第53話『雪原と無重力エレベーター』
「代換品……か」
ヴェイグが静かに呟く傍らでヒルダは愛用の香水瓶を懐から取り出す。
「フィレンツェが生産していないのにもかかわらず、私達がこうして香水を買えてるってことは今現在もフィレンツェの「代用品」が香水を作ってるってことなのね」
「デュナルスの動機はフィオナから聞いてるから知ってるよね。ただファルブだけは僕も知らなくてさ……」
「あいつはただ暴れたいだけじゃないの?」
カインが仲間をスカウトしている時一緒にいたジンが首を傾げるがカインは首を振った。
「再生する時に何か記憶みたいのが見えた気がするんだけど、一瞬で闇で覆われちゃったから見えなかったんだよ。とりあえずユージーンをすごく恨んでいるみたいだったけど……」
「俺か……」
突然自分の名前が出てきたにもかかわらずユージーンは特に驚く様子もなく、ただ俯くだけだった。
「ユージーン?」
そんな様子が気になったマオが声をかけるとユージーンは苦笑いをこぼしながら顔を上げる。
「俺は王の盾の隊長としていくつもの戦場をかけてきた。無論多くの命も奪ってきた。どこで恨みをかっていても不思議ではないと改めて実感しただけだ」
「その中の1人がファルブってこと?」
マオは納得できないように目を伏せるが、ユージーンは肯定の代わりにマオの頭に大きな手を乗せた。
「隊長ってのは名前だけ聞けば格好良い役職のようにも聞こえるが、大量殺戮の免罪符のようなもんだもんな。格が高ければ高い程そいつがどれだけのヒトを殺してきたのか分かるシステムってのは皮肉だよな」
ブライトは後ろ髪をかきながら言ったあとはもう誰も話さなかった。
それから暫く木製の橋を歩いていると対岸が見えてくるのと同時に橋の終わりが近付いてきた。
「あら?もうこんなところまで来ていたのね」
ヒルダは訝しがるように眉をひそめる。
ここまで何も考えずにぼーっと歩いていたわけではない。
にもかかわらず「もう」と言ったのは気温の変化が全く無かったからである。
キョグエン地方からノルゼン地方に入ると雪までは降らないが気温が急激に下がる。
それがノルゼン地方に入った合図にもなるのだが、ヴェイグ達が橋を渡りきってもなお気温は下がることがなかった。
そして気がかりなことがもう一つ。
橋を渡っている最中、木製の橋が途中から濡れていた。
海面と橋の隙間を見る限り増水した形跡は見られないため雨が降って濡れたということはない。
つまり、橋に積もっていた雪が最近になって溶けたということが推測される。
そう、本来常時氷点下のはずのノルゼン地方の気温が上がっているのだった。
「天変地異万歳だな」
直後、ジークの後頭部をブライトとフィオナの2人に叩かれた。
気温は暖かくとも流石に雪は積もっており足を踏み出すと雪は溶けかけのアイスクリームのようにぐしょぐしょの状態だった。
本来の気温で雪もカチコチに凍っていれば滑る心配もないのだが、なまじ溶けているため水分により摩擦が無くなり滑りやすくなっていた。
「こいつは警戒していく必要がありそうだな……」
「そんなに気を張る必要もねぇだろブライト!滑ったって転ぶだけだぜ?」
ティトレイは笑いながら言うと、ブライトは慌ててティトレイの口を塞いだ。
「あんまり大きな声を出すんじゃねぇ……!!」
ブライトは極力声を殺しながら怒鳴った。
ティトレイの口から手を離した後、左右に聳(そび)え立つ山脈に目をやる。
「雪が溶けかけてるってことは、雪崩もおきやすいってことだ。この先山脈に挟まれた道を歩くんだぞ?そんな時に大声を上げてみろ。左右の山から雪崩が襲ってくるぞ」
「サンドイッチかよ!?」
「だから大声だすなっつうの!!」
ブライトはティトレイの頭に拳骨をかます。
「兎に角、山脈に囲まれた道で雪崩にあったら逃げ道はねぇんだ。そこんとこ、十分注意しろよ」
ブライトは全員に視線を送ると、11人は頷きシャーベット状になった雪道を歩き始めた。
* * *
「マッティ……何であの時邪魔したの?」
「え!?何だって!!?」
マティアスは猛吹雪の中、腕で視界を護るようにしながら雪原を進んでいた。
あまりの暴風に音はかき消され、ナイラも両腕で自分の体を抱きながらガタガタと震えていた。
ルーベルトを発見し、始末しようとしたところに片足だけ影の中にあったところをマティアスに引っ張られ王子の殺害は未遂に終わってしまった。
折角マティアスの敵を討とうとしたのにもかかわらず文字通り足を引っ張られたナイラは納得することができるわけもなくマティアスに抗議しに来ていた。
そうして影から出てみると何故かマティアスは極寒の雪原の中におり、突然の温度差にナイラは心臓麻痺を起こすかと思った。
いや、そう思ったのは心臓だけで彼女の思考はこの寒さにかこつけてマティアスに抱き付こうと思った。
そしてルパンダイブをかますがマティアスのカウンターパンチが見事に炸裂し、現在ナイラの眼鏡にはヒビが入っていた。
