第71話『暗雲と邂逅』
カインは慎重にフォルスをガジュマの身体に注ぎ込む。
少しでも純度を高めすぎれば己の寿命を持っていかれてしまうが、薄すぎても傷口から出血が止まらず失血死してしまう。
だからこそカインは精神を研ぎ澄ませ、針の穴に糸を通すような感覚でフォルスを使っていた。
(よし!なんとか傷口は