第58話『雹と雪原』
「バーンストライク!」
「ストーンブレイク!」
ヒルダとマオが同時に詠唱を終わらせる。
距離が空いていたジークやヴェイグの目の前を地面が隆起し、ギュナルスを囲んだ後ギュナルスの足元の地面が彼を突き上げるようにして隆起する。
それをギュナルスは跳躍することで回避し、そのまま空中で斜め上へ向かって一閃を振るう。
すると、眼前にまで迫っていた炎の球が真っ二つに切り裂かれ、ギュナルスを避けるようにしながら地上へ降り注ぐ。
「ふむ、今のは敵ながら絶妙のタイミングだったじゃないか?」
ギュナルスは地上に着地しつつ、不適に笑う。
「だが、その分今のチャンスを活かせなかったのは大きいぞ」
着地した瞬間を見計らっていたヴェイグ、ティトレイ、ジーク、カイン、ユージーン、ルルの6人がギュナルスを取り囲むように四方八方から攻撃を加える。
「閃空裂破!」
ギュナルスは身をねじり、跳躍しながら回転切りをすると、6人は弾き飛ばされる。
「紅蓮剣!」
ギュナルスは更に追撃をかけるかのように上空から剣を振るい、炎を纏った剣圧を飛ばす。
しかしそれは今ギュナルスの真下で尻餅をついている6人へ向けたものではなかった。
「くっ!」
扇を開いていたフィオナに向けられたものだった。
フィオナは船上にて特訓していた時のことをとっさに思い出し、扇を閉じてバックステップで着弾を回避する。
それでも紅蓮の剣圧はフィオナの足元に着弾し、爆風が雪を巻き上げフィオナを飲み込んだ。
「きゃあっ!」
「ちぃ!ちょこまかと!!」
ブライトはギュナルスの地面に照準を合わせる。
先程の6人は着地した瞬間を狙ったため間に合わなかった。
ならば着地する寸前を狙う。
これならばたとえギュナルスであろうとも回避はできない。
「空襲剣!」
しかしギュナルスは落下中にもかかわらず「Z」の文字を描くように変則的な動きを見せる。
そして斜め急降下した後地面を蹴り、ブライトとの距離を瞬時に詰めるとすれ違い様に一閃を入れる。
「な……」
計算し尽された剣舞に一言を漏らすのがやっとだった。
瞬間、ブライトの肩から腰までたすきがけのように傷がパックリと開き、血が噴出す。
「ブライトさん!!」
「先生!!」
フィオナの回復をしていたアニーがブライトの元へと走るが、ジークの顔面が蒼白に染まる。
「教師が教師なら生徒も生徒という訳か」
気付けばジークのすぐ側面でギュナルは姿勢を低くして居合いの構えをとっていた。
ジークは咄嗟に距離をとろうとする。
しかし雪に足を滑らせ、体勢を崩してしまう。
「やはり経験の差が仇になったな」
ジークは積雪地帯での戦闘の経験は無い。
それに比べてギュナルスは様々な環境を経験をしている。
だが、12人の中には降雪地帯のスペシャリストがいることを忘れてはならない。
「真空破斬!」
「無影衝!」
ギュナルスが鞘から剣を抜きながら鎌井達のような斬撃を飛ばしてくるのと同時にヴェイグは体勢を崩しつつあるジークを体当たりで退かしながら大剣を横凪に振るい、一太刀にて真空派を全て打ち消した。
「経験で言うなら俺はお前よりも上だ、ギュナルス」
曇天の空より氷の礫がポロポロと降り始める。
どうやら雹(ひょう)が降り始めたらしい。
しかしヴェイグは気にも留めずにギュナルスとの間合いを詰め、大剣を振り下ろす。
ギュナルスは剣を斜めにして構え、ギギギギギと音を立てながら大剣を受け流す。
大剣を相手に普通の剣が鍔迫り合いに持ち込もうと正面から受け止めればその衝撃で手首がいかれてしまう。
そのためギュナルスは大剣をいなすように受け流し、大剣を振りぬいたヴェイグに隙が生まれる。
そこへギュナルスは剣を横に振るうが、ヴェイグの斬り上げが予想以上の速度で到達し、弾かれる。
「ほう?」
ギュナルスは一旦距離をとるためにバックステップをするがそれでもヴェイグとの距離が開けず、ヴェイグが突き出す大剣を頬スレスレでかわす。
(このスピードは何だ?ヴェイグにここまでのスピードはなかったはずだが……)
よくみるとヴェイグの体が青白く光っていた。
実はヴェイグはジークの加勢に入る前に絶・瞬影迅という錬術をかけていた。
それによりスピードが上昇し、更に雪原という土地も手伝って何時も以上の速度が出ていた。
いや、厳密にはそう見えていただけにすぎない。
いくら雪原での戦闘に経験のあるギュナルスでもそれは転ばないように立ち回る術を知っているだけで歩き方を熟知しているわけではない。
それに対してヴェイグは生まれた時から雪と土の上を何度も歩いているため、歩き方から走り方まで体に染み付いている。
したがってギュナルスが無意識に速度を殺して移動しているのに対してヴェイグは平然と通常速度で追うためヴェイグが早く動いてみえてしまう。
「瞬迅槍!」
雹(ひょう)が一層激しく降りしきる中、その氷の礫を弾きながらユージーンが槍を持って突進する。
ギュナルスはユージーンの斜め後方に視線を送ってからユージーンの槍さえも受け流し、ユージーンの軌道がギュナルスの斜め右へとずれる。
すると、走ってきていたカインと突然進路が変わったユージーンがぶつかってしまい、絡まるように転ぶ。
「絶氷斬!」
真空破を放つために一度剣を鞘に収めるギュナルスにヴェイグは横から氷を纏った大剣で斬りかかる。
そこで仕方なくギュナルスは瞬時にターゲットを変更しヴェイグへ向かって真空破を放ち、弾き返す。
「飛燕連脚!」
今度はジークがギュナルスに飛び蹴りを繰り出す。
しかしギュナルスは左手でジークの足首を掴むと、ユージーン達が倒れている方向から90度向きを変え、こちらに走ってきているルルに向かって放り投げた。
「ふえっ!?」
