第36話『ピピスタと聖殿』
ルルは無言でジンの服の裾を引っ張った。
「ん?」
振り返るとルルは今通ってきた道を指差しており、その指の先には通ってきた道を戻るようにしてバシャバシャと深い泥沼へと逆走していく兄の姿があった。
「あぁ・・・・・・」
考えることもなくジンは納得した。
こうしている間にも迷いなく泥沼に沈みながらも進んでいくジークの先にはもがき苦しむバイラスがいる。
ジークはあのバイラスを助けるつもりなのだろう。
ジンとルルは今最後尾列にいる。
ほんの少し別行動をとっても誰にも気付かれないだろう。
(兄さんの手伝いをしたいなら俺なんかを巻き込まないで素直に行けば良いのに・・・・・・)
一度溜息を吐いた後、方向転換する。
「兄さんが大変そうだから手伝いに行こっかな。ルルも行く?」
ジンは白々しさ全開で言うがルルは裾を掴んだままそっぽを向いた。
「2人だけじゃ大変だろうから・・・・・・行ってあげなくも・・・・・・ない」
ジンは笑いながらルルの頭を強く撫でた後、手を繋いでジークのあとを追った。
ジークとの距離はそんなに離れていなかったためジークが暴れるブラキオサウルスを押さえ込んでいる間に追いつくことができた。
「この・・・・・・大人しくしやがれ!!!」
必死に押さえ込むジークに対してブラキオサウルスのようなバイラスはなおも暴れ続けた。
そんな様子を見ながらルルは昔川で溺れた時、ジークに助けてもらったことを思い出していた。
あれが何時のことだったかは忘れてしまったが、当時はとても嬉しかったことは覚えている。
「死ね!」
面倒になったジークはブラキオサウルスのようなバイラスの頭を殴ると「キュイ!」と唸り声を上げて怯んだ。
その隙に手足を掴み、浅瀬へと放り投げた。
「強引だなぁ・・・・・・」
呆気にとられながらもジンとルルが眺めていると、ジークがこちらに気付いた。
「何しに来たんだ?」
「何って、手伝いにきたんだよ」
ね?とルルに同意を求めるがルルは顔を背けてしまった。
「お前、ルルまで巻き込んで手伝いに来たのかよ。すっげぇ機嫌悪そうじゃねぇか」
無言でアヒルようなバイラスを抱きかかえるルルを見てジークが言うと、ジンも首を傾げた。
「あれ?何でだ?」
どちらが巻き込んだのかは兎も角、ジークと合流した直後までは機嫌が良かったはずだ。
にもかかわらず今のルルはジンから見ても機嫌が最高に悪いように見える。
しかしいくら考えてもその原因が分からなかった。
「まぁいい。小さいバイラスを全部そこで気絶してるバイラスに乗せろ。そうすればそいつが気が付いた時に一緒に運んでくだろ」
「了解」
流石に湿原一帯全てのバイラスを救うことはできない。
しかし助けることができる範囲のバイラスだけでも何とかしようとフリィース兄妹は泥沼の中を歩き回った。
羽が泥を吸って飛べなくなった羽虫のバイラスも浮き藻の上に乗せ、羽を乾かさせる。
泥さえ乾いてしまえば後は自分で何とかするだろう。
「あっ!」
泥沼に足をとられ、ルルが転びそうになる。
するとそこへ咄嗟にジークが腕を伸ばしてルルの腕を掴み、自分の体へと引き寄せる。
「また溺れるなよ?」
「も、もう溺れないもん!!」
ルルは慌ててジークを突き放した。
バイラスを助ける時、昔は優しく助けてくれたというのに今では殴って大人しくさせる兄の行動に腹が立った。
しかし、過去に助けてくれたことを覚えててくれたということが嬉しくもあり、ルルとしては複雑な心境だった。
「そうだな・・・・・・昔とは違うもんな・・・・・・」
突き放したものの、何時もの、と言っても極最近の何時ものジークならば拒否しても気にも留めない表情をして頭を撫でてくるものだと思っていた。
しかし、今ジークは感傷に浸るかのように俯いている。
「もう良いだろう。流石にこれ以上ヴェイグ達と離れると心配かけちまう。俺達も先に進もう」
ジークはそれだけ言うと浅瀬へ歩いて行き、ルルも後を追うようにして浅瀬へと向かった。
「ジーク兄さん・・・・・・?」
