第68話『三日月と占星術』
声の主はゆっくりと姿を表すと三日月の光に照らされた。
「あ、アニー!?」
フィオナは驚いて扇を落としそうになった。
それに対して声の主のアニーは眉間に皺を寄せた表情のままジークに詰め寄った。
「自主練習するのは結構ですけど、今からというのはどうかと思います!」
「い、何時から聞いて……」
「最初からです!散々ジークさんの相談に乗ってあげたんですから、少しくらい盗み聞きする権利はあるはずですよね?」
「お、おまっ、おあいこだって言ったじゃねぇか!!」
「言いましたっけ?」
すっかり蚊帳の外なフィオナはポカーンとしていた。
何故アニーが盗み聞きしていたのかも気になるが、ジークとアニーが何時の間に相談事をするような仲になっていたのかという方が気になって仕方なかった。
「そもそもジークさんは周りが見えてなさすぎです!あの時ロビーにフィオナさん以外いなかったとでも本気で思っているんですか?」
確かにあの場には誰もいなかったわけではない。
少なくとも他の利用客は数人いた。
しかし詳しくはフィオナも把握していなかった。
「確かに夜の時間をどう使おうと自由ですけど、今日は休むための時間なんですよ?ただでさえ今日は一度死に掛けてるのにここで無理をして明日に響いたらどうするんですか?ジークさんはもし襲ってきたバイラスが徹夜明けで眠そうにしていたら手加減してあげるんですか?」
「バイラスは徹夜なんてしねぇだろ……」
前のめりになって質問攻めしてくるアニーにジークは胸を反らして引き気味に返答する。
するとアニーのこめかみに青筋が入る。
「ティトレイさんみたいな屁理屈言わないでください!」
その一言はジークの胸に突き刺さり、フィオナは思わず噴出した。
その所為でアニーの視線がフィオナにも向く。
「フィオナさんもですよ?休むのも特訓の内ってよく言うじゃないですか」
「ご、ごめんなさい……」
フィオナがしょんぼり謝罪すると、アニーは溜息を吐きながら腰に手を当てる。
「仕方ないですね。明日からお2人の自主練習には私も付き添います」
「ぇえっ!?」
フィオナは目をまん丸にして驚いたがジークはキョトンとしていた。
「……良いのか?」
「へ!?」
予想外のジークの反応にフィオナの顔が瞬時にジークへ向く。
「乗りかかった船ですし、私が居たほうが怪我とか気にせずに思いっきりできるでしょう?」
アニーは微笑みながら小首を傾げる。
確かにアニーの言うとおりだ。
今までは怪我を恐れてお互い気を遣いながら特訓をしていたがアニー監修の元なら手加減せずに本気の特訓ができる。
それは喜ばしいことのはずなのに、何故かフィオナの心はモヤモヤするばかりだった。
「で、でも!それだとアニーは見てるだけになってしまうわよ?退屈じゃない?」
フィオナは引きつった笑顔で言うとアニーは下唇に人差し指を当てながら眉をひそめた。
「そうですよね、私が参加しただけでは結局お2人が組み手するだけでこれまでと何も変わりませんよね……」
どこかわざとらしさを感じさせつつアニーは何か閃いたかのように両の手を胸の前で合わせた。
「ではもう1人特訓に加わってもうらうのはどうですか?」
「いや私はそういう話をしているんじゃなくて……」
フィオナの言葉が届いていないのかアニーはさっきまで自分が隠れていた塔の扉と壁の隙間の影へ振り向いた。
「カインさん!もう出てきて良いですよ!」
「……は?」
思わず声を漏らしたのはフィオナではなくジークだった。
アニーの言葉に呼応するように扉の影からまた一つ人影が出てくると、白い髪をもつカインが月下に照らされた。
「お前も聞いていたのかよ……」
「カインさんには私の護衛として付いてきてもらったんです。流石に私1人で夜にこんな所まで来るのは危険ですから」
再びジークに向き直るアニーの後ろではカインが苦笑いをしており、ジークの後ろではフィオナが口をぱくぱくさせていた。
「確かに特訓するなら多い方が良いかもな」
「えぇっ!?」
人数が増えればそれだけ攻撃パターンにバリエーションが増える。
しかしフィオナは納得できないのかジークが振り返る。
「何だよ?別に増えても困らねぇだろ?」
「そ、そうだけど……(2人じゃないの……?)」
「それでは、明日から特訓開始ですね!」
アニーが言ってから今日は大人しくピピスタに戻ることにした。
* * *
ピピスタの正面ゲートから入ると、民家から漏れる明かりや申し訳程度に配置された燭台が街を淡く照らしていた。
昼間に比べて肌寒くなった街中を、先頭をフィオナとアニーが並んで話ながら歩いており、その後ろをジークとカインが並んで歩く。
ジークは夜空を見上げると三日月が浮かんでいた。
(そいや酋長が新月に気を付けろとか言ってたっけな。何か起きんのか?)
