第66話『相談と帰還』
ジークは船室にてルーベルトから借りたハリセンをゆらゆらと揺らしていた。
ルーベルトは「フィオナを追うのならば必ず必要になる」と言って強引に渡してきたが、彼の言うとおり使ってしまった。
もしこのハリセンがなければジークは自の手でフィオナを叩いていただろう。
それを見越して女性に手を挙げることを許さないルーベルトはジークにこのハリセンを渡したのかもしれない。
それに、このハリセンのおかげで険悪な雰囲気にもならなかったうえに、しこりも残らなかった。
「返す時にお礼を言わねぇとな……」
「そのハリセン使ったんだ」
ジークが1人で呟いていると、何時の間にかカインが隣にいた。
「何で分かったんだよ?」
「そりゃあハリセンを見つめながらニヤニヤしているところを見れば誰だって分かるよ」
「……ニヤニヤしてたか?」
「見たのが僕じゃなかったらドン引きするぐらには」
ジークは眉をひそめながらハリセンをしまった。
「お前が寛大な性格で助かるよ」
「でしょ?」
カインは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
* * *
「で、フィオナが何でまたここにいんの?」
漆黒の翼の紅一点、ユシアは操舵室で相変わらず信号マニュアルを広げながら素朴な疑問を投げ掛ける。
「もしかしてここって立ち入り禁止だった?」
フィオナは申し訳なさそうに辺りを見回すがユシアは「別に〜」とだけ答えて視線を教本に戻した。
「その……ちょっと相談したいことがあって」
「オイラにでやんすか?」
「違うわよ!」
少しキメ顔で振り向いたドルンブだったが強く否定されて少なからずショックを受けたのか舵をとる背中が少し寂しそうに見えた。
「……俺にか」
船を出してくれと突然フィオナに頼まれた後のため、ギンナルはフィオナの相談事というものに悪い予感しか抱けなくなっていた。
いつもなら頼られることに嬉しく思い調子に乗るところだが、彼女の前ではそうもいかない。
ギンナルは渋々といった様子で地図から顔を上げるとフィオナは何故か恥ずかしそうに小さく頷いた。
「あのさ……例えばだけど、異性に好きって言われたら……どうする?」
フィオナはノルゼンでジークに言われてからというものずっと気にしていた。
しかしこの相談を仲間の中の誰かに持ちかけようものなら勘違いされるのは目に見えている。
だから比較的関係の薄い漆黒の翼に相談に乗ってもらおうと思ったのだが、ギンナルは腕を組み難しい顔をしていた。
「それはどういう意味でだ?友達としてか?それとも、何だ……こ、恋人として……か?」
こういった話には疎いのかギンナルは顔を赤くしながら訪ねるとフィオナの顔もみるみるうちに紅潮していった。
「そ、それは分からないけど……ていうか、あんたが邪魔さえしなきゃ悩まずにすんだのよ!!」
「例えばの話ではなかったのか!?」
「あ……そ、そう!例えばの話よ!」
「訳の分からんヤツだ……。だがまぁしかし、まずはどういう意味で言ったのか確認することが先決ではないのか?言葉とは曖昧なものだからな、真意を確かめなければ元も子もないだろ」
「そう……よね。やっぱり本人に確かめるほうが手っ取り早いし確実よね!ありがとう!」
フィオナは吹っ切れたように笑顔で礼を言うと操舵室を飛び出して行った。
「結局あいつは何をしに来たんだ?」
ギンナルはドルンブとユシアに問うたが2人共首を傾げるだけだった。
* * *
「ジーク居る!?」
フィオナは船室の扉を勢い良く開けると、その音に驚いたカインがこちらを見ているだけで他には誰もいなかった。
「ジークは?」
その時、決意を宿した瞳をしたフィオナを見てカインは確信した。
これはいよいよ時が来たのだ、と。
「ジーク君なら軽食を作るって言って厨房に行ったよ」
カインはマジメな表情で言った。
顔が引きつりそうになったが、それを何とか抑えて彼女の探し人の居場所を伝えた。
「厨房……ちょっと遠いけど仕方ないか。ありがとう!」
フィオナは礼だけ行って即座に厨房へ向かう。
「ば、ばれなかったかな……?」
* * *
「ジーク!!」
「ひゃあっ!!」
厨房の扉を開くと、そこにはルルとマオ、ニノンの三人が居た。
どうやら食材のつまみ食いをしていたらしく悲鳴を上げたルルがリンゴを落としてしまった。
「ふぃ、フィオナ!?このことは内緒にしてほしいんだけど……」
マオが困ったように苦笑いしながら懇願するがフィオナは聞こうともせず厨房の中を見回した。
「ど、どうかしたんですか?」
「ここにジーク来てない?」
ニノンは「いいえ」と首を横に振った。
その瞬間、何かに気付いたフィオナはハッと息を呑んだ。
「か、カインのやつ嘘吐いたわね!!何でこんなことしたのか理由はよく分からないけど、完全に嵌められたわ!!」
「フィオナ、ジーク兄さんを探してるの?」
地団駄を踏むフィオナにルルが問いかけると、フィオナは少し冷静さを取り戻していった。
「だったら、カイン君に甲板に行ってくるって言ってたのを私見たよ?」
「しかも本当の居場所も知ってたのね…!!」
フィオナの怒りのボルテージが上昇していくが、それどころではないと理性が働き、口の端がヒクヒクしていた。
(フィオナさんがなんか恐い……)
フィオナはとりあえずお礼だけ言って厨房を後にした。
* * *
(ルルが嘘を吐くのは有り得ないけど、大分時間も経っちゃったし、もう移動している可能性もあるわよね……)
フィオナは思考を巡らせた後、床に伸びる自分の影に視線を落とした。
太ももを押さえ、生唾を飲み込みながら足で影をノックする。
「……何?」
すると影の中から赤い瞳に眼鏡をかけた黒い長髪のナイラが頭を出した。
「……気のせいかもだけど、あんたなんだか機嫌悪くない?」
「そう思うなら気軽に呼び出さないで」
「そんなに私のパンツが見たかったの?」