「ったく、この吹雪じゃどっちに進んでいるかも分からないわね……。一旦!あの洞窟に隠れるわよ!!」
「こ、こんなところで告白されても……困るっていうか知ってたっていうか……」
突然もじもじし始めたナイラを置いてマティアスは吹雪によってできた自然のカマクラに向かう。
「ここならしばらく凌(しの)げそうね」
「マッティ私を捨てないで!!」
置いていかれたことにようやく気付いたナイラがマティアスの足元にある影の中から両手を広げて飛び出してくるが、マティアスは躊躇無く蹴り飛ばした。
そしてツインテールに見える触覚を掻き揚げながらため息をつく。
「捨ててほしくないんだったら、ちゃんとあいつらのこと監視してなさいよ」
「でも……」
ナイラは落とした眼鏡を拾いながらマティアスに向き直る。
「私は何でマッティに邪魔されたのか分からない。千載一遇のチャンスだったのに。納得できるまでここから離れない」
ナイラは赤い瞳を光らせ真剣な表情で言うが、マティアスは首を傾げた。
「貴方、そんなことが気になってたの?だったら早く言いなさいよ」
「えっと……何回も言った……」
ナイラは困ったかのように捨てられた子犬のような表情になるとマティアスもまた溜息をついた。
「約束があるのよ。王子を殺すならまずアイツを殺してからっていうね。だからアイツを殺す前に先に王子を殺してしまうと私の負けになってしまうわけ」
「それはマッティがレラーブの挑発に勝手に乗っただけ。私には関係無い」
「そう。それならそれでいいわ。ただ、私とアイツの約束が貴方に関係無いなら、私と貴方との間も関係無くなるけど、それでもいいのね?」
「それは……とてもイヤ」
「だったら、手を出さないことね。自分の失敗は自分でケリをつけるわ」
「それはそれで寂しい……」
言ってみたものの、マティアスは本気で手を出されることを嫌がっていることは分かる。
そのためこれ以上何も言えないナイラはその場でうずくまるように座った。
カマクラの中で外気がシャットダウンされているとはいえやはり冷える。
「カマクラって予想以上に寒くないって聞いていたのだけれど、暖かいわけではないのね」
言いながらマティアスはナイラに寄り添うように座ると、ナイラは驚きのあまり体をビクっと動かし、マティアスを見た。
彼女の頭がすぐそばにある。
「でも、1人じゃなくて良かったわ。2人ならこんなにも暖かい」
「マッティ……」
ナイラはマティアスの体温を右半身で感じながら、ふと思い出したことを口にする。
「そういえば、スールズで幻のチーズを探してる冒険家がいるって」
「それを早く言え馬鹿野郎!!!」
マティアスの昇竜拳によりカマクラの天井に大きな穴が空けられた。
* * *
ヴェイグ達は山脈の間にある平地を縫いながら北上を続けていた。
足元が滑りやすく何回も転びながら進み、太陽が傾き始めた頃体力の限界を迎え始めた。
「あの……今日はこのあたりでカマクラを作って野宿しませんか?」
アニーの案に女性陣は大賛成だった。
特にルルは何回も尻餅をついていたため、今でもお尻をさすっている。
「いや……」
ところがユージーンは進行方向の右側に聳(そび)える山脈の山頂を見上げながら否定した。
「もう一踏ん張りすれば屋根の下で休めるはずだ。もう少し頑張ってくれ」
しかしヒルダは眉を吊り上げながらユージーンに詰め寄る。
「あんたねぇ、そう言うけどノルゼンまであとどんくらいあると思ってんの?殺す気?」
「俺は言ったはずだヒルダ。俺達の目的地はノルゼンではないと」
「じゃあどこ?」
ヒルダは呆れたように溜息交じりに問うと、ユージーンは天高く伸びる山頂を指差した。
「この上だ」
ヴェイグ達の目の前に聳え立つ山脈は斜面が急になっており、登山道もない。
とても人間の力で登れるような山ではないし、登れる仕様になってる山でもない。
「確かここって……」
「一つ言い忘れていたが、頑張るのは俺達じゃない。正確にはブライトに頑張ってもらう必要がある」
「おいおいまさか……」
ブライトは冷や汗をかきながらユージーンを見ると、彼は頷いた。
「ブライト、お前のフォルスで山頂まで連れていってくれ」
「俺は馬車じゃねぇ!!!」
ブライトが怒鳴るとティトレイとジン、マオの三人が飛びかかるようにブライトの口を塞ごうとし、流石に三人の体重を支えきれないブライトは雪の中に倒れこんだ。
「しょうがねぇな、やってやるよ」
ブライトは雪を払い落としながら立ち上がる。
「ただし、結構無茶すっから俺の指示は絶対な」
11人は頷くと、ヴェイグが山頂を見上げた。
「シャオルーンがいなくなってから全然会いに行けなかったが、元気にしてるだろうか?」
「……ヴェイグ大丈夫か?」
山頂を見上げて誰かを憂うような瞳をするヴェイグをジークが案ずるが、マオ達も同じような目をして山頂を見上げていた。
「あんまり広範囲にフォルスを広げると疲れるからもうちっと近寄ってくれねぇか?」
ブライトに言われ全員押し競饅頭をするかのようにブライトの周囲にかたまった。