ジークがそんな物思いにふけっていた時。
まさに一瞬の出来事だった。
岩壁を掘削して造られた民家と民家の間にできた僅かな間、裏路地のような隙間から手が伸びるとその手はジークの後ろ襟首を掴み、即座に裏路地へと引き込んだ。
「あれ?ジーク君は?」
カインは周囲を見回す。
「どうせトイレでしょ」
こんな何もない街で事件など起こるはずもないと思い込んだフィオナは適当に言うと、カインもそれ以上は気にすることもなく3人で先に宿屋へ戻ることにした。
一方裏路地に誘われたジークは暗闇の中でもがいていた。
声を出す暇もなく引っ張り込まれ直後に騒がないよう口を封じられ混乱していたが、まだ命があることから犯人の狙いはジークの命ではないことが分かり少しずつ冷静さを取り戻していく。
(何だ?力の割りに腕が細いな……)
ジークは口に当てられている犯人の手をどかそうと腕を掴みながらそんなことを思っていると、不意に犯人の力が緩み、その隙をついてジークは束縛から脱出する。
即座に犯人へ振り返りつつリストを装着すると、犯人は黒いフード付きのマントを被っており顔は見えなかった。
しかしそのフードの肩部分から黒い髪がはみ出しており、どうやら女性のようだった。
「あらあら、そんなに警戒しなくても良いのに」
「突然こんな暗闇に引き込まれて警戒しねぇ訳ねぇだろ」
ジークは相手の挙動に注意しながら拳を握る。
まずはこの狭い空間から脱出したいが相手の姿がマントで隠されている以上どんな武器が隠されているのか分からない。
そのため無闇に動くことができず均衡状態を保つことしかできなかった。
それに対してマントの女性は余裕のたたずまいを見せている。
まるでこちらの動きを全て読みきっているかのような、そんな余裕さえ伺える。
「目的は何だ?てめぇもユリスの仲間か?」
「いいえ、違うわ。私はしがない占い師。君に助言をしに来てあげたのよ?」
「占い師?」
ジークは今一度マントの女性を上から下まで見る。
「何の?」
「な、何……って?」
ビクっと震える女性にジークは疑いの眼差しを向けながら続ける。
「占いっつってもいろいろあるんだろ?タロットとか手相とか」
「あ、あーあー、そういうやつですね。はいはい、分かってましたよ〜」
と言う割りに辺りをきょろきょろと見回す女性をジークはひとまず見守る。
女性は一通り見回してから上を見上げると即座に指を天に指した。
「せ、占星術よ!」
「星?」
ジークもつられて顔を上げる。
「星になったあなたの大切な人からの伝言を伝えます!」
(占星術ってそんなだったか?そもそも助言から伝言に変わってるじゃねぇか……)
ジークは理解した。
こいつが誰なのか分からないが危険なヒトではない、と。
それに言動がどこかルルに似ている気がした。
「では伝えます。星はあなたにこう告げています」
黒いマントの女性は一度咳払いをする。
「この小恥ずかしい勘違い野郎、さっさと本音に気付けバーカ」
「…………」
ジークは拳に力を込める。
「聞いてました?勘違い野郎さん♪」
「この!!」
ジークはとっさにハリセンを取り出し斜めに振り下ろすが、女性の身体を透き抜けてしまった。
「なっ!?」
「あらあら、もう時間みたいね」
「何の話だ!?てめぇは一体……?」
聞きたいことはたくさんある。
だがそれよりも先にマントの女性が霧に溶けるように消えかけていた。
「言いたいことは伝えたわ。それと、ヒトに向かって「てめぇ」なんて言うものじゃありませんよ?」
「だから何の話だ!?お前は一体何なんだ!?」
マントの女性はそれだけ言い残して最後に手を小さく振りながら完全に消えてしまった。
「なんか……懐かしい感じのするやつだったな……」
ジークは裏路地から狭い夜空を見上げる。
* * *
「ジーク兄さんお帰り〜」
宿屋に帰るとルルが迎えてくれた。
その後ろではフィオナが腰に手をつき溜息をついていた。
なかなか戻らないジークを心配していたのか他の面々もロビーに集合していた。
「あんたどこ行ってたのよ?急にいなくなるから心配するじゃない」
「あぁ……ちょっと詐欺に会ってた」
「は?」
フィオナがポカーンとしていると何時の間にかジンがジークの背中の匂いをかいでいた。
「お前は何やってんだ?」
「ん?なんか兄さんから母さんの匂いがしたからさ」
「え!?そうなの!?」
ルルがジークの腹部の服を引っ張りくんかくんかするがジークはそれを放っておいて自分の肩を鼻に近づけた。
「……確かに似てるな」
自分の服から明らかに何時もとは違う、花のような石鹸のような匂いがした。
「そっか〜。これがお母さんの匂いなんだ〜」
「あれ?ルルはお母さんの匂いかいだことないの?」
マオが訪ねた途端、ルルはジークの服を放した。
「ジーク兄さん、ごめんなさい……」
「あ〜、そいつらの母親なんだけどな?ルルを産んですぐに亡くなったんだ。だからルルは顔を見たことがねぇんだよ」
ブライトは言いにくそうに後ろ髪をかく。
それを聞いてマオは今まで座っていたイスから飛び降りた。
「ご、ごめんねルル!嫌なこと思い出させちゃって……」
しかしルルは振り返らず、兄の胸を見ながら首を振った。
「ううん、思い出すほどお母さんの記憶は無いから大丈夫。でも、ごめんなさい……」
ルルは何故か再びジークに謝る。
「それ以上謝ると本気で怒るぞ?ルル」
「うん……」
「ま、まったく兄さんもとんだ詐欺師に遭ったもんだよね!」
その詐欺師もまさか自分の所為でこのような事態になろうとは想像していなかっただろう。
それでもジンは何とか空気を切り替えようと話題を振ろうとする。
「でもどんな詐欺師だったの?」
便乗するようにカインが話しに乗っかる。
「確か占星術師とか言ってたな」
「占星術ですって?そんなマイナーなものに手を出すだなんて、よっぽどの物好きかただの偽者ね」