ルルは驚きつつも咄嗟に如意棒を走りながら地面に突き刺すと棒高跳びの要領で雹が降りしきる曇天へ向かって跳躍した。
そして放り投げられたジークとルルが空中ですれ違う中、ルルは如意棒を振りかぶり降下と共にギュナルスに振り下ろした。
今回は如意棒を巨大化させてはいない。
巨大化させる時間を省いてその分攻撃へ転じた結果、ギュナルスは避ける時間はなく剣を横に構えてガードした。
(ん?何で今……)
「扇翔閃!」
ジンがギュナルスの挙動に不信感を抱く中、ルルは鍔迫り合いをしようとはせずに滞空したままギュナルスが剣で如意棒を押し返す力を利用して後ろへ飛んだ。
その直後、調度ルルが視界からいなくなった瞬間に暗い空からティトレイの放ったボウガンの弾が飛来する。
「ちぃ!!」
ギュナルスは眉をしかめながら剣を横に一閃振るい、剣圧にてボウガンの弾を払い落とす。
「弾けろ。セイントバブル!」
ギュナルスが孤立したところを狙ってジンが導術を発動させる。
ギュナルスの足元に水の溜まり場が発生し、泡が浮上し始める。
その泡が弾き始める前にギュナルスは水の溜まり場から脱出するとヒルダと目が合った。
「この時を待っていたわ。サンダースピア!」
ヒルダはニヤリと笑いながら紫電の矢を飛ばす。
その槍は光の速度でギュナルスへ到達し、ギュナルスは避ける間もなく何とか剣でガードする。
剣を起点に光が拡散するが、衝撃も物凄いものでギュナルスの体が後ろへ後ろへと簡単に押し出されていく。
「アーチシェイド!」
そこへ追い討ちをかけるようにマオが導術を発動させる。
ギュナルスの眼前に闇の風が迫り来る。
それをギュナルスは滑る足元を利用し、サンダースピアの威力を敢えて受け入れることで後方へと更に地面の上を滑りながら下がる。
すると闇の風はギュナルスの目の前の空間を切り裂き、ギュナルスを貫こうとしていた紫電の矢も収縮していく。
「確かに……元教官ってのは伊達じゃねぇみたいだな……」
ブライトがアニーの陣の中で肩膝を付きながら言う。
マオやヒルダは先程から何度も上級導術を詠唱し、発動するタイミングを見計らっていた。
しかし、仲間が密集しているポイントには巻き添えを出してしまうため広範囲の術は使えない。
そのためギュナルスが距離をとる瞬間を狙っていたのだが、ヴェイグ達が離れようとすればギュナルスが誰かに接近し、逆にギュナルスが距離をとったとしても前衛の内の誰かの陰に入ってしまい発動できずにいた。
そこで威力は格段に落ちるがピンポイントで狙える下級導術に切り替え、タイミングを図りようやく巡ってきたチャンスだったがそれでも先程のような結果で終わってしまった。
脳裏に先程ギュナルが言っていた「今のチャンスを逃がしたのは大きい」という言葉が蘇る。
確かに孤立したギュナルスを狙って上級導術を放てたのはあれが最後だった。
そこからチャンスがここまで巡ってこないということはギュナルスは12人全員の立ち居地、陣形、スピードを計算して動いているということになる。
現に一番先に潰しておかなければならない後衛にここまで攻撃をしかけてこないということは導術を発動させることさえさせないという自信の表れなのかもしれない。
空から相変わらず雹(ひょう)が降り頻り、立っているだけでもダメージを負ってしまう上に視界も狭くなってくる。
しかしそれは相手も同じ条件である。
ヴェイグはなりふり構わずギュナルスに大剣を振り下ろす。
「ねぇ、思ったんだけどさ……」
ジンは今後衛にいるマオ、ヒルダ、アニー、ブライト、フィオナを近くに呼び、小さな声で小さな疑問を口にする。
すると、フィオナが小さく頷いた。
「多分合ってると思うわ。私もそう思ってたから……」
「何でも良い、やれることは片っ端からやってこうぜ。やれることはまだまだ沢山あるんだからよっ」
なんとか傷口が塞がったブライトが笑いながらフィオナの背中を叩くと、ジークと同じことを言われたフィオナは小さく笑った。
(ほう?何か思いついたようだな)
ギュナルスはティトレイとカインの同時攻撃を柳のように受け流しつつ、小さく固まって話し合いをしているフィオナ達を見ていた。
(何を思いつこうと無駄だというのに)
背後からユージーンとジークが間合いに入ったことを察知し、閃空裂破により弾き飛ばす。
そして空襲剣により「Z」の軌道を描きながら急降下することでルルとヴェイグの陣形もかき乱す。
喧嘩も戦争も数が勝敗を分けるのは当然である。
いくら世界チャンピオンと言えども100人が束になって襲ってくれば体力が尽きて負けてしまう。
しかし、1人を拳銃を持った100人が円形に囲んだ場合は別である。
中央にいる標的を誰かが外せば、その対面にいる誰かが死ぬことになる。
そうやって同士討ちを狙えば数の暴力はそのまま相手に跳ね返る。
立ち回り方一つで有利にも不利にもできる。
更にデュナルスの場合厄介なのが槍や大剣の間合いを熟知していることにあった。
ぎりぎりでかわされてしまうため鍔迫り合いにさえも持ち込むことができないためギュナルスの動きを止めることもできない。
「教官が教えるのは何も剣だけではない。様々な武器を教えるために一通りの武器は触ったつもりだ。しかしこれでは私が最後に教えた生徒のほうがよっぽど面白味があったかもしれんな」
ギュナルスは心底がっかりしたように眉をひそめながらユージーンとティトレイの攻撃を同時に避ける。
〜続く〜
「ストーンブレイク!」
ヒルダとマオが同時に詠唱を終わらせる。
距離が空いていたジークやヴェイグの目の前を地面が隆起し、ギュナルスを囲んだ後ギュナルスの足元の地面が彼を突き上げるようにして隆起する。
それをギュナルスは跳躍することで回避し、そのまま空中で斜め上へ向かって一閃を振るう。