何時もと違うジークに違和感を感じルルは首を傾げる。
その後暫くしてビビスタへと続く砂丘と湿原の境目の、大地が安定している地点にてフリィース兄妹はヴェイグ達と合流した。
「ティトレイにも言ったが、あまり離れるなよ?」
心配をかけてしまったようでユージーンに説教されたが、どうやらティトレイも離れていたらしい。
笑いながら謝るティトレイを見てみると彼もジーク達同様に泥まみれになっていた。
「ジークさん達もティトレイさんと同じで転んだんですか?」
「は?」
アニーの質問にジークとルルは首を傾げる。
が、そこへすかさずジンが割って入った。
「そ、そうなんだよ!突然兄さんが転ぶから助けようとしたら俺も転んじゃって、そしたら近くにいたルルも巻き込んじゃったんだよねー」
ジンが誤魔化している傍らでジークはフィオナを見る。
彼女は相変わらずカイトと話をしている。
カイトとはラジルダが沈んだ後ずっと会っていなかったのだから積もる話もあるのだろう。
それにカイトはフィオナと同じヒューマだ。
あれが本来あるべき姿なのだろう。
早く街へ入って泥を落とすためにも一同は先へ進むことにし、砂丘へと繋がる坂道を上り始めた。
そして短い坂を上りきると辺り一面に広大な砂丘がヴェイグ達の視界に広がった。
黒い霧が薄くかかっているのにもかかわらず太陽からの日差しは強く、肌をジリジリと焼くような微小な痛みが走る。
だがアニカマルの砂漠とは違い乾燥しており、湿原を歩いたことによりぐしょぐしょだったブーツも、泥まみれだった服も歩いているうちに乾いてしまった。
ただそうなると今度は泥だったものが砂の塊になるためブーツの中から掻き出したり、跳ねて髪についた泥が砂になってパラパラと落ちてくるため別の苦労が増えることとなる。
そして日が落ち始める頃、ヴェイグ達はピピスタへと到着した。
「さっきまであんなに暑かったのに急に冷えてきたね」
カインが身震いしながら言うとマオはジークを見て苦笑いした。
「ここら辺は昼間暑い分、夜寒くなるんだヨ。それより、何も起きてないね」
街はガジュマが行き交い、六芒星の姿も見当たらず何時もの日常風景そのものであった。
「ここは気候上ガジュマしか住んでいないからな。ユリスの目的がヒューマとガジュマを争わせて思念を増幅するということだとしたら、この街では暴動も起こしようがなかったのだろう」
ユージーンが軽く推測するがまさにその通りだった。
この寒暖の差が激しい気候、特に昼間の暑さはヒューマには耐え難い。
そのためピピスタに住もうというヒューマはいない。
しかし1年前の一件以降旅行者やラジルダの港が使えないためピピスタの港を経由するヒューマなどが訪れるようになっていた。
にもかかわらず現在ヒューマの姿がないのは港が封鎖され、旅行者が訪れないためである。
そのため現在ピピスタにはガジュマしかおらず、ガジュマしかいないのでは種族間の暴動も起きない。
最も、1年前はガジュマにしかいないにもかかわらず差別の問題が発生したが。
「俺はドバル酋長に挨拶をしてくる。先に宿屋へ行っててくれ」
「酋長か。なら俺も行くべきだな」
ユージーンにブライトも同行することになり、2人はパーティから外れて酋長の家へ向かった。
残ったヴェイグ達は宿屋へ向かいシャワーを浴びることにする。
日がどっぷりと暮れ、月が登る頃ユージーンとブライトも宿屋に戻り、夕食となる。
「いやしかし、あのドバル酋長ってのはうちの酋長よりも堅いな!」
礼節を重んじるここピピスタの酋長ドバルの洗礼をブライトも受けたのだろう。
話をしてるうちに肩が凝ったのか肩をグリグリ回している。
「あれでもドバル酋長はお前に心を開いていたほうなのだがな。恐らく彼も見知らぬ土地から来たヒトが珍しかったのだろう」
「おかげで質問攻めにあったって訳かよ・・・・・・やってらんねぇぜ」
ブライトが言うにはドバル酋長からクインシェルの伝統や文化など質問され、ブライトが職業柄懇切丁寧に答えるとそれを受けてドヴァル酋長が更に深く質問してくるというスパイラルにはまってしまったとのことだった。
