第16話『ヒューマとガジュマ』
「諦めろって……何でだよ?」
ジークは努めて冷静を装おうとした。
しかし言葉の端々から動揺が滲んでしまい、それをマティアスは勘付いたのか眉がピクリと動いた。
「なぜ、ですって?それは貴方がハーフであの子がヒューマだからに決まってるじゃない。と言っても、貴方にはしっくりうないでしょうけど……」
マティアスは面倒くさいというように額に手を当てながら一回溜息を吐いてから腰に手を当てた。
「いい?貴方達の言うところの外海ではガジュマとヒューマは結ばれてはいけないという暗黙の掟があるの。どうしてそんなものがあるか分かるかしら?」
「間に生まれたハーフの赤ん坊は安定しないまま死亡するケースが多いからだろ」
ハーフの仕組みについてはジーク自信の経験とブライトによる授業で大体は知っていた。
故にハーフという存在は希少であり、それが4姉弟全員が生存していたという事実が奇跡であったということも。
「この集落で暮らしてきた貴方が知りうる知識としてはそんなものでしょうね。でも私達の世界は違う。私達の世界にとってのハーフは忌み嫌われる存在なのよ」
マティアスの言葉を聞いた刹那、ジークは心臓の音が大きくなるにつれ呼吸ができなくなるような感覚に襲われた。
呼吸の仕方が分からない。
だが呼吸の仕方を思い出す前に脳裏にマティアスの言葉が駆け巡る。
外海ではハーフは忌み嫌われる存在。
以前なら無関係な話で済んだが今は違う。
集落を外海から遮断していたチャリティのフォルスは既に存在せず、外海との交流は盛んになってきている。
そもそも、今ジークがこんな状況におかれても尚心の中にある存在が外海のフィオナである。
彼女もまた、ハーフを嫌っているのだろうか。
ジークの中に不安の渦が渦巻く。
「……何でだよ……何でハーフばっかり疎まれなきゃいけないんだよ……?」
「別にハーフばかりがという事ではないわ。ヒューマはガジュマを、ガジュマはヒューマを特異なものだと思ってる。それでも同じヒトだから上手くやってこれているの。でもハーフはお互いにとっての特異が混ざったもの。だから二つの種族から石を投げられるのよ……」
言われて見ればジークにも思い当たる節はあった。
カインを追うために初めて外海に出た時、船内で異様な数の視線が集中しているような気がしていた。
恐らくアレが異端視の目なのだろう。
そしてバルカ港に着いてからも不信な点はあった。
確かにジークが船から下りる間際に船体を触った瞬間に爆発したものの、その現場を見た者はいない。
にもかかわらず即座に取り押さえられ犯人扱いされるのは横暴というものである。
そのおかげでマオ達と出会えた訳でもあったが……。
「……そうだ、いくらハーフが異端視されてると言ってもヴェイグ達とはこれまで普通に接してきたじゃねぇか」
「それはあいつらが特別なだけ。あいつらは元々ヒルダっていうハーフの仲間がいたでしょ?彼等にとって今更ハーフの1人や2人、仲間になったところで何とも思わないのよ」
マティアスは馬鹿にしたような口調で言った後、再び表情を冷静なものへと戻す。
「でもフィオナは違うわ。確かあの子はラジルダ出身だったわよね?貴方、何故ラジルダが沈んだか知ってる?」
これはブライトの話から天災によるものだと聞いていたが、ヴェイグ達と旅をするようになってからはあれもユリスによるものであると聞いた。
余談ではあるが、フィオナの父親のように勘違いで間違いを起こすヒトがこれ以上現れないようにするためにも、ユリスによる被害を公表する必要があるとも言っていた。
