第63話『追う者と託されし物』
ヴェイグ達は一旦宿屋の外に出た。
広場から見る空は雲っており、気温も先程よりも明らかに寒く感じた。
「やはりな」
ルーベルトはテーゼンの指に視線を向けながら言うと、テーゼンは首を傾げた。
「やはりって、何が?」
「貴様がもらったというその指輪、フォルスを制御する機能を持つと言っていたが俺にはどうも信じられなかったのだ」
「信じる信じないはあんたの勝手や」
テーゼンは馬鹿馬鹿しいと言う代わりに手首をヒラヒラと返して見せるが、ルーベルトは鼻で笑った。
「信じていないのは果たして俺だけか?現に貴様が指輪を嵌めているのにもかかわらず、再び雹(ひょう)が降り出しそうな天気ではないか」
「そんなんウチかて知らんわ!せやけどこの指輪はきちんと機能してる!」
そこへルルがルーベルトのマントの裾(すそ)を短く引っ張った。
「前に私達がノルゼンに来た時も雲ってたし、もっと寒くて雪も降ってたよ?」
「……」
ルーベルトはフリーズした。
「……?どないしたん?急に黙りこくってからに」
「指輪は機能してんのにそれでも寒さが戻らねぇっとことは、指輪は制御し切れていないってことか?」
ジークはブライトに訪ねるが彼は困ったように眉をひそめた。
「それに関しては俺もどうも言えねぇなぁ……」
「あー多分それはあると思うわ」
テーゼンはポンと手を叩き、ジークとブライトの会話に割って入った。
「カレギア軍とかで使うとる石みたいなやつあるやろ?ウチらぐらいのフォルスになるとあれでも抑えきれへんねん」
「そうか……」
規格外の強さを持つフォルスとなるとカレギア軍の牢屋にも使われているフォルスを抑制する石をもってしても完全に抑えきることはできない。
ならばヤコのフォルスもテーゼン達同様に規格外のフォルスということならば牢の中にいるのにもかかわらず幻を操作をできる理由に納得がいく。
ジークは少し謎が解けたような気がして満足していたが、対してテーゼンは口をへの字に曲げて腰に両手を当てていた。
「ていうか何なん?せっかくウチのデリケートな部分を教えてやったっちゅうに、反応薄すぎとちゃうの?」
「……聞いたらまずかったのか?」
「んなことあらへんけど?」
ジークが訪ねるがテーゼンは平然と答えた。
「気にしないでよテーゼン。ジークはそういう病気のようなものだからさ」
笑顔で言うマオに対して今度はジークが眉をひそめた。
「ねぇ。それよりアレ、どうすんの?」
ヒルダが指した方向には上下が真っ二つにされた人魚像があった。
土台に魚の部分を残し、人間の部分は頭から雪原に突き刺さっていた。
それをフィオナが傍らにしゃがみこんで見つめていた。
「フィオナさん……」
一同は人魚像の周りに集まり、アニーがそっと声をかける。
すると、フィオナはおもむろに立ち上がった。
「ここはね、お父さんとお母さんの思い出の場所だったんだって」
フィオナは像の土台に手を添えながら話し続ける。
「お父さんはラジルダ出身なんだけど、お母さんはノルゼンのヒトだったの。それでデートする時はいつもこの人魚像を待ち合わせ場所にしてたってよく聞かされたわ……」
そう、ここはギュナルスにとって沢山の青春が詰まった場所であり、人魚像はその象徴でもあった。
象徴とはなにも待ち合わせのための目印の役割をするだけではない。
ここであった出来事や思い出を思い出すためのきっかけにも成り得る。
そんな人魚像をギュナルスは切ったということは、つまりそういうことなのだろう。
「ごめんなさい、私ちょっと……」
背後にいたアニーとジークの間を抜け、フィオナは広場の中央を突っ切り路地の方へと走って行ってしまった。
「ジークさん」
「あぁ、分かってる」
アニーに視線で促され、ジークは頷く。
そして踵を返し、走り出そうとした時だ。
「ジーク!!」
ルーベルトに呼び止められ、振り返ると白い棒のような物が宙を舞っていた。
ジークはそれを受けとるとルーベルトはニヤリと笑みを浮かべた。
「フィオナを追うなら持っていけ!俺様のとっておきだ!」
「これが……か?」
ジークは受け取ったものを見つめる。
「貴様なら必要になるはずだ。だが勘違いするな、それは決して譲渡したのではない。何時か必ず返しに来い」
「だったら今返して良いか?」
ジークは差し出すとルーベルトは首をぶんぶん横に振った。
「と、兎に角だ!俺は一刻も早くレラーブと合流しなければならぬ故先に失礼させてもらう!次に会うのは何時になるか分からんが死ぬことだけは断じて許さん!だから約束しろ、必ずソレを返しに来ると」
ジークは手元の物を見つめてから頷いた。
「ではな」
ルーベルトは赤いマントを翻すと、街の出口へと歩き去って行った。
「追いかけんでえぇの?」
テーゼンに言われ、ジークは急いでフィオナが走って行った路地裏へ向かう。
「テ、テーゼンさんは、のんびりしてて良いんですか」
ニノンが相変わらずモジモジしながら質問するとテーゼンは笑みを浮かべた。
「ウチ?えぇねんえぇねん!別に急ぐ用やあらへんし!あんたらがこの街を出る時にウチも一緒に出るわ」
「だったら早くニノンの友達のとこへ行ったほうが良いんじゃない?」
ジンが『羽』のフォルスにより浮遊しているプランターを見ながら言うが、ニノンお手製の野菜達がしおれてきているように見えた。
「か、彼女は道具屋にいるはずです!」
流石のニノンも慌て始め、連結されたプランターの先端部の紐を掴むなり先陣を切って広場から左に伸びる道へ走りだした。
ちなみにフィオナが走って行った路地裏は中央、右へ伸びる道を進むと住宅街がある。
我が子のピンチに突然アグレッシブになったニノンを追いかけると、程なくして港が見えてきた。
