行ってみます。リノア先生、何が起こるか分かりませんから十分注意してください。それと外出もなるべく控えて。生徒のことは後で俺に任せてください」
ブライトはベラベラとリノアに注意を促すと、彼女は一つ一つに「はい」と笑顔で返した。
「ブライト先生?あんまり長くお話しているとお仲間が待ちくたびれてしまいますよ?」
ブライトが後ろを振り向くと、全員壁に寄りかかるか地面に座り込むかしていた。
「ルルちゃんまた新しい友達ができたんだね?後で先生にも紹介してね?」
ルルが元気良く返事をすると、リノアに別れを告げ一同は酋長の家に向かうために来た道を引き返した。
「ふぅ〜ん?貴方もヒト並みに敬語を使えるのねぇ?」
「う、うるせぇ!!俺だって教師だ、敬語くらい使えなくてどうする!?」
マティアスが茶化すように言うとブライトは目を逸らしながら反論し、その新鮮な態度にマティアスは更に追い討ちをかけるように「ふぅ〜ん?」と言いながら彼の周囲をウロチョロした。
恐らく今のブライトにこのような態度が許されるのはマティアスだけであろう。
そのため道案内はジークに任せ、マオは他の話題を振った。
「さっきリノア先生が喧嘩を止めたって言ってたけど、何か特別なフォルスを持ってるの?だって思念に取り付かれたヒトの心を惹くのってとっても大変なことなんだよ?」
1年前、各地の村や街で人々が争うのを必死に止めたのをマオは思い出しながら言った。
一度思念に取り付かれてしまったヒトは、他人の言葉に耳をかさず同族のみが仲間だと信じ、その他を除外しようとしていた。
今回も同様の事が起きているのは間違いない。
「リノア先生のフォルスは慈愛のフォルスだから、少しは関係あるかもね。先生って優しいから怒っても全然恐くないんだけど、なんか怒らせたら悪いっていう気分になるんだよね」
「なるほどね。それで貴方はそんなリノア先生に惚れてしまった訳ね?見かけによらず純粋ですこと」
マティアスはオホホホホと笑い、更にブライトを茶化した。
「うっせぇな!別に…惚れてねぇよ……。確かに?同業者として尊敬は……してるがな?第一!リノア先生はヒューマだぞ!先生にとっても迷惑だろうが……」
それを聞いてヒルダは指を唇に当てた。
「あら、ジークのようなハーフがいるということはこの集落は異族間の恋愛は禁止されていないんでしょう?だったら拒む必要は無いと思うのだけれど?」
「……この集落は見ての通りコミュニティが狭いからな。大陸のように街と街との間でヒトの入れ替わりがあれば別だが、出会いが少ない分ガジュマとかヒューマとか気にしていられなくなんだよ。そういった意味ではこの集落は良い所だと思う」
ブライトがしみじみと語っていると、他の橋とは違い広さはこれまでの橋の3本分はあり、多彩な色のガラスで装飾された欄干のある橋の前まで来た。
そしてその橋の先には宮殿のような建物が見えた。
「あれが酋長の家なのか?」
ユージーンが訊ねると、ジークは頷いた。
酋長というとヴェイグ達にはビビスタの酋長のイメージがあり、勝手に彼の質素な家を重ねていたため驚いてしまった。
一同は大きな橋を渡ると、宮殿の前で足を止めた。
〜続く〜
■作者メッセージ
―――オマケ―――
エトス「・・・ここは?」
ロンデリーネ「クレスタという村よ」
メル「ここにスカウトするバイトの子がいるの?」
ロンドリーネ「えぇ。ていうか、あそこにいる子がそうよ?お〜い、ちょっとそこのキミ〜!!」
ロニ「何だいお姉さん?けしからん体をしてますね〜。逆ナンは結構だが、俺としてはこう、スカートのほうが好みかな?」
ロンドリーネ「死ね」
エトス「ぁあっ!見ず知らずの変体さんの顔がつぶれたアンパンみたいになっちゃった!!」
カイル「ロニ!一体何があったんだ!?顔がまるでつぶれたアンパンみたいじゃないか!!」
ロンドリーネ「メル、この子が今回スカウトする子よ」
カイル「へ?」
メル「あの・・・もしよろしければ私と一緒に働いてくれませんか?」
カイル「ふざけるな!親友をつぶれたアンパンにしたやつの言うことなんか聞けるもんか!大体、俺には将来英雄になるっていう夢があるんだ!」
エトス「いやそれ職業じゃないから・・・」
ロンドリーネ「う〜ん、キミなら絶対ウェイターの仕事に向いていると思ったんだけどな〜・・・」
カイル「ウェイター・・・。何だ?なんか懐かしい響きがする・・・。そう、まるで第二期的な何かを!!」
ロンドリーネ「ちなみに今ならギャラとしてこれだけ出しちゃう☆」
カイル「なっ!!これだけあればチビ達は一生アップルグミを食べて暮らしていけるじゃないか!!」
エトス「アップルグミだけで食べていけるの?」
カイル「分かったよ!俺やるよ!!男性恐怖症の人とかに殴られるのは嫌だけど、俺頑張るよ!」
ロンドリーネ「まぁ、テイルズに男性恐怖症のキャラは今のところいないから大丈夫だとは思うけど・・・。私はロンドリーネ。これからロディって呼んでね?」
メル「私はメル。よろしくね!」
カイル「こちらこそよろしく!ていうか君、小さいね」
メル「ちっちゃくないよッ!!」
ロンドリーネ「さっ、次行くわよ次!」
エトス「やれやれ・・・」
こうしてカイルを加えた3人と1匹は眩い光に包まれていった。
〜続いたら良いな〜
そんな訳でオマケ第2話でした!