「表向きには天災だとかユリスの所為だとか言われているけど、どちらでもないわ。ラジルダを襲った津波はヒューマとガジュマとの間に起きた抗争による負の思念が呼び起こしたものなのよ」
「待てよ。思念ってユリスが撒き散らしたもんだろ?だったらそれはユリスが原因じゃねぇか」
「だから、その考え方が間違っているのよ。ラジルダの種族間抗争はユリスが出現する前から頻繁に起きていたのよ。そう、フィオナ達は同じヒトのはずのガジュマとヒューマで憎しみ合っていたという訳。ハーフの私達には到底理解できないけどね」
そう、ガジュマとヒューマの両方の血を引くジーク達ハーフにとって、自分達と同じ体を持つヒト同士が種族が違うからと言って争う理由が理解できない。
だが実際に抗争は起きており、ラジルダも確かに沈んでいた。
「てことはフィオナもガジュマやハーフを嫌ってんのか……?」
「断言はしかねるけど、少なくとも彼女が好きになることはないでしょうね」
「そんなの分からねぇだろうが!嫌われてないならまだ……!!」
砕けそうな心を必死に支えながらジークは叫ぶがマティアスの睨むような視線が貫く。
「貴方もしかして……。いいわ、私を騙した褒美として良い事を教えてあげるわ」
マティアスはニヤリと笑うと何時もの不適な笑みを浮かべた。
「どうしてヒルダは角を折ったのか、貴方まだ知らないでしょ?」
確かに気にはなっていたがこれまでなかなか聞く機会がなかった。
しかしあのユリスと激闘を繰り広げたのだ。
恐らくその際に折れてしまったのではと思っていたが、今彼女は「折れた」のではなく「折った」と言った。
つまり自ら折らなくてはならない理由があったのだろう。
マティアスの口がゆっくりと開かれる。
「サンダースピア!」
暗闇の中、一筋の紫電の光がマティアスの背後から走る。
彼女は瞬時に反転すると、龍の片手で紫電を握り潰した。
「あら、ブライトの家で酔い潰れていたのではなかったの?」
「酔い醒ましに少し散歩をしようと思っただけよ」
紫電を放った張本人であるヒルダが月夜に照らされた。
「随分と酒癖の悪い酔っ払いもいたものね」
「私はただ夜風にあたりながら歌を口ずさんでいただけなのだけれど?まぁ、いつの間にかそれが詠唱になっていたのなら、それはきっとこの土地のお酒が舌に合っていたからかしら」
ヒルダはカードを口元に寄せながらクスリと笑い、マティアスも笑みを浮かべた。
「下級導術に詠唱文があるだなんて初耳だわ。よかったらその歌、もう少し聞かせてくれないかしら」
「いいけど、私の歌は高いわよ?」
マティアスは龍のオーラを纏ったまま拳を握り、またヒルダの周りに幾つもの電流が走った。
「お、おい!!」
いつのまにやら一触即発の雰囲気になってしまった2人を見てジークは止めに入ろうと試みたがマティアスは刹那のうちにヒルダとの間を詰めた。
マティアスは鍵爪を振りかぶるがヒルダは微動だにせずに導術を発動をさせるために集中力を高めていた。
そしてマティアスの鍵爪がヒルダの体をとらえた時、その鍵爪はヒルダが纏っていた電流によって弾かれてしまった。
「R(ライトニング)・ローブか……」
先程からヒルダの身体の周囲を走っていた電流の正体を確かめるとジークは安堵し胸を撫で下ろした。
この術はカウンター専用のため攻撃には向かないが、導術士にとっては必要不可欠な術技である。
だがマティアスの接近速度が予想以上に速かったためまだ導術は発動できない。
更にR・ローブは既に発動してしまったため二度目の発動は無い。
マティアスは躊躇(ちゅうちょ)することなく龍の拳を突き出した。
「なっ!?」
ヒルダは導術を発動させるべく、腕をクロスさせる。
一方のマティアスは先程発動したはずのR・ローブに再び弾かれ目を見開いていた。