その脇に道具屋は構えている。
「ぜぇ……ぜぇ……ニノン早いよ〜」
道具屋に入るなりキョロキョロと中を見回すニノンだったが、宿屋の壁に手をつき肩で息をするルルを見て急いで駆け寄った。
「ご、ごめんね!?無我夢中になっちゃって、つい……」
「ニ、ニノンの速さは3つ星半だぜ〜」
ティトレイは腕で額の汗を拭いながら言うが、ニノンは指標基準が分からず首を傾げた。
「ニノン?」
そんな時、宿屋の奥から声がかかった。
「あ!レ、レベッカさん!」
ニノンにレベッカと呼ばれた金髪の髪にモコモコした紫色のフード付きダッフルコートを来た女性が奥から姿を現した。
「あら、貴方達も久し振りね。今日はクレアは一緒じゃないの?」
レベッカはヴェイグ達にも挨拶を交わすと、ヴェイグ達8人も挨拶を返した。
「れ、レベッカさん、ヴェイグさん達とお知り合いだったんですか?」
「王の盾に誘拐された時にクレアっていう子と知り合ったの。その繋がりで知り合ったようなもんかな?」
レベッカは確認するようにヴェイグ達へ首を傾げつつ目線を送ると、ヴェイグは頷いた。
「今はスールズにいるがまた会いたいと言っていた。しかしニノンの言っていた友達がレベッカだったとはな」
「世の中って案外狭いよね。でもそっか。近いうちに会いに行くって伝えておいてよ」
レベッカは今度はニノンに向き直る。
「それで?ニノンはどうしたの?また何か探し物?」
「い、いえその……物じゃなくて、レベッカさんを探してて……」
「私を?」
恥ずかしそうに言うニノンに対してレベッカは少し嬉しそうな顔をした。
人間関係に対して奥手のニノンが自分から頼ってきてくれたことが嬉しかったのだろう。
すると更にニノンは恥ずかしくなったのか顔を赤くする。
「じ、実は、お願い事がありまして……」
「お願い事?ていうか、そんなに緊張しなくてもニノンの頼みなら何でも聞くから安心して?」
レベッカは諭すように言うとニノンは肩の力を抜き、後ろのプランター達を指差した。
「わ、私少し旅に出るので……こ、この子達のお世話を、お願い…したいん……です」
安心して良いと言われたものの途中から怖くなってしまったのかどんどん声が小さくなっていき、最後の方はほとんど聞き取れなかった。
しかしレベッカは即答した。
「分かった、任せて!」
「ぇえっ!?そんなあっさり良いんですか!?」
ドンと自分の胸を叩くレベッカに対してニノンは驚きのあまり一歩後ずさった。
「だって、何でも聞くって言ったじゃない」
「そ、そうですけど……。それに、私が旅に出るって言っても驚かないですし……」
「あ、もしかして驚いてほしかった?」
「そ、そんなことはないです!!」
悪戯っ子のような笑みを浮かべるレベッカに対してニノンは両手の羽を前に伸ばしながら首を横にぶんぶん振った。
「確かに驚いたといえば驚いたけど、あなたがヴェイグ達と一緒に来たことから大体想像してたのよね」
レベッカはニノンの後ろでテーゼンがヴェイグ達にハイタッチをして回っているのを見て微笑んだ。
「そ、そうだったんですか……。さすがレベッカさんです」
「でも困ったわね……」
「えっ?」
レベッカは頬に片手を添えて溜息を吐く。
「野菜を育てるのは良いのだけど、ここって常に氷点下じゃない?ちゃんと育つかしら?」
「あ……」
すっかり忘れていた。
ニノンも同じノルゼン地方で育てていたが空中庭園は日差しが差し込むため、問題無く育てることができていた。
しかしここでは年中雲が空を覆っているため管理してくれるヒトがいても十分に育つことはできない。
「ど、どうしよう……」
ニノンの瞳に涙が集まり始める。
そこへ背後からテーゼンが肩をぽんと叩いた。
「それなら問題あらへんよ」
「ほ、本当ですか!?」
テーゼンは返事の代わりに微笑み、レベッカに視線を向ける。
「空いてる倉庫とか空き部屋とかってある?」
「えぇ、この道具屋の裏に使われてない倉庫があるわ」
「ならまずはそこへ行かん?行って説明したほうが早いわ」
「分かったわ、付いて来て」
ヴェイグ達はレベッカに案内されるまま道具屋の裏へと案内された。
* * *
ノルゼンには出入り口が3つある。
一つは街の西側、道具屋が近くにある港である。
反対の東側にヴェイグ達が朝入ってきた陸側からの入り口が一つ。
そして最後にもう一つ。
噴水広場を中央に突っ切った先に街の北側へと抜ける出入り口がある。
フィオナはその出入り口の近くにある小さな民家のそばで佇(たたず)んでいた。
空はどんよりと黒い雲が一面を覆っており、今にも降りだしそうな天気だった。
そんな中、背後から雪を踏みしめ近付いてくる音が聞こえる。
仲間の誰かが追ってきたのか、それとも街のヒトがただ通りかかっただけなのか。
確信はないが、何故か、何かを期待しつつフィオナは振り返る。
「……」
そこにはジークが無言で立っていた。
〜続く〜
広場から見る空は雲っており、気温も先程よりも明らかに寒く感じた。
「やはりな」
ルーベルトはテーゼンの指に視線を向けながら言うと、テーゼンは首を傾げた。
「やはりって、何が?」
「貴様がもらったというその指輪、フォルスを制御する機能を持つと言っていたが俺にはどうも信じられなかったのだ」
「信じる信じないはあんたの勝手や」
テーゼンは馬鹿馬鹿しいと言う代わりに手首をヒラヒラと返して見せるが、ルーベルトは鼻で笑った。
「信じていないのは果たして俺だけか?現に貴様が指輪を嵌めているのにもかかわらず、再び雹(ひょう)が降り出しそうな天気ではないか」
「そんなんウチかて知らんわ!せやけどこの指輪はきちんと機能してる!」
そこへルルがルーベルトのマントの裾(すそ)を短く引っ張った。