すると、眼前にまで迫っていた炎の球が真っ二つに切り裂かれ、ギュナルスを避けるようにしながら地上へ降り注ぐ。
「ふむ、今のは敵ながら絶妙のタイミングだったじゃないか?」
ギュナルスは地上に着地しつつ、不適に笑う。
「だが、その分今のチャンスを活かせなかったのは大きいぞ」
着地した瞬間を見計らっていたヴェイグ、ティトレイ、ジーク、カイン、ユージーン、ルルの6人がギュナルスを取り囲むように四方八方から攻撃を加える。
「閃空裂破!」
ギュナルスは身をねじり、跳躍しながら回転切りをすると、6人は弾き飛ばされる。
「紅蓮剣!」
ギュナルスは更に追撃をかけるかのように上空から剣を振るい、炎を纏った剣圧を飛ばす。
しかしそれは今ギュナルスの真下で尻餅をついている6人へ向けたものではなかった。
「くっ!」
扇を開いていたフィオナに向けられたものだった。
フィオナは船上にて特訓していた時のことをとっさに思い出し、扇を閉じてバックステップで着弾を回避する。
それでも紅蓮の剣圧はフィオナの足元に着弾し、爆風が雪を巻き上げフィオナを飲み込んだ。
「きゃあっ!」
「ちぃ!ちょこまかと!!」
ブライトはギュナルスの地面に照準を合わせる。
先程の6人は着地した瞬間を狙ったため間に合わなかった。
ならば着地する寸前を狙う。
これならばたとえギュナルスであろうとも回避はできない。
「空襲剣!」
しかしギュナルスは落下中にもかかわらず「Z」の文字を描くように変則的な動きを見せる。
そして斜め急降下した後地面を蹴り、ブライトとの距離を瞬時に詰めるとすれ違い様に一閃を入れる。
「な……」
計算し尽された剣舞に一言を漏らすのがやっとだった。
瞬間、ブライトの肩から腰までたすきがけのように傷がパックリと開き、血が噴出す。
「ブライトさん!!」
「先生!!」
フィオナの回復をしていたアニーがブライトの元へと走るが、ジークの顔面が蒼白に染まる。
「教師が教師なら生徒も生徒という訳か」
気付けばジークのすぐ側面でギュナルは姿勢を低くして居合いの構えをとっていた。
ジークは咄嗟に距離をとろうとする。
しかし雪に足を滑らせ、体勢を崩してしまう。
「やはり経験の差が仇になったな」
ジークは積雪地帯での戦闘の経験は無い。
それに比べてギュナルスは様々な環境を経験をしている。
だが、12人の中には降雪地帯のスペシャリストがいることを忘れてはならない。
「真空破斬!」
「無影衝!」
ギュナルスが鞘から剣を抜きながら鎌井達のような斬撃を飛ばしてくるのと同時にヴェイグは体勢を崩しつつあるジークを体当たりで退かしながら大剣を横凪に振るい、一太刀にて真空派を全て打ち消した。
「経験で言うなら俺はお前よりも上だ、ギュナルス」
曇天の空より氷の礫がポロポロと降り始める。
どうやら雹(ひょう)が降り始めたらしい。
しかしヴェイグは気にも留めずにギュナルスとの間合いを詰め、大剣を振り下ろす。
ギュナルスは剣を斜めにして構え、ギギギギギと音を立てながら大剣を受け流す。
大剣を相手に普通の剣が鍔迫り合いに持ち込もうと正面から受け止めればその衝撃で手首がいかれてしまう。
そのためギュナルスは大剣をいなすように受け流し、大剣を振りぬいたヴェイグに隙が生まれる。
そこへギュナルスは剣を横に振るうが、ヴェイグの斬り上げが予想以上の速度で到達し、弾かれる。
「ほう?」
ギュナルスは一旦距離をとるためにバックステップをするがそれでもヴェイグとの距離が開けず、ヴェイグが突き出す大剣を頬スレスレでかわす。
(このスピードは何だ?ヴェイグにここまでのスピードはなかったはずだが……)
よくみるとヴェイグの体が青白く光っていた。
実はヴェイグはジークの加勢に入る前に絶・瞬影迅という錬術をかけていた。
それによりスピードが上昇し、更に雪原という土地も手伝って何時も以上の速度が出ていた。
いや、厳密にはそう見えていただけにすぎない。
いくら雪原での戦闘に経験のあるギュナルスでもそれは転ばないように立ち回る術を知っているだけで歩き方を熟知しているわけではない。
それに対してヴェイグは生まれた時から雪と土の上を何度も歩いているため、歩き方から走り方まで体に染み付いている。
したがってギュナルスが無意識に速度を殺して移動しているのに対してヴェイグは平然と通常速度で追うためヴェイグが早く動いてみえてしまう。
「瞬迅槍!」
雹(ひょう)が一層激しく降りしきる中、その氷の礫を弾きながらユージーンが槍を持って突進する。
ギュナルスはユージーンの斜め後方に視線を送ってからユージーンの槍さえも受け流し、ユージーンの軌道がギュナルスの斜め右へとずれる。
すると、走ってきていたカインと突然進路が変わったユージーンがぶつかってしまい、絡まるように転ぶ。
「絶氷斬!」
真空破を放つために一度剣を鞘に収めるギュナルスにヴェイグは横から氷を纏った大剣で斬りかかる。
そこで仕方なくギュナルスは瞬時にターゲットを変更しヴェイグへ向かって真空破を放ち、弾き返す。
「飛燕連脚!」
今度はジークがギュナルスに飛び蹴りを繰り出す。
しかしギュナルスは左手でジークの足首を掴むと、ユージーン達が倒れている方向から90度向きを変え、こちらに走ってきているルルに向かって放り投げた。
「ふえっ!?」
ルルは驚きつつも咄嗟に如意棒を走りながら地面に突き刺すと棒高跳びの要領で雹が降りしきる曇天へ向かって跳躍した。
そして放り投げられたジークとルルが空中ですれ違う中、ルルは如意棒を振りかぶり降下と共にギュナルスに振り下ろした。
今回は如意棒を巨大化させてはいない。
巨大化させる時間を省いてその分攻撃へ転じた結果、ギュナルスは避ける時間はなく剣を横に構えてガードした。