「そういえば……」
そこでルルが初めて振り返るとヒルダの顔を見た。
「ノルゼンでヒルダが言ってたフィオナの恋の相手、まだ聞いてなかった」
アニー、ティトレイ、そしてニノンの視線がヒルダとフィオナに瞬時に飛ぶ。
「ヒルダさん恋占いしたんですか!?私のときは散々断ったのに!!」
「ち、違うのよアニー。暇潰しにやっただけだから」
「おいヒルダ!俺も占ってくれ!」
「わ、私も……」
「ニノンまで……。私は絶対に恋占いはやらないわよ」
「そ、そうですか……。ちょっと残念です」
ニノンがしょんぼりと項垂れるとルルが咄嗟に駆け寄った。
「だ、大丈夫!代わりに私が占ってあげるよ!」
「ルルも占いができたのか?」
ヴェイグは純粋な目で問うとルルは目を泳がせながら辺りをきょろきょろし始めた。
「で、できるよ!せ、せんせいじゅちゅとか!!」
「ルル、占星術だ」
ユージーンが訂正を加える一方で、ジークはデジャビュを感じていた。
そんなこんなでどうでも良い会話をしつつ、夜が更けていくのだった。
〜続く〜
「あ、アニー!?」
フィオナは驚いて扇を落としそうになった。
それに対して声の主のアニーは眉間に皺を寄せた表情のままジークに詰め寄った。
「自主練習するのは結構ですけど、今からというのはどうかと思います!」
「い、何時から聞いて……」
「最初からです!散々ジークさんの相談に乗ってあげたんですから、少しくらい盗み聞きする権利はあるはずですよね?」
「お、おまっ、おあいこだって言ったじゃねぇか!!」
「言いましたっけ?」
すっかり蚊帳の外なフィオナはポカーンとしていた。
何故アニーが盗み聞きしていたのかも気になるが、ジークとアニーが何時の間に相談事をするような仲になっていたのかという方が気になって仕方なかった。
「そもそもジークさんは周りが見えてなさすぎです!あの時ロビーにフィオナさん以外いなかったとでも本気で思っているんですか?」
確かにあの場には誰もいなかったわけではない。
少なくとも他の利用客は数人いた。
しかし詳しくはフィオナも把握していなかった。
「確かに夜の時間をどう使おうと自由ですけど、今日は休むための時間なんですよ?ただでさえ今日は一度死に掛けてるのにここで無理をして明日に響いたらどうするんですか?ジークさんはもし襲ってきたバイラスが徹夜明けで眠そうにしていたら手加減してあげるんですか?」
「バイラスは徹夜なんてしねぇだろ……」
前のめりになって質問攻めしてくるアニーにジークは胸を反らして引き気味に返答する。
するとアニーのこめかみに青筋が入る。
「ティトレイさんみたいな屁理屈言わないでください!」
その一言はジークの胸に突き刺さり、フィオナは思わず噴出した。
その所為でアニーの視線がフィオナにも向く。
「フィオナさんもですよ?休むのも特訓の内ってよく言うじゃないですか」
「ご、ごめんなさい……」
フィオナがしょんぼり謝罪すると、アニーは溜息を吐きながら腰に手を当てる。
「仕方ないですね。明日からお2人の自主練習には私も付き添います」
「ぇえっ!?」
フィオナは目をまん丸にして驚いたがジークはキョトンとしていた。
「……良いのか?」
「へ!?」
予想外のジークの反応にフィオナの顔が瞬時にジークへ向く。
「乗りかかった船ですし、私が居たほうが怪我とか気にせずに思いっきりできるでしょう?」
アニーは微笑みながら小首を傾げる。
確かにアニーの言うとおりだ。
今までは怪我を恐れてお互い気を遣いながら特訓をしていたがアニー監修の元なら手加減せずに本気の特訓ができる。
それは喜ばしいことのはずなのに、何故かフィオナの心はモヤモヤするばかりだった。
「で、でも!それだとアニーは見てるだけになってしまうわよ?退屈じゃない?」
フィオナは引きつった笑顔で言うとアニーは下唇に人差し指を当てながら眉をひそめた。
「そうですよね、私が参加しただけでは結局お2人が組み手するだけでこれまでと何も変わりませんよね……」
どこかわざとらしさを感じさせつつアニーは何か閃いたかのように両の手を胸の前で合わせた。
「ではもう1人特訓に加わってもうらうのはどうですか?」
「いや私はそういう話をしているんじゃなくて……」
フィオナの言葉が届いていないのかアニーはさっきまで自分が隠れていた塔の扉と壁の隙間の影へ振り向いた。
「カインさん!もう出てきて良いですよ!」
「……は?」
思わず声を漏らしたのはフィオナではなくジークだった。
アニーの言葉に呼応するように扉の影からまた一つ人影が出てくると、白い髪をもつカインが月下に照らされた。
「お前も聞いていたのかよ……」
「カインさんには私の護衛として付いてきてもらったんです。流石に私1人で夜にこんな所まで来るのは危険ですから」
再びジークに向き直るアニーの後ろではカインが苦笑いをしており、ジークの後ろではフィオナが口をぱくぱくさせていた。
「確かに特訓するなら多い方が良いかもな」
「えぇっ!?」
人数が増えればそれだけ攻撃パターンにバリエーションが増える。
しかしフィオナは納得できないのかジークが振り返る。
「何だよ?別に増えても困らねぇだろ?」
「そ、そうだけど……(2人じゃないの……?)」
「それでは、明日から特訓開始ですね!」
アニーが言ってから今日は大人しくピピスタに戻ることにした。
* * *
ピピスタの正面ゲートから入ると、民家から漏れる明かりや申し訳程度に配置された燭台が街を淡く照らしていた。
昼間に比べて肌寒くなった街中を、先頭をフィオナとアニーが並んで話ながら歩いており、その後ろをジークとカインが並んで歩く。
ジークは夜空を見上げると三日月が浮かんでいた。
(そいや酋長が新月に気を付けろとか言ってたっけな。何か起きんのか?)