「お前のパンツなんてもともと興味無い」
「散々見たのはあんたでしょ!?ていうか、これじゃまるで私が見せたがりみたいじゃない!!」
「どうしても見て欲しいっていうなら見てあげなくもない」
「見せるわけないでしょ!?」
「じゃあ何で呼んだの?」
淡々と質問してくるナイラにフィオナは一旦落ち着こうと溜息を吐いた。
「ジークが今どこにいるのか知りたいの。船内のどこかに居るっていうのは分かってるんだけど下手に探し回って擦れ違いになるのも時間の無駄だし」
「ジークだったら甲板にいる」
即答するナイラにフィオナは一瞬固まった。
「……何で即答できるのかしら?」
いくら影の中を移動して情報収集ができるからとは言え、その情報を集めるために一度影の中に潜る必要があるはずである。
それなのにナイラは影の中から出てきてから一瞬たりとも潜ってはいない。
「何でって、さっきまであいつのこと見てたから」
「ちょ、ちょっと待て!もしかして4、6時中あいつのこと見てたとか、そんなこと言わないわよね?」
急に慌て始めたフィオナにナイラは首を傾げた。
対するフィオナも何故こんなに動揺するのか自分でも分からなかったが、カインのような面倒事が増えるのだけは勘弁してほしいと自然に考えていた。
「私はただマッティに「ジークは特に注意して監視しろ」って言われてるだけ。でなければ今頃私はマッティと一緒に……」
突然ナイラは俯き、眼鏡が光を反射してよく見えなかったが瞳が潤んでいるようだった。
「と、兎に角ジークは甲板にいるのね!今度ちゃんと話聞くから!」
「別にいい」
ナイラは命令で動いているだけと分かり何故か安堵したフィオナだったが、ナイラは落ち込んだままの様子で影の中へ戻ってしまった。
何はともあれフィオナは甲板を目指す。
* * *
甲板へ出る鉄製の重い扉を開けると、生ぬるい風がフィオナの頬を撫でた。
髪が目に入らないようにもみあげ部分を片手でおさえながら甲板を見渡すと、夕日をバックに海を眺める犬の耳に黒い髪をもつジークの背中があった。
ようやく見つけたという達成感と安堵とは裏腹に、一歩近付こうとすると何故か鼓動が早くなる。
(な、何て声をかけたら良いのかしら……?)
普段ならば何も考えずとも自然と言葉が出てくるのに何故か考えてしまう。
そして考えれば考えるほど心臓の音が気になり、逆に頭が真っ白になる。
(えぇい!考えるな私!こんなのいつもと同じようにやればいいのよ!)
当然のことを自分に言い聞かせている時点でドツボにはまっていることに気付かないフィオナは意を決して一歩踏み出す。
「ジー……」
―――ブォオオオオン!!
瞬間、目的地への到着を知らせる汽笛が船体に鳴り響いた。
片手を上げてフリーズするフィオナの視線の先にはピピスタ港が既に見えている。
「どうした?」
船内に入ろうと甲板内部へ振り返り、扉へ向かう際にフィオナに気付いたジークが歩み寄る。
「あっ、えっと!ちょ、ちょっと話が!」
フリーズが解除されたフィオナが両手を動かしながら言うがジークは眉をひそめた。
「話つったってもう着くぞ?さっさと降りる準備しねぇとな」
ジークはフィオナの肩を擦れ違い様にポンと叩いてから船内に戻った。
「もう!!」
フィオナは右足で地面を強く踏みつけ、地団駄を踏んだ。
* * *
ピピスタ港についたヴェイグ一行は漆黒の翼に別れを告げようとしていた。
しかし、
「アニキ〜、今海賊がここら辺の海域をうようよしているらしいでやんすぅ」
泣き言を漏らしながらギンナルの右腕にしがみつくドルンブに対してユシアがギンナルの左腕を掴んだ。
「ドドドドどうしよギンナル!?追い剥ぎはがされちゃうよ!!」
「よ、よし分かった!今夜はここに停泊する!明日になれば海賊も移動するだろう!」
ということでめでたく漆黒の翼が帰れなくなったのを見届けてから、ヴェイグ達はビビスタへと帰還した。
「おう!意外と早かったな!」
骨董屋へ行くと緑のモブ子が休憩がてら店番をしていた。
「ちょっと待ってな。カイトは今工房にいるから呼んできてやるよ」
「あ、僕達も行くよ!」
マオが同行を求めると、モブ子は「好きにしな」と言って骨董屋の裏へ回った。
工房へ入ると既に火は落としてあったがまだほのかに熱気が残っていた。
壁には舞台等で使われるパーテーションサイズの鋼の板が所狭しと並んでおり、カイトがその一つ一つにチェックを入れていた。
しかしヴェイグ達に気付くと作業を中断し駆け寄ってきた。
「みんなお帰り!結構早かったね」
「なるべく早く帰るって言っただろ?」
ジークはカイトに得意気に笑みを浮かべる。
「カイト、紹介しよう。俺達の新しい仲間になったニノンだ」
ユージーンがニノンの紹介をすると、初対面のヒトが苦手なニノンは両の翼を重ねてもじもじしていた。
「初めましてだね、僕はカイト。よろしくね」
カイトは中腰になってニノンに視線を合わせ、微笑みながら手を差し出すとニノンは自然と目を合わせ、気付けば翼を差し出し握手していた。
「ニ、ニノンです……」
その傍らではジンが壁に立て掛けてある銀の板を眺めていた。
「本当にこれがあの糸だったの?」
「あぁそうだよ。試しに持ってみろよ」
緑のモブ子に言われ、試しにヴェイグが持ち上げてみた。
「本当に軽いな……」
ヴェイグは自分の身の丈より少し大きい板を片手で上下に持ち上げて見せた。
「それで、何時頃完成するのかしら?」
ヒルダが問うと緑のモブ子とカイトは揃って首を傾げた。
「何が?」
「何がって……飛行機器に決まってるでしょ?」
「んなもんとっくにできてるぞ?」
緑のモブ子は当然のことのように答えると、ヒルダは何も言い返せなかった。
なにせ、リヒトワームの糸を大量に回収したとはいえヒトの顔より一回りか二回り大きいサイズでしかない。
それを鍛えるとその過程で何倍にも伸びるとも言っていたが、まさかここに並んでいるリヒトメタルは生成したうちのほんの一部とだでも言うのか。