「ロックバラージ!」
無詠唱で済む下級導術であるロックバラージがマティアスの足元から襲うと彼女は咄嗟に後方へ跳ぶことにより回避した。
しかしロックバラージは斜め前方へと岩つぶてが噴射するためマティアスは触覚を駆使し空中でもう一段高く跳ねた。
そこからマティアスの追撃が来ると予想したジークは瞬時にヒルダの前へと出ると護衛の体勢に入った。
このままでは明らかにヒルダが劣勢である。
しかしマティアスはそのまま着地すると小刻みに震える右手を抑えた。
「まさか、R・ローブを二枚掛けしているとは思わなかったわ。おかげで麻痺して動かないじゃない」
「馬鹿ね。本来なら最初のサンダースピアであんたの腕は吹き飛んでるはずなのよ」
よく見るとヒルダの服が所々焦げている。
R・ローブの二枚掛けという無茶はやはり彼女自身にも影響が出てしまっていた。
そこまでしないと勝てない相手だからこその無茶なのだろうが、普段このような無茶をしないヒルダはジークにとってとても意外だった。
しかしそこまでしてマティアスは麻痺しかしていない。
ジークはリストを締めなおすと再びマティアスを睨んだ。
「ちょっと、そんなに睨まないでくれるかしら。私はただ親切に貴方に忠告をしただけでしょ?」
言うとマティアスは肩の力を抜きながら龍のオーラを消した。
「さすが英雄との実戦は良い刺激になるわ。でもまだランニングも残っているのよね。だからこの続きはまたいつかやりましょ?」
マティアスはウィンクをすると痺れの抜けた右腕を回してから夜の闇へと消えていった。
「……大丈夫か?」
ジークは戸惑いながらヒルダの心配をすると、彼女は服についた焦げ目を払い落としていた。
「まぁ、我ながら無茶したと思うわね」
戦闘の後だというのにこの冷静な口調。
何時もと変わらないヒルダを見てジークは安心した。
「珍しいな」
「何が?」
「お前から喧嘩をしかけるなんてな」
それを聞くとヒルダは腕を組み、ジークに背を向けた。
「私にだって知られたくない事の一つや二つはあるのよ。あんたも長生きしたいならあんまり女の過去を詮索しないようにすることね」
それだけ言い残してヒルダはブライトの家方面へと消えていった。
ヒルダの言った知られたくない事というのは角のことであることは明白である。
更にマティアスへ喧嘩を売ってでも知られたくない事ということはヒルダにとってよっぽどの事なのだろう。
種族間の問題とヒルダの角に何の関係があるのか。
ジークは頭を抱えながら家の中へと戻ると、調度ルルとフィオナが風呂から出てきたところだった。
「あれ?ジーク兄さん、外に出てたの?」
「あぁ……」
「もしかして外から覗こうとしたんじゃ……!!」
「だから妹の入浴なんか興味ねぇっての!!」
ルルに向かってジークが怒鳴ると、広げたタオルを被ったフィオナが後頭部を殴った。
「なに本気で怒ってんのよ。冗談に決まってんでしょ?」
ジークは後頭部を抑えながらフィオナの姿を見た。
確かに大きな耳や尻尾、角等はないが、顔立ちや暖かな手は自分達と変わらない。
もっともジークの手は冷たいが。
「な、なによ?」
「お前さ、自分の過去とかって話せるか?」
「私の過去?前に私はラジルダ出身って言わなかったっけ?それともお父さんの話?もしかして記憶喪失とかそういう話?」
こいつは大丈夫なのかという顔で見てくるフィオナを見てジークは溜息を吐いた。
「お前ってたまに馬鹿だよな……」
その後フィオナの怒号が木霊し、その傍らでルルは満点の笑みを浮かべていたがそれらをジンは苦笑いをしながら傍観していた。
こうして長かった夜が更けていった。
〜続く〜