「前に私達がノルゼンに来た時も雲ってたし、もっと寒くて雪も降ってたよ?」
「……」
ルーベルトはフリーズした。
「……?どないしたん?急に黙りこくってからに」
「指輪は機能してんのにそれでも寒さが戻らねぇっとことは、指輪は制御し切れていないってことか?」
ジークはブライトに訪ねるが彼は困ったように眉をひそめた。
「それに関しては俺もどうも言えねぇなぁ……」
「あー多分それはあると思うわ」
テーゼンはポンと手を叩き、ジークとブライトの会話に割って入った。
「カレギア軍とかで使うとる石みたいなやつあるやろ?ウチらぐらいのフォルスになるとあれでも抑えきれへんねん」
「そうか……」
規格外の強さを持つフォルスとなるとカレギア軍の牢屋にも使われているフォルスを抑制する石をもってしても完全に抑えきることはできない。
ならばヤコのフォルスもテーゼン達同様に規格外のフォルスということならば牢の中にいるのにもかかわらず幻を操作をできる理由に納得がいく。
ジークは少し謎が解けたような気がして満足していたが、対してテーゼンは口をへの字に曲げて腰に両手を当てていた。
「ていうか何なん?せっかくウチのデリケートな部分を教えてやったっちゅうに、反応薄すぎとちゃうの?」
「……聞いたらまずかったのか?」
「んなことあらへんけど?」
ジークが訪ねるがテーゼンは平然と答えた。
「気にしないでよテーゼン。ジークはそういう病気のようなものだからさ」
笑顔で言うマオに対して今度はジークが眉をひそめた。
「ねぇ。それよりアレ、どうすんの?」
ヒルダが指した方向には上下が真っ二つにされた人魚像があった。
土台に魚の部分を残し、人間の部分は頭から雪原に突き刺さっていた。
それをフィオナが傍らにしゃがみこんで見つめていた。
「フィオナさん……」
一同は人魚像の周りに集まり、アニーがそっと声をかける。
すると、フィオナはおもむろに立ち上がった。
「ここはね、お父さんとお母さんの思い出の場所だったんだって」
フィオナは像の土台に手を添えながら話し続ける。
「お父さんはラジルダ出身なんだけど、お母さんはノルゼンのヒトだったの。それでデートする時はいつもこの人魚像を待ち合わせ場所にしてたってよく聞かされたわ……」
そう、ここはギュナルスにとって沢山の青春が詰まった場所であり、人魚像はその象徴でもあった。
象徴とはなにも待ち合わせのための目印の役割をするだけではない。
ここであった出来事や思い出を思い出すためのきっかけにも成り得る。
そんな人魚像をギュナルスは切ったということは、つまりそういうことなのだろう。
「ごめんなさい、私ちょっと……」
背後にいたアニーとジークの間を抜け、フィオナは広場の中央を突っ切り路地の方へと走って行ってしまった。
「ジークさん」
「あぁ、分かってる」
アニーに視線で促され、ジークは頷く。
そして踵を返し、走り出そうとした時だ。
「ジーク!!」
ルーベルトに呼び止められ、振り返ると白い棒のような物が宙を舞っていた。
ジークはそれを受けとるとルーベルトはニヤリと笑みを浮かべた。
「フィオナを追うなら持っていけ!俺様のとっておきだ!」
「これが……か?」
ジークは受け取ったものを見つめる。
「貴様なら必要になるはずだ。だが勘違いするな、それは決して譲渡したのではない。何時か必ず返しに来い」
「だったら今返して良いか?」
ジークは差し出すとルーベルトは首をぶんぶん横に振った。
「と、兎に角だ!俺は一刻も早くレラーブと合流しなければならぬ故先に失礼させてもらう!次に会うのは何時になるか分からんが死ぬことだけは断じて許さん!だから約束しろ、必ずソレを返しに来ると」
ジークは手元の物を見つめてから頷いた。
「ではな」
ルーベルトは赤いマントを翻すと、街の出口へと歩き去って行った。
「追いかけんでえぇの?」
テーゼンに言われ、ジークは急いでフィオナが走って行った路地裏へ向かう。
「テ、テーゼンさんは、のんびりしてて良いんですか」
ニノンが相変わらずモジモジしながら質問するとテーゼンは笑みを浮かべた。
「ウチ?えぇねんえぇねん!別に急ぐ用やあらへんし!あんたらがこの街を出る時にウチも一緒に出るわ」
「だったら早くニノンの友達のとこへ行ったほうが良いんじゃない?」
ジンが『羽』のフォルスにより浮遊しているプランターを見ながら言うが、ニノンお手製の野菜達がしおれてきているように見えた。
「か、彼女は道具屋にいるはずです!」
流石のニノンも慌て始め、連結されたプランターの先端部の紐を掴むなり先陣を切って広場から左に伸びる道へ走りだした。
ちなみにフィオナが走って行った路地裏は中央、右へ伸びる道を進むと住宅街がある。
我が子のピンチに突然アグレッシブになったニノンを追いかけると、程なくして港が見えてきた。
その脇に道具屋は構えている。
「ぜぇ……ぜぇ……ニノン早いよ〜」
道具屋に入るなりキョロキョロと中を見回すニノンだったが、宿屋の壁に手をつき肩で息をするルルを見て急いで駆け寄った。
「ご、ごめんね!?無我夢中になっちゃって、つい……」
「ニ、ニノンの速さは3つ星半だぜ〜」
ティトレイは腕で額の汗を拭いながら言うが、ニノンは指標基準が分からず首を傾げた。
「ニノン?」
そんな時、宿屋の奥から声がかかった。
「あ!レ、レベッカさん!」
ニノンにレベッカと呼ばれた金髪の髪にモコモコした紫色のフード付きダッフルコートを来た女性が奥から姿を現した。
「あら、貴方達も久し振りね。今日はクレアは一緒じゃないの?」
レベッカはヴェイグ達にも挨拶を交わすと、ヴェイグ達8人も挨拶を返した。
「れ、レベッカさん、ヴェイグさん達とお知り合いだったんですか?」