(ん?何で今……)
「扇翔閃!」
ジンがギュナルスの挙動に不信感を抱く中、ルルは鍔迫り合いをしようとはせずに滞空したままギュナルスが剣で如意棒を押し返す力を利用して後ろへ飛んだ。
その直後、調度ルルが視界からいなくなった瞬間に暗い空からティトレイの放ったボウガンの弾が飛来する。
「ちぃ!!」
ギュナルスは眉をしかめながら剣を横に一閃振るい、剣圧にてボウガンの弾を払い落とす。
「弾けろ。セイントバブル!」
ギュナルスが孤立したところを狙ってジンが導術を発動させる。
ギュナルスの足元に水の溜まり場が発生し、泡が浮上し始める。
その泡が弾き始める前にギュナルスは水の溜まり場から脱出するとヒルダと目が合った。
「この時を待っていたわ。サンダースピア!」
ヒルダはニヤリと笑いながら紫電の矢を飛ばす。
その槍は光の速度でギュナルスへ到達し、ギュナルスは避ける間もなく何とか剣でガードする。
剣を起点に光が拡散するが、衝撃も物凄いものでギュナルスの体が後ろへ後ろへと簡単に押し出されていく。
「アーチシェイド!」
そこへ追い討ちをかけるようにマオが導術を発動させる。
ギュナルスの眼前に闇の風が迫り来る。
それをギュナルスは滑る足元を利用し、サンダースピアの威力を敢えて受け入れることで後方へと更に地面の上を滑りながら下がる。
すると闇の風はギュナルスの目の前の空間を切り裂き、ギュナルスを貫こうとしていた紫電の矢も収縮していく。
「確かに……元教官ってのは伊達じゃねぇみたいだな……」
ブライトがアニーの陣の中で肩膝を付きながら言う。
マオやヒルダは先程から何度も上級導術を詠唱し、発動するタイミングを見計らっていた。
しかし、仲間が密集しているポイントには巻き添えを出してしまうため広範囲の術は使えない。
そのためギュナルスが距離をとる瞬間を狙っていたのだが、ヴェイグ達が離れようとすればギュナルスが誰かに接近し、逆にギュナルスが距離をとったとしても前衛の内の誰かの陰に入ってしまい発動できずにいた。
そこで威力は格段に落ちるがピンポイントで狙える下級導術に切り替え、タイミングを図りようやく巡ってきたチャンスだったがそれでも先程のような結果で終わってしまった。
脳裏に先程ギュナルが言っていた「今のチャンスを逃がしたのは大きい」という言葉が蘇る。
確かに孤立したギュナルスを狙って上級導術を放てたのはあれが最後だった。
そこからチャンスがここまで巡ってこないということはギュナルスは12人全員の立ち居地、陣形、スピードを計算して動いているということになる。
現に一番先に潰しておかなければならない後衛にここまで攻撃をしかけてこないということは導術を発動させることさえさせないという自信の表れなのかもしれない。
空から相変わらず雹(ひょう)が降り頻り、立っているだけでもダメージを負ってしまう上に視界も狭くなってくる。
しかしそれは相手も同じ条件である。
ヴェイグはなりふり構わずギュナルスに大剣を振り下ろす。
「ねぇ、思ったんだけどさ……」
ジンは今後衛にいるマオ、ヒルダ、アニー、ブライト、フィオナを近くに呼び、小さな声で小さな疑問を口にする。
すると、フィオナが小さく頷いた。
「多分合ってると思うわ。私もそう思ってたから……」
「何でも良い、やれることは片っ端からやってこうぜ。やれることはまだまだ沢山あるんだからよっ」
なんとか傷口が塞がったブライトが笑いながらフィオナの背中を叩くと、ジークと同じことを言われたフィオナは小さく笑った。
(ほう?何か思いついたようだな)
ギュナルスはティトレイとカインの同時攻撃を柳のように受け流しつつ、小さく固まって話し合いをしているフィオナ達を見ていた。
(何を思いつこうと無駄だというのに)
背後からユージーンとジークが間合いに入ったことを察知し、閃空裂破により弾き飛ばす。
そして空襲剣により「Z」の軌道を描きながら急降下することでルルとヴェイグの陣形もかき乱す。
喧嘩も戦争も数が勝敗を分けるのは当然である。
いくら世界チャンピオンと言えども100人が束になって襲ってくれば体力が尽きて負けてしまう。
しかし、1人を拳銃を持った100人が円形に囲んだ場合は別である。
中央にいる標的を誰かが外せば、その対面にいる誰かが死ぬことになる。
そうやって同士討ちを狙えば数の暴力はそのまま相手に跳ね返る。
立ち回り方一つで有利にも不利にもできる。
更にデュナルスの場合厄介なのが槍や大剣の間合いを熟知していることにあった。
ぎりぎりでかわされてしまうため鍔迫り合いにさえも持ち込むことができないためギュナルスの動きを止めることもできない。
「教官が教えるのは何も剣だけではない。様々な武器を教えるために一通りの武器は触ったつもりだ。しかしこれでは私が最後に教えた生徒のほうがよっぽど面白味があったかもしれんな」
ギュナルスは心底がっかりしたように眉をひそめながらユージーンとティトレイの攻撃を同時に避ける。
〜続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート41】
takeshi「ども〜!滑り込みセーフ!!なtakeshiです」
ガルム「あっぶねぇ〜なぁ!今月後何時間だよ!?」
チャリティ「確かに6月中に最低1回は更新するって言ってたけどギリギリすぎるんじゃない?」
takeshi「そんなこと言ったってしょうがないじゃないですか、今月は忙しかったんですから」
チャリティ「というか、先月が出来すぎてたのよね……」
takeshi「マリアさんからのプレッシャーとか圧力とかありましたし……」
ガルム「は?何の話だ?」