ジークは努めて冷静を装おうとした。
しかし言葉の端々から動揺が滲んでしまい、それをマティアスは勘付いたのか眉がピクリと動いた。
「なぜ、ですって?それは貴方がハーフであの子がヒューマだからに決まってるじゃない。と言っても、貴方にはしっくりうないでしょうけど……」
マティアスは面倒くさいというように額に手を当てながら一回溜息を吐いてから腰に手を当てた。
「いい?貴方達の言うところの外海ではガジュマとヒューマは結ばれてはいけないという暗黙の掟があるの。どうしてそんなものがあるか分かるかしら?」
「間に生まれたハーフの赤ん坊は安定しないまま死亡するケースが多いからだろ」
ハーフの仕組みについてはジーク自信の経験とブライトによる授業で大体は知っていた。
故にハーフという存在は希少であり、それが4姉弟全員が生存していたという事実が奇跡であったということも。
「この集落で暮らしてきた貴方が知りうる知識としてはそんなものでしょうね。でも私達の世界は違う。私達の世界にとってのハーフは忌み嫌われる存在なのよ」
マティアスの言葉を聞いた刹那、ジークは心臓の音が大きくなるにつれ呼吸ができなくなるような感覚に襲われた。
呼吸の仕方が分からない。
だが呼吸の仕方を思い出す前に脳裏にマティアスの言葉が駆け巡る。
外海ではハーフは忌み嫌われる存在。
以前なら無関係な話で済んだが今は違う。
集落を外海から遮断していたチャリティのフォルスは既に存在せず、外海との交流は盛んになってきている。
そもそも、今ジークがこんな状況におかれても尚心の中にある存在が外海のフィオナである。
彼女もまた、ハーフを嫌っているのだろうか。
ジークの中に不安の渦が渦巻く。
「……何でだよ……何でハーフばっかり疎まれなきゃいけないんだよ……?」
「別にハーフばかりがという事ではないわ。ヒューマはガジュマを、ガジュマはヒューマを特異なものだと思ってる。それでも同じヒトだから上手くやってこれているの。でもハーフはお互いにとっての特異が混ざったもの。だから二つの種族から石を投げられるのよ……」
言われて見ればジークにも思い当たる節はあった。
カインを追うために初めて外海に出た時、船内で異様な数の視線が集中しているような気がしていた。
恐らくアレが異端視の目なのだろう。
そしてバルカ港に着いてからも不信な点はあった。
確かにジークが船から下りる間際に船体を触った瞬間に爆発したものの、その現場を見た者はいない。
にもかかわらず即座に取り押さえられ犯人扱いされるのは横暴というものである。
そのおかげでマオ達と出会えた訳でもあったが……。
「……そうだ、いくらハーフが異端視されてると言ってもヴェイグ達とはこれまで普通に接してきたじゃねぇか」
「それはあいつらが特別なだけ。あいつらは元々ヒルダっていうハーフの仲間がいたでしょ?彼等にとって今更ハーフの1人や2人、仲間になったところで何とも思わないのよ」
マティアスは馬鹿にしたような口調で言った後、再び表情を冷静なものへと戻す。
「でもフィオナは違うわ。確かあの子はラジルダ出身だったわよね?貴方、何故ラジルダが沈んだか知ってる?」
これはブライトの話から天災によるものだと聞いていたが、ヴェイグ達と旅をするようになってからはあれもユリスによるものであると聞いた。
余談ではあるが、フィオナの父親のように勘違いで間違いを起こすヒトがこれ以上現れないようにするためにも、ユリスによる被害を公表する必要があるとも言っていた。
「表向きには天災だとかユリスの所為だとか言われているけど、どちらでもないわ。ラジルダを襲った津波はヒューマとガジュマとの間に起きた抗争による負の思念が呼び起こしたものなのよ」
