第14話『不心と心展』
一同は病院へと向かう途中、意外な人物と出会った。
「あ…兄さん」
病院へ向かうには商店街を通る必要があるらしく、そこでは先程別れたはずのジークがイーリスと共に買い物をしていた。
「こんなところで何やってんだ?」
ブライトが訊ねると、ジークは口を尖らせながら答えた。
「晩飯の買い物に決まってんだろうが。つうか、俺は何人分作れば良いんだ?」
「お前は自分家の分、4人分作ればそれで良い。残りは俺の家に泊めるからよ」
どうやらこの集落に宿屋はないらしい。
「分かった。それと……」
ジークはおもむろにカインに近付くと彼の肩に腕を回し、顔を近づけた。
「余計なことすんなよ?」
「うん……分かってる」
カインが頷くとジークは再び買い物に戻り、一同も再び病院を目指した。
「ねぇカイン君。どうしてジーク兄さんは来ちゃダメなの?」
商店街の明るい喧騒を抜け、街灯がほのかに照らす夜道を歩きながらルルが問うと、カインは言い難そうに顔を顰めた。
「ルルの言うとおりだよ。折角兄さんとヴィーナさんが会うチャンスだったのに……」
ジンの話しによるとヴィーナはチャリティが死んでからというもの、ジークとは会っていないらしい。
カインは絞り出すようにして何とか声を出した。
「……だからだよ。ジーク君とヴィーナさんはまだ会わせちゃけないんだ……」
ルルは更に何でと聞きたかったが病院に着いてしまい、それどころではなくなってしまった。
病院は一階建てになっており、中に入るとすぐに受付があり、ナースはジンとルルの姿を見るやすぐに受付を通してくれた。
慣れた足取りで病室へ向かい、スライド式の扉を開くとそこには一つのベッドに上半だけ起こした犬のガジュマとその傍らにあるイスに座る青髪のヴィーナの姿があった。
ヴィーナはジン達の姿を見るとイスから立ち上がり、驚いたような表情を浮かべていた。
「あんた達、帰ってたの?」
「うん、さっき帰ってきたとこ」
ジンがヴィーナに挨拶をしている脇を通りぬけ、ルルはベッドに寄り添った。
「お父さんただいま!」
「おうお帰り!相変わらずうるせぇなぁ〜」
どことなくブライトと似た口調で話す犬のガジュマはどうやらルル達の父親のようで、とても優しそうな笑みを浮かべていた。
「ブライトも、俺の息子達が世話をかけたな」
「俺は教師として当然のことをしただけで、そんな大したことは……」
一方のブライトは無駄に恐縮していた。
リノアの時も敬語は使っていたがあの時とは違う、まるで憧れの人物と対面したかのような、そんな印象を感じさせた。
そんなやり取りを行っているうちに全員病室に入ると、足の踏み場もないほどに混雑した。
「お、大勢で来たのね……」
ヴィーナが呆れていると、ジンが全員を紹介した。
「は〜、あんたらがユリスをねぇ。なんつうか、英雄ってガキばっかなんだな」
それを聞いてアニーとティトレイが怒りそうになったが、ヒルダが手を刺し伸ばすことで制した。
その時2人はヒルダの表情が緩んでいるように見えたが、それは黙っていることにした。
「そういえば……」
病室内が普段より何倍も賑わう中でヴィーナは囁くような声を出しながら目を泳がせた。
「ジークはどうしたの?」
「ジークなら家で晩飯の準備をしている」
ヴェイグは腕を組みながら答えると、ヴィーナは胸に手をあてて安心するような仕草を見えた。
「そう、良かった。今あの子と会ったら私何を言ってしまうか分からないもの……」
ブライトの話しからヴィーナはジーク達にとって姉のような存在だと聞いていた。
勿論ヴィーナもジン達のことを慕っているのはこの病室に来たことで分かった。
しかし、ジークに会うことは拒否しているように見え、兄妹であるジン達もヴィーナの発言を聞いて困惑している。