「まさか機体が小さいとか言わねぇだろうな?」
ティトレイが不安そうに言う。
「実際に見た方が早いかもね。街の外にあるから着いてきてよ」
そう言ってカイトが工房の外に出るのでヴェイグ達もついていく。
〜続く〜
ルーベルトは「フィオナを追うのならば必ず必要になる」と言って強引に渡してきたが、彼の言うとおり使ってしまった。
もしこのハリセンがなければジークは自の手でフィオナを叩いていただろう。
それを見越して女性に手を挙げることを許さないルーベルトはジークにこのハリセンを渡したのかもしれない。
それに、このハリセンのおかげで険悪な雰囲気にもならなかったうえに、しこりも残らなかった。
「返す時にお礼を言わねぇとな……」
「そのハリセン使ったんだ」
ジークが1人で呟いていると、何時の間にかカインが隣にいた。
「何で分かったんだよ?」
「そりゃあハリセンを見つめながらニヤニヤしているところを見れば誰だって分かるよ」
「……ニヤニヤしてたか?」
「見たのが僕じゃなかったらドン引きするぐらには」
ジークは眉をひそめながらハリセンをしまった。
「お前が寛大な性格で助かるよ」
「でしょ?」
カインは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
* * *
「で、フィオナが何でまたここにいんの?」
漆黒の翼の紅一点、ユシアは操舵室で相変わらず信号マニュアルを広げながら素朴な疑問を投げ掛ける。
「もしかしてここって立ち入り禁止だった?」
フィオナは申し訳なさそうに辺りを見回すがユシアは「別に〜」とだけ答えて視線を教本に戻した。
「その……ちょっと相談したいことがあって」
「オイラにでやんすか?」
「違うわよ!」
少しキメ顔で振り向いたドルンブだったが強く否定されて少なからずショックを受けたのか舵をとる背中が少し寂しそうに見えた。
「……俺にか」
船を出してくれと突然フィオナに頼まれた後のため、ギンナルはフィオナの相談事というものに悪い予感しか抱けなくなっていた。
いつもなら頼られることに嬉しく思い調子に乗るところだが、彼女の前ではそうもいかない。
ギンナルは渋々といった様子で地図から顔を上げるとフィオナは何故か恥ずかしそうに小さく頷いた。
「あのさ……例えばだけど、異性に好きって言われたら……どうする?」
フィオナはノルゼンでジークに言われてからというものずっと気にしていた。
しかしこの相談を仲間の中の誰かに持ちかけようものなら勘違いされるのは目に見えている。
だから比較的関係の薄い漆黒の翼に相談に乗ってもらおうと思ったのだが、ギンナルは腕を組み難しい顔をしていた。
「それはどういう意味でだ?友達としてか?それとも、何だ……こ、恋人として……か?」
こういった話には疎いのかギンナルは顔を赤くしながら訪ねるとフィオナの顔もみるみるうちに紅潮していった。
「そ、それは分からないけど……ていうか、あんたが邪魔さえしなきゃ悩まずにすんだのよ!!」
「例えばの話ではなかったのか!?」
「あ……そ、そう!例えばの話よ!」
「訳の分からんヤツだ……。だがまぁしかし、まずはどういう意味で言ったのか確認することが先決ではないのか?言葉とは曖昧なものだからな、真意を確かめなければ元も子もないだろ」
「そう……よね。やっぱり本人に確かめるほうが手っ取り早いし確実よね!ありがとう!」
フィオナは吹っ切れたように笑顔で礼を言うと操舵室を飛び出して行った。
「結局あいつは何をしに来たんだ?」
ギンナルはドルンブとユシアに問うたが2人共首を傾げるだけだった。
* * *
「ジーク居る!?」
フィオナは船室の扉を勢い良く開けると、その音に驚いたカインがこちらを見ているだけで他には誰もいなかった。
「ジークは?」
その時、決意を宿した瞳をしたフィオナを見てカインは確信した。
これはいよいよ時が来たのだ、と。
「ジーク君なら軽食を作るって言って厨房に行ったよ」
カインはマジメな表情で言った。
顔が引きつりそうになったが、それを何とか抑えて彼女の探し人の居場所を伝えた。
「厨房……ちょっと遠いけど仕方ないか。ありがとう!」
フィオナは礼だけ行って即座に厨房へ向かう。
「ば、ばれなかったかな……?」
* * *
「ジーク!!」
「ひゃあっ!!」
厨房の扉を開くと、そこにはルルとマオ、ニノンの三人が居た。
どうやら食材のつまみ食いをしていたらしく悲鳴を上げたルルがリンゴを落としてしまった。
「ふぃ、フィオナ!?このことは内緒にしてほしいんだけど……」
マオが困ったように苦笑いしながら懇願するがフィオナは聞こうともせず厨房の中を見回した。
「ど、どうかしたんですか?」
「ここにジーク来てない?」
ニノンは「いいえ」と首を横に振った。
その瞬間、何かに気付いたフィオナはハッと息を呑んだ。
「か、カインのやつ嘘吐いたわね!!何でこんなことしたのか理由はよく分からないけど、完全に嵌められたわ!!」
「フィオナ、ジーク兄さんを探してるの?」
地団駄を踏むフィオナにルルが問いかけると、フィオナは少し冷静さを取り戻していった。
「だったら、カイン君に甲板に行ってくるって言ってたのを私見たよ?」
「しかも本当の居場所も知ってたのね…!!」
フィオナの怒りのボルテージが上昇していくが、それどころではないと理性が働き、口の端がヒクヒクしていた。
(フィオナさんがなんか恐い……)
フィオナはとりあえずお礼だけ言って厨房を後にした。
* * *
(ルルが嘘を吐くのは有り得ないけど、大分時間も経っちゃったし、もう移動している可能性もあるわよね……)
フィオナは思考を巡らせた後、床に伸びる自分の影に視線を落とした。
太ももを押さえ、生唾を飲み込みながら足で影をノックする。
「……何?」
すると影の中から赤い瞳に眼鏡をかけた黒い長髪のナイラが頭を出した。
「……気のせいかもだけど、あんたなんだか機嫌悪くない?」