「待てよ。思念ってユリスが撒き散らしたもんだろ?だったらそれはユリスが原因じゃねぇか」
「だから、その考え方が間違っているのよ。ラジルダの種族間抗争はユリスが出現する前から頻繁に起きていたのよ。そう、フィオナ達は同じヒトのはずのガジュマとヒューマで憎しみ合っていたという訳。ハーフの私達には到底理解できないけどね」
そう、ガジュマとヒューマの両方の血を引くジーク達ハーフにとって、自分達と同じ体を持つヒト同士が種族が違うからと言って争う理由が理解できない。
だが実際に抗争は起きており、ラジルダも確かに沈んでいた。
「てことはフィオナもガジュマやハーフを嫌ってんのか……?」
「断言はしかねるけど、少なくとも彼女が好きになることはないでしょうね」
「そんなの分からねぇだろうが!嫌われてないならまだ……!!」
砕けそうな心を必死に支えながらジークは叫ぶがマティアスの睨むような視線が貫く。
「貴方もしかして……。いいわ、私を騙した褒美として良い事を教えてあげるわ」
マティアスはニヤリと笑うと何時もの不適な笑みを浮かべた。
「どうしてヒルダは角を折ったのか、貴方まだ知らないでしょ?」
確かに気にはなっていたがこれまでなかなか聞く機会がなかった。
しかしあのユリスと激闘を繰り広げたのだ。
恐らくその際に折れてしまったのではと思っていたが、今彼女は「折れた」のではなく「折った」と言った。
つまり自ら折らなくてはならない理由があったのだろう。
マティアスの口がゆっくりと開かれる。
「サンダースピア!」
暗闇の中、一筋の紫電の光がマティアスの背後から走る。
彼女は瞬時に反転すると、龍の片手で紫電を握り潰した。
「あら、ブライトの家で酔い潰れていたのではなかったの?」
「酔い醒ましに少し散歩をしようと思っただけよ」
紫電を放った張本人であるヒルダが月夜に照らされた。
「随分と酒癖の悪い酔っ払いもいたものね」
「私はただ夜風にあたりながら歌を口ずさんでいただけなのだけれど?まぁ、いつの間にかそれが詠唱になっていたのなら、それはきっとこの土地のお酒が舌に合っていたからかしら」
ヒルダはカードを口元に寄せながらクスリと笑い、マティアスも笑みを浮かべた。
「下級導術に詠唱文があるだなんて初耳だわ。よかったらその歌、もう少し聞かせてくれないかしら」
「いいけど、私の歌は高いわよ?」
マティアスは龍のオーラを纏ったまま拳を握り、またヒルダの周りに幾つもの電流が走った。
「お、おい!!」
いつのまにやら一触即発の雰囲気になってしまった2人を見てジークは止めに入ろうと試みたがマティアスは刹那のうちにヒルダとの間を詰めた。
マティアスは鍵爪を振りかぶるがヒルダは微動だにせずに導術を発動をさせるために集中力を高めていた。
そしてマティアスの鍵爪がヒルダの体をとらえた時、その鍵爪はヒルダが纏っていた電流によって弾かれてしまった。
「R(ライトニング)・ローブか……」
先程からヒルダの身体の周囲を走っていた電流の正体を確かめるとジークは安堵し胸を撫で下ろした。
この術はカウンター専用のため攻撃には向かないが、導術士にとっては必要不可欠な術技である。
だがマティアスの接近速度が予想以上に速かったためまだ導術は発動できない。
更にR・ローブは既に発動してしまったため二度目の発動は無い。
マティアスは躊躇(ちゅうちょ)することなく龍の拳を突き出した。
「なっ!?」
ヒルダは導術を発動させるべく、腕をクロスさせる。
一方のマティアスは先程発動したはずのR・ローブに再び弾かれ目を見開いていた。
「ロックバラージ!」