そしてブライトが周囲を一度見回し範囲を限定すると、次の瞬間重りを外されたような感覚に陥った。
だがまだ足は地面に着いている。
「いいか、ここからが重要だぞ?今お前等は重力が働いていない、まさに無重力状態だ。今は地面との摩擦だけでカレギアとくっ付いているだけって訳だ」
「へぇ〜」
「動くな!!」
マオが足を動かそうとした刹那、ブライトが怒鳴る。
「少しでも動いてみろ。運動エネルギーを抑制する重力がない状態で重心移動しただけで何処に吹っ飛ぶか分からねぇぞ?」
マオは自分の足を見つめたままの体勢でゴクリと生唾を飲み込んだ。
「意識としてはゆっくり背伸びするようなイメージで動いてみろ。その時背中に壁があるイメージでよりかかりながら背伸びをすれば垂直に飛ぶはずだ」
ヴェイグ達はブライトに言われた通り、まるで柱に印を刻んで背比べをする時のように、ゆっくりと背伸びをした。
すると12人の体がふわっとシャボン玉のようにゆっくりと浮き始めた。
「お、俺達飛んでるぜ!」
「すごーい!!」
ティトレイとマオは未知の感覚にすっかりうかれていた。
だが一番稀有していたティトレイがきちんと浮いていることにブライトは安堵した。
周りを見ても誰一人としてロケットのように遥か彼方へぶっ飛んで行った者はいない。
ただやはり背伸び一つをとっても力の強弱には個人差があり、浮上の速度に違いがあり全員同じ高さを維持しながら浮上を続けることは叶わなかった。
また、地面に足がついていないためバランスがとれず前のめりになっていたり、後転しながら浮上していく者もいた。
ここでどっちに回転するかで普段体の重心をどっちに傾けているのかが分かるのが案外面白いところでもあった。
「ね、ねぇ、山頂付近って風が強いんじゃない?私達紙吹雪みたいに舞ったりしないわよね?」
太ももあたりを押さえながら前のめりになっているフィオナが疑問を口にする。
「大丈夫だ。俺達を中心に円を描くように何層も重力の壁を作ってあるから風はこねぇよ」
慣れているのかブライトは直立姿勢で腕組みまでしていた。
ブライトが言うには12人がいる地点を中心円としてバームクーヘンのように複数の重さで設定した重力の層で壁を作り風を遮断しているとのことだった。
〜続く〜
ヴェイグが静かに呟く傍らでヒルダは愛用の香水瓶を懐から取り出す。
「フィレンツェが生産していないのにもかかわらず、私達がこうして香水を買えてるってことは今現在もフィレンツェの「代用品」が香水を作ってるってことなのね」
「デュナルスの動機はフィオナから聞いてるから知ってるよね。ただファルブだけは僕も知らなくてさ……」
「あいつはただ暴れたいだけじゃないの?」
カインが仲間をスカウトしている時一緒にいたジンが首を傾げるがカインは首を振った。
「再生する時に何か記憶みたいのが見えた気がするんだけど、一瞬で闇で覆われちゃったから見えなかったんだよ。とりあえずユージーンをすごく恨んでいるみたいだったけど……」
「俺か……」
突然自分の名前が出てきたにもかかわらずユージーンは特に驚く様子もなく、ただ俯くだけだった。
「ユージーン?」
そんな様子が気になったマオが声をかけるとユージーンは苦笑いをこぼしながら顔を上げる。
「俺は王の盾の隊長としていくつもの戦場をかけてきた。無論多くの命も奪ってきた。どこで恨みをかっていても不思議ではないと改めて実感しただけだ」
「その中の1人がファルブってこと?」
マオは納得できないように目を伏せるが、ユージーンは肯定の代わりにマオの頭に大きな手を乗せた。
「隊長ってのは名前だけ聞けば格好良い役職のようにも聞こえるが、大量殺戮の免罪符のようなもんだもんな。格が高ければ高い程そいつがどれだけのヒトを殺してきたのか分かるシステムってのは皮肉だよな」
ブライトは後ろ髪をかきながら言ったあとはもう誰も話さなかった。
それから暫く木製の橋を歩いていると対岸が見えてくるのと同時に橋の終わりが近付いてきた。
「あら?もうこんなところまで来ていたのね」
ヒルダは訝しがるように眉をひそめる。
ここまで何も考えずにぼーっと歩いていたわけではない。
にもかかわらず「もう」と言ったのは気温の変化が全く無かったからである。
キョグエン地方からノルゼン地方に入ると雪までは降らないが気温が急激に下がる。
それがノルゼン地方に入った合図にもなるのだが、ヴェイグ達が橋を渡りきってもなお気温は下がることがなかった。
そして気がかりなことがもう一つ。
橋を渡っている最中、木製の橋が途中から濡れていた。
海面と橋の隙間を見る限り増水した形跡は見られないため雨が降って濡れたということはない。
つまり、橋に積もっていた雪が最近になって溶けたということが推測される。
そう、本来常時氷点下のはずのノルゼン地方の気温が上がっているのだった。
「天変地異万歳だな」
直後、ジークの後頭部をブライトとフィオナの2人に叩かれた。