「王の盾に誘拐された時にクレアっていう子と知り合ったの。その繋がりで知り合ったようなもんかな?」
レベッカは確認するようにヴェイグ達へ首を傾げつつ目線を送ると、ヴェイグは頷いた。
「今はスールズにいるがまた会いたいと言っていた。しかしニノンの言っていた友達がレベッカだったとはな」
「世の中って案外狭いよね。でもそっか。近いうちに会いに行くって伝えておいてよ」
レベッカは今度はニノンに向き直る。
「それで?ニノンはどうしたの?また何か探し物?」
「い、いえその……物じゃなくて、レベッカさんを探してて……」
「私を?」
恥ずかしそうに言うニノンに対してレベッカは少し嬉しそうな顔をした。
人間関係に対して奥手のニノンが自分から頼ってきてくれたことが嬉しかったのだろう。
すると更にニノンは恥ずかしくなったのか顔を赤くする。
「じ、実は、お願い事がありまして……」
「お願い事?ていうか、そんなに緊張しなくてもニノンの頼みなら何でも聞くから安心して?」
レベッカは諭すように言うとニノンは肩の力を抜き、後ろのプランター達を指差した。
「わ、私少し旅に出るので……こ、この子達のお世話を、お願い…したいん……です」
安心して良いと言われたものの途中から怖くなってしまったのかどんどん声が小さくなっていき、最後の方はほとんど聞き取れなかった。
しかしレベッカは即答した。
「分かった、任せて!」
「ぇえっ!?そんなあっさり良いんですか!?」
ドンと自分の胸を叩くレベッカに対してニノンは驚きのあまり一歩後ずさった。
「だって、何でも聞くって言ったじゃない」
「そ、そうですけど……。それに、私が旅に出るって言っても驚かないですし……」
「あ、もしかして驚いてほしかった?」
「そ、そんなことはないです!!」
悪戯っ子のような笑みを浮かべるレベッカに対してニノンは両手の羽を前に伸ばしながら首を横にぶんぶん振った。
「確かに驚いたといえば驚いたけど、あなたがヴェイグ達と一緒に来たことから大体想像してたのよね」
レベッカはニノンの後ろでテーゼンがヴェイグ達にハイタッチをして回っているのを見て微笑んだ。
「そ、そうだったんですか……。さすがレベッカさんです」
「でも困ったわね……」
「えっ?」
レベッカは頬に片手を添えて溜息を吐く。
「野菜を育てるのは良いのだけど、ここって常に氷点下じゃない?ちゃんと育つかしら?」
「あ……」
すっかり忘れていた。
ニノンも同じノルゼン地方で育てていたが空中庭園は日差しが差し込むため、問題無く育てることができていた。
しかしここでは年中雲が空を覆っているため管理してくれるヒトがいても十分に育つことはできない。
「ど、どうしよう……」
ニノンの瞳に涙が集まり始める。
そこへ背後からテーゼンが肩をぽんと叩いた。
「それなら問題あらへんよ」
「ほ、本当ですか!?」
テーゼンは返事の代わりに微笑み、レベッカに視線を向ける。
「空いてる倉庫とか空き部屋とかってある?」
「えぇ、この道具屋の裏に使われてない倉庫があるわ」
「ならまずはそこへ行かん?行って説明したほうが早いわ」
「分かったわ、付いて来て」
ヴェイグ達はレベッカに案内されるまま道具屋の裏へと案内された。
* * *
ノルゼンには出入り口が3つある。
一つは街の西側、道具屋が近くにある港である。
反対の東側にヴェイグ達が朝入ってきた陸側からの入り口が一つ。
そして最後にもう一つ。
噴水広場を中央に突っ切った先に街の北側へと抜ける出入り口がある。
フィオナはその出入り口の近くにある小さな民家のそばで佇(たたず)んでいた。
空はどんよりと黒い雲が一面を覆っており、今にも降りだしそうな天気だった。
そんな中、背後から雪を踏みしめ近付いてくる音が聞こえる。
仲間の誰かが追ってきたのか、それとも街のヒトがただ通りかかっただけなのか。
確信はないが、何故か、何かを期待しつつフィオナは振り返る。
「……」
そこにはジークが無言で立っていた。
〜続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート45】
takeshi「ども〜!最近ユーキャンを始めたtakeshiです」
チャリティ「え?野崎君?」
takeshi「そっちのユーキャンじゃねぇよ……」
チャリティ「あぁ死角のほうね」
takeshi「資格ね?ていうか一発変換で死角、二発で視覚と出てしまうこのPCはすっかり私色に染まってくれたようです」
チャリティ「そんなことより今回もまた連続投稿なんでしょ?」
takeshi「チャリティさんの言うとおり今回は3話連続です。ですので3話分楽談でも喋りまくりますよ!」
チャリティ「そんなに喋ることあんの?」
takeshi「まずは本編の話なのですが、ルーベルトが離脱しました」
チャリティ「離脱したわね。ヴェイグ達もピピスタに行くんだから一緒に行けば良いのに」
takeshi「ルーベルトは一刻を争いますからね、一分一秒が惜しかったんですよ。だからヴェイグ達を待たずに先に行ってしまったというわけです」
チャリティ「ふぅ〜ん」
takeshi「とりあえず触れるべき本編の内容はこんなもんです」
チャリティ「こんだけ!?」
takeshi「それよりさっき、ユーキャン始めたって言ったじゃないですか?」
チャリティ「その話をするのね……」
takeshi「とりあえず年内にTOEICを受けようと思うのですが、教材のアドバイスに信じられないことが書いてあったんですよ!」
チャリティ「逆にあんたが信じられることって何よ?」
takeshi「何とですね?脳を英語にするために英語に触れる機会を増やしてその分日本語は遠ざけるようにしろって書いてあったんですよ!」