無詠唱で済む下級導術であるロックバラージがマティアスの足元から襲うと彼女は咄嗟に後方へ跳ぶことにより回避した。
しかしロックバラージは斜め前方へと岩つぶてが噴射するためマティアスは触覚を駆使し空中でもう一段高く跳ねた。
そこからマティアスの追撃が来ると予想したジークは瞬時にヒルダの前へと出ると護衛の体勢に入った。
このままでは明らかにヒルダが劣勢である。
しかしマティアスはそのまま着地すると小刻みに震える右手を抑えた。
「まさか、R・ローブを二枚掛けしているとは思わなかったわ。おかげで麻痺して動かないじゃない」
「馬鹿ね。本来なら最初のサンダースピアであんたの腕は吹き飛んでるはずなのよ」
よく見るとヒルダの服が所々焦げている。
R・ローブの二枚掛けという無茶はやはり彼女自身にも影響が出てしまっていた。
そこまでしないと勝てない相手だからこその無茶なのだろうが、普段このような無茶をしないヒルダはジークにとってとても意外だった。
しかしそこまでしてマティアスは麻痺しかしていない。
ジークはリストを締めなおすと再びマティアスを睨んだ。
「ちょっと、そんなに睨まないでくれるかしら。私はただ親切に貴方に忠告をしただけでしょ?」
言うとマティアスは肩の力を抜きながら龍のオーラを消した。
「さすが英雄との実戦は良い刺激になるわ。でもまだランニングも残っているのよね。だからこの続きはまたいつかやりましょ?」
マティアスはウィンクをすると痺れの抜けた右腕を回してから夜の闇へと消えていった。
「……大丈夫か?」
ジークは戸惑いながらヒルダの心配をすると、彼女は服についた焦げ目を払い落としていた。
「まぁ、我ながら無茶したと思うわね」
戦闘の後だというのにこの冷静な口調。
何時もと変わらないヒルダを見てジークは安心した。
「珍しいな」
「何が?」
「お前から喧嘩をしかけるなんてな」
それを聞くとヒルダは腕を組み、ジークに背を向けた。
「私にだって知られたくない事の一つや二つはあるのよ。あんたも長生きしたいならあんまり女の過去を詮索しないようにすることね」
それだけ言い残してヒルダはブライトの家方面へと消えていった。
ヒルダの言った知られたくない事というのは角のことであることは明白である。
更にマティアスへ喧嘩を売ってでも知られたくない事ということはヒルダにとってよっぽどの事なのだろう。
種族間の問題とヒルダの角に何の関係があるのか。
ジークは頭を抱えながら家の中へと戻ると、調度ルルとフィオナが風呂から出てきたところだった。
「あれ?ジーク兄さん、外に出てたの?」
「あぁ……」
「もしかして外から覗こうとしたんじゃ……!!」
「だから妹の入浴なんか興味ねぇっての!!」
ルルに向かってジークが怒鳴ると、広げたタオルを被ったフィオナが後頭部を殴った。
「なに本気で怒ってんのよ。冗談に決まってんでしょ?」
ジークは後頭部を抑えながらフィオナの姿を見た。
確かに大きな耳や尻尾、角等はないが、顔立ちや暖かな手は自分達と変わらない。
もっともジークの手は冷たいが。
「な、なによ?」
「お前さ、自分の過去とかって話せるか?」
「私の過去?前に私はラジルダ出身って言わなかったっけ?それともお父さんの話?もしかして記憶喪失とかそういう話?」
こいつは大丈夫なのかという顔で見てくるフィオナを見てジークは溜息を吐いた。
「お前ってたまに馬鹿だよな……」
その後フィオナの怒号が木霊し、その傍らでルルは満点の笑みを浮かべていたがそれらをジンは苦笑いをしながら傍観していた。
こうして長かった夜が更けていった。
〜続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート1】