「だがお前のおかげで酋長にはクインシェルが魅力的に見えたはずだ。胸を張るべきだと俺は思うが?」
「魅力的に見えちまったらあのおっさんクインシェルに来ちまうだろ。またジジイに怒られちまうぜ」
ブライトが項垂れると、マオが「そういえば」と話を切り出した。
「特殊な金属のことは何か聞けたの?」
マオの問いにユージーンとブライトは首を横に振った。
「酋長はそのような金属は聞いたこともないそうだ。ティトレイ、ピピスタから出荷されているというのは間違い無いのか?」
「あ、あぁ。それは間違いないはずだ。荷物には確かにピピスタのラベルが貼ってあったしな!」
断言はするもののいまいち自信がないようだった。
ここら辺の地域を取りまとめているドヴァル酋長ならばここから出荷しているものに対しても知っていて当然である。
その酋長が知らないというのだからティトレイが少なからず自信を無くすのも無理はない。
「明日街の人にも聞いてみよう」
ヴェイグの提案に全員頷き、今日のところは解散となった。
「ティトレイ、ちょっといいか」
ティトレイが振り向くと、ジークが立っていた。
その頃ミナールでは観光名所とも言える桜は散っており、その代わりに緑葉が生い茂っていた。
「まったく、幻のおっさんもいないし、夜桜も見れないし、どうなっているのかしら?」
緑色の葉を揺らす樹の下でマティアスは不貞腐れていた。
彼女はクインシェルにて幻を追い求める男を探すように助言を受けてからずっと探し続けていたがいまだに会えてはいないようだった。
そんな月明かりに照らされる彼女の足元から伸びる影の中から、赤い瞳に眼鏡をかけた黒髪の女性が飛び出した。
「どう?あいつらの状況は?」
「飛ぶのは何とかなりそう」
ナイラは眼鏡をクイッと上げると、月の光を反射して怪しく光る。
「でも、前にマッティが言ってた狐の気配は感じられない・・・・・・」
「そう・・・・・・」
マティアスは分かっていたかのように軽く溜息をつく。
「マッティ・・・・・・」
「なに?」
「今日は一緒に寝る?」
「そういえば桜って根元に死体とか埋まってると鮮やかな色で咲くんだっかしら?」
「マッティ、それはきっと紫陽花の都市伝説」
マティアスの黒い笑みに気付かず、真面目に返すナイラだった。
「悪いな、ティトレイ」
「なぁに、気にすんなって!」
ジークとティトレイは街の外を歩いていた。
手にはお互いに武器を装備している。
街からはまだそんなに離れてはいないが、2人とも若干息を切らしているのは既にバイラスを二三匹倒した後なのだろう。
確かに昼間はバイラスを助けたが、襲ってくるものは倒すしかない。
そもそもジークの目的はティトレイに特訓を手伝ってもらうことにあるのだからむしろ好都合である。
「にしても、今日のジーク荒れてねぇか?」
「そうか?」
ジークは首を傾げたがティトレイには船の上の時とは違う鬼気迫るものを感じた。
「最近ストレスが溜まってたから、無意識に出てたかもな」
無意識と言ったがジークも分かっていた。
特訓と言いながらただ鬱憤をバイラスで晴らしているだけだと。
だがこうでもしていないと心の中のモヤモヤが増すばかりな気がした。
「どんな理由にせよ、とことん付き合うぜ!?どうせなら神殿まで行くか!」
「神殿?」
ここまで来るのに祭壇のような物を何箇所か見た。
それとは違うのだろうかとジークは疑問を抱きつつもティトレイに付いていった。
〜続く〜
「ん?」
振り返るとルルは今通ってきた道を指差しており、その指の先には通ってきた道を戻るようにしてバシャバシャと深い泥沼へと逆走していく兄の姿があった。
「あぁ・・・・・・」
考えることもなくジンは納得した。
こうしている間にも迷いなく泥沼に沈みながらも進んでいくジークの先にはもがき苦しむバイラスがいる。
ジークはあのバイラスを助けるつもりなのだろう。
ジンとルルは今最後尾列にいる。
ほんの少し別行動をとっても誰にも気付かれないだろう。