「そう思うなら気軽に呼び出さないで」
「そんなに私のパンツが見たかったの?」
「お前のパンツなんてもともと興味無い」
「散々見たのはあんたでしょ!?ていうか、これじゃまるで私が見せたがりみたいじゃない!!」
「どうしても見て欲しいっていうなら見てあげなくもない」
「見せるわけないでしょ!?」
「じゃあ何で呼んだの?」
淡々と質問してくるナイラにフィオナは一旦落ち着こうと溜息を吐いた。
「ジークが今どこにいるのか知りたいの。船内のどこかに居るっていうのは分かってるんだけど下手に探し回って擦れ違いになるのも時間の無駄だし」
「ジークだったら甲板にいる」
即答するナイラにフィオナは一瞬固まった。
「……何で即答できるのかしら?」
いくら影の中を移動して情報収集ができるからとは言え、その情報を集めるために一度影の中に潜る必要があるはずである。
それなのにナイラは影の中から出てきてから一瞬たりとも潜ってはいない。
「何でって、さっきまであいつのこと見てたから」
「ちょ、ちょっと待て!もしかして4、6時中あいつのこと見てたとか、そんなこと言わないわよね?」
急に慌て始めたフィオナにナイラは首を傾げた。
対するフィオナも何故こんなに動揺するのか自分でも分からなかったが、カインのような面倒事が増えるのだけは勘弁してほしいと自然に考えていた。
「私はただマッティに「ジークは特に注意して監視しろ」って言われてるだけ。でなければ今頃私はマッティと一緒に……」
突然ナイラは俯き、眼鏡が光を反射してよく見えなかったが瞳が潤んでいるようだった。
「と、兎に角ジークは甲板にいるのね!今度ちゃんと話聞くから!」
「別にいい」
ナイラは命令で動いているだけと分かり何故か安堵したフィオナだったが、ナイラは落ち込んだままの様子で影の中へ戻ってしまった。
何はともあれフィオナは甲板を目指す。
* * *
甲板へ出る鉄製の重い扉を開けると、生ぬるい風がフィオナの頬を撫でた。
髪が目に入らないようにもみあげ部分を片手でおさえながら甲板を見渡すと、夕日をバックに海を眺める犬の耳に黒い髪をもつジークの背中があった。
ようやく見つけたという達成感と安堵とは裏腹に、一歩近付こうとすると何故か鼓動が早くなる。
(な、何て声をかけたら良いのかしら……?)
普段ならば何も考えずとも自然と言葉が出てくるのに何故か考えてしまう。
そして考えれば考えるほど心臓の音が気になり、逆に頭が真っ白になる。
(えぇい!考えるな私!こんなのいつもと同じようにやればいいのよ!)
当然のことを自分に言い聞かせている時点でドツボにはまっていることに気付かないフィオナは意を決して一歩踏み出す。
「ジー……」
―――ブォオオオオン!!
瞬間、目的地への到着を知らせる汽笛が船体に鳴り響いた。
片手を上げてフリーズするフィオナの視線の先にはピピスタ港が既に見えている。
「どうした?」
船内に入ろうと甲板内部へ振り返り、扉へ向かう際にフィオナに気付いたジークが歩み寄る。
「あっ、えっと!ちょ、ちょっと話が!」
フリーズが解除されたフィオナが両手を動かしながら言うがジークは眉をひそめた。
「話つったってもう着くぞ?さっさと降りる準備しねぇとな」
ジークはフィオナの肩を擦れ違い様にポンと叩いてから船内に戻った。
「もう!!」
フィオナは右足で地面を強く踏みつけ、地団駄を踏んだ。
* * *
ピピスタ港についたヴェイグ一行は漆黒の翼に別れを告げようとしていた。
しかし、
「アニキ〜、今海賊がここら辺の海域をうようよしているらしいでやんすぅ」
泣き言を漏らしながらギンナルの右腕にしがみつくドルンブに対してユシアがギンナルの左腕を掴んだ。
「ドドドドどうしよギンナル!?追い剥ぎはがされちゃうよ!!」
「よ、よし分かった!今夜はここに停泊する!明日になれば海賊も移動するだろう!」
ということでめでたく漆黒の翼が帰れなくなったのを見届けてから、ヴェイグ達はビビスタへと帰還した。
「おう!意外と早かったな!」
骨董屋へ行くと緑のモブ子が休憩がてら店番をしていた。
「ちょっと待ってな。カイトは今工房にいるから呼んできてやるよ」
「あ、僕達も行くよ!」
マオが同行を求めると、モブ子は「好きにしな」と言って骨董屋の裏へ回った。
工房へ入ると既に火は落としてあったがまだほのかに熱気が残っていた。
壁には舞台等で使われるパーテーションサイズの鋼の板が所狭しと並んでおり、カイトがその一つ一つにチェックを入れていた。
しかしヴェイグ達に気付くと作業を中断し駆け寄ってきた。
「みんなお帰り!結構早かったね」
「なるべく早く帰るって言っただろ?」
ジークはカイトに得意気に笑みを浮かべる。
「カイト、紹介しよう。俺達の新しい仲間になったニノンだ」
ユージーンがニノンの紹介をすると、初対面のヒトが苦手なニノンは両の翼を重ねてもじもじしていた。
「初めましてだね、僕はカイト。よろしくね」
カイトは中腰になってニノンに視線を合わせ、微笑みながら手を差し出すとニノンは自然と目を合わせ、気付けば翼を差し出し握手していた。
「ニ、ニノンです……」
その傍らではジンが壁に立て掛けてある銀の板を眺めていた。
「本当にこれがあの糸だったの?」
「あぁそうだよ。試しに持ってみろよ」
緑のモブ子に言われ、試しにヴェイグが持ち上げてみた。
「本当に軽いな……」
ヴェイグは自分の身の丈より少し大きい板を片手で上下に持ち上げて見せた。
「それで、何時頃完成するのかしら?」
ヒルダが問うと緑のモブ子とカイトは揃って首を傾げた。
「何が?」
「何がって……飛行機器に決まってるでしょ?」
「んなもんとっくにできてるぞ?」
緑のモブ子は当然のことのように答えると、ヒルダは何も言い返せなかった。
なにせ、リヒトワームの糸を大量に回収したとはいえヒトの顔より一回りか二回り大きいサイズでしかない。