チャリティ「別に理に叶ってるじゃない」
takeshi「いやいやいや!ただでさえ最近また新たなスランプで日本語が分からなくなってきているってのにここから離れたら小説書けなくなってしまいますよ!本編の質を上げようとすればするほどTOEICの点数が下がるとか拷問じゃないですか!!」
チャリティ「だったらハイブリットになれば良いじゃない」
takeshi「なれるもんならなりたいですよ……。とりあえず本編中に横文字が増え始めたら「こいつちゃんと勉強してんだな」って思ってください」
チャリティ「突然レッツパーリィとか言うのはやめてよ?」
takeshi「多分それは逆に英語のレベルが下がっている時だと思います……」
チャリティ「そうなの?」
takeshi「てな訳で今回はこの辺で!また次の回でお会いましょう!」
チャリティ「本当に次回楽談やるの?」
takeshi「何か問題ありましたっけ?」
チャリティ「別にあんたが良いなら良いんだけどさ〜」
takeshi「ではまた〜」
―――オマケ―――
『光跡翼』
リタ「光跡翼なんていうから光の翼みたいなので飛んでいくのかと思ったら、ただの線路じゃない」
セネル「そんなものあるわけないだろう」
クロエ「モルディオは意外とロマンチストなんだな」
リタ「なっ!?」
ジュディス「ユーリがでっかい羽みたいなので斬ってるところを見てるのだから仕方無いわよ」
リタ「そう思うなら可哀想な物を見るような目をやめなさいよ!!」
ラピード「バウ!」
ギート「アオォォォン!!」
モーゼス「ギートも喜んどるわ」
パティ「操作は普段通りでいいのか?」
ジェイ「えぇ問題ありませんよ。ただ、レールが途中から光のレールに変わるので慌てずに何時も通りの操縦をすれば目的地に着けますよ」
フレン「なるほど、だから光跡なのか」
ユーリ「光の翼じゃなくて残念だったな、リタ」
リタ「だから期待なんてしてないっての!!」
ノーマ「大丈夫、そのうち良いことあるって!」
リタ「あんたに慰められると心底悲しくなるわ……」
ノーマ「あり?」
ウィル「くれぐれも用心を怠るなよ?」
カロル「うん、ありがとう!」
パティ「それじゃあ出発なのじゃー!!」
バンエルティア号が出発した。
ポッポ「良い仕事をしたキュ!」
ジェイ「お疲れ様、ポッポ」
ノーマ「ていうかポッちん何持ってんの?」
ポッポ「これかキュ?これは時空を渡るための安全装置だキュ!」
ウィル「……ちなみにだが、それを付けずに時空を越えようとするとどうなるんだ?」
ポッポ「それはポッポにも分からないキュ。安全装置を付けないで時空を渡るなんて前代未聞だキュ!」
セネル「そ、そうか……」
シャーリィ「えっと、ユーリさん達大丈夫かな……?」
ポッポ「心配には及ばないキュ!ポッポの改造は安心安全がモットーだキュ!この安全装置を付けてさえいれば何も問題はないキュ!」
ジェイ「ポッポがそういうなら安心だね♪」
クロエ「その安全装置が今ここにある時点で不安しかないのだが……」
グリューネ「些細なことは気にしないでおきましょう?だって、些細なことですもの」
モーゼス「ほうじゃの!」
セネル「グリューネさんがそういうなら仕方ないな!」
シャーリィ「そうだよね、グリューネさんがそう言うんだもん♪」
クロエ「ローウェル……健闘を祈る……」
『バンエルティア号』
ユーリ「なんかガタガタいってねぇか?」
パティ「調度今光のレールに乗ったところなのじゃ」
カロル「だったらその影響かもね」
リタ「……にしては揺れ過ぎじゃない?」
ジュディス「あらやだ。リタったらどこを見て言ってるの?」
リタ「あんたはその目障りな物をしまうためにも鎧でも着てれば?」
フレン「みんな、どうやらそろそろ時空の歪に入るみたいだぞ?」
ラピード「バウ!」
エステリーゼ「真っ暗です……」
ユーリ「つうか揺れ酷くなってんぞ!!」
パティ「カロル、ウチからのプレゼントなのじゃ」
カロル「こんな時に何!?ていうかちょっとこれって!!」
パティ「大変じゃユーリっ!!カロルが舵を壊したのじゃ!!」
ユーリ「カロル先生何やってんだ!!」
カロル「ち、違うよ!僕じゃないよ!!」
リタ「じゃああんたが今持ってる丸いのは何なのよ!?」
カロル「……どうみても舵ですね、本当にありがとうございました」
フレン「カロォオオオオオルッ」
『???』
パティ「と、とりあえず何処かに不時着したのじゃ……」
ユーリ「何処かって、ここ何処だよ?」
???「怪我はないか?」
フレン「あなたは?」
ゼクンドゥス「私はゼクンドゥス、貴様等の船が時空を彷徨っているところを見つけた故適当な世界へ逃がした」
エステリーゼ「命の恩人なんです?この度は助けていただき真に……」
リタ「お礼をいうのは早いわエステル。まだここがどこか分かってないし、こいつが私達の味方だっていう保障もないわ」
ゼクンドゥス「案ずるな、私は貴様達の敵ではない。貴様達はダオスを追っているのだろう?だがヤツは聖剣エターナルソードでないと倒すことはできん」
ジュディス「今度は聖剣なのね」
リタ「本当にそうなの?」
ゼクンドゥス「ほう?疑うのか?」
リタ「なぁ〜んか、ダオスってインディグネイションが弱点のような気がするのよねぇ」
ゼクンドゥス「そ、それは無い!断じて有り得ん!」
リタ「ていうか、あんたを倒しても実は同じなんじゃない?似たような声してるし」
ゼクンドゥス「愚かな。私のようなイケメンボイスが2人もいてたまるか」
ユーリ「テイルズ作品の中じゃ割りと聞く声だけどな」
ゼクンドゥス「と、兎に角だ!この森を抜けた先にエターナルソードを作れる職人がいる。まずはそいつと会うが良い」