チャリティ「お母さんって、お父さんにゾッコンだからお父さんに対しては真っ白なのよ」
takeshi「あんなに真っ黒なのに!?」
ガルム「誰が真っ黒だって?」
チャリティ「こ、こっちの話!」
takeshi「ではでは今回はまず本編の話をしましょう。今回本編中に出てきた「数の暴力」ですが、まぁRPGをやっている人間なら誰しも思うことですよね!」
ガルム「喧嘩するにしたって1対5よりも5対1のほうが断然有利だしな」
チャリティ「そう?」
takeshi「まぁ例外もあります。喧嘩番長のチャリティさんみたいに相手が何人でかかってこようと1人で何とかできる人もいますからね」
チャリティ「勝手に番長にしないでくれる!?」
ガルム「でもお前、ヴィーナが愚痴ってたぞ?もう少し手加減してあげてほしいってな」
チャリティ「うぅ……」
takeshi「ちなみにしっくりこない人のためにリアルでの例を挙げると、ガッツ石松さんは10人の暴徒に囲まれても一人で全てKOしたらしいです。話によるとフェンスを背にしていたらしく、その立ち居地が良かったんでしょうね」
ガルム「背後から釘バットで殴られたら避けられねぇからか」
チャリティ「なるほど、釘バットで殴られてよろけた隙にタコ殴りにされる可能性があるのね」
takeshi「それに対してフェンスを背にしていれば敵は視界の中からしか攻めてこないので避けるのも容易いということです。で、逆に火力のある武器を持った人間が集まりすぎるのも問題なのですが、それは本編で述べたとおりです」
チャリティ「つまりギュナルスはとんでもない凶器を持った暴徒に囲まれた状態ってわけね!」
takeshi「その中の4分の1をあなたの兄妹が占めているんですがね……」
チャリティ「そ、そんなことより!お父さんメッセージは考えてきた!?」
ガルム「いきなりだな!!まぁ……一応考えてきたけどよ……」
takeshi「良い大人が何を恥ずかしがってるんですか?ガルムさんが顔を赤くしても誰も得をしないのですが」
ガルム「てめぇすり潰すぞ!!」
チャリティ「まぁまぁ。それで、どういう内容なの?」
ガルム「本当に今言うのか?」
takeshi「改めて仕切りなおしても無駄にハードルが上がるだけですよ?」
ガルム「それもそうか。だが一言しか考えてねぇぞ?」
takeshi「いいから早く!どんだけ尺、もとい文字数を使うんですか!?」
ガルム「……漬物、美味かったぜ?」
チャリティ「……それだけ?」
ガルム「おう」
takeshi「しょうもな」
ガルム「仕方ねぇだろうが!そもそも俺は死んでねぇんだからケナードの爺さんみたいにまたここに来れるんだろ!?だったら今無理してメッセージとか言う必要ねぇだろうが!!」
takeshi「あ、気付いちゃいました?」
ガルム「てめぇ、確信犯か……!!」
チャリティ「…………」
ガルム「おい、チャリティが「Σ(゜Д゜)」みたいな顔して止まってるぞ」
takeshi「一本取られたぜ!みたいな顔されても困るんですけどね……。ではガルムさんもまた来年ということで」
ガルム「おう!来年までには金持ちになってろよ!」
takeshi「ムムム!善処します……。ではまた〜」
―――オマケ―――
『ダングレスト』
カロル「敵の本国なのにあっさりと着けちゃうんだね……」
ヨーデル「僕と一緒ですからね。父はユニオン本部にいるはずです」
『ユニオン本部廊下』
ヨーデル「父上、入ってもよろしいでしょうか?」
「……」
エステリーゼ「誰もいないのでしょうか?」
フレン「いえ、何時もこのように話しかけているのですが決まって返事が返ってこないのです」
ユーリ「だったら強引にでも入っちまおうぜ。やれ、カロル」
カロル「了解!」
フレン「ちょっ、君達!」
カロルはピッキングをした
―――ガチャ
鍵が開いたようだ
『ユニオン本部・ドンの部屋』
ユーリ「お邪魔するぜっと」
エステリーゼ「ユーリ!ドンが倒れてます!!」
ヨーデル「そんな!父上!」
返事が無い。
ヨーデル「目を覚ましてください父上!!」
返事が無い、ただの屍のようだ。
ヨーデル「くっ!一体誰がこんなことを……!?」
ダオス「私だ」
フレン「お前だったのか……!!」
ユーリ「フレン知ってんのか!?」
フレン「いや知らないが、何となくそう答えたくなっただけだ!」
ダオス「私は魔王ダオス。この世界を魔界に取り込むため戦争を起こさせ混乱に乗じて破権をのっとろうとしたのだが、とんだ邪魔が入ったものだ」
エステリーゼ「ユーリ、この人は良い人なんです?」
ユーリ「人かどうかは分からねぇが、1人でベラベラと喋っちまうあたり相当なおっちょこちょいみてぇだな」
フレン「では貴様が裏でダングレストを操っていたというのか!?」
ダオス「いかにも。程なく魔界の軍勢が準備を整えこの世界に侵攻してくるだろう。それまで首を洗って待っているんだな」
ダオスは姿を消した。
カロル「ま、魔界からの軍勢って…ま、まずいんじゃない!?」
ヨーデル「皆さんにお願いがあります。僕の父上の仇をとり、この世界を護ってはくれないでしょうか?」
フレン「勿論です殿下!ユーリも良いだろ?」
ユーリ「構わないぜ?魔界に喧嘩を売るって考えるとワクワクが止まらねぇぜ!」
カロル「あー、ユーリの変なスイッチが入っちゃったみたいだね……」
ラピード「バウ!」
ユーリ「あぁ、勿論お前も一緒だぜラピード」
ハリー「な、何だこれは!?お前等がドンを殺したのか!?」
エステリーゼ「違うんです!これはダオスという人が……」
ハリー「言い逃れをする気か!?」
ヨーデル「待ってください、彼女の言っていることは本当です」
ハリー「どうだかな。貴様が嘘を言っているという可能性もある。ドンは俺の1人の祖父だったんだぞ!」