それを鍛えるとその過程で何倍にも伸びるとも言っていたが、まさかここに並んでいるリヒトメタルは生成したうちのほんの一部とだでも言うのか。
「まさか機体が小さいとか言わねぇだろうな?」
ティトレイが不安そうに言う。
「実際に見た方が早いかもね。街の外にあるから着いてきてよ」
そう言ってカイトが工房の外に出るのでヴェイグ達もついていく。
〜続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート48】
takeshi「ども〜!夏が好き!なtakeshiです」
チャリティ「暑苦しいわね」
takeshi「いや〜、夏って燃えますよね!!」
チャリティ「アイスが美味しい季節ではあるわね」
takeshi「逆に私冬は大の苦手でしてテンションだだ下がりです……冬眠したい」
チャリティ「雪見大福が美味しい季節ではあるわね。そんなことより今回の話って『すきっとだらけ』でも良かったんじゃないの?ていうか結局何がしたかったわけ?」
takeshi「スキットにしちゃうとフィオナがパンツ隠してる所とか表現できないし尺が余りすぎてしまうんですよ」
チャリティ「ふぅ〜ん……なんか最近フィオナ、ヒロインみたいね」
takeshi「一応この作品のヒロインなのですが……」
チャリティ「……え?私じゃないの?」
takeshi「ここでこうして私と話してる時点でありえないでしょう。キャラクター名鑑読み返してきたらどうですか?」
チャリティ「だ、だって!この物語が始まったきっかけになったのって私じゃない!要所要所で本編にも登場してるし、ヒロインのことを読者に忘れられないようにするためにここに呼ばれてるんじゃないの?」
takeshi「まぁ確かに重要人物ではあるんですが、本当に要所要所でしか登場しないから私がキャラを忘れないように呼んだまでですよ」
チャリティ「そ、そんな……」
takeshi「あ、でも昨今では裏ヒロインとかありますからね」
チャリティ「裏番長的なやつね!!」
takeshi「ま、まぁ意味は同じようなものですけども……」
マリア「あらあら、たった2ヶ月目を離しただけでもうこの有様なの?お馬鹿な話はそこまでよ?」
チャリティ「お、おか、おか…お母さん!!?」
takeshi「どういうことだおい……次に来るのは1年後って言ってたじゃねぇか……」
マリア「今月、何があるか知ってるかしら?」
チャリティ「何がってことはイベント?お祭りとか?」
takeshi「花火大会もありますね」
アルティス「呼んだかい?」
マリア「お呼びでないわ」
takeshi「今月って他に何かありましったっけ……」
チャリティ「う〜ん……」
マリア「本当に困った子達ねぇ。お盆があるでしょ?」
takeshi「日本の伝統行事ですから流石に覚えてましたけど……え?それに便乗して帰って来られたんですか?」
マリア「帰省ラッシュで大変だったわぁ〜」
takeshi「で、でもここではナスもキュウリも用意してませんよ!?」
チャリティ「ごめん……お盆だし雰囲気だけでもと思ってキュウリとナスで馬作っちゃった……」
takeshi「何……だと!?ていうか何でキュウリ作ったんですか!?せめてナスだけにしておけば来るのが遅れて着いた頃にはもう帰る時間とかになってたかもしれないのに!!」
マリア「あらあら、それではまるで私に会いたくなかったような口ぶりね」
takeshi「も、勿論会いたかったですよ!?チャリティさんの作ったキュウリの乗り心地は如何でしたか?」
マリア「そうねぇ……サラマンダーより速かったわ♪」
takeshi「それは何よりでしたねぇ……」
チャリティ「ウチのお母さんがビッチな件」
takeshi「そんなタイトルのラノベがありそうですね」
マリア「勝手にヒトをビッチ呼ばわりしないでくれる?私は今も昔もあのヒト一筋なんですから!そうねぇ、あえて言うなら恋のウィッチかしら?」
チャリティ「その年でウィッチとかさすがにないわ」
マリア「……チャリティちゃん?ヒトは何歳からでも魔法使いになれるのよ?」
チャリティ「ご、ごめんなさいママ!!」
マリア「どうして私が魔法少女と言わずにわざわざ魔法使いにしたと思っているのかしらねぇ〜」
チャリティ「ごめんなさい!本当にすみませんした!!だからアイアンクローで私の顔を握り潰そうとしないで!!」
takeshi「なるほど、これがソウルファイトというやつなんですね」
チャリティ「変なこと言ってないで助けなさいよ!!」
takeshi「そんな訳で折角マリアさんに帰ってきてもらったわけですし今月は一緒に楽談していこうと思います。ではまた〜」
チャリティ「おい!放置すんな!」
マリア「あらあら、誰がそんな汚い言葉遣いを教えたのかしら?」
チャリティ「いやぁあああああ」
―――オマケ―――
「ユーリ・ローウェルゥウウウウウウ!!!!」
しんな「何だいこの声は!?」
ユーリ「ん?俺はまだ脱いでねぇぞ?」
エステリーゼ「ではこの声は一体……?」
ルブラン「ユーリ・ローウェルゥウウウウウ!!!!」
フレン「ルブラン殿!!」
ルブラン「貴様を猥褻物陳列未遂の罪で逮捕するぅうううう!!!!」
ユーリ「世界を飛び越えてまで追ってくるとかどんだけだよ」
ジーニアス「ちょ、ちょっと!僕達とのバトルはどうするのさ!?」
ルブラン「むっ!貴様達もユーリ・ローウェルの仲間か!?」
リフィル「いいえ、私達は彼とは無関係よ。むしろ被害者だわ」
プレセア「彼は突然ズボンに手をかけ「俺のフローラルの香りに酔いな」と跡○様のようなことを言ってきました」
ルブラン「何!?変態な上に模倣犯でもあるのか!?」
ユーリ「それは言ってねぇぞ!!」
ルブラン「見苦しいぞ!詳しい話は地下牢で聞いてやるから覚悟するんだな!」
リタ「ちょ、どうなってんの!?」
ユーリ・ローウェル一行は帝都ザーフィアスへと連行された。