ジュディス「そうね、まずはあなたを倒してから行くとしましょうか」
ゼクンドゥス「だから何故そうなる!?」
ラピード「バウバウバウバウ!!!」
カロル「ど、どうしたのラピード!!」
パティ「ラピードのこの反応、どこかで見たことがあるのじゃ……」
ゼクンドゥス「ふっ、やはり犬の鼻は誤魔化せないか……」
ユーリ「てめぇさてはおっさんか!!下手な変装なんかしやがって!!」
ゼクンドゥス「違うわ!!」
エステリーゼ「レイヴンじゃないんです?」
ゼクンドゥス「これ以上ここにいたらバカが移りかねん。さらばだ!」
ゼクンドゥスは消え去った。
カロル「何だったんだろ……?」
フレン「分からない。とにかく彼の言うとおりこの森を抜けてみよう」
『ダイクの家』
ジュディス「こんなところに家?」
ユーリ「よし、ここは頼んだぞカロル先生」
カロル「久々に任せてよ!」
カロルはピッキングをした。
フレン「まずはノックだろ!!何を当然のように鍵を壊しにかかってるんだ!?」
ユーリ「人の部屋に入る時はまずピッキングからって常識だろ?」
フレン「どうやら僕はとんでもない悪を野放しにしていたようだ……」
ダイク「さっきからやかまなしいな!人ん家の前で何の騒ぎだ!」
ジュディス「あら、人が住んでたのね」
カロル「ちょっとまだピッキング終わってないんだから勝手に出てこないでよ〜」
ダイク「おぉ、こいつはすまねぇ」
リタ「なんかドア閉めちゃったけど、あの小さいおっさんノリ良いわね」
ダイク「って、何ピッキングしてやがる!!」
カロル「ぎゃああああ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
フレン「あの、仲間の無礼は僕も謝ります。それとお訪ねしたいことがあるのですが、エターナルソードという聖剣を作ることができる職人を探しているのですが、心当たりはありませんか?」
ダイク「おうそれなら俺だ。ドワーフ1の刀鍛冶、ダイクとは俺のことよ!」
リタ「ド、ドワーフですって!?」
エステリーゼ「ドワーフって、あの絵本とかに出てくるあのドワーフです?」
ダイク「そ、そうだが……人間だって絵本ぐらいには登場するだろ」
ユーリ「言われてみればそうだな」
パーティ「ウチ、ドワーフは初めて見たのじゃ!」
ダイク「そんなことより、あんたら俺に何の用だ?」
ユーリ「おっと、そうだった。さっき言ったエターナルソードを一本頼みてぇんだ」
ダイク「無理だな」
カロル「断るの早っ!」
ダイク「まず材料がねぇ」
ユーリ「エターナルソードを作れるって噂になってるってことは、一度作ったことがあるんだよな?だったらその時の材料とか余ってねぇのかよ?」
ダイク「確かに俺は可愛い息子のために打ったことはあるが、残ってる材料を使ったとしてもできるのは精々ナイフぐらいなもんだ」
ジュディス「エターナルナイフというわけね」
ユーリ「心臓に刺さればナイフでもフォークでも同じだろ。それで頼むわ」
ダイク「分かった。だが一つ条件がある」
パティ「言っておくがユーリの体はウチのものなのじゃ!!」
ダイク「そういう話じゃねぇ!!野郎の体なんざこっちから願い下げだ!!」
ユーリ「そうか、じゃあ無条件でやってくれんだな?」
ダイク「お前さん……本当に体を売るつもりだったのか?」
ユーリ「冗談だから距離を空けるのをやめてくれねぇか?」
ダイク「条件というのは他でもない。塔に誘拐された友を救ってほしい」
フレン「塔?」
ラピード「バウ?」
ダイク「そこの窓からも見えるだろ?あの白い柱のようなものが天の上まで続いていると言われている『救いの塔』だ」
ユーリ「あのてっぺんまで行けば仙○がもらえたりすんのか?」
ダイク「いや……そんな楽しいところではない」
フレン「ユーリ、君が言っているのはあくまで中腹の話じゃないか。頂上には神様がいるんですよね?」
ダイク「てめぇら殴るぞ?」
カロル「要するにあの『救いの塔』に捕らわれているダイクさんの友達を助けてくれば良いんだね?」
ダイク「そういうこった。実はエターナルソードを作るにはあいつの力も必要でな」
パティ「ウチ達に任せるのじゃ!」
ダイク「名前はアルテスタだ。頼んだぞ」
『救いの塔』
パティ「救いの塔に到着なのじゃー!!」
フレン「アルテスタさんはどこに捕らえられているんだろうか?」
ユーリ「やっぱ最上階なんじゃね?こっからじゃ見えねぇけど」
エステリーゼ「アルテスタさん、心細くて泣いてたりしないでしょうか……」
リタ「そうね、名前からして可憐そうだし心配よね」
ジュディス「でもあのダイクさんの友達なのでしょ?ムキムキなおっさんが出てきたら私冷静でいられる自信がないわ」
パティ「ジュディ姐は考えすぎなのじゃ!」
リタ「そうよ、きっとピー○姫みたいな子に決まってるわ!」
カロル「だったら早く助けてあげなきゃだね!」
ラピード「バウ!」
フレン「よし行こう!」
〜続く〜
takeshi「ども〜!最近ユーキャンを始めたtakeshiです」
チャリティ「え?野崎君?」
takeshi「そっちのユーキャンじゃねぇよ……」
チャリティ「あぁ死角のほうね」
takeshi「資格ね?ていうか一発変換で死角、二発で視覚と出てしまうこのPCはすっかり私色に染まってくれたようです」
チャリティ「そんなことより今回もまた連続投稿なんでしょ?」
takeshi「チャリティさんの言うとおり今回は3話連続です。ですので3話分楽談でも喋りまくりますよ!」
チャリティ「そんなに喋ることあんの?」
takeshi「まずは本編の話なのですが、ルーベルトが離脱しました」
チャリティ「離脱したわね。ヴェイグ達もピピスタに行くんだから一緒に行けば良いのに」