気温は暖かくとも流石に雪は積もっており足を踏み出すと雪は溶けかけのアイスクリームのようにぐしょぐしょの状態だった。
本来の気温で雪もカチコチに凍っていれば滑る心配もないのだが、なまじ溶けているため水分により摩擦が無くなり滑りやすくなっていた。
「こいつは警戒していく必要がありそうだな……」
「そんなに気を張る必要もねぇだろブライト!滑ったって転ぶだけだぜ?」
ティトレイは笑いながら言うと、ブライトは慌ててティトレイの口を塞いだ。
「あんまり大きな声を出すんじゃねぇ……!!」
ブライトは極力声を殺しながら怒鳴った。
ティトレイの口から手を離した後、左右に聳(そび)え立つ山脈に目をやる。
「雪が溶けかけてるってことは、雪崩もおきやすいってことだ。この先山脈に挟まれた道を歩くんだぞ?そんな時に大声を上げてみろ。左右の山から雪崩が襲ってくるぞ」
「サンドイッチかよ!?」
「だから大声だすなっつうの!!」
ブライトはティトレイの頭に拳骨をかます。
「兎に角、山脈に囲まれた道で雪崩にあったら逃げ道はねぇんだ。そこんとこ、十分注意しろよ」
ブライトは全員に視線を送ると、11人は頷きシャーベット状になった雪道を歩き始めた。
* * *
「マッティ……何であの時邪魔したの?」
「え!?何だって!!?」
マティアスは猛吹雪の中、腕で視界を護るようにしながら雪原を進んでいた。
あまりの暴風に音はかき消され、ナイラも両腕で自分の体を抱きながらガタガタと震えていた。
ルーベルトを発見し、始末しようとしたところに片足だけ影の中にあったところをマティアスに引っ張られ王子の殺害は未遂に終わってしまった。
折角マティアスの敵を討とうとしたのにもかかわらず文字通り足を引っ張られたナイラは納得することができるわけもなくマティアスに抗議しに来ていた。
そうして影から出てみると何故かマティアスは極寒の雪原の中におり、突然の温度差にナイラは心臓麻痺を起こすかと思った。
いや、そう思ったのは心臓だけで彼女の思考はこの寒さにかこつけてマティアスに抱き付こうと思った。
そしてルパンダイブをかますがマティアスのカウンターパンチが見事に炸裂し、現在ナイラの眼鏡にはヒビが入っていた。
「ったく、この吹雪じゃどっちに進んでいるかも分からないわね……。一旦!あの洞窟に隠れるわよ!!」
「こ、こんなところで告白されても……困るっていうか知ってたっていうか……」
突然もじもじし始めたナイラを置いてマティアスは吹雪によってできた自然のカマクラに向かう。
「ここならしばらく凌(しの)げそうね」
「マッティ私を捨てないで!!」
置いていかれたことにようやく気付いたナイラがマティアスの足元にある影の中から両手を広げて飛び出してくるが、マティアスは躊躇無く蹴り飛ばした。
そしてツインテールに見える触覚を掻き揚げながらため息をつく。
「捨ててほしくないんだったら、ちゃんとあいつらのこと監視してなさいよ」
「でも……」
ナイラは落とした眼鏡を拾いながらマティアスに向き直る。
「私は何でマッティに邪魔されたのか分からない。千載一遇のチャンスだったのに。納得できるまでここから離れない」
ナイラは赤い瞳を光らせ真剣な表情で言うが、マティアスは首を傾げた。
「貴方、そんなことが気になってたの?だったら早く言いなさいよ」
「えっと……何回も言った……」
ナイラは困ったかのように捨てられた子犬のような表情になるとマティアスもまた溜息をついた。
「約束があるのよ。王子を殺すならまずアイツを殺してからっていうね。だからアイツを殺す前に先に王子を殺してしまうと私の負けになってしまうわけ」
「それはマッティがレラーブの挑発に勝手に乗っただけ。私には関係無い」
「そう。それならそれでいいわ。ただ、私とアイツの約束が貴方に関係無いなら、私と貴方との間も関係無くなるけど、それでもいいのね?」
「それは……とてもイヤ」
「だったら、手を出さないことね。自分の失敗は自分でケリをつけるわ」
「それはそれで寂しい……」
言ってみたものの、マティアスは本気で手を出されることを嫌がっていることは分かる。
そのためこれ以上何も言えないナイラはその場でうずくまるように座った。
カマクラの中で外気がシャットダウンされているとはいえやはり冷える。
「カマクラって予想以上に寒くないって聞いていたのだけれど、暖かいわけではないのね」
言いながらマティアスはナイラに寄り添うように座ると、ナイラは驚きのあまり体をビクっと動かし、マティアスを見た。
彼女の頭がすぐそばにある。
「でも、1人じゃなくて良かったわ。2人ならこんなにも暖かい」
「マッティ……」
ナイラはマティアスの体温を右半身で感じながら、ふと思い出したことを口にする。
「そういえば、スールズで幻のチーズを探してる冒険家がいるって」
「それを早く言え馬鹿野郎!!!」
マティアスの昇竜拳によりカマクラの天井に大きな穴が空けられた。
* * *
ヴェイグ達は山脈の間にある平地を縫いながら北上を続けていた。