ジークがそんな物思いにふけっていた時。
まさに一瞬の出来事だった。
岩壁を掘削して造られた民家と民家の間にできた僅かな間、裏路地のような隙間から手が伸びるとその手はジークの後ろ襟首を掴み、即座に裏路地へと引き込んだ。
「あれ?ジーク君は?」
カインは周囲を見回す。
「どうせトイレでしょ」
こんな何もない街で事件など起こるはずもないと思い込んだフィオナは適当に言うと、カインもそれ以上は気にすることもなく3人で先に宿屋へ戻ることにした。
一方裏路地に誘われたジークは暗闇の中でもがいていた。
声を出す暇もなく引っ張り込まれ直後に騒がないよう口を封じられ混乱していたが、まだ命があることから犯人の狙いはジークの命ではないことが分かり少しずつ冷静さを取り戻していく。
(何だ?力の割りに腕が細いな……)
ジークは口に当てられている犯人の手をどかそうと腕を掴みながらそんなことを思っていると、不意に犯人の力が緩み、その隙をついてジークは束縛から脱出する。
即座に犯人へ振り返りつつリストを装着すると、犯人は黒いフード付きのマントを被っており顔は見えなかった。
しかしそのフードの肩部分から黒い髪がはみ出しており、どうやら女性のようだった。
「あらあら、そんなに警戒しなくても良いのに」
「突然こんな暗闇に引き込まれて警戒しねぇ訳ねぇだろ」
ジークは相手の挙動に注意しながら拳を握る。
まずはこの狭い空間から脱出したいが相手の姿がマントで隠されている以上どんな武器が隠されているのか分からない。
そのため無闇に動くことができず均衡状態を保つことしかできなかった。
それに対してマントの女性は余裕のたたずまいを見せている。
まるでこちらの動きを全て読みきっているかのような、そんな余裕さえ伺える。
「目的は何だ?てめぇもユリスの仲間か?」
「いいえ、違うわ。私はしがない占い師。君に助言をしに来てあげたのよ?」
「占い師?」
ジークは今一度マントの女性を上から下まで見る。
「何の?」
「な、何……って?」
ビクっと震える女性にジークは疑いの眼差しを向けながら続ける。
「占いっつってもいろいろあるんだろ?タロットとか手相とか」
「あ、あーあー、そういうやつですね。はいはい、分かってましたよ〜」
と言う割りに辺りをきょろきょろと見回す女性をジークはひとまず見守る。
女性は一通り見回してから上を見上げると即座に指を天に指した。
「せ、占星術よ!」
「星?」
ジークもつられて顔を上げる。
「星になったあなたの大切な人からの伝言を伝えます!」
(占星術ってそんなだったか?そもそも助言から伝言に変わってるじゃねぇか……)
ジークは理解した。
こいつが誰なのか分からないが危険なヒトではない、と。
それに言動がどこかルルに似ている気がした。
「では伝えます。星はあなたにこう告げています」
黒いマントの女性は一度咳払いをする。
「この小恥ずかしい勘違い野郎、さっさと本音に気付けバーカ」
「…………」
ジークは拳に力を込める。
「聞いてました?勘違い野郎さん♪」
「この!!」
ジークはとっさにハリセンを取り出し斜めに振り下ろすが、女性の身体を透き抜けてしまった。
「なっ!?」
「あらあら、もう時間みたいね」
「何の話だ!?てめぇは一体……?」
聞きたいことはたくさんある。
だがそれよりも先にマントの女性が霧に溶けるように消えかけていた。
「言いたいことは伝えたわ。それと、ヒトに向かって「てめぇ」なんて言うものじゃありませんよ?」
「だから何の話だ!?お前は一体何なんだ!?」
マントの女性はそれだけ言い残して最後に手を小さく振りながら完全に消えてしまった。
「なんか……懐かしい感じのするやつだったな……」
ジークは裏路地から狭い夜空を見上げる。
* * *
「ジーク兄さんお帰り〜」
宿屋に帰るとルルが迎えてくれた。
その後ろではフィオナが腰に手をつき溜息をついていた。
なかなか戻らないジークを心配していたのか他の面々もロビーに集合していた。
「あんたどこ行ってたのよ?急にいなくなるから心配するじゃない」
「あぁ……ちょっと詐欺に会ってた」
「は?」
フィオナがポカーンとしていると何時の間にかジンがジークの背中の匂いをかいでいた。
「お前は何やってんだ?」
「ん?なんか兄さんから母さんの匂いがしたからさ」
「え!?そうなの!?」
ルルがジークの腹部の服を引っ張りくんかくんかするがジークはそれを放っておいて自分の肩を鼻に近づけた。
「……確かに似てるな」
自分の服から明らかに何時もとは違う、花のような石鹸のような匂いがした。
「そっか〜。これがお母さんの匂いなんだ〜」
「あれ?ルルはお母さんの匂いかいだことないの?」
マオが訪ねた途端、ルルはジークの服を放した。
「ジーク兄さん、ごめんなさい……」
「あ〜、そいつらの母親なんだけどな?ルルを産んですぐに亡くなったんだ。だからルルは顔を見たことがねぇんだよ」
ブライトは言いにくそうに後ろ髪をかく。
それを聞いてマオは今まで座っていたイスから飛び降りた。
「ご、ごめんねルル!嫌なこと思い出させちゃって……」
しかしルルは振り返らず、兄の胸を見ながら首を振った。
「ううん、思い出すほどお母さんの記憶は無いから大丈夫。でも、ごめんなさい……」
ルルは何故か再びジークに謝る。
「それ以上謝ると本気で怒るぞ?ルル」
「うん……」
「ま、まったく兄さんもとんだ詐欺師に遭ったもんだよね!」
その詐欺師もまさか自分の所為でこのような事態になろうとは想像していなかっただろう。
それでもジンは何とか空気を切り替えようと話題を振ろうとする。
「でもどんな詐欺師だったの?」