(兄さんの手伝いをしたいなら俺なんかを巻き込まないで素直に行けば良いのに・・・・・・)
一度溜息を吐いた後、方向転換する。
「兄さんが大変そうだから手伝いに行こっかな。ルルも行く?」
ジンは白々しさ全開で言うがルルは裾を掴んだままそっぽを向いた。
「2人だけじゃ大変だろうから・・・・・・行ってあげなくも・・・・・・ない」
ジンは笑いながらルルの頭を強く撫でた後、手を繋いでジークのあとを追った。
ジークとの距離はそんなに離れていなかったためジークが暴れるブラキオサウルスを押さえ込んでいる間に追いつくことができた。
「この・・・・・・大人しくしやがれ!!!」
必死に押さえ込むジークに対してブラキオサウルスのようなバイラスはなおも暴れ続けた。
そんな様子を見ながらルルは昔川で溺れた時、ジークに助けてもらったことを思い出していた。
あれが何時のことだったかは忘れてしまったが、当時はとても嬉しかったことは覚えている。
「死ね!」
面倒になったジークはブラキオサウルスのようなバイラスの頭を殴ると「キュイ!」と唸り声を上げて怯んだ。
その隙に手足を掴み、浅瀬へと放り投げた。
「強引だなぁ・・・・・・」
呆気にとられながらもジンとルルが眺めていると、ジークがこちらに気付いた。
「何しに来たんだ?」
「何って、手伝いにきたんだよ」
ね?とルルに同意を求めるがルルは顔を背けてしまった。
「お前、ルルまで巻き込んで手伝いに来たのかよ。すっげぇ機嫌悪そうじゃねぇか」
無言でアヒルようなバイラスを抱きかかえるルルを見てジークが言うと、ジンも首を傾げた。
「あれ?何でだ?」
どちらが巻き込んだのかは兎も角、ジークと合流した直後までは機嫌が良かったはずだ。
にもかかわらず今のルルはジンから見ても機嫌が最高に悪いように見える。
しかしいくら考えてもその原因が分からなかった。
「まぁいい。小さいバイラスを全部そこで気絶してるバイラスに乗せろ。そうすればそいつが気が付いた時に一緒に運んでくだろ」
「了解」
流石に湿原一帯全てのバイラスを救うことはできない。
しかし助けることができる範囲のバイラスだけでも何とかしようとフリィース兄妹は泥沼の中を歩き回った。
羽が泥を吸って飛べなくなった羽虫のバイラスも浮き藻の上に乗せ、羽を乾かさせる。
泥さえ乾いてしまえば後は自分で何とかするだろう。
「あっ!」
泥沼に足をとられ、ルルが転びそうになる。
するとそこへ咄嗟にジークが腕を伸ばしてルルの腕を掴み、自分の体へと引き寄せる。
「また溺れるなよ?」
「も、もう溺れないもん!!」
ルルは慌ててジークを突き放した。
バイラスを助ける時、昔は優しく助けてくれたというのに今では殴って大人しくさせる兄の行動に腹が立った。
しかし、過去に助けてくれたことを覚えててくれたということが嬉しくもあり、ルルとしては複雑な心境だった。
「そうだな・・・・・・昔とは違うもんな・・・・・・」
突き放したものの、何時もの、と言っても極最近の何時ものジークならば拒否しても気にも留めない表情をして頭を撫でてくるものだと思っていた。
しかし、今ジークは感傷に浸るかのように俯いている。
「もう良いだろう。流石にこれ以上ヴェイグ達と離れると心配かけちまう。俺達も先に進もう」
ジークはそれだけ言うと浅瀬へ歩いて行き、ルルも後を追うようにして浅瀬へと向かった。
「ジーク兄さん・・・・・・?」
何時もと違うジークに違和感を感じルルは首を傾げる。
その後暫くしてビビスタへと続く砂丘と湿原の境目の、大地が安定している地点にてフリィース兄妹はヴェイグ達と合流した。
「ティトレイにも言ったが、あまり離れるなよ?」
心配をかけてしまったようでユージーンに説教されたが、どうやらティトレイも離れていたらしい。
笑いながら謝るティトレイを見てみると彼もジーク達同様に泥まみれになっていた。
「ジークさん達もティトレイさんと同じで転んだんですか?」
「は?」
アニーの質問にジークとルルは首を傾げる。
が、そこへすかさずジンが割って入った。