『帝都ザーフィアス・地下牢』
ルブラン「つ、ついにユーリ・ローウェルをこの手で捕まえたぞぉ!!」
ユーリ「はいはい、そいつはようござんしたね」
ルブラン「む?えらく余裕ではないか」
ユーリ「どうせすぐに脱走するしな」
フレン「でもどうやってここから出るんだい?」
ユーリ「そりゃ外にいるはずのフレンに助けて……お前何でここに居んの?騎士団長様じゃねぇのかよ?」
フレン「君は勘違いしているようだね。二週目の僕はまだ騎士団長にはなっていないし、そもそもここでは敵国の王子の側近っていう設定だからね。捕まって当然さ」
ユーリ「称号引き継いでんだろ!?それでなんとか誤魔化せよ!!」
フレン「それが……何故かポイントが足りなくて引き継げなかったんだ……」
ユーリ「引き継げなかったって、そんな大したポイントじゃねぇだろ。一体他に何に使って……」
エステリーゼ「ゆ、ユーリ?そんなに見つめられると照れますぅ」
リタ「ねぇエステル。ユーリのアイテムを引き継ぐのに何ポイント使ったの?」
エステリーゼ「え、えっとぉ……内緒、です」
ジュディス「いつもはどうやって抜け出しているの?」
ユーリ「隣で捕まってるおっさんに鍵を横流ししてもらうか、外にいるラピードに開けてもらうかなんだが……」
ラピード「バウ!」
エステリーゼ「今回はラピードも捕まっちゃったんですね……」
リタ「しゃーない。しゃくだけど、おっさんに鍵をもらうしかないわね」
ユーリ「という訳だおっさん、わるいが鍵借りるわ」
「…………」
ユーリ「おっさん?」
返事が無い。
カロル「今覗いて見たけど隣に誰もいないよ?」
リタ「何ですって!?」
ジュディス「こうなったらザギを呼んで牢屋を壊してもらうしかないわね」
エステリーゼ「それが……」
フレン「エステリーゼ様?」
エステリーゼ「ザギだけは異世界に残ったままになっているので、ここから呼ぶとなるとユーリのパンツ以上のアイテムが必要なんです」
パティ「ユ、ユーリのパンツ以上のアイテム……じゃと?」
リタ「それって一体……?」
エステリーゼ「ごめんなさい、私も持っていないんです。そもそもユーリのパンツ以上に価値があるものがこの世に存在するのかさえ分かりません」
ユーリ「身近に結構あると思うぞ?」
エステリーゼ「身近に……?それはどういう意味です?」
ユーリ「んなもん言葉の意味通りだっての」
ジュディス「つまりユーリは俺の脱ぎたてのパンツを使えって言ってるのよ」
リタ&パティ&フレン「!!?」
ユーリ「ちげぇよ!!つうか何でフレンまで反応してんだ!!」
エステリーゼ「な、なるほど、身近過ぎて気が付きませんでした……。け、けど良いんです?そ、そんな、ほ、ホカホカな物を頂いても!?」
ユーリ「ホカホカとかナマナマしいこと言ってんじゃねぇ!!ぜってぇやらねぇからな!!」
エステリーゼ「そんな〜……」
リタ「ケチ」
ユーリ「まずは俺達が捕まった理由を考えてから物を言えよ……」
パティ「これじゃあウチら出られんのぅ」
ジュディス「完全に詰んだわね」
エステリーゼ「この場合、どうなるのでしょうか?」
その後、彼等の姿を見た者は誰もいなかった
―――BAD END―――
リタ「待って待って!!まだ諦めてないから!まだ考えてるから!!」
ユーリ「選択肢間違えてBADENDとかギャルゲーかよ」
エステリーゼ「やはり選択肢を間違えたのでしょうか……」
フレン「しかしもう片方の選択肢を選んでも全滅していました。これはこのシステム自体に欠陥があるとしか考えられません」
リタ「どちらにしろ、また最初からってこと?」
パティ「嫌じゃ嫌じゃ!!またしばらくユーリとお別れなんて嫌なのじゃ!!」
リタ「駄々こねたって仕方ないでしょ?セーブしてないんだから」
パティ「リタ姐は良いのじゃ。帝都に近い所に住んでるおかげで今度は最初から仲間になることだってできるのじゃ。でもうちはまた船の上からなのじゃ!」
カロル「さっきの選択肢の場面からやり直すこともできるよ?」
パティ「ほ、本当かカロル!?」
カロル「さっき選択肢が出てきた時セーブボタンがあったから珍しくてつい押しちゃったんだよね」
ユーリ「折角の俺の縛りプレイになんてことを……」
フレン「よくやったカロル!」
リタ「あんた天才だわ!」
パティ「ボケガエルとか言ってすまんかったのじゃ!」
ジュディス「あなたの負けね、ユーリ」
ユーリ「……ったく、さっきの場所に戻ったら名誉挽回しねぇとな」
カロル「じゃあロードするよ?」
エステリーゼ「お願いします!」
ラピード「バウ!」
―――now loading―――
『救いの塔・上層部』
A:ユーリが今履いてるパンツを使ってザギを召喚する
B:このまま全滅してデータをロードする
C:ユーリ自身がザギに身を捧げる
リタ「選択肢が増えてる!!」
ユーリ「2週目の選択肢に入ると項目が増えるってやつか」
カロル「ルート選択の前のセーブはギャルゲーの常識だからね!」
ジュディス「カロル、やけに詳しいのね」
カロル「そ、それは……ナンを攻略するために色々勉強したっていうか……」
リタ「そんなことしてるからHP500なのよ」
フレン「まぁ良いじゃないか。おかげで最初からやり直さなくてすんだんだし」
ロイド「あいつら、急にどうしたんだ?」
しいな「ゼロスにパンツを履かれたのが相当ショックだったんじゃないかい?」
ゼロス「だからまだ履いてねぇから!!」
ユーリ「つうか、一件落着みたいな空気になってっけど、全然解決になってねぇぞ?」
エステリーゼ「何を言ってるんです?ユーリはさっさとザギに身体を捧げてください」
ユーリ「は?」
パティ「ユーリのファーストストライクを奪えなかったのは惜しいが、心はうちの物だから今だけは目を瞑るのじゃ」
ユーリ「勝手に目を閉じんなよ。ちゃんと見開いて現実の俺の声を聞けよ」
リタ「俺だけ見てろとかよくそんな恥ずかしいこと言えるわね」