便乗するようにカインが話しに乗っかる。
「確か占星術師とか言ってたな」
「占星術ですって?そんなマイナーなものに手を出すだなんて、よっぽどの物好きかただの偽者ね」
「そういえば……」
そこでルルが初めて振り返るとヒルダの顔を見た。
「ノルゼンでヒルダが言ってたフィオナの恋の相手、まだ聞いてなかった」
アニー、ティトレイ、そしてニノンの視線がヒルダとフィオナに瞬時に飛ぶ。
「ヒルダさん恋占いしたんですか!?私のときは散々断ったのに!!」
「ち、違うのよアニー。暇潰しにやっただけだから」
「おいヒルダ!俺も占ってくれ!」
「わ、私も……」
「ニノンまで……。私は絶対に恋占いはやらないわよ」
「そ、そうですか……。ちょっと残念です」
ニノンがしょんぼりと項垂れるとルルが咄嗟に駆け寄った。
「だ、大丈夫!代わりに私が占ってあげるよ!」
「ルルも占いができたのか?」
ヴェイグは純粋な目で問うとルルは目を泳がせながら辺りをきょろきょろし始めた。
「で、できるよ!せ、せんせいじゅちゅとか!!」
「ルル、占星術だ」
ユージーンが訂正を加える一方で、ジークはデジャビュを感じていた。
そんなこんなでどうでも良い会話をしつつ、夜が更けていくのだった。
〜続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート50】
takeshi「ども〜!珍しく1話で気持ちよく区切れたtakeshiです」
チャリティ「珍しいこともあるものね」
アガーテ「皆さん、ごきげんよう♪」
takeshi「誰!?いや知ってますけど!」
アガーテ「アガーテ・リンドブロムです。お盆なので来てしまいました♪」
チャリティ「私達の国の姫様じゃない!あ、でも女王になってから亡くなったからアガーテ様と呼ぶべきなのかしら?それとも陛下?」
アガーテ「女王様とお呼びなさい」
チャリティ「……なんですって?聞き間違いかしら?」
アガーテ「冗談です。ロイヤルジョークというやつですわ♪」
takeshi「アガーテ女王にしかできない冗談できないですね……」
アガーテ「私は既に魂のみの身。黄泉の国では女王という肩書きは何の意味も持ちません。なので私のことはアガーテとお呼びください」
takeshi「これってオバマ大統領と直接会った時に「ユー、オバマって呼べYO」って言われてるようなものですよね?流石にハードルが高いんじゃ……」
アガーテ「それと、無理に畏(かしこ)まる必要もありません。友達のように接していただけると私も嬉しいです」
チャリティ「そう?じゃあそうさせてもらうわね」
アガーテ「はい♪」
takeshi「予想通りというかなんというか……」
チャリティ「早速質問なんだけどさ〜」
アガーテ「何でしょう?」
チャリティ「アガーテってどんな下着つけてんの?」
アガーテ「死刑にしますよ!?」
チャリティ「何で!?友達ならこういう会話もするでしょ!?」
takeshi「さすが、ルーベルトと同じ血を引いてるだけありますね……。ていうか庶民とセレブでは感覚が違うんじゃないですか?」
チャリティ「私はただセレブってどんな下着をつけてるのか気になっただけなんだけどな〜」
アガーテ「そ、そうですか。庶民にとってはこれが普通なのですね……。分かりました、折角できた庶民のお友達第一号です。特別にお見せいたしましょう!」
takeshi「見せなくて良いですから!庶民も見せ合いっこまではしませんから!」
アガーテ「そうなのですか?昔ジルバの部屋に忍び込んだ時に見つけたマンガの中では更衣室でお互いの下着を見せあうシーンがありましたよ?」
takeshi「ここは更衣室じゃありませんから!」
チャリティ「ジルバって、案外乙女チックなマンガを持ってたのね……」
takeshi「ところでマリアさんはどこに行ったんでしょうね?」
アガーテ「マリアさんなら先程でかけてくると言っていましたよ?私はその代打です」
チャリティ「出かけるって、行くあてあんの?あのヒト」
takeshi「さぁ……とりあえず良い機会ですので伺いたいのですが、アガーテさんが死んでから世の中なかなか安定しませんけど、どう思いますか?」
アガーテ「私が治めている時も安定していませんでしたよ?」
takeshi「あ……」
チャリティ「ていうか、アガーテが混乱させたのよね」
takeshi「オブラートに包めといつも言ってるでしょうに!!」
アガーテ「でも今はミルハウストが一生懸命頑張ってくれているので安心です」
takeshi「滅多に登場しないうえにいろいろ押し付けられていますがね」
アガーテ「そんな困っているミルハウストの顔を見るのが良いのではないですか」
チャリティ「……ん?」
アガーテ「自分では正しいことをしているつもりなのに空回りしていた事に気付いた時のあの表情……抱きしめたくなります!」
チャリティ「ちょ、ちょっと?」
アガーテ「特に私が一番好きなのが、内心では私の肉級や耳をモフモフしたいとウズウズしているのに必死に耐えてポーカーフェイスを装っている時のミルハウストったらもう!!なでなでしてあげたいですわ!!」
takeshi「アガーテ様マジ女王」
チャリティ「ミルハウストも苦労してたのね……」
アガーテ「そういえば、今回も本編を振り返らなくて良いんですか?」
takeshi「そうですね〜。今回も前回に引き続きラブコメしかしてませんし……って、マリアさん地上に居るじゃないですか!!」
チャリティ「しかも今親切にこっち指差してるわよ!!」
takeshi「ちょっと釣ってきます!」
アガーテ「釣る?」