「そ、そうなんだよ!突然兄さんが転ぶから助けようとしたら俺も転んじゃって、そしたら近くにいたルルも巻き込んじゃったんだよねー」
ジンが誤魔化している傍らでジークはフィオナを見る。
彼女は相変わらずカイトと話をしている。
カイトとはラジルダが沈んだ後ずっと会っていなかったのだから積もる話もあるのだろう。
それにカイトはフィオナと同じヒューマだ。
あれが本来あるべき姿なのだろう。
早く街へ入って泥を落とすためにも一同は先へ進むことにし、砂丘へと繋がる坂道を上り始めた。
そして短い坂を上りきると辺り一面に広大な砂丘がヴェイグ達の視界に広がった。
黒い霧が薄くかかっているのにもかかわらず太陽からの日差しは強く、肌をジリジリと焼くような微小な痛みが走る。
だがアニカマルの砂漠とは違い乾燥しており、湿原を歩いたことによりぐしょぐしょだったブーツも、泥まみれだった服も歩いているうちに乾いてしまった。
ただそうなると今度は泥だったものが砂の塊になるためブーツの中から掻き出したり、跳ねて髪についた泥が砂になってパラパラと落ちてくるため別の苦労が増えることとなる。
そして日が落ち始める頃、ヴェイグ達はピピスタへと到着した。
「さっきまであんなに暑かったのに急に冷えてきたね」
カインが身震いしながら言うとマオはジークを見て苦笑いした。
「ここら辺は昼間暑い分、夜寒くなるんだヨ。それより、何も起きてないね」
街はガジュマが行き交い、六芒星の姿も見当たらず何時もの日常風景そのものであった。
「ここは気候上ガジュマしか住んでいないからな。ユリスの目的がヒューマとガジュマを争わせて思念を増幅するということだとしたら、この街では暴動も起こしようがなかったのだろう」
ユージーンが軽く推測するがまさにその通りだった。
この寒暖の差が激しい気候、特に昼間の暑さはヒューマには耐え難い。
そのためピピスタに住もうというヒューマはいない。
しかし1年前の一件以降旅行者やラジルダの港が使えないためピピスタの港を経由するヒューマなどが訪れるようになっていた。
にもかかわらず現在ヒューマの姿がないのは港が封鎖され、旅行者が訪れないためである。
そのため現在ピピスタにはガジュマしかおらず、ガジュマしかいないのでは種族間の暴動も起きない。
最も、1年前はガジュマにしかいないにもかかわらず差別の問題が発生したが。
「俺はドバル酋長に挨拶をしてくる。先に宿屋へ行っててくれ」
「酋長か。なら俺も行くべきだな」
ユージーンにブライトも同行することになり、2人はパーティから外れて酋長の家へ向かった。
残ったヴェイグ達は宿屋へ向かいシャワーを浴びることにする。
日がどっぷりと暮れ、月が登る頃ユージーンとブライトも宿屋に戻り、夕食となる。
「いやしかし、あのドバル酋長ってのはうちの酋長よりも堅いな!」
礼節を重んじるここピピスタの酋長ドバルの洗礼をブライトも受けたのだろう。
話をしてるうちに肩が凝ったのか肩をグリグリ回している。
「あれでもドバル酋長はお前に心を開いていたほうなのだがな。恐らく彼も見知らぬ土地から来たヒトが珍しかったのだろう」
「おかげで質問攻めにあったって訳かよ・・・・・・やってらんねぇぜ」
ブライトが言うにはドバル酋長からクインシェルの伝統や文化など質問され、ブライトが職業柄懇切丁寧に答えるとそれを受けてドヴァル酋長が更に深く質問してくるというスパイラルにはまってしまったとのことだった。
「だがお前のおかげで酋長にはクインシェルが魅力的に見えたはずだ。胸を張るべきだと俺は思うが?」
「魅力的に見えちまったらあのおっさんクインシェルに来ちまうだろ。またジジイに怒られちまうぜ」
ブライトが項垂れると、マオが「そういえば」と話を切り出した。
「特殊な金属のことは何か聞けたの?」
マオの問いにユージーンとブライトは首を横に振った。
「酋長はそのような金属は聞いたこともないそうだ。ティトレイ、ピピスタから出荷されているというのは間違い無いのか?」
「あ、あぁ。それは間違いないはずだ。荷物には確かにピピスタのラベルが貼ってあったしな!」