ユーリ「言ってねぇよ!お前の脳内のほうがよっぽど恥ずかしいことになってることに気付け!!」
ジュディス「ユーリ?さっき地下牢で言った言葉、覚えてる?」
ユーリ「……チッ、分かったよ」
ユーリはCを選んだ。
〜続く〜
takeshi「ども〜!夏が好き!なtakeshiです」
チャリティ「暑苦しいわね」
takeshi「いや〜、夏って燃えますよね!!」
チャリティ「アイスが美味しい季節ではあるわね」
takeshi「逆に私冬は大の苦手でしてテンションだだ下がりです……冬眠したい」
チャリティ「雪見大福が美味しい季節ではあるわね。そんなことより今回の話って『すきっとだらけ』でも良かったんじゃないの?ていうか結局何がしたかったわけ?」
takeshi「スキットにしちゃうとフィオナがパンツ隠してる所とか表現できないし尺が余りすぎてしまうんですよ」
チャリティ「ふぅ〜ん……なんか最近フィオナ、ヒロインみたいね」
takeshi「一応この作品のヒロインなのですが……」
チャリティ「……え?私じゃないの?」
takeshi「ここでこうして私と話してる時点でありえないでしょう。キャラクター名鑑読み返してきたらどうですか?」
チャリティ「だ、だって!この物語が始まったきっかけになったのって私じゃない!要所要所で本編にも登場してるし、ヒロインのことを読者に忘れられないようにするためにここに呼ばれてるんじゃないの?」
takeshi「まぁ確かに重要人物ではあるんですが、本当に要所要所でしか登場しないから私がキャラを忘れないように呼んだまでですよ」
チャリティ「そ、そんな……」
takeshi「あ、でも昨今では裏ヒロインとかありますからね」
チャリティ「裏番長的なやつね!!」
takeshi「ま、まぁ意味は同じようなものですけども……」
マリア「あらあら、たった2ヶ月目を離しただけでもうこの有様なの?お馬鹿な話はそこまでよ?」
チャリティ「お、おか、おか…お母さん!!?」
takeshi「どういうことだおい……次に来るのは1年後って言ってたじゃねぇか……」
マリア「今月、何があるか知ってるかしら?」
チャリティ「何がってことはイベント?お祭りとか?」
takeshi「花火大会もありますね」
アルティス「呼んだかい?」
マリア「お呼びでないわ」
takeshi「今月って他に何かありましったっけ……」
チャリティ「う〜ん……」
マリア「本当に困った子達ねぇ。お盆があるでしょ?」
takeshi「日本の伝統行事ですから流石に覚えてましたけど……え?それに便乗して帰って来られたんですか?」
マリア「帰省ラッシュで大変だったわぁ〜」
takeshi「で、でもここではナスもキュウリも用意してませんよ!?」
チャリティ「ごめん……お盆だし雰囲気だけでもと思ってキュウリとナスで馬作っちゃった……」
takeshi「何……だと!?ていうか何でキュウリ作ったんですか!?せめてナスだけにしておけば来るのが遅れて着いた頃にはもう帰る時間とかになってたかもしれないのに!!」
マリア「あらあら、それではまるで私に会いたくなかったような口ぶりね」
takeshi「も、勿論会いたかったですよ!?チャリティさんの作ったキュウリの乗り心地は如何でしたか?」
マリア「そうねぇ……サラマンダーより速かったわ♪」
takeshi「それは何よりでしたねぇ……」
チャリティ「ウチのお母さんがビッチな件」
takeshi「そんなタイトルのラノベがありそうですね」
マリア「勝手にヒトをビッチ呼ばわりしないでくれる?私は今も昔もあのヒト一筋なんですから!そうねぇ、あえて言うなら恋のウィッチかしら?」
チャリティ「その年でウィッチとかさすがにないわ」
マリア「……チャリティちゃん?ヒトは何歳からでも魔法使いになれるのよ?」
チャリティ「ご、ごめんなさいママ!!」
マリア「どうして私が魔法少女と言わずにわざわざ魔法使いにしたと思っているのかしらねぇ〜」
チャリティ「ごめんなさい!本当にすみませんした!!だからアイアンクローで私の顔を握り潰そうとしないで!!」
takeshi「なるほど、これがソウルファイトというやつなんですね」
チャリティ「変なこと言ってないで助けなさいよ!!」
takeshi「そんな訳で折角マリアさんに帰ってきてもらったわけですし今月は一緒に楽談していこうと思います。ではまた〜」
チャリティ「おい!放置すんな!」
マリア「あらあら、誰がそんな汚い言葉遣いを教えたのかしら?」
チャリティ「いやぁあああああ」
―――オマケ―――
「ユーリ・ローウェルゥウウウウウウ!!!!」
しんな「何だいこの声は!?」
ユーリ「ん?俺はまだ脱いでねぇぞ?」
エステリーゼ「ではこの声は一体……?」
ルブラン「ユーリ・ローウェルゥウウウウウ!!!!」
フレン「ルブラン殿!!」
ルブラン「貴様を猥褻物陳列未遂の罪で逮捕するぅうううう!!!!」
ユーリ「世界を飛び越えてまで追ってくるとかどんだけだよ」
ジーニアス「ちょ、ちょっと!僕達とのバトルはどうするのさ!?」
ルブラン「むっ!貴様達もユーリ・ローウェルの仲間か!?」
リフィル「いいえ、私達は彼とは無関係よ。むしろ被害者だわ」
プレセア「彼は突然ズボンに手をかけ「俺のフローラルの香りに酔いな」と跡○様のようなことを言ってきました」
ルブラン「何!?変態な上に模倣犯でもあるのか!?」
ユーリ「それは言ってねぇぞ!!」
ルブラン「見苦しいぞ!詳しい話は地下牢で聞いてやるから覚悟するんだな!」
リタ「ちょ、どうなってんの!?」
ユーリ・ローウェル一行は帝都ザーフィアスへと連行された。
『帝都ザーフィアス・地下牢』
ルブラン「つ、ついにユーリ・ローウェルをこの手で捕まえたぞぉ!!」
ユーリ「はいはい、そいつはようござんしたね」
ルブラン「む?えらく余裕ではないか」
ユーリ「どうせすぐに脱走するしな」