takeshi「死者の魂は釣竿で釣り上げると太公望の時代から決まってるんですよ!では行ってきます!」
チャリティ「太公望ってただの釣り好きなだけじゃなかったっけ……?」
アガーテ「それにしても困りましたね。二人きりになってしまいました」
チャリティ「仕方無いわね。残りの文字数も少ないし、私達だけでやりましょう」
アガーテ「女子トークというやつですね!私、昔から憧れていたんです!」
チャリティ「そうなの?」
アガーテ「はい!例えばどんな鞭を持っているかとか」
チャリティ「残念だけどあんたとは女子トークできそうにないわ……」
アガーテ「そうですか……。では話題を変えて、今ルルさんがジークさんに謝っていますけど、どうしてなのですか?」
チャリティ「え〜っと、それここで答えちゃって良いのかしら?」
アガーテ「教えてくださったら褒美に私の下着を見せてさしあげます」
チャリティ「ホントに!?じゃ、じゃあ……ごにょごにょごにょ」
アガーテ「まぁ!そんなことが!」
チャリティ「どうでも良いけどあんた顔赤いわよ?熱あるんじゃない?」
アガーテ「あ、実は私耳が弱くて……」
チャリティ(変な設定がワンコソバ並に盛られていくけど大丈夫なのかしら……)
アガーテ「では約束通りお見せしますね」
チャリティ「うわすっご!王族って皆こんなの履いてんの?」
アガーテ「チャリティさんはどんなものを履いているのですか?」
チャリティ「私はねぇ……」
―――オマケ―――
『救いの塔上層部・収容施設』
ユーリ「いよいよ作者の人格が怪しくなってきたな……」
フレン「小説で本当に助かった感じだね」
リタ「え、エステル?あんたもすごいの履いてんの?」
エステリーゼ「私は普通です!!」
パティ「すごいのって何がすごいのじゃ?もしやサメがプリントされておるのか!?」
ジュディス「きっとそうよ」
パティ「はぁ〜、ウチもいつかすごい下着を履いてユーリを誘惑してみたいのじゃ〜」
カロル「それにしてもアルテスタさんはどこだろうね?」
フレン「このフロアの何処かにいることは間違い無いと思うんだが……」
ラピード「バウバウ!!」
カロル「うわっ!急に吠えてどうしたのさ!?」
ラピード「バウ!」
ユーリ「ついてこいだとよ」
フレン「誰かの気配を感じ取ったのかもしれない。行こう!」
『救いの塔上層部・とある牢の前』
リタ「見て!小っさいおっさんが牢の中に居るわ!」
???「お主らは何者だ?」
フレン「僕達はアルテスタという人を探しています。おじいさん知りませんか?」
アルテスタ「アルテスタとはワシのことだが?」
リタ「ちょっとおじいちゃんボケてんの?どう見てもアルテスタって顔じゃないでしょ。鏡見れば?」
アルテスタ「何だと!?正真正銘ワシがアルテスタだ!台詞の前にアルテスタと書いてあるだろうが!!」
エステリーゼ「ほ、本当です!!」
フレン「で、ではあなたがダイクさんの友人の……」
アルテスタ「ドワーフのアルテスタだ」
カロル「えぇ〜!さらわれるくらいだからてっきり可愛い少女だと思ってたのに〜……」
ジュディス「あら?もしアルテスタが可愛い少女だったらどうするつもりだったのかしら?」
カロル「えっ!?別にどうもしないよ!」
ジュディス「そう。ならナンにカロルがアルテスタっていう人を助けるためにウキウキしてたって言っても問題無いのね?」
カロル「ごめんなさい下心満載でした!」
ユーリ「どうでも良いからさっさと開けてやろうぜ?」
カロルはピッキングをした。
牢屋の鍵を壊した。
アルテスタ「悪いな、青年」
ユーリ「青年?」
ラピード「バウバウバウバウ!!!」
パティ「と、突然どうしたのじゃラピード!?」
エステリーゼ「そういえばどこかのヒロインさんも捕まっているはずなのに見当たりませんね……」
カロル「別の場所に捕まってるのかなぁ?」
ラピード「バウ!バウ!」
リタ「あ〜もううっさい!さっきから小っさいおっさんにばっか吠えて何なのよ!?」
ユーリ「何かデジャビュを感じるが、まさか……」
アルテスタ「ふっ、犬の耳は誤魔化せないか……」
リタ「ちょっ、まさか……」
おや?アルテスタの様子が……
アルテスタ「ある時はテセアラのドワーフ、アルテスタ。しかしてその実態は……」
ラピード「バウ!」
レイヴン「シュバーン改めレイヴンでした〜」
リタ「身長変わりすぎ!!」
パティ「小っさいおっさんがただのおっさんになったのじゃ……」
ユーリ「どおりで牢屋にいなかったわけだ」
カロル「ユーリ、もう一回鍵をかけてヒロインさんを探そうよ」
レイヴン「待て待て待て〜ぃ!そのヒロインの居場所ならおっさん知ってんよ?」
フレン「本当ですか!?一体どこに?」
ユーリ「絡むなフレン。面倒なことになる」
レイヴン「ただじゃ教えられないわよ〜」
ユーリ「ほらな」
レイヴン「おっさんと勝負しておっさんが勝ったら教えてあげる。もし負けたら青年達の仲間になってから教えてあげる。どう?魅力的な取引じゃない?」
ジュディス「私達にデメリットしかないのだけど、これのどこが魅力的な取引なのかしら?」
レイヴン「メリットあるでしょ!?俺様が仲間になるんだよ?ジュディスちゃん!嬉しくて仕方無いんじゃない?」
ジュディス「リタ、嬉しい?」
リタ「何であたしに振んのよ?」
ユーリ「つうか戦う必要あんのか?」
レイヴン「そりゃテイルズなんだから欲しいものは勝ち取るものっしょ?」
ユーリ「それもそうか」
エステリーゼ「納得する理由が分かりません!」
ユーリ「言っておくが手加減しねぇぞおっさん」
シュバーン「ふっ、縛りプレイをしている分際で我々にどこまでついてこられるかな?」
フレン「我々?」
シュバーンとアレクセイが勝負をしかけてきた。