ヨーデル「僕も父親を亡くし悲しいですが、あなたをそんな息子に育てた覚えはありませんよ?」
ハリー「俺もこんな年の近い親父に育てられた覚えはないがな」
ユーリ「細かい話はどうでも良いだろ。んなことより、魔界への行き方を知らねぇか?」
ハリー「俺が知る訳ないだろ」
ユーリ「んだよ、魔法使いみたいな名前してるくせに知らねぇのかよ」
ハリー「うるさい黙れ。ア○カバンに送るぞ」
リタ「話は聞かせてもらったわ!!」
エステリーゼ「リタ!?」
カロル「何時の間に!?ていうかどっから来たの!?」
リタ「どっかの誰かさんがアスピオに全然寄らないからこっそり付けて……じゃなかった、あたしもドンに用事があったのよ!!ていうかユーリ!何であんたアスピオに寄んないのよ!?」
ユーリ「アスピオに寄る用事が無かったからな」
エステリーゼ「それでリタの用事とは何なんです?」
リタ「そ、それはどうでもいいでしょ!?それよりあんたら、魔界へ行きたいんですってね?」
フレン「まさか行き方を知っているのかい!?」
リタ「ふっふ〜ん♪あたしを誰だと思ってるわけ?」
ユーリ「寂しがりやのエステルおっかけ野郎とか?」
リタ「誰が寂しがりやよ!!別に、あ、あんたらのことなんか、お、おっかけてないしっ!」
エステリーゼ「リタ、ツンデレは既に時代遅れだそうですよ?」
リタ「んなっ!?誰がツンデレよ誰が!!?」
カロル「それで、魔界へはどうやって行くの?」
リタ「ったく、まぁ良いわ。魔界へは遺跡船という船からゲートが繋がっているってこの前B○○KOFFで買った本に書いてあったわ」
ユーリ「すげぇなあそこ」
エステリーゼ「古本なら何でも置いてあると思っていましたが、そんな物まで置いてるんですね……」
リタ「でもその遺跡船も一筋縄では見つからないらしいわ。遺跡船に行くには特別な船が必要で、もし行ったとしても変な種族が入り口を護っているらしいのよね」
ユーリ「とにかく船が必要ってわけか……」
カロル「ねぇ、調度ダングレストに居るんだし海凶(リヴァイアサン)の爪を頼ってみない?」
ユーリ「そういやあいつら元は海賊だったんだっけか?あんま会いたくはねぇが行ってみるか」
フレン「僕も行くよ」
リタ「勿論あたしもね」
ヨーデル「僕は父の弔いを済ませるのでここに残ります」
リタが仲間になった!
フレンが仲間になった!
『酒場』
イエガー「Oh!誰かと思えば憎きユーリ・ローウェルではないdethか!」
ユーリ「お前英語の混ぜ方変わってねぇか?」
イエガー「ミーは文字通りリバースしたのデス!ビーコウズ、トークの仕方もチェンジしてオフコースというもの!」
リタ「うざさ倍増ね……」
エステリーゼ「あの、私達船を捜しているのですが、譲っていただけませんか?」
イエガー「Ohsit!!ユー達に譲るシップなどナッシング!とセイしたい。バット!ユー達にはこの前ゴーシュをデンジャラシュなディッシュからガードしてくれた恩がありま〜す」
フレン「では船を譲ってくれるんですね!?」
イエガー「おうフール。You are fool信長ザフール」
フレン「最後の言葉は聞き捨てならないのだが……!!」
イエガー「ミーはただでレンタルするとはノットセイング!ユー達はアーセルム号をアンダースタンド?」
エステリーゼ「幽霊船アーセルム号のことです?」
イエガー「イエス。最近、アーセルム号にゴーストがアゲインエンカウントするようなのデース。これではゴーシュとドロワがジョジョジョしてしまいワークどころではありませーん」
リタ「言っておくけどジョジョジョは英語じゃないわよ?」
イエガー「そこでユー達にはゴーストバスターしてきてほしいのデス!」
リタ「んなもん嫌に決まって……」
ユーリ「よく分からねぇが分かったぜ」
リタ「おいコラ!あたしの意見は無視か!?」
ユーリ「別に1週目ん時に素材集めとかで何度も行ってんだから大丈夫だろ?」
リタ「……それもそうね」
エステリーゼ「それで納得しちゃうリタもリタですね……」
イエガー「シップはカプワ・トリム港にありまーす。ガイドを置いておくので目印になるでSHOW。行けば必ずアンダースタンドするはずデス!」
フレン「よし!それでは早速出発しよう!」
ユーリ「どうでも良いがイエガーの喋り方適当すぎねぇか?」
ラピード「バウ!」
『カプア・トリム港』
アレクセイ「待っていたぞユーリ・ローウェル」
フレン「団長!!」
エステリーゼ「イエガーが言ってた目印ってアレクセイのことです?」
アレクセイ「いかにも」
リタ「舞茸の季節にはまだ早いわよ?」
アレクセイ「ふっ、いちいちもっともだな」
リタ「いやまだ一言しか言ってないし」
カロル「でもラッキーだったね!アレクセイが一緒に来てくれるならどんな幽霊が来ても楽勝だね!」
アレクセイ「幽霊だと?あんなものはプラズマにすぎない。そもそも死後の人間が魂だけの姿になるというならシュバーンの体はどう説明するというのか?一度魂が離れたのならば心臓を組み込んだとて生き返るはずが……」
ユーリ「お前もしかして怖いのか?」
アレクセイ「ばばばばばばばば馬鹿な!!ここここここここ、この、このわ、WAWAWA私が怖いだのと……!!」
フレン「……団長、これ以上私が貴方に失望する前に出発しましょう」
アレクセイ「よかろう」
リタ「あのスイッチの切り替え方だけは大したもんね」
〜続く〜
takeshi「ども〜!滑り込みセーフ!!なtakeshiです」
ガルム「あっぶねぇ〜なぁ!今月後何時間だよ!?」
チャリティ「確かに6月中に最低1回は更新するって言ってたけどギリギリすぎるんじゃない?」