「ジークが晩飯の用意をしてるんじゃ早く帰ってやったらどうだ?病院にいたって面白くねぇだろ」
その場に満ち始めた陰気な空気を払うかのようにジンの父親は大きな口を開けて笑いながら言う。
「そうだね!お父さん、私達また旅に出てくるけど寂しがっちゃダメだよ?」
「てめぇこそ、ジークに迷惑かけんじゃねぇぞ?」
父親が頭を撫でるとルルは頬を膨らませながら「迷惑をかけてくるのはジーク兄さんのほうだよ……」と言って目を逸らした。
そのままルルは不機嫌のまま病室を出て行くと、ジンも慌ててそれを追いかけるように出て行く。
そして、他の者もそれに続いて出ていこうとしたが、父親に呼び止められた。
「すまんが、ジークのことをよろしく頼む」
振り向くと、そこには頭を下げた父親の姿があった。
突然頭を下げられたことに当然困惑したが、ユージーンは平然と質問を投げた。
「ジークのこととはどういう意味だ?ジンやルルのことはどうでも良い訳ではあるまい」
「勿論ジンやルルのことも心配だ。だがジークはチャリティが死んでから特に悩み始めていやがる。チャリティが生きてた頃はルルが迷惑だと思う程あいつはルルに構うヤツじゃなかったからな。だから、あいつがあんたらに悩みを打ち明けてきたら真剣に聞いてやってくんねぇか?」
「へっ、任せとけよ親父さん!こう見えても俺は相談を受けるのが得意なんだぜ?」
ティトレイは拳を突き上げながら胸を張ったが、その拳は何に使うつもりなのかとヴェイグ達は疑問を抱いた。
だがそれを聞いて安心したのかジークの父親は再び豪快な笑顔を見せ、反対にヴィーナは俯いた。
こうして一同は病室を後にすると、再び満点の夜空の下へと出た。
「あっ、ティトレイさん?相談に乗るっていっても喧嘩はダメですからね?」
「ダメなのか!?」
アニーはからかうように言うがティトレイはよっぽど驚いたのか背中を仰け反らせた。
「当たり前です!誰が治療すると思ってるんですか」
アニーは溜息をつきながらカインを見た。
「ん?僕が治療しようか?」
「いや、そういう問題ではあるまい……」
ユージーンはカインを諭した後、顎に手を当てしばらく考える素振りを見せた。
「カイン、先程お前はジークを病院に近付けさせまいとしていたが、あれはやはりヴィーナと関係しているのか?」
「あ……うん。まぁね……」
カインは曖昧な返事をすると、ジンが詰め寄ってきた。
「どういうことだよカイン君?」
考えていることは皆同じようで、全員の視線がカインに集中している。
ただ、マティアスだけは月を眺めて「今日は半月なのね」と呟いてはいたが。
カインはよっぽど言いたくないのか暫く口を噤(つぐ)んでいたが、観念したのかゆっくりと口を開いた。
「……ちょっと前の僕と一緒だよ。とても大切なヒトを理不尽に失った悲しみとどうしようもない苛立ちを誰かにぶつけられずにはいられないんだ。ヴィーナさんはさすがに僕と違って馬鹿げたことを考えないし、状況が分かってるみたいだけど矛先はやっぱり僕達と一緒なんだよ」
「『僕達』って他にもジークを恨んでいるヒトがいるような言い方ね」
ヒルダはカードを見つめながら言うと、カインは頷いた。
「チャリティさんを慕っていたのは僕とヴィーナさんだけじゃないからね。それに、1回この集落全部を粉々にしたジーク君のフォルスを恐がっているヒトだって絶対にいる。今のジーク君がどんなことになっているかも知らないくせに」
最後にカインは力の限り嫌味を込めた。
「……そうか」
ヴェイグは嘗(かつ)ての自分を重ねながら一言呟いた。
「まぁ、なんだ?こんな暗い話しはここまでだ!親父さんに頼まれたように、俺達はジークが相談を持ちかけてきたら全力で応えられるようにしようぜ?それよか今は飯だ飯!!」