ちょいとここで本編の補足を・・・。
ジーク達の集落まで来ましたが、この集落の名前は恐らく次回あたりに明かされるはずなのでもう暫くお待ちください。
別になかなか明かされないからといって特に深い意味はなく、ただ明かすタイミングがなかっただけなので、それだけご了承ください。
ちなみにリノアはリノアハピネスで覚えると覚えやすいのは内緒の話です。
あっ、元ネタは違いますよ?
ではまた〜
エトス「・・・ここは?」
ロンデリーネ「クレスタという村よ」
メル「ここにスカウトするバイトの子がいるの?」
ロンドリーネ「えぇ。ていうか、あそこにいる子がそうよ?お〜い、ちょっとそこのキミ〜!!」
ロニ「何だいお姉さん?けしからん体をしてますね〜。逆ナンは結構だが、俺としてはこう、スカートのほうが好みかな?」
ロンドリーネ「死ね」
エトス「ぁあっ!見ず知らずの変体さんの顔がつぶれたアンパンみたいになっちゃった!!」
カイル「ロニ!一体何があったんだ!?顔がまるでつぶれたアンパンみたいじゃないか!!」
ロンドリーネ「メル、この子が今回スカウトする子よ」
カイル「へ?」
メル「あの・・・もしよろしければ私と一緒に働いてくれませんか?」
カイル「ふざけるな!親友をつぶれたアンパンにしたやつの言うことなんか聞けるもんか!大体、俺には将来英雄になるっていう夢があるんだ!」
エトス「いやそれ職業じゃないから・・・」
ロンドリーネ「う〜ん、キミなら絶対ウェイターの仕事に向いていると思ったんだけどな〜・・・」
カイル「ウェイター・・・。何だ?なんか懐かしい響きがする・・・。そう、まるで第二期的な何かを!!」
ロンドリーネ「ちなみに今ならギャラとしてこれだけ出しちゃう☆」
カイル「なっ!!これだけあればチビ達は一生アップルグミを食べて暮らしていけるじゃないか!!」
エトス「アップルグミだけで食べていけるの?」
カイル「分かったよ!俺やるよ!!男性恐怖症の人とかに殴られるのは嫌だけど、俺頑張るよ!」
ロンドリーネ「まぁ、テイルズに男性恐怖症のキャラは今のところいないから大丈夫だとは思うけど・・・。私はロンドリーネ。これからロディって呼んでね?」
メル「私はメル。よろしくね!」
カイル「こちらこそよろしく!ていうか君、小さいね」
メル「ちっちゃくないよッ!!」
ロンドリーネ「さっ、次行くわよ次!」
エトス「やれやれ・・・」
こうしてカイルを加えた3人と1匹は眩い光に包まれていった。
〜続いたら良いな〜
そんな訳でオマケ第2話でした!
ちょいとここで本編の補足を・・・。
ジーク達の集落まで来ましたが、この集落の名前は恐らく次回あたりに明かされるはずなのでもう暫くお待ちください。
別になかなか明かされないからといって特に深い意味はなく、ただ明かすタイミングがなかっただけなので、それだけご了承ください。
ちなみにリノアはリノアハピネスで覚えると覚えやすいのは内緒の話です。
あっ、元ネタは違いますよ?
ではまた〜