断言はするもののいまいち自信がないようだった。
ここら辺の地域を取りまとめているドヴァル酋長ならばここから出荷しているものに対しても知っていて当然である。
その酋長が知らないというのだからティトレイが少なからず自信を無くすのも無理はない。
「明日街の人にも聞いてみよう」
ヴェイグの提案に全員頷き、今日のところは解散となった。
「ティトレイ、ちょっといいか」
ティトレイが振り向くと、ジークが立っていた。
その頃ミナールでは観光名所とも言える桜は散っており、その代わりに緑葉が生い茂っていた。
「まったく、幻のおっさんもいないし、夜桜も見れないし、どうなっているのかしら?」
緑色の葉を揺らす樹の下でマティアスは不貞腐れていた。
彼女はクインシェルにて幻を追い求める男を探すように助言を受けてからずっと探し続けていたがいまだに会えてはいないようだった。
そんな月明かりに照らされる彼女の足元から伸びる影の中から、赤い瞳に眼鏡をかけた黒髪の女性が飛び出した。
「どう?あいつらの状況は?」
「飛ぶのは何とかなりそう」
ナイラは眼鏡をクイッと上げると、月の光を反射して怪しく光る。
「でも、前にマッティが言ってた狐の気配は感じられない・・・・・・」
「そう・・・・・・」
マティアスは分かっていたかのように軽く溜息をつく。
「マッティ・・・・・・」
「なに?」
「今日は一緒に寝る?」
「そういえば桜って根元に死体とか埋まってると鮮やかな色で咲くんだっかしら?」
「マッティ、それはきっと紫陽花の都市伝説」
マティアスの黒い笑みに気付かず、真面目に返すナイラだった。
「悪いな、ティトレイ」
「なぁに、気にすんなって!」
ジークとティトレイは街の外を歩いていた。
手にはお互いに武器を装備している。
街からはまだそんなに離れてはいないが、2人とも若干息を切らしているのは既にバイラスを二三匹倒した後なのだろう。
確かに昼間はバイラスを助けたが、襲ってくるものは倒すしかない。
そもそもジークの目的はティトレイに特訓を手伝ってもらうことにあるのだからむしろ好都合である。
「にしても、今日のジーク荒れてねぇか?」
「そうか?」
ジークは首を傾げたがティトレイには船の上の時とは違う鬼気迫るものを感じた。
「最近ストレスが溜まってたから、無意識に出てたかもな」
無意識と言ったがジークも分かっていた。
特訓と言いながらただ鬱憤をバイラスで晴らしているだけだと。
だがこうでもしていないと心の中のモヤモヤが増すばかりな気がした。
「どんな理由にせよ、とことん付き合うぜ!?どうせなら神殿まで行くか!」
「神殿?」
ここまで来るのに祭壇のような物を何箇所か見た。
それとは違うのだろうかとジークは疑問を抱きつつもティトレイに付いていった。
〜続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート20】
takeshi「絶好調である!!」
チャリティ「何が!?」
takeshi「1ヶ月5話更新は無理ですが、案外いけるもんですねぇ〜」
チャリティ「それができるのも今のうちだけね、きっと」
takeshi「まぁ、TOZが発売されたら絶対に停止しますね。この前発表された新キャラがやばすぎて、レジェンディア以来の期待値ですよ!!」
チャリティ「それは他の作品に対して失礼じゃない?」
takehsi「た、確かに・・・・・・。それより、今回で楽談も20回目ですよ!祝!20回!!」
チャリティ「早いわねぇ。でも、5話連続更新を2回繰り返すだけで30回にならない?」
takeshi「要するに無茶を最低2回繰り返せと・・・・・・。つ、次は50回の時にお祝いしましょうか!」
チャリティ「まぁ、そもそも20回でお祝いしようってのが中途半端よね」
takeshi「ごもっともで・・・・・・」
チャリティ「ていうか、あんたさっきから動きがぎこちないけど、どっか痛いの?」