ユーリ「ちょっと待て。何でアレクセイがそっちについてんだ?」
アレクセイ「人間を燃料としか思わない貴様らに報復しに来た」
リタ「おかしいわね。なんだかあいつがまっとうなことを言っている気がするわ」
ユーリ「まるで俺達が悪者みたいじゃねぇか」
エステリーゼ「……悪いことをした自覚がなかったんです?」
フレン「とにかくこっちもパーティ編成を決めよう!じゃんけんだ!」
シュバーン「オタクら……毎回そんなことしてんの?」
エステリーゼ「決まりました!」
パーティメンバー
エステリーゼ
ジュディス
リタ
パティ
ユーリ「勝負あったな」
シュバーン「おのれ卑怯な!」
〜続く〜
takeshi「ども〜!珍しく1話で気持ちよく区切れたtakeshiです」
チャリティ「珍しいこともあるものね」
アガーテ「皆さん、ごきげんよう♪」
takeshi「誰!?いや知ってますけど!」
アガーテ「アガーテ・リンドブロムです。お盆なので来てしまいました♪」
チャリティ「私達の国の姫様じゃない!あ、でも女王になってから亡くなったからアガーテ様と呼ぶべきなのかしら?それとも陛下?」
アガーテ「女王様とお呼びなさい」
チャリティ「……なんですって?聞き間違いかしら?」
アガーテ「冗談です。ロイヤルジョークというやつですわ♪」
takeshi「アガーテ女王にしかできない冗談できないですね……」
アガーテ「私は既に魂のみの身。黄泉の国では女王という肩書きは何の意味も持ちません。なので私のことはアガーテとお呼びください」
takeshi「これってオバマ大統領と直接会った時に「ユー、オバマって呼べYO」って言われてるようなものですよね?流石にハードルが高いんじゃ……」
アガーテ「それと、無理に畏(かしこ)まる必要もありません。友達のように接していただけると私も嬉しいです」
チャリティ「そう?じゃあそうさせてもらうわね」
アガーテ「はい♪」
takeshi「予想通りというかなんというか……」
チャリティ「早速質問なんだけどさ〜」
アガーテ「何でしょう?」
チャリティ「アガーテってどんな下着つけてんの?」
アガーテ「死刑にしますよ!?」
チャリティ「何で!?友達ならこういう会話もするでしょ!?」
takeshi「さすが、ルーベルトと同じ血を引いてるだけありますね……。ていうか庶民とセレブでは感覚が違うんじゃないですか?」
チャリティ「私はただセレブってどんな下着をつけてるのか気になっただけなんだけどな〜」
アガーテ「そ、そうですか。庶民にとってはこれが普通なのですね……。分かりました、折角できた庶民のお友達第一号です。特別にお見せいたしましょう!」
takeshi「見せなくて良いですから!庶民も見せ合いっこまではしませんから!」
アガーテ「そうなのですか?昔ジルバの部屋に忍び込んだ時に見つけたマンガの中では更衣室でお互いの下着を見せあうシーンがありましたよ?」
takeshi「ここは更衣室じゃありませんから!」
チャリティ「ジルバって、案外乙女チックなマンガを持ってたのね……」
takeshi「ところでマリアさんはどこに行ったんでしょうね?」
アガーテ「マリアさんなら先程でかけてくると言っていましたよ?私はその代打です」
チャリティ「出かけるって、行くあてあんの?あのヒト」
takeshi「さぁ……とりあえず良い機会ですので伺いたいのですが、アガーテさんが死んでから世の中なかなか安定しませんけど、どう思いますか?」
アガーテ「私が治めている時も安定していませんでしたよ?」
takeshi「あ……」
チャリティ「ていうか、アガーテが混乱させたのよね」
takeshi「オブラートに包めといつも言ってるでしょうに!!」
アガーテ「でも今はミルハウストが一生懸命頑張ってくれているので安心です」
takeshi「滅多に登場しないうえにいろいろ押し付けられていますがね」
アガーテ「そんな困っているミルハウストの顔を見るのが良いのではないですか」
チャリティ「……ん?」
アガーテ「自分では正しいことをしているつもりなのに空回りしていた事に気付いた時のあの表情……抱きしめたくなります!」
チャリティ「ちょ、ちょっと?」
アガーテ「特に私が一番好きなのが、内心では私の肉級や耳をモフモフしたいとウズウズしているのに必死に耐えてポーカーフェイスを装っている時のミルハウストったらもう!!なでなでしてあげたいですわ!!」
takeshi「アガーテ様マジ女王」
チャリティ「ミルハウストも苦労してたのね……」
アガーテ「そういえば、今回も本編を振り返らなくて良いんですか?」
takeshi「そうですね〜。今回も前回に引き続きラブコメしかしてませんし……って、マリアさん地上に居るじゃないですか!!」
チャリティ「しかも今親切にこっち指差してるわよ!!」
takeshi「ちょっと釣ってきます!」
アガーテ「釣る?」
takeshi「死者の魂は釣竿で釣り上げると太公望の時代から決まってるんですよ!では行ってきます!」
チャリティ「太公望ってただの釣り好きなだけじゃなかったっけ……?」
アガーテ「それにしても困りましたね。二人きりになってしまいました」
チャリティ「仕方無いわね。残りの文字数も少ないし、私達だけでやりましょう」
アガーテ「女子トークというやつですね!私、昔から憧れていたんです!」
チャリティ「そうなの?」
アガーテ「はい!例えばどんな鞭を持っているかとか」
チャリティ「残念だけどあんたとは女子トークできそうにないわ……」
アガーテ「そうですか……。では話題を変えて、今ルルさんがジークさんに謝っていますけど、どうしてなのですか?」