フレン「でもどうやってここから出るんだい?」
ユーリ「そりゃ外にいるはずのフレンに助けて……お前何でここに居んの?騎士団長様じゃねぇのかよ?」
フレン「君は勘違いしているようだね。二週目の僕はまだ騎士団長にはなっていないし、そもそもここでは敵国の王子の側近っていう設定だからね。捕まって当然さ」
ユーリ「称号引き継いでんだろ!?それでなんとか誤魔化せよ!!」
フレン「それが……何故かポイントが足りなくて引き継げなかったんだ……」
ユーリ「引き継げなかったって、そんな大したポイントじゃねぇだろ。一体他に何に使って……」
エステリーゼ「ゆ、ユーリ?そんなに見つめられると照れますぅ」
リタ「ねぇエステル。ユーリのアイテムを引き継ぐのに何ポイント使ったの?」
エステリーゼ「え、えっとぉ……内緒、です」
ジュディス「いつもはどうやって抜け出しているの?」
ユーリ「隣で捕まってるおっさんに鍵を横流ししてもらうか、外にいるラピードに開けてもらうかなんだが……」
ラピード「バウ!」
エステリーゼ「今回はラピードも捕まっちゃったんですね……」
リタ「しゃーない。しゃくだけど、おっさんに鍵をもらうしかないわね」
ユーリ「という訳だおっさん、わるいが鍵借りるわ」
「…………」
ユーリ「おっさん?」
返事が無い。
カロル「今覗いて見たけど隣に誰もいないよ?」
リタ「何ですって!?」
ジュディス「こうなったらザギを呼んで牢屋を壊してもらうしかないわね」
エステリーゼ「それが……」
フレン「エステリーゼ様?」
エステリーゼ「ザギだけは異世界に残ったままになっているので、ここから呼ぶとなるとユーリのパンツ以上のアイテムが必要なんです」
パティ「ユ、ユーリのパンツ以上のアイテム……じゃと?」
リタ「それって一体……?」
エステリーゼ「ごめんなさい、私も持っていないんです。そもそもユーリのパンツ以上に価値があるものがこの世に存在するのかさえ分かりません」
ユーリ「身近に結構あると思うぞ?」
エステリーゼ「身近に……?それはどういう意味です?」
ユーリ「んなもん言葉の意味通りだっての」
ジュディス「つまりユーリは俺の脱ぎたてのパンツを使えって言ってるのよ」
リタ&パティ&フレン「!!?」
ユーリ「ちげぇよ!!つうか何でフレンまで反応してんだ!!」
エステリーゼ「な、なるほど、身近過ぎて気が付きませんでした……。け、けど良いんです?そ、そんな、ほ、ホカホカな物を頂いても!?」
ユーリ「ホカホカとかナマナマしいこと言ってんじゃねぇ!!ぜってぇやらねぇからな!!」
エステリーゼ「そんな〜……」
リタ「ケチ」
ユーリ「まずは俺達が捕まった理由を考えてから物を言えよ……」
パティ「これじゃあウチら出られんのぅ」
ジュディス「完全に詰んだわね」
エステリーゼ「この場合、どうなるのでしょうか?」
その後、彼等の姿を見た者は誰もいなかった
―――BAD END―――
リタ「待って待って!!まだ諦めてないから!まだ考えてるから!!」
ユーリ「選択肢間違えてBADENDとかギャルゲーかよ」
エステリーゼ「やはり選択肢を間違えたのでしょうか……」
フレン「しかしもう片方の選択肢を選んでも全滅していました。これはこのシステム自体に欠陥があるとしか考えられません」
リタ「どちらにしろ、また最初からってこと?」
パティ「嫌じゃ嫌じゃ!!またしばらくユーリとお別れなんて嫌なのじゃ!!」
リタ「駄々こねたって仕方ないでしょ?セーブしてないんだから」
パティ「リタ姐は良いのじゃ。帝都に近い所に住んでるおかげで今度は最初から仲間になることだってできるのじゃ。でもうちはまた船の上からなのじゃ!」
カロル「さっきの選択肢の場面からやり直すこともできるよ?」
パティ「ほ、本当かカロル!?」
カロル「さっき選択肢が出てきた時セーブボタンがあったから珍しくてつい押しちゃったんだよね」
ユーリ「折角の俺の縛りプレイになんてことを……」
フレン「よくやったカロル!」
リタ「あんた天才だわ!」
パティ「ボケガエルとか言ってすまんかったのじゃ!」
ジュディス「あなたの負けね、ユーリ」
ユーリ「……ったく、さっきの場所に戻ったら名誉挽回しねぇとな」
カロル「じゃあロードするよ?」
エステリーゼ「お願いします!」
ラピード「バウ!」
―――now loading―――
『救いの塔・上層部』
A:ユーリが今履いてるパンツを使ってザギを召喚する
B:このまま全滅してデータをロードする
C:ユーリ自身がザギに身を捧げる
リタ「選択肢が増えてる!!」
ユーリ「2週目の選択肢に入ると項目が増えるってやつか」
カロル「ルート選択の前のセーブはギャルゲーの常識だからね!」
ジュディス「カロル、やけに詳しいのね」
カロル「そ、それは……ナンを攻略するために色々勉強したっていうか……」
リタ「そんなことしてるからHP500なのよ」
フレン「まぁ良いじゃないか。おかげで最初からやり直さなくてすんだんだし」
ロイド「あいつら、急にどうしたんだ?」
しいな「ゼロスにパンツを履かれたのが相当ショックだったんじゃないかい?」
ゼロス「だからまだ履いてねぇから!!」
ユーリ「つうか、一件落着みたいな空気になってっけど、全然解決になってねぇぞ?」
エステリーゼ「何を言ってるんです?ユーリはさっさとザギに身体を捧げてください」
ユーリ「は?」
パティ「ユーリのファーストストライクを奪えなかったのは惜しいが、心はうちの物だから今だけは目を瞑るのじゃ」
ユーリ「勝手に目を閉じんなよ。ちゃんと見開いて現実の俺の声を聞けよ」
リタ「俺だけ見てろとかよくそんな恥ずかしいこと言えるわね」
ユーリ「言ってねぇよ!お前の脳内のほうがよっぽど恥ずかしいことになってることに気付け!!」
ジュディス「ユーリ?さっき地下牢で言った言葉、覚えてる?」
ユーリ「……チッ、分かったよ」
ユーリはCを選んだ。
〜続く〜