足元が滑りやすく何回も転びながら進み、太陽が傾き始めた頃体力の限界を迎え始めた。
「あの……今日はこのあたりでカマクラを作って野宿しませんか?」
アニーの案に女性陣は大賛成だった。
特にルルは何回も尻餅をついていたため、今でもお尻をさすっている。
「いや……」
ところがユージーンは進行方向の右側に聳(そび)える山脈の山頂を見上げながら否定した。
「もう一踏ん張りすれば屋根の下で休めるはずだ。もう少し頑張ってくれ」
しかしヒルダは眉を吊り上げながらユージーンに詰め寄る。
「あんたねぇ、そう言うけどノルゼンまであとどんくらいあると思ってんの?殺す気?」
「俺は言ったはずだヒルダ。俺達の目的地はノルゼンではないと」
「じゃあどこ?」
ヒルダは呆れたように溜息交じりに問うと、ユージーンは天高く伸びる山頂を指差した。
「この上だ」
ヴェイグ達の目の前に聳え立つ山脈は斜面が急になっており、登山道もない。
とても人間の力で登れるような山ではないし、登れる仕様になってる山でもない。
「確かここって……」
「一つ言い忘れていたが、頑張るのは俺達じゃない。正確にはブライトに頑張ってもらう必要がある」
「おいおいまさか……」
ブライトは冷や汗をかきながらユージーンを見ると、彼は頷いた。
「ブライト、お前のフォルスで山頂まで連れていってくれ」
「俺は馬車じゃねぇ!!!」
ブライトが怒鳴るとティトレイとジン、マオの三人が飛びかかるようにブライトの口を塞ごうとし、流石に三人の体重を支えきれないブライトは雪の中に倒れこんだ。
「しょうがねぇな、やってやるよ」
ブライトは雪を払い落としながら立ち上がる。
「ただし、結構無茶すっから俺の指示は絶対な」
11人は頷くと、ヴェイグが山頂を見上げた。
「シャオルーンがいなくなってから全然会いに行けなかったが、元気にしてるだろうか?」
「……ヴェイグ大丈夫か?」
山頂を見上げて誰かを憂うような瞳をするヴェイグをジークが案ずるが、マオ達も同じような目をして山頂を見上げていた。
「あんまり広範囲にフォルスを広げると疲れるからもうちっと近寄ってくれねぇか?」
ブライトに言われ全員押し競饅頭をするかのようにブライトの周囲にかたまった。
そしてブライトが周囲を一度見回し範囲を限定すると、次の瞬間重りを外されたような感覚に陥った。
だがまだ足は地面に着いている。
「いいか、ここからが重要だぞ?今お前等は重力が働いていない、まさに無重力状態だ。今は地面との摩擦だけでカレギアとくっ付いているだけって訳だ」
「へぇ〜」
「動くな!!」
マオが足を動かそうとした刹那、ブライトが怒鳴る。
「少しでも動いてみろ。運動エネルギーを抑制する重力がない状態で重心移動しただけで何処に吹っ飛ぶか分からねぇぞ?」
マオは自分の足を見つめたままの体勢でゴクリと生唾を飲み込んだ。
「意識としてはゆっくり背伸びするようなイメージで動いてみろ。その時背中に壁があるイメージでよりかかりながら背伸びをすれば垂直に飛ぶはずだ」
ヴェイグ達はブライトに言われた通り、まるで柱に印を刻んで背比べをする時のように、ゆっくりと背伸びをした。
すると12人の体がふわっとシャボン玉のようにゆっくりと浮き始めた。
「お、俺達飛んでるぜ!」
「すごーい!!」
ティトレイとマオは未知の感覚にすっかりうかれていた。
だが一番稀有していたティトレイがきちんと浮いていることにブライトは安堵した。
周りを見ても誰一人としてロケットのように遥か彼方へぶっ飛んで行った者はいない。
ただやはり背伸び一つをとっても力の強弱には個人差があり、浮上の速度に違いがあり全員同じ高さを維持しながら浮上を続けることは叶わなかった。
また、地面に足がついていないためバランスがとれず前のめりになっていたり、後転しながら浮上していく者もいた。
ここでどっちに回転するかで普段体の重心をどっちに傾けているのかが分かるのが案外面白いところでもあった。
「ね、ねぇ、山頂付近って風が強いんじゃない?私達紙吹雪みたいに舞ったりしないわよね?」
太ももあたりを押さえながら前のめりになっているフィオナが疑問を口にする。
「大丈夫だ。俺達を中心に円を描くように何層も重力の壁を作ってあるから風はこねぇよ」
慣れているのかブライトは直立姿勢で腕組みまでしていた。
ブライトが言うには12人がいる地点を中心円としてバームクーヘンのように複数の重さで設定した重力の層で壁を作り風を遮断しているとのことだった。
〜続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート36】
ガルム「ったく、ジークのやつもじれってぇな!」
マリア「そうよねぇ、前回折角フィオナちゃんを押し倒したのだから、最後までいってしまえばよかったのに」
チャリティ「実の両親にあんな現場を見られたジークが可愛そうになってきた……。知らないほうが幸せなことって本当にあるのね」