takeshi「ども〜!今回から始めてみました楽屋談笑会、略して楽談!このコーナーはあくまでも楽屋ネタなので、ここで誰が何を言おうと本編のキャラとは一切関係ありません!!まぁよく分かりませんが、とにかく本日のゲスト達です!」
ファルブ「ガッハハ!初めましてだな!」
フィレンツェ「何故こいつとなんだ・・・?」
takeshi「てな訳で!この掲示板に来てからようやく初登場の6芒星のお2人で〜す」
ファルブ「俺達の出番はまだなのか?」
takehsi「と〜ぶん先ですね!」
フィレンツェ「私達は兎も角、ヴェイグ達でさえも最近空気なような気がするのだが・・・」
takeshi「2話分出番無しですからね・・・。ていうか1日長ッ!!」
ファルブ「1日とはそんなもんだ!!」
フィレンツェ「大半は夜しか描写していないがな」
takeshi「ま、まぁ次回からお昼成分も多くなるはず!ストーリーもようやくゲーム本編のテーマに触れ始めてきましたからね!」
フィレンツェ「ようやくか」
ファルブ「ガッハハ!マイペースなこった!」
takeshi「一番言われたくないヤツに言われてしまいましたが、とりあえず今回はこのへんで!ちなみにここからオマケへと繋がります;」
〜〜〜オマケ〜〜〜
エトス「ここは?」
ロンドリーネ「遺跡船っていう船の上にあるウェルテスという街よ」
メル「船の上に街があるの!?」
カイル「ちょっと待って!さっきの光は何!?光に包まれた瞬間違う場所に着いたってことは、もしかして君もフォルトゥナの仲間なのか!?」
ロンドリーネ「あ〜、説明するの面倒ね・・・。カクカクシカジカなのよ」
カイル「な、なんだってー!?」
メル「今ので分かったの!?」
エト「久シぶりに聞いたよ、ソの台詞・・・」
ロンドリーネ「さぁ時間が無いわ!さっさとスカウトするわよ!」
メル「時間がないって、どうして?」
ロンドリーネ「それはね・・・このままのんびりやってたら二期が終わっちゃうからよ!!」
エトス「だから無理矢理オマケが捻じ込まれたのか・・・」
カイル「それで、スカウトする子はどこにいるの?」
ロンドリーネ「あそこの噴水の前に立っている子よ!」
メル「なんか金髪で可愛い子だね。仕事とかもきちんとやりそう」
カイル「お皿とか絶対に割らないんだろうね」
エトス「ソレはフリなの?」
ロンドリーネ「ねぇ君、ウェイトレスやってみない?」
シャーリィ「え?ウェイトレスですか?私がやったらお皿とか割りそうだし、仕事とかいつもサボるような気がするのは何でだろう?」
カイル「うん、俺もそんな気がする」
メル「そ、そんなことないよ!やればできるって!」
ロンドリーネ「メルの言うとおりだよ?それに、ウェイトレスになれば可愛い制服が着放題!気になるあいつもイチコロよ!!」
シャーリィ「私やります!!」
カイル「早っ!!」
エトス「キミもこんなだったよ」
メル「やったぁ!また後輩が増えた!!」
シャーリィ「よろしくね、先輩。でも先輩の割に小さいような気が・・・」
メル「ちっちゃくないよっ!!」
ロンドリーネ「さっ!次の世界に行くわよ!」
セネル「シャーリィ!お前等、シャーリィをどこへ連れてくつもりだ!?」
ロンドリーネ「げっ!面倒なのに見つかったわね・・・。エトちゃん、呪っちゃって!」
エトス「ぇえっ!?ちょ、ちょっとソレは無理・・・かな?」
メル「だったら必殺はらパンだよ!」
カイル「はらパンって・・・」
メル「とぅっ!」
セネル「ごふぅ!」
カイル「見てたら俺もお腹が・・・!」
ロンドリーネ「ナイスエトちゃん!さぁ飛ぶわよ!」
シャーリィ「ごめんね、お兄ちゃん」