ブライトが後ろ髪をかきながら言うと、フィオナが強く賛成した。
「あれ?そういえば、さっき先生兄さんに4人分の料理を用意しとけって言ったよね?俺達兄妹は今3人なのに1人多くない?」
ジンは冷静に言うと、ブライトはこめかみを押さえた。
「そういやそうだったな。いつもの癖でつい4人だと思っていたんだが……仕方ねぇ。じゃんけんで負けたヤツがフリィース家行きな!」
家に来るのは罰ゲームなのかとジンとルルが思うなかで結局フィオナが行くことになり、フィオナを加えたフリィース兄妹は途中で別れ家に向かった。
一方のジークは料理の仕上げに入っており味見をしていた。
「……こんなもんだろ。つうか4人前作ったものの、今日家にいるのって3人なんじゃ……」
完成した後に致命的な事にジークが気付いていると、ジンが扉を開き3人が帰ってきた。
「お邪魔します」
「……何でフィオナも居るんだよ?」
「じゃんけんで負けたのよ。ていうか、途中で今日は3人分じゃないか〜とか言って3人前の料理しか作ってないとかいうふざけたオチじゃないでしょうね?」
「ちゃんと4人前作っちまったから安心しろよ」
ジークは罰ゲーム扱いかよと心の中で呟きながら3人をテーブルへと促すと、早速出来たての料理を運んだ。
今夜の献立はシチューのようで、フィオナはこれがジークの料理かとテーブルの上の料理をしげしげと見つめた。
「毒は入ってないから安心しろよ」
「そ、そんなこと思ってないわよ!!ただ……普通に美味しそうだなって思っただけで……」
フィオナは食に関しては純心なのか、本当に申し訳なさそうに弱々しく呟いた。
そしてジークが席につき、食べようと思ったがフィオナ以上の強い視線でシチューを睨むルルの様子がジンには気になってしょうがなかった。
「……どうしたの?ルル。シチューは大好物じゃなかったっけ?」
「ニンジンが……大きい」
ルルに言われて改めてシチューを見てみると確かにニンジンがブロック状になり沈んでいた。
だがこれは一般家庭のニンジンのサイズであり、元々微塵切りやそれより一回り大きいサイズのニンジンの入ったフリィース家のカレーやシチューが異常だっただけである。
「ルルもそろそろ好き嫌いは直さないとまずいだろ?」
「ジーク兄さんだって人見知りが直ってないくせに……」
そう言われるとジークは何も言い返せなかったがフィオナの腹が限界の鐘を鳴らしたため4人は食事を始めた。
「え?嘘?これ美味しい……」
フィオナはシチューを含んだ頬を押さえながらまたもう一口と進めた。
「……そうか?」
「めちゃくちゃ美味しいわよ!これなら毎日食べても良いかも」
「……そっか」
満面の笑みで食べるフィオナを見てジークもつい微笑んでしまう。
そんな時だった。
彼が自分の気持ちに気付いたのは。
(そうか、俺はフィオナのことを……)
「何言ってんのフィオナ。ニンジンの味しかしないよ」
顔をクシャクシャにしながら食べるルルを見て、ジークは溜息をついた。
「そっか……」
1人の青年の心に新しい気持ちが芽生えた夜だった。
長い夜はもう少し続く。
〜続く〜
【イーリスがキャラクター名鑑(上)に登録されました】
【ケナードがキャラクター名鑑(上)に登録されました】
「あ…兄さん」
病院へ向かうには商店街を通る必要があるらしく、そこでは先程別れたはずのジークがイーリスと共に買い物をしていた。
「こんなところで何やってんだ?」
ブライトが訊ねると、ジークは口を尖らせながら答えた。
「晩飯の買い物に決まってんだろうが。つうか、俺は何人分作れば良いんだ?」