takeshi「ルーベルトは一刻を争いますからね、一分一秒が惜しかったんですよ。だからヴェイグ達を待たずに先に行ってしまったというわけです」
チャリティ「ふぅ〜ん」
takeshi「とりあえず触れるべき本編の内容はこんなもんです」
チャリティ「こんだけ!?」
takeshi「それよりさっき、ユーキャン始めたって言ったじゃないですか?」
チャリティ「その話をするのね……」
takeshi「とりあえず年内にTOEICを受けようと思うのですが、教材のアドバイスに信じられないことが書いてあったんですよ!」
チャリティ「逆にあんたが信じられることって何よ?」
takeshi「何とですね?脳を英語にするために英語に触れる機会を増やしてその分日本語は遠ざけるようにしろって書いてあったんですよ!」
チャリティ「別に理に叶ってるじゃない」
takeshi「いやいやいや!ただでさえ最近また新たなスランプで日本語が分からなくなってきているってのにここから離れたら小説書けなくなってしまいますよ!本編の質を上げようとすればするほどTOEICの点数が下がるとか拷問じゃないですか!!」
チャリティ「だったらハイブリットになれば良いじゃない」
takeshi「なれるもんならなりたいですよ……。とりあえず本編中に横文字が増え始めたら「こいつちゃんと勉強してんだな」って思ってください」
チャリティ「突然レッツパーリィとか言うのはやめてよ?」
takeshi「多分それは逆に英語のレベルが下がっている時だと思います……」
チャリティ「そうなの?」
takeshi「てな訳で今回はこの辺で!また次の回でお会いましょう!」
チャリティ「本当に次回楽談やるの?」
takeshi「何か問題ありましたっけ?」
チャリティ「別にあんたが良いなら良いんだけどさ〜」
takeshi「ではまた〜」
―――オマケ―――
『光跡翼』
リタ「光跡翼なんていうから光の翼みたいなので飛んでいくのかと思ったら、ただの線路じゃない」
セネル「そんなものあるわけないだろう」
クロエ「モルディオは意外とロマンチストなんだな」
リタ「なっ!?」
ジュディス「ユーリがでっかい羽みたいなので斬ってるところを見てるのだから仕方無いわよ」
リタ「そう思うなら可哀想な物を見るような目をやめなさいよ!!」
ラピード「バウ!」
ギート「アオォォォン!!」
モーゼス「ギートも喜んどるわ」
パティ「操作は普段通りでいいのか?」
ジェイ「えぇ問題ありませんよ。ただ、レールが途中から光のレールに変わるので慌てずに何時も通りの操縦をすれば目的地に着けますよ」
フレン「なるほど、だから光跡なのか」
ユーリ「光の翼じゃなくて残念だったな、リタ」
リタ「だから期待なんてしてないっての!!」
ノーマ「大丈夫、そのうち良いことあるって!」
リタ「あんたに慰められると心底悲しくなるわ……」
ノーマ「あり?」
ウィル「くれぐれも用心を怠るなよ?」
カロル「うん、ありがとう!」
パティ「それじゃあ出発なのじゃー!!」
バンエルティア号が出発した。
ポッポ「良い仕事をしたキュ!」
ジェイ「お疲れ様、ポッポ」
ノーマ「ていうかポッちん何持ってんの?」
ポッポ「これかキュ?これは時空を渡るための安全装置だキュ!」
ウィル「……ちなみにだが、それを付けずに時空を越えようとするとどうなるんだ?」
ポッポ「それはポッポにも分からないキュ。安全装置を付けないで時空を渡るなんて前代未聞だキュ!」
セネル「そ、そうか……」
シャーリィ「えっと、ユーリさん達大丈夫かな……?」
ポッポ「心配には及ばないキュ!ポッポの改造は安心安全がモットーだキュ!この安全装置を付けてさえいれば何も問題はないキュ!」
ジェイ「ポッポがそういうなら安心だね♪」
クロエ「その安全装置が今ここにある時点で不安しかないのだが……」
グリューネ「些細なことは気にしないでおきましょう?だって、些細なことですもの」
モーゼス「ほうじゃの!」
セネル「グリューネさんがそういうなら仕方ないな!」
シャーリィ「そうだよね、グリューネさんがそう言うんだもん♪」
クロエ「ローウェル……健闘を祈る……」
『バンエルティア号』
ユーリ「なんかガタガタいってねぇか?」
パティ「調度今光のレールに乗ったところなのじゃ」
カロル「だったらその影響かもね」
リタ「……にしては揺れ過ぎじゃない?」
ジュディス「あらやだ。リタったらどこを見て言ってるの?」
リタ「あんたはその目障りな物をしまうためにも鎧でも着てれば?」
フレン「みんな、どうやらそろそろ時空の歪に入るみたいだぞ?」
ラピード「バウ!」
エステリーゼ「真っ暗です……」
ユーリ「つうか揺れ酷くなってんぞ!!」
パティ「カロル、ウチからのプレゼントなのじゃ」
カロル「こんな時に何!?ていうかちょっとこれって!!」
パティ「大変じゃユーリっ!!カロルが舵を壊したのじゃ!!」
ユーリ「カロル先生何やってんだ!!」
カロル「ち、違うよ!僕じゃないよ!!」
リタ「じゃああんたが今持ってる丸いのは何なのよ!?」
カロル「……どうみても舵ですね、本当にありがとうございました」
フレン「カロォオオオオオルッ」
『???』
パティ「と、とりあえず何処かに不時着したのじゃ……」
ユーリ「何処かって、ここ何処だよ?」
???「怪我はないか?」
フレン「あなたは?」
ゼクンドゥス「私はゼクンドゥス、貴様等の船が時空を彷徨っているところを見つけた故適当な世界へ逃がした」
エステリーゼ「命の恩人なんです?この度は助けていただき真に……」
リタ「お礼をいうのは早いわエステル。まだここがどこか分かってないし、こいつが私達の味方だっていう保障もないわ」