マリア「それにしてもカイン君がジーク君と喧嘩していたのがもう随分昔のように感じるわねぇ〜」
ガルム「随分前って、ほんの1、2週間前の事だぞ?」
チャリティ「あの世界で生きてるお父さんはそうだろうけど、私達にとっては2、3年ぐらい前のように感じるのよね」
ガルム「何だそれ?つうかチャリティ、俺のことはダディって呼べっていつも言ってるだろ?」
チャリティ「初耳だし絶対に嫌!!」
ガルム「マリア、ついにうちの娘も反抗期がきちまったみたいだぜ……」
マリア「あらあら、そんなに泣かなくてもこの子は随分前から反抗期ですよ?」
チャリティ「あぁもううざったいわね!!ていうかコーナーは!?」
ガルム「あぁ、結局何も閃かなかったな」
マリア「そうね。それに、私もそろそろナイラさん達とお茶会をしたいし帰ろうかしら」
ガルム「なんだもう行くのか?」
マリア「えぇ、また来年ね」
チャリティ「ママ、元気でね!」
マリア「死んでるから大丈夫よ♪」
ガルム「まぁ……そうだな」
マリア「それでは皆さんごきげんよ〜」
―――オマケ―――
ここは始まりの街、帝都ザーフィアス
ユーリ「帝都なのに街なのかよ」
始まりの都、帝都ザーフィアスでは沢山の人間で溢れかえっていた。
通行人A「ようこそザーフィアスへ。お城はこの道をまっすぐだぜ?」
ユーリ「知ってるっての。つうか、あんなヤツ帝都にいたっけか?」
アデコール「ユーリ・ローウェルぅうううう!!!!」
ボッコス「詳しくは知らんがとりあえず逮捕なのだ!!」
ユーリ「は?」
建物の影からアデコールとボッコスが飛び出してきた。
ユーリ「ポ○モンかよ……」
《戦闘開始》
ユーリ「よく分からねぇがどこからでもかかってきな!」
ユーリの蒼破刃
ユーリ「蒼破!」
ミス
ユーリ「は!?んだよミスって!?つうか動けねぇ!!」
アデコールの斬撃。
アデコール「とうっ」
ユーリに500のダメージ。
ユーリ「ざけんな!そんなに食らってねぇだろ!!ミスだミス!」
ボッコスの頭突き。
ボッコス「とおっ!!」
ユーリ「今度こそミスだ!」
会心の一撃!ユーリに1000のダメージ。
ユーリ「何でだよ!?」
ユーリは力尽きた。
アデコール「チュートリアルは必ず勝てるものとは限らないのであ〜る。牢屋に投獄するであ〜る」
ユーリ「くっそ……」
『牢屋』
ユーリ「なるほどね、全滅するとホームに戻される仕組みなわけか」
レイヴン「いやいや青年!ここ青年の家じゃないから!」
ユーリ「じゃあ何でまだなにもしてない俺が牢屋送りにされなきゃならねぇんだよ?」
レイヴン「そのうちイベントが発生するから待ってなって」
ユーリ「イベント?」
兵士A「なぁ知ってるか?『天上王』てやつを倒すと賞金が出るんだってよ」
兵士B「らしいな。しかもその賞金1億5千万ベリーなんだってな」
兵士A「ベリーってガルドに換算するといくらなんだろうな?」
兵士B「そいつは知らねぇが、その『天上王』ってのを倒すためには伝説の武器が必要らしいぜ?」
ユーリ「ふぅ〜ん、1億5千万ベリーねぇ。それだけあればガストで払わされた分がそのまま帰ってくるな」
レイヴン「おや?もしかして責任感じてる?」
ユーリ「は?何の話だ?」
兵士A「その伝説の武器ってのは何処で手に入るんだ?」
兵士B「……誰にも言うなよ?なんでも『シャイコス遺跡』で見たっていう噂が流れてる」
兵士A「マジかよ!こりゃ見張りとかしてる場合じゃねぇな!」
兵士B「だな!俺達で一山当ててやろうぜ!」
レイヴン「あら〜、行っちゃったわね」
ユーリ「この国の行く先とか心配になっちまうが調度良い。今のうちに脱走させてもらうぜ」
レイヴン「脱走って、どうやって?」
ユーリ「まぁみてな」
ユーリは口笛を吹いた。
ラピード「バウ!」
ラピードが現れた。
レイヴン「え?どゆこと?」
ユーリ「よし、ちゃんと鍵持ってんな。その鍵でここを開けてくれ」
ラピードは牢屋の鍵を使った。
ガチャ
ユーリ「うし!じゃあまたな、おっさん!」
レイヴン「またなって、おっさんは置いてけぼりなの!?」
ユーリは牢屋を脱出した。
『クオイの森』
ユーリ「何も準備しないで出てきちまったが、アイテムとかはどうなってんだ?」
ユーリはステータス画面を開いた。
ユーリ「げっ、俺レベル5かよ!?またレベル上げしなきゃなんねぇな」
ラピード「バウ!」
ユーリ「あぁ、確かにこっちの方がヒリヒリして良いかもな。とりあえずレベル上げしながら進んでくか」
ラピード「バウ!」
ユーリ「とか言ってる間に殺気を感じるぜ」
くさむらから野生のカロル先生が飛び出してきた。
ユーリ「や、やせい?」
カロル先生は逃げ出しそうだ。
ユーリ「ちっ、今は少しでも経験値が欲しい。カロル先生にはわりぃが倒させてもらうぜ!?」
ラピードの魔神犬
カロル「痛っ!!」
カロルに100ダメージ。
カロルは倒れた。
カロル「そんなぁ〜……」
ユーリ「カロル先生弱っ!!」
それぞれ10の経験値を獲得!