takeshi「いやぁ、昨日高尾山登ったせいで全身筋肉痛になってしまいまして・・・・・・。山頂まで登る気は無かったんですけど勢いに任せてたらついつい登りきってしまいました」
チャリティ「高尾山とバビログラードだったらどっちの方が高いの?」
takeshi「同じくらいじゃないですか?じゃなくて、同じくらいです」
チャリティ「その程度で筋肉痛って、あんた運動不足じゃない」
takeshi「否定はしませんがね!退院してからよくここまで体力回復したものだと褒めても良いんじゃないかな!?」
チャリティ「え?何だって?」
takeshi「そのセリフはTOZの主人公の専売特許です・・・・・・」
チャリティ「そういえば今回、本編の話は?」
takeshi「特にないですね〜。楽談で話すネタももうないですし、今回はこの辺にしましょうか」
チャリティ「今回はやけに早くオマケに引き渡すのね」
takeshi「・・・・・・いつもオマケがあると思うなよ?」
チャリティ「今回おまけないの?」
takeshi「今回は2話連続投稿なのでオマケは次回単体です。要するにですね、何が言いたいかというですね、いつもそこにあって当然と思っているものこそなくなりやすいんですよ!」
チャリティ「なぜそんな話に・・・・・・?」
takeshi「ちゃんと親孝行してますか?いつでもそばにいてくれるとは限らないんですよ?ねぇチャリティさん?」
チャリティ「え、えぇ、そうね」
takeshi「そんな訳で!ではまた〜」
takeshi「絶好調である!!」
チャリティ「何が!?」
takeshi「1ヶ月5話更新は無理ですが、案外いけるもんですねぇ〜」
チャリティ「それができるのも今のうちだけね、きっと」
takeshi「まぁ、TOZが発売されたら絶対に停止しますね。この前発表された新キャラがやばすぎて、レジェンディア以来の期待値ですよ!!」
チャリティ「それは他の作品に対して失礼じゃない?」
takehsi「た、確かに・・・・・・。それより、今回で楽談も20回目ですよ!祝!20回!!」
チャリティ「早いわねぇ。でも、5話連続更新を2回繰り返すだけで30回にならない?」
takeshi「要するに無茶を最低2回繰り返せと・・・・・・。つ、次は50回の時にお祝いしましょうか!」
チャリティ「まぁ、そもそも20回でお祝いしようってのが中途半端よね」
takeshi「ごもっともで・・・・・・」
チャリティ「ていうか、あんたさっきから動きがぎこちないけど、どっか痛いの?」
takeshi「いやぁ、昨日高尾山登ったせいで全身筋肉痛になってしまいまして・・・・・・。山頂まで登る気は無かったんですけど勢いに任せてたらついつい登りきってしまいました」
チャリティ「高尾山とバビログラードだったらどっちの方が高いの?」
takeshi「同じくらいじゃないですか?じゃなくて、同じくらいです」
チャリティ「その程度で筋肉痛って、あんた運動不足じゃない」
takeshi「否定はしませんがね!退院してからよくここまで体力回復したものだと褒めても良いんじゃないかな!?」
チャリティ「え?何だって?」
takeshi「そのセリフはTOZの主人公の専売特許です・・・・・・」
チャリティ「そういえば今回、本編の話は?」
takeshi「特にないですね〜。楽談で話すネタももうないですし、今回はこの辺にしましょうか」
チャリティ「今回はやけに早くオマケに引き渡すのね」
takeshi「・・・・・・いつもオマケがあると思うなよ?」
チャリティ「今回おまけないの?」
takeshi「今回は2話連続投稿なのでオマケは次回単体です。要するにですね、何が言いたいかというですね、いつもそこにあって当然と思っているものこそなくなりやすいんですよ!」
チャリティ「なぜそんな話に・・・・・・?」
takeshi「ちゃんと親孝行してますか?いつでもそばにいてくれるとは限らないんですよ?ねぇチャリティさん?」
チャリティ「え、えぇ、そうね」
takeshi「そんな訳で!ではまた〜」