ゼクンドゥス「案ずるな、私は貴様達の敵ではない。貴様達はダオスを追っているのだろう?だがヤツは聖剣エターナルソードでないと倒すことはできん」
ジュディス「今度は聖剣なのね」
リタ「本当にそうなの?」
ゼクンドゥス「ほう?疑うのか?」
リタ「なぁ〜んか、ダオスってインディグネイションが弱点のような気がするのよねぇ」
ゼクンドゥス「そ、それは無い!断じて有り得ん!」
リタ「ていうか、あんたを倒しても実は同じなんじゃない?似たような声してるし」
ゼクンドゥス「愚かな。私のようなイケメンボイスが2人もいてたまるか」
ユーリ「テイルズ作品の中じゃ割りと聞く声だけどな」
ゼクンドゥス「と、兎に角だ!この森を抜けた先にエターナルソードを作れる職人がいる。まずはそいつと会うが良い」
ジュディス「そうね、まずはあなたを倒してから行くとしましょうか」
ゼクンドゥス「だから何故そうなる!?」
ラピード「バウバウバウバウ!!!」
カロル「ど、どうしたのラピード!!」
パティ「ラピードのこの反応、どこかで見たことがあるのじゃ……」
ゼクンドゥス「ふっ、やはり犬の鼻は誤魔化せないか……」
ユーリ「てめぇさてはおっさんか!!下手な変装なんかしやがって!!」
ゼクンドゥス「違うわ!!」
エステリーゼ「レイヴンじゃないんです?」
ゼクンドゥス「これ以上ここにいたらバカが移りかねん。さらばだ!」
ゼクンドゥスは消え去った。
カロル「何だったんだろ……?」
フレン「分からない。とにかく彼の言うとおりこの森を抜けてみよう」
『ダイクの家』
ジュディス「こんなところに家?」
ユーリ「よし、ここは頼んだぞカロル先生」
カロル「久々に任せてよ!」
カロルはピッキングをした。
フレン「まずはノックだろ!!何を当然のように鍵を壊しにかかってるんだ!?」
ユーリ「人の部屋に入る時はまずピッキングからって常識だろ?」
フレン「どうやら僕はとんでもない悪を野放しにしていたようだ……」
ダイク「さっきからやかまなしいな!人ん家の前で何の騒ぎだ!」
ジュディス「あら、人が住んでたのね」
カロル「ちょっとまだピッキング終わってないんだから勝手に出てこないでよ〜」
ダイク「おぉ、こいつはすまねぇ」
リタ「なんかドア閉めちゃったけど、あの小さいおっさんノリ良いわね」
ダイク「って、何ピッキングしてやがる!!」
カロル「ぎゃああああ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
フレン「あの、仲間の無礼は僕も謝ります。それとお訪ねしたいことがあるのですが、エターナルソードという聖剣を作ることができる職人を探しているのですが、心当たりはありませんか?」
ダイク「おうそれなら俺だ。ドワーフ1の刀鍛冶、ダイクとは俺のことよ!」
リタ「ド、ドワーフですって!?」
エステリーゼ「ドワーフって、あの絵本とかに出てくるあのドワーフです?」
ダイク「そ、そうだが……人間だって絵本ぐらいには登場するだろ」
ユーリ「言われてみればそうだな」
パーティ「ウチ、ドワーフは初めて見たのじゃ!」
ダイク「そんなことより、あんたら俺に何の用だ?」
ユーリ「おっと、そうだった。さっき言ったエターナルソードを一本頼みてぇんだ」
ダイク「無理だな」
カロル「断るの早っ!」
ダイク「まず材料がねぇ」
ユーリ「エターナルソードを作れるって噂になってるってことは、一度作ったことがあるんだよな?だったらその時の材料とか余ってねぇのかよ?」
ダイク「確かに俺は可愛い息子のために打ったことはあるが、残ってる材料を使ったとしてもできるのは精々ナイフぐらいなもんだ」
ジュディス「エターナルナイフというわけね」
ユーリ「心臓に刺さればナイフでもフォークでも同じだろ。それで頼むわ」
ダイク「分かった。だが一つ条件がある」
パティ「言っておくがユーリの体はウチのものなのじゃ!!」
ダイク「そういう話じゃねぇ!!野郎の体なんざこっちから願い下げだ!!」
ユーリ「そうか、じゃあ無条件でやってくれんだな?」
ダイク「お前さん……本当に体を売るつもりだったのか?」
ユーリ「冗談だから距離を空けるのをやめてくれねぇか?」
ダイク「条件というのは他でもない。塔に誘拐された友を救ってほしい」
フレン「塔?」
ラピード「バウ?」
ダイク「そこの窓からも見えるだろ?あの白い柱のようなものが天の上まで続いていると言われている『救いの塔』だ」
ユーリ「あのてっぺんまで行けば仙○がもらえたりすんのか?」
ダイク「いや……そんな楽しいところではない」
フレン「ユーリ、君が言っているのはあくまで中腹の話じゃないか。頂上には神様がいるんですよね?」
ダイク「てめぇら殴るぞ?」
カロル「要するにあの『救いの塔』に捕らわれているダイクさんの友達を助けてくれば良いんだね?」
ダイク「そういうこった。実はエターナルソードを作るにはあいつの力も必要でな」
パティ「ウチ達に任せるのじゃ!」
ダイク「名前はアルテスタだ。頼んだぞ」
『救いの塔』
パティ「救いの塔に到着なのじゃー!!」
フレン「アルテスタさんはどこに捕らえられているんだろうか?」
ユーリ「やっぱ最上階なんじゃね?こっからじゃ見えねぇけど」
エステリーゼ「アルテスタさん、心細くて泣いてたりしないでしょうか……」
リタ「そうね、名前からして可憐そうだし心配よね」
ジュディス「でもあのダイクさんの友達なのでしょ?ムキムキなおっさんが出てきたら私冷静でいられる自信がないわ」
パティ「ジュディ姐は考えすぎなのじゃ!」
リタ「そうよ、きっとピー○姫みたいな子に決まってるわ!」
カロル「だったら早く助けてあげなきゃだね!」
ラピード「バウ!」
フレン「よし行こう!」
〜続く〜