ユーリ「しかも経験値少なすぎだろ!?はぐれスライムみたいなもんじゃねぇの!?」
5000ゴールド手に入れた。
ユーリ「あ、結構持ってたんだな、カロル先生」
なんとカロルは起き上がり、仲間になりたそうにこちらを見ている。
仲間にしてあげますか?
ユーリ「仲間っつうより、金を返してほしくて泣きそうな顔をしているように見えるんだが……」
仲間にしてあげますか?
ユーリ「まっ、金は拾ったやつのもんだしな。これ以上パーティもいらねぇし『いいえ』だな」
なんとカロルはユーリの背中にしがみつき、仲間になりたそうにこちらを見ている。
仲間にしてあげますか?
ユーリ「マジでなんとだよ!!つうか離せカロル!この森でお前をパーティに入れたら嫌な予感しかしねぇ!!」
なんとカロルはもう2000ガルド刺し出し土下座しながら仲間になりたそうにこちらを見ている。
仲間にしてあげますか?
ユーリ「バカだなぁカロル先生。んなもん、『はい』に決まってんだろ?」
カロルが仲間に加わった!
カロル「ユーリがそんなげんきんな人だとは思わなかったよ……」
ユーリ「冗談だカロル先生。全部返してやるよ」
カロル「本当に!?」
ユーリ「ついでにカロル先生をパーティの買い物係に任命する。責任重大だが、任せていいか?」
カロル「勿論!買いたい物があったら何でもボクに言ってよ!」
ユーリ「さすがカロル先生、期待してるぜ」
〜続く〜
ガルム「ったく、ジークのやつもじれってぇな!」
マリア「そうよねぇ、前回折角フィオナちゃんを押し倒したのだから、最後までいってしまえばよかったのに」
チャリティ「実の両親にあんな現場を見られたジークが可愛そうになってきた……。知らないほうが幸せなことって本当にあるのね」
マリア「それにしてもカイン君がジーク君と喧嘩していたのがもう随分昔のように感じるわねぇ〜」
ガルム「随分前って、ほんの1、2週間前の事だぞ?」
チャリティ「あの世界で生きてるお父さんはそうだろうけど、私達にとっては2、3年ぐらい前のように感じるのよね」
ガルム「何だそれ?つうかチャリティ、俺のことはダディって呼べっていつも言ってるだろ?」
チャリティ「初耳だし絶対に嫌!!」
ガルム「マリア、ついにうちの娘も反抗期がきちまったみたいだぜ……」
マリア「あらあら、そんなに泣かなくてもこの子は随分前から反抗期ですよ?」
チャリティ「あぁもううざったいわね!!ていうかコーナーは!?」
ガルム「あぁ、結局何も閃かなかったな」
マリア「そうね。それに、私もそろそろナイラさん達とお茶会をしたいし帰ろうかしら」
ガルム「なんだもう行くのか?」
マリア「えぇ、また来年ね」
チャリティ「ママ、元気でね!」
マリア「死んでるから大丈夫よ♪」
ガルム「まぁ……そうだな」
マリア「それでは皆さんごきげんよ〜」
―――オマケ―――
ここは始まりの街、帝都ザーフィアス
ユーリ「帝都なのに街なのかよ」
始まりの都、帝都ザーフィアスでは沢山の人間で溢れかえっていた。
通行人A「ようこそザーフィアスへ。お城はこの道をまっすぐだぜ?」
ユーリ「知ってるっての。つうか、あんなヤツ帝都にいたっけか?」
アデコール「ユーリ・ローウェルぅうううう!!!!」
ボッコス「詳しくは知らんがとりあえず逮捕なのだ!!」
ユーリ「は?」
建物の影からアデコールとボッコスが飛び出してきた。
ユーリ「ポ○モンかよ……」
《戦闘開始》
ユーリ「よく分からねぇがどこからでもかかってきな!」
ユーリの蒼破刃
ユーリ「蒼破!」
ミス
ユーリ「は!?んだよミスって!?つうか動けねぇ!!」
アデコールの斬撃。
アデコール「とうっ」
ユーリに500のダメージ。
ユーリ「ざけんな!そんなに食らってねぇだろ!!ミスだミス!」
ボッコスの頭突き。
ボッコス「とおっ!!」
ユーリ「今度こそミスだ!」
会心の一撃!ユーリに1000のダメージ。
ユーリ「何でだよ!?」
ユーリは力尽きた。
アデコール「チュートリアルは必ず勝てるものとは限らないのであ〜る。牢屋に投獄するであ〜る」
ユーリ「くっそ……」