〜続く〜
takeshi「ども〜!今回から始めてみました楽屋談笑会、略して楽談!このコーナーはあくまでも楽屋ネタなので、ここで誰が何を言おうと本編のキャラとは一切関係ありません!!まぁよく分かりませんが、とにかく本日のゲスト達です!」
ファルブ「ガッハハ!初めましてだな!」
フィレンツェ「何故こいつとなんだ・・・?」
takeshi「てな訳で!この掲示板に来てからようやく初登場の6芒星のお2人で〜す」
ファルブ「俺達の出番はまだなのか?」
takehsi「と〜ぶん先ですね!」
フィレンツェ「私達は兎も角、ヴェイグ達でさえも最近空気なような気がするのだが・・・」
takeshi「2話分出番無しですからね・・・。ていうか1日長ッ!!」
ファルブ「1日とはそんなもんだ!!」
フィレンツェ「大半は夜しか描写していないがな」
takeshi「ま、まぁ次回からお昼成分も多くなるはず!ストーリーもようやくゲーム本編のテーマに触れ始めてきましたからね!」
フィレンツェ「ようやくか」
ファルブ「ガッハハ!マイペースなこった!」
takeshi「一番言われたくないヤツに言われてしまいましたが、とりあえず今回はこのへんで!ちなみにここからオマケへと繋がります;」
〜〜〜オマケ〜〜〜
エトス「ここは?」
ロンドリーネ「遺跡船っていう船の上にあるウェルテスという街よ」
メル「船の上に街があるの!?」
カイル「ちょっと待って!さっきの光は何!?光に包まれた瞬間違う場所に着いたってことは、もしかして君もフォルトゥナの仲間なのか!?」
ロンドリーネ「あ〜、説明するの面倒ね・・・。カクカクシカジカなのよ」
カイル「な、なんだってー!?」
メル「今ので分かったの!?」
エト「久シぶりに聞いたよ、ソの台詞・・・」
ロンドリーネ「さぁ時間が無いわ!さっさとスカウトするわよ!」
メル「時間がないって、どうして?」
ロンドリーネ「それはね・・・このままのんびりやってたら二期が終わっちゃうからよ!!」
エトス「だから無理矢理オマケが捻じ込まれたのか・・・」
カイル「それで、スカウトする子はどこにいるの?」
ロンドリーネ「あそこの噴水の前に立っている子よ!」
メル「なんか金髪で可愛い子だね。仕事とかもきちんとやりそう」
カイル「お皿とか絶対に割らないんだろうね」
エトス「ソレはフリなの?」
ロンドリーネ「ねぇ君、ウェイトレスやってみない?」
シャーリィ「え?ウェイトレスですか?私がやったらお皿とか割りそうだし、仕事とかいつもサボるような気がするのは何でだろう?」
カイル「うん、俺もそんな気がする」
メル「そ、そんなことないよ!やればできるって!」
ロンドリーネ「メルの言うとおりだよ?それに、ウェイトレスになれば可愛い制服が着放題!気になるあいつもイチコロよ!!」
シャーリィ「私やります!!」
カイル「早っ!!」
エトス「キミもこんなだったよ」
メル「やったぁ!また後輩が増えた!!」
シャーリィ「よろしくね、先輩。でも先輩の割に小さいような気が・・・」
メル「ちっちゃくないよっ!!」
ロンドリーネ「さっ!次の世界に行くわよ!」
セネル「シャーリィ!お前等、シャーリィをどこへ連れてくつもりだ!?」
ロンドリーネ「げっ!面倒なのに見つかったわね・・・。エトちゃん、呪っちゃって!」
エトス「ぇえっ!?ちょ、ちょっとソレは無理・・・かな?」
メル「だったら必殺はらパンだよ!」
カイル「はらパンって・・・」
メル「とぅっ!」
セネル「ごふぅ!」
カイル「見てたら俺もお腹が・・・!」
ロンドリーネ「ナイスエトちゃん!さぁ飛ぶわよ!」
シャーリィ「ごめんね、お兄ちゃん」
〜続く〜