takeshi「そんなこと言ったってしょうがないじゃないですか、今月は忙しかったんですから」
チャリティ「というか、先月が出来すぎてたのよね……」
takeshi「マリアさんからのプレッシャーとか圧力とかありましたし……」
ガルム「は?何の話だ?」
チャリティ「お母さんって、お父さんにゾッコンだからお父さんに対しては真っ白なのよ」
takeshi「あんなに真っ黒なのに!?」
ガルム「誰が真っ黒だって?」
チャリティ「こ、こっちの話!」
takeshi「ではでは今回はまず本編の話をしましょう。今回本編中に出てきた「数の暴力」ですが、まぁRPGをやっている人間なら誰しも思うことですよね!」
ガルム「喧嘩するにしたって1対5よりも5対1のほうが断然有利だしな」
チャリティ「そう?」
takeshi「まぁ例外もあります。喧嘩番長のチャリティさんみたいに相手が何人でかかってこようと1人で何とかできる人もいますからね」
チャリティ「勝手に番長にしないでくれる!?」
ガルム「でもお前、ヴィーナが愚痴ってたぞ?もう少し手加減してあげてほしいってな」
チャリティ「うぅ……」
takeshi「ちなみにしっくりこない人のためにリアルでの例を挙げると、ガッツ石松さんは10人の暴徒に囲まれても一人で全てKOしたらしいです。話によるとフェンスを背にしていたらしく、その立ち居地が良かったんでしょうね」
ガルム「背後から釘バットで殴られたら避けられねぇからか」
チャリティ「なるほど、釘バットで殴られてよろけた隙にタコ殴りにされる可能性があるのね」
takeshi「それに対してフェンスを背にしていれば敵は視界の中からしか攻めてこないので避けるのも容易いということです。で、逆に火力のある武器を持った人間が集まりすぎるのも問題なのですが、それは本編で述べたとおりです」
チャリティ「つまりギュナルスはとんでもない凶器を持った暴徒に囲まれた状態ってわけね!」
takeshi「その中の4分の1をあなたの兄妹が占めているんですがね……」
チャリティ「そ、そんなことより!お父さんメッセージは考えてきた!?」
ガルム「いきなりだな!!まぁ……一応考えてきたけどよ……」
takeshi「良い大人が何を恥ずかしがってるんですか?ガルムさんが顔を赤くしても誰も得をしないのですが」
ガルム「てめぇすり潰すぞ!!」
チャリティ「まぁまぁ。それで、どういう内容なの?」
ガルム「本当に今言うのか?」
takeshi「改めて仕切りなおしても無駄にハードルが上がるだけですよ?」
ガルム「それもそうか。だが一言しか考えてねぇぞ?」
takeshi「いいから早く!どんだけ尺、もとい文字数を使うんですか!?」
ガルム「……漬物、美味かったぜ?」
チャリティ「……それだけ?」
ガルム「おう」
takeshi「しょうもな」
ガルム「仕方ねぇだろうが!そもそも俺は死んでねぇんだからケナードの爺さんみたいにまたここに来れるんだろ!?だったら今無理してメッセージとか言う必要ねぇだろうが!!」
takeshi「あ、気付いちゃいました?」
ガルム「てめぇ、確信犯か……!!」
チャリティ「…………」
ガルム「おい、チャリティが「Σ(゜Д゜)」みたいな顔して止まってるぞ」
takeshi「一本取られたぜ!みたいな顔されても困るんですけどね……。ではガルムさんもまた来年ということで」
ガルム「おう!来年までには金持ちになってろよ!」
takeshi「ムムム!善処します……。ではまた〜」
―――オマケ―――
『ダングレスト』
カロル「敵の本国なのにあっさりと着けちゃうんだね……」
ヨーデル「僕と一緒ですからね。父はユニオン本部にいるはずです」
『ユニオン本部廊下』
ヨーデル「父上、入ってもよろしいでしょうか?」
「……」
エステリーゼ「誰もいないのでしょうか?」
フレン「いえ、何時もこのように話しかけているのですが決まって返事が返ってこないのです」
ユーリ「だったら強引にでも入っちまおうぜ。やれ、カロル」
カロル「了解!」
フレン「ちょっ、君達!」
カロルはピッキングをした
―――ガチャ
鍵が開いたようだ
『ユニオン本部・ドンの部屋』
ユーリ「お邪魔するぜっと」
エステリーゼ「ユーリ!ドンが倒れてます!!」
ヨーデル「そんな!父上!」
返事が無い。
ヨーデル「目を覚ましてください父上!!」
返事が無い、ただの屍のようだ。
ヨーデル「くっ!一体誰がこんなことを……!?」
ダオス「私だ」
フレン「お前だったのか……!!」
ユーリ「フレン知ってんのか!?」
フレン「いや知らないが、何となくそう答えたくなっただけだ!」
ダオス「私は魔王ダオス。この世界を魔界に取り込むため戦争を起こさせ混乱に乗じて破権をのっとろうとしたのだが、とんだ邪魔が入ったものだ」
エステリーゼ「ユーリ、この人は良い人なんです?」
ユーリ「人かどうかは分からねぇが、1人でベラベラと喋っちまうあたり相当なおっちょこちょいみてぇだな」
フレン「では貴様が裏でダングレストを操っていたというのか!?」
ダオス「いかにも。程なく魔界の軍勢が準備を整えこの世界に侵攻してくるだろう。それまで首を洗って待っているんだな」
ダオスは姿を消した。
カロル「ま、魔界からの軍勢って…ま、まずいんじゃない!?」
ヨーデル「皆さんにお願いがあります。僕の父上の仇をとり、この世界を護ってはくれないでしょうか?」
フレン「勿論です殿下!ユーリも良いだろ?」
ユーリ「構わないぜ?魔界に喧嘩を売るって考えるとワクワクが止まらねぇぜ!」
カロル「あー、ユーリの変なスイッチが入っちゃったみたいだね……」
ラピード「バウ!」
ユーリ「あぁ、勿論お前も一緒だぜラピード」
ハリー「な、何だこれは!?お前等がドンを殺したのか!?」