チャリティ「え〜っと、それここで答えちゃって良いのかしら?」
アガーテ「教えてくださったら褒美に私の下着を見せてさしあげます」
チャリティ「ホントに!?じゃ、じゃあ……ごにょごにょごにょ」
アガーテ「まぁ!そんなことが!」
チャリティ「どうでも良いけどあんた顔赤いわよ?熱あるんじゃない?」
アガーテ「あ、実は私耳が弱くて……」
チャリティ(変な設定がワンコソバ並に盛られていくけど大丈夫なのかしら……)
アガーテ「では約束通りお見せしますね」
チャリティ「うわすっご!王族って皆こんなの履いてんの?」
アガーテ「チャリティさんはどんなものを履いているのですか?」
チャリティ「私はねぇ……」
―――オマケ―――
『救いの塔上層部・収容施設』
ユーリ「いよいよ作者の人格が怪しくなってきたな……」
フレン「小説で本当に助かった感じだね」
リタ「え、エステル?あんたもすごいの履いてんの?」
エステリーゼ「私は普通です!!」
パティ「すごいのって何がすごいのじゃ?もしやサメがプリントされておるのか!?」
ジュディス「きっとそうよ」
パティ「はぁ〜、ウチもいつかすごい下着を履いてユーリを誘惑してみたいのじゃ〜」
カロル「それにしてもアルテスタさんはどこだろうね?」
フレン「このフロアの何処かにいることは間違い無いと思うんだが……」
ラピード「バウバウ!!」
カロル「うわっ!急に吠えてどうしたのさ!?」
ラピード「バウ!」
ユーリ「ついてこいだとよ」
フレン「誰かの気配を感じ取ったのかもしれない。行こう!」
『救いの塔上層部・とある牢の前』
リタ「見て!小っさいおっさんが牢の中に居るわ!」
???「お主らは何者だ?」
フレン「僕達はアルテスタという人を探しています。おじいさん知りませんか?」
アルテスタ「アルテスタとはワシのことだが?」
リタ「ちょっとおじいちゃんボケてんの?どう見てもアルテスタって顔じゃないでしょ。鏡見れば?」
アルテスタ「何だと!?正真正銘ワシがアルテスタだ!台詞の前にアルテスタと書いてあるだろうが!!」
エステリーゼ「ほ、本当です!!」
フレン「で、ではあなたがダイクさんの友人の……」
アルテスタ「ドワーフのアルテスタだ」
カロル「えぇ〜!さらわれるくらいだからてっきり可愛い少女だと思ってたのに〜……」
ジュディス「あら?もしアルテスタが可愛い少女だったらどうするつもりだったのかしら?」
カロル「えっ!?別にどうもしないよ!」
ジュディス「そう。ならナンにカロルがアルテスタっていう人を助けるためにウキウキしてたって言っても問題無いのね?」
カロル「ごめんなさい下心満載でした!」
ユーリ「どうでも良いからさっさと開けてやろうぜ?」
カロルはピッキングをした。
牢屋の鍵を壊した。
アルテスタ「悪いな、青年」
ユーリ「青年?」
ラピード「バウバウバウバウ!!!」
パティ「と、突然どうしたのじゃラピード!?」
エステリーゼ「そういえばどこかのヒロインさんも捕まっているはずなのに見当たりませんね……」
カロル「別の場所に捕まってるのかなぁ?」
ラピード「バウ!バウ!」
リタ「あ〜もううっさい!さっきから小っさいおっさんにばっか吠えて何なのよ!?」
ユーリ「何かデジャビュを感じるが、まさか……」
アルテスタ「ふっ、犬の耳は誤魔化せないか……」
リタ「ちょっ、まさか……」
おや?アルテスタの様子が……
アルテスタ「ある時はテセアラのドワーフ、アルテスタ。しかしてその実態は……」
ラピード「バウ!」
レイヴン「シュバーン改めレイヴンでした〜」
リタ「身長変わりすぎ!!」
パティ「小っさいおっさんがただのおっさんになったのじゃ……」
ユーリ「どおりで牢屋にいなかったわけだ」
カロル「ユーリ、もう一回鍵をかけてヒロインさんを探そうよ」
レイヴン「待て待て待て〜ぃ!そのヒロインの居場所ならおっさん知ってんよ?」
フレン「本当ですか!?一体どこに?」
ユーリ「絡むなフレン。面倒なことになる」
レイヴン「ただじゃ教えられないわよ〜」
ユーリ「ほらな」
レイヴン「おっさんと勝負しておっさんが勝ったら教えてあげる。もし負けたら青年達の仲間になってから教えてあげる。どう?魅力的な取引じゃない?」
ジュディス「私達にデメリットしかないのだけど、これのどこが魅力的な取引なのかしら?」
レイヴン「メリットあるでしょ!?俺様が仲間になるんだよ?ジュディスちゃん!嬉しくて仕方無いんじゃない?」
ジュディス「リタ、嬉しい?」
リタ「何であたしに振んのよ?」
ユーリ「つうか戦う必要あんのか?」
レイヴン「そりゃテイルズなんだから欲しいものは勝ち取るものっしょ?」
ユーリ「それもそうか」
エステリーゼ「納得する理由が分かりません!」
ユーリ「言っておくが手加減しねぇぞおっさん」
シュバーン「ふっ、縛りプレイをしている分際で我々にどこまでついてこられるかな?」
フレン「我々?」
シュバーンとアレクセイが勝負をしかけてきた。
ユーリ「ちょっと待て。何でアレクセイがそっちについてんだ?」
アレクセイ「人間を燃料としか思わない貴様らに報復しに来た」
リタ「おかしいわね。なんだかあいつがまっとうなことを言っている気がするわ」
ユーリ「まるで俺達が悪者みたいじゃねぇか」
エステリーゼ「……悪いことをした自覚がなかったんです?」
フレン「とにかくこっちもパーティ編成を決めよう!じゃんけんだ!」
シュバーン「オタクら……毎回そんなことしてんの?」
エステリーゼ「決まりました!」
パーティメンバー
エステリーゼ
ジュディス
リタ
パティ
ユーリ「勝負あったな」
シュバーン「おのれ卑怯な!」
〜続く〜