「お前は自分家の分、4人分作ればそれで良い。残りは俺の家に泊めるからよ」
どうやらこの集落に宿屋はないらしい。
「分かった。それと……」
ジークはおもむろにカインに近付くと彼の肩に腕を回し、顔を近づけた。
「余計なことすんなよ?」
「うん……分かってる」
カインが頷くとジークは再び買い物に戻り、一同も再び病院を目指した。
「ねぇカイン君。どうしてジーク兄さんは来ちゃダメなの?」
商店街の明るい喧騒を抜け、街灯がほのかに照らす夜道を歩きながらルルが問うと、カインは言い難そうに顔を顰めた。
「ルルの言うとおりだよ。折角兄さんとヴィーナさんが会うチャンスだったのに……」
ジンの話しによるとヴィーナはチャリティが死んでからというもの、ジークとは会っていないらしい。
カインは絞り出すようにして何とか声を出した。
「……だからだよ。ジーク君とヴィーナさんはまだ会わせちゃけないんだ……」
ルルは更に何でと聞きたかったが病院に着いてしまい、それどころではなくなってしまった。
病院は一階建てになっており、中に入るとすぐに受付があり、ナースはジンとルルの姿を見るやすぐに受付を通してくれた。
慣れた足取りで病室へ向かい、スライド式の扉を開くとそこには一つのベッドに上半だけ起こした犬のガジュマとその傍らにあるイスに座る青髪のヴィーナの姿があった。
ヴィーナはジン達の姿を見るとイスから立ち上がり、驚いたような表情を浮かべていた。
「あんた達、帰ってたの?」
「うん、さっき帰ってきたとこ」
ジンがヴィーナに挨拶をしている脇を通りぬけ、ルルはベッドに寄り添った。
「お父さんただいま!」
「おうお帰り!相変わらずうるせぇなぁ〜」
どことなくブライトと似た口調で話す犬のガジュマはどうやらルル達の父親のようで、とても優しそうな笑みを浮かべていた。
「ブライトも、俺の息子達が世話をかけたな」
「俺は教師として当然のことをしただけで、そんな大したことは……」
一方のブライトは無駄に恐縮していた。
リノアの時も敬語は使っていたがあの時とは違う、まるで憧れの人物と対面したかのような、そんな印象を感じさせた。
そんなやり取りを行っているうちに全員病室に入ると、足の踏み場もないほどに混雑した。
「お、大勢で来たのね……」
ヴィーナが呆れていると、ジンが全員を紹介した。
「は〜、あんたらがユリスをねぇ。なんつうか、英雄ってガキばっかなんだな」
それを聞いてアニーとティトレイが怒りそうになったが、ヒルダが手を刺し伸ばすことで制した。
その時2人はヒルダの表情が緩んでいるように見えたが、それは黙っていることにした。
「そういえば……」
病室内が普段より何倍も賑わう中でヴィーナは囁くような声を出しながら目を泳がせた。
「ジークはどうしたの?」
「ジークなら家で晩飯の準備をしている」
ヴェイグは腕を組みながら答えると、ヴィーナは胸に手をあてて安心するような仕草を見えた。
「そう、良かった。今あの子と会ったら私何を言ってしまうか分からないもの……」
ブライトの話しからヴィーナはジーク達にとって姉のような存在だと聞いていた。
勿論ヴィーナもジン達のことを慕っているのはこの病室に来たことで分かった。
しかし、ジークに会うことは拒否しているように見え、兄妹であるジン達もヴィーナの発言を聞いて困惑している。
「ジークが晩飯の用意をしてるんじゃ早く帰ってやったらどうだ?病院にいたって面白くねぇだろ」
その場に満ち始めた陰気な空気を払うかのようにジンの父親は大きな口を開けて笑いながら言う。
「そうだね!お父さん、私達また旅に出てくるけど寂しがっちゃダメだよ?」
「てめぇこそ、ジークに迷惑かけんじゃねぇぞ?」