エステリーゼ「違うんです!これはダオスという人が……」
ハリー「言い逃れをする気か!?」
ヨーデル「待ってください、彼女の言っていることは本当です」
ハリー「どうだかな。貴様が嘘を言っているという可能性もある。ドンは俺の1人の祖父だったんだぞ!」
ヨーデル「僕も父親を亡くし悲しいですが、あなたをそんな息子に育てた覚えはありませんよ?」
ハリー「俺もこんな年の近い親父に育てられた覚えはないがな」
ユーリ「細かい話はどうでも良いだろ。んなことより、魔界への行き方を知らねぇか?」
ハリー「俺が知る訳ないだろ」
ユーリ「んだよ、魔法使いみたいな名前してるくせに知らねぇのかよ」
ハリー「うるさい黙れ。ア○カバンに送るぞ」
リタ「話は聞かせてもらったわ!!」
エステリーゼ「リタ!?」
カロル「何時の間に!?ていうかどっから来たの!?」
リタ「どっかの誰かさんがアスピオに全然寄らないからこっそり付けて……じゃなかった、あたしもドンに用事があったのよ!!ていうかユーリ!何であんたアスピオに寄んないのよ!?」
ユーリ「アスピオに寄る用事が無かったからな」
エステリーゼ「それでリタの用事とは何なんです?」
リタ「そ、それはどうでもいいでしょ!?それよりあんたら、魔界へ行きたいんですってね?」
フレン「まさか行き方を知っているのかい!?」
リタ「ふっふ〜ん♪あたしを誰だと思ってるわけ?」
ユーリ「寂しがりやのエステルおっかけ野郎とか?」
リタ「誰が寂しがりやよ!!別に、あ、あんたらのことなんか、お、おっかけてないしっ!」
エステリーゼ「リタ、ツンデレは既に時代遅れだそうですよ?」
リタ「んなっ!?誰がツンデレよ誰が!!?」
カロル「それで、魔界へはどうやって行くの?」
リタ「ったく、まぁ良いわ。魔界へは遺跡船という船からゲートが繋がっているってこの前B○○KOFFで買った本に書いてあったわ」
ユーリ「すげぇなあそこ」
エステリーゼ「古本なら何でも置いてあると思っていましたが、そんな物まで置いてるんですね……」
リタ「でもその遺跡船も一筋縄では見つからないらしいわ。遺跡船に行くには特別な船が必要で、もし行ったとしても変な種族が入り口を護っているらしいのよね」
ユーリ「とにかく船が必要ってわけか……」
カロル「ねぇ、調度ダングレストに居るんだし海凶(リヴァイアサン)の爪を頼ってみない?」
ユーリ「そういやあいつら元は海賊だったんだっけか?あんま会いたくはねぇが行ってみるか」
フレン「僕も行くよ」
リタ「勿論あたしもね」
ヨーデル「僕は父の弔いを済ませるのでここに残ります」
リタが仲間になった!
フレンが仲間になった!
『酒場』
イエガー「Oh!誰かと思えば憎きユーリ・ローウェルではないdethか!」
ユーリ「お前英語の混ぜ方変わってねぇか?」
イエガー「ミーは文字通りリバースしたのデス!ビーコウズ、トークの仕方もチェンジしてオフコースというもの!」
リタ「うざさ倍増ね……」
エステリーゼ「あの、私達船を捜しているのですが、譲っていただけませんか?」
イエガー「Ohsit!!ユー達に譲るシップなどナッシング!とセイしたい。バット!ユー達にはこの前ゴーシュをデンジャラシュなディッシュからガードしてくれた恩がありま〜す」
フレン「では船を譲ってくれるんですね!?」
イエガー「おうフール。You are fool信長ザフール」
フレン「最後の言葉は聞き捨てならないのだが……!!」
イエガー「ミーはただでレンタルするとはノットセイング!ユー達はアーセルム号をアンダースタンド?」
エステリーゼ「幽霊船アーセルム号のことです?」
イエガー「イエス。最近、アーセルム号にゴーストがアゲインエンカウントするようなのデース。これではゴーシュとドロワがジョジョジョしてしまいワークどころではありませーん」
リタ「言っておくけどジョジョジョは英語じゃないわよ?」
イエガー「そこでユー達にはゴーストバスターしてきてほしいのデス!」
リタ「んなもん嫌に決まって……」
ユーリ「よく分からねぇが分かったぜ」
リタ「おいコラ!あたしの意見は無視か!?」
ユーリ「別に1週目ん時に素材集めとかで何度も行ってんだから大丈夫だろ?」
リタ「……それもそうね」
エステリーゼ「それで納得しちゃうリタもリタですね……」
イエガー「シップはカプワ・トリム港にありまーす。ガイドを置いておくので目印になるでSHOW。行けば必ずアンダースタンドするはずデス!」
フレン「よし!それでは早速出発しよう!」
ユーリ「どうでも良いがイエガーの喋り方適当すぎねぇか?」
ラピード「バウ!」
『カプア・トリム港』
アレクセイ「待っていたぞユーリ・ローウェル」
フレン「団長!!」
エステリーゼ「イエガーが言ってた目印ってアレクセイのことです?」
アレクセイ「いかにも」
リタ「舞茸の季節にはまだ早いわよ?」
アレクセイ「ふっ、いちいちもっともだな」
リタ「いやまだ一言しか言ってないし」
カロル「でもラッキーだったね!アレクセイが一緒に来てくれるならどんな幽霊が来ても楽勝だね!」
アレクセイ「幽霊だと?あんなものはプラズマにすぎない。そもそも死後の人間が魂だけの姿になるというならシュバーンの体はどう説明するというのか?一度魂が離れたのならば心臓を組み込んだとて生き返るはずが……」
ユーリ「お前もしかして怖いのか?」
アレクセイ「ばばばばばばばば馬鹿な!!ここここここここ、この、このわ、WAWAWA私が怖いだのと……!!」
フレン「……団長、これ以上私が貴方に失望する前に出発しましょう」
アレクセイ「よかろう」
リタ「あのスイッチの切り替え方だけは大したもんね」
〜続く〜