『牢屋』
ユーリ「なるほどね、全滅するとホームに戻される仕組みなわけか」
レイヴン「いやいや青年!ここ青年の家じゃないから!」
ユーリ「じゃあ何でまだなにもしてない俺が牢屋送りにされなきゃならねぇんだよ?」
レイヴン「そのうちイベントが発生するから待ってなって」
ユーリ「イベント?」
兵士A「なぁ知ってるか?『天上王』てやつを倒すと賞金が出るんだってよ」
兵士B「らしいな。しかもその賞金1億5千万ベリーなんだってな」
兵士A「ベリーってガルドに換算するといくらなんだろうな?」
兵士B「そいつは知らねぇが、その『天上王』ってのを倒すためには伝説の武器が必要らしいぜ?」
ユーリ「ふぅ〜ん、1億5千万ベリーねぇ。それだけあればガストで払わされた分がそのまま帰ってくるな」
レイヴン「おや?もしかして責任感じてる?」
ユーリ「は?何の話だ?」
兵士A「その伝説の武器ってのは何処で手に入るんだ?」
兵士B「……誰にも言うなよ?なんでも『シャイコス遺跡』で見たっていう噂が流れてる」
兵士A「マジかよ!こりゃ見張りとかしてる場合じゃねぇな!」
兵士B「だな!俺達で一山当ててやろうぜ!」
レイヴン「あら〜、行っちゃったわね」
ユーリ「この国の行く先とか心配になっちまうが調度良い。今のうちに脱走させてもらうぜ」
レイヴン「脱走って、どうやって?」
ユーリ「まぁみてな」
ユーリは口笛を吹いた。
ラピード「バウ!」
ラピードが現れた。
レイヴン「え?どゆこと?」
ユーリ「よし、ちゃんと鍵持ってんな。その鍵でここを開けてくれ」
ラピードは牢屋の鍵を使った。
ガチャ
ユーリ「うし!じゃあまたな、おっさん!」
レイヴン「またなって、おっさんは置いてけぼりなの!?」
ユーリは牢屋を脱出した。
『クオイの森』
ユーリ「何も準備しないで出てきちまったが、アイテムとかはどうなってんだ?」
ユーリはステータス画面を開いた。
ユーリ「げっ、俺レベル5かよ!?またレベル上げしなきゃなんねぇな」
ラピード「バウ!」
ユーリ「あぁ、確かにこっちの方がヒリヒリして良いかもな。とりあえずレベル上げしながら進んでくか」
ラピード「バウ!」
ユーリ「とか言ってる間に殺気を感じるぜ」
くさむらから野生のカロル先生が飛び出してきた。
ユーリ「や、やせい?」
カロル先生は逃げ出しそうだ。
ユーリ「ちっ、今は少しでも経験値が欲しい。カロル先生にはわりぃが倒させてもらうぜ!?」
ラピードの魔神犬
カロル「痛っ!!」
カロルに100ダメージ。
カロルは倒れた。
カロル「そんなぁ〜……」
ユーリ「カロル先生弱っ!!」
それぞれ10の経験値を獲得!
ユーリ「しかも経験値少なすぎだろ!?はぐれスライムみたいなもんじゃねぇの!?」
5000ゴールド手に入れた。
ユーリ「あ、結構持ってたんだな、カロル先生」
なんとカロルは起き上がり、仲間になりたそうにこちらを見ている。
仲間にしてあげますか?
ユーリ「仲間っつうより、金を返してほしくて泣きそうな顔をしているように見えるんだが……」
仲間にしてあげますか?
ユーリ「まっ、金は拾ったやつのもんだしな。これ以上パーティもいらねぇし『いいえ』だな」
なんとカロルはユーリの背中にしがみつき、仲間になりたそうにこちらを見ている。
仲間にしてあげますか?
ユーリ「マジでなんとだよ!!つうか離せカロル!この森でお前をパーティに入れたら嫌な予感しかしねぇ!!」
なんとカロルはもう2000ガルド刺し出し土下座しながら仲間になりたそうにこちらを見ている。
仲間にしてあげますか?
ユーリ「バカだなぁカロル先生。んなもん、『はい』に決まってんだろ?」
カロルが仲間に加わった!
カロル「ユーリがそんなげんきんな人だとは思わなかったよ……」
ユーリ「冗談だカロル先生。全部返してやるよ」
カロル「本当に!?」
ユーリ「ついでにカロル先生をパーティの買い物係に任命する。責任重大だが、任せていいか?」
カロル「勿論!買いたい物があったら何でもボクに言ってよ!」
ユーリ「さすがカロル先生、期待してるぜ」
〜続く〜