父親が頭を撫でるとルルは頬を膨らませながら「迷惑をかけてくるのはジーク兄さんのほうだよ……」と言って目を逸らした。
そのままルルは不機嫌のまま病室を出て行くと、ジンも慌ててそれを追いかけるように出て行く。
そして、他の者もそれに続いて出ていこうとしたが、父親に呼び止められた。
「すまんが、ジークのことをよろしく頼む」
振り向くと、そこには頭を下げた父親の姿があった。
突然頭を下げられたことに当然困惑したが、ユージーンは平然と質問を投げた。
「ジークのこととはどういう意味だ?ジンやルルのことはどうでも良い訳ではあるまい」
「勿論ジンやルルのことも心配だ。だがジークはチャリティが死んでから特に悩み始めていやがる。チャリティが生きてた頃はルルが迷惑だと思う程あいつはルルに構うヤツじゃなかったからな。だから、あいつがあんたらに悩みを打ち明けてきたら真剣に聞いてやってくんねぇか?」
「へっ、任せとけよ親父さん!こう見えても俺は相談を受けるのが得意なんだぜ?」
ティトレイは拳を突き上げながら胸を張ったが、その拳は何に使うつもりなのかとヴェイグ達は疑問を抱いた。
だがそれを聞いて安心したのかジークの父親は再び豪快な笑顔を見せ、反対にヴィーナは俯いた。
こうして一同は病室を後にすると、再び満点の夜空の下へと出た。
「あっ、ティトレイさん?相談に乗るっていっても喧嘩はダメですからね?」
「ダメなのか!?」
アニーはからかうように言うがティトレイはよっぽど驚いたのか背中を仰け反らせた。
「当たり前です!誰が治療すると思ってるんですか」
アニーは溜息をつきながらカインを見た。
「ん?僕が治療しようか?」
「いや、そういう問題ではあるまい……」
ユージーンはカインを諭した後、顎に手を当てしばらく考える素振りを見せた。
「カイン、先程お前はジークを病院に近付けさせまいとしていたが、あれはやはりヴィーナと関係しているのか?」
「あ……うん。まぁね……」
カインは曖昧な返事をすると、ジンが詰め寄ってきた。
「どういうことだよカイン君?」
考えていることは皆同じようで、全員の視線がカインに集中している。
ただ、マティアスだけは月を眺めて「今日は半月なのね」と呟いてはいたが。
カインはよっぽど言いたくないのか暫く口を噤(つぐ)んでいたが、観念したのかゆっくりと口を開いた。
「……ちょっと前の僕と一緒だよ。とても大切なヒトを理不尽に失った悲しみとどうしようもない苛立ちを誰かにぶつけられずにはいられないんだ。ヴィーナさんはさすがに僕と違って馬鹿げたことを考えないし、状況が分かってるみたいだけど矛先はやっぱり僕達と一緒なんだよ」
「『僕達』って他にもジークを恨んでいるヒトがいるような言い方ね」
ヒルダはカードを見つめながら言うと、カインは頷いた。
「チャリティさんを慕っていたのは僕とヴィーナさんだけじゃないからね。それに、1回この集落全部を粉々にしたジーク君のフォルスを恐がっているヒトだって絶対にいる。今のジーク君がどんなことになっているかも知らないくせに」
最後にカインは力の限り嫌味を込めた。
「……そうか」
ヴェイグは嘗(かつ)ての自分を重ねながら一言呟いた。
「まぁ、なんだ?こんな暗い話しはここまでだ!親父さんに頼まれたように、俺達はジークが相談を持ちかけてきたら全力で応えられるようにしようぜ?それよか今は飯だ飯!!」
ブライトが後ろ髪をかきながら言うと、フィオナが強く賛成した。
「あれ?そういえば、さっき先生兄さんに4人分の料理を用意しとけって言ったよね?俺達兄妹は今3人なのに1人多くない?」
ジンは冷静に言うと、ブライトはこめかみを押さえた。
「そういやそうだったな。いつもの癖でつい4人だと思っていたんだが……仕方ねぇ。じゃんけんで負けたヤツがフリィース家行きな!」
家に来るのは罰ゲームなのかとジンとルルが思うなかで結局フィオナが行くことになり、フィオナを加えたフリィース兄妹は途中で別れ家に向かった。
一方のジークは料理の仕上げに入っており味見をしていた。
「……こんなもんだろ。つうか4人前作ったものの、今日家にいるのって3人なんじゃ……」
完成した後に致命的な事にジークが気付いていると、ジンが扉を開き3人が帰ってきた。
「お邪魔します」
「……何でフィオナも居るんだよ?」
「じゃんけんで負けたのよ。ていうか、途中で今日は3人分じゃないか〜とか言って3人前の料理しか作ってないとかいうふざけたオチじゃないでしょうね?」
「ちゃんと4人前作っちまったから安心しろよ」
ジークは罰ゲーム扱いかよと心の中で呟きながら3人をテーブルへと促すと、早速出来たての料理を運んだ。
今夜の献立はシチューのようで、フィオナはこれがジークの料理かとテーブルの上の料理をしげしげと見つめた。
「毒は入ってないから安心しろよ」
「そ、そんなこと思ってないわよ!!ただ……普通に美味しそうだなって思っただけで……」
フィオナは食に関しては純心なのか、本当に申し訳なさそうに弱々しく呟いた。
そしてジークが席につき、食べようと思ったがフィオナ以上の強い視線でシチューを睨むルルの様子がジンには気になってしょうがなかった。
「……どうしたの?ルル。シチューは大好物じゃなかったっけ?」
「ニンジンが……大きい」
ルルに言われて改めてシチューを見てみると確かにニンジンがブロック状になり沈んでいた。
だがこれは一般家庭のニンジンのサイズであり、元々微塵切りやそれより一回り大きいサイズのニンジンの入ったフリィース家のカレーやシチューが異常だっただけである。
「ルルもそろそろ好き嫌いは直さないとまずいだろ?」
「ジーク兄さんだって人見知りが直ってないくせに……」
そう言われるとジークは何も言い返せなかったがフィオナの腹が限界の鐘を鳴らしたため4人は食事を始めた。
「え?嘘?これ美味しい……」
フィオナはシチューを含んだ頬を押さえながらまたもう一口と進めた。
「……そうか?」
「めちゃくちゃ美味しいわよ!これなら毎日食べても良いかも」
「……そっか」
満面の笑みで食べるフィオナを見てジークもつい微笑んでしまう。
そんな時だった。
彼が自分の気持ちに気付いたのは。
(そうか、俺はフィオナのことを……)
「何言ってんのフィオナ。ニンジンの味しかしないよ」
顔をクシャクシャにしながら食べるルルを見て、ジークは溜息をついた。
「そっか……」
1人の青年の心に新しい気持ちが芽生えた夜だった。
長い夜はもう少し続く。
〜続く〜
【イーリスがキャラクター名鑑(上)に登録されました】
【ケナードがキャラクター名鑑(上)に登録されました】
■作者メッセージ
ども〜!好きな言葉は夢は翼、そして空へのtakeshiです。
最近初登場キャラが縦続きですが、今回はジーク達の父親の登場です。
名前はまだない。
いえ、付ける予定もありませんが・・・。
とりあえずここからジークの本当の戦いが始まります。
こうご期待!!
そして前回記載できなかったのですが、イーリスとケナードもキャラクター名鑑に記載しました;
もう嫌このグダグダ(><)
ではまた〜
最近初登場キャラが縦続きですが、今回はジーク達の父親の登場です。
名前はまだない。
いえ、付ける予定もありませんが・・・。
とりあえずここからジークの本当の戦いが始まります。
こうご期待!!
そして前回記載できなかったのですが、イーリスとケナードもキャラクター名鑑に記載しました;
もう嫌このグダグダ(><)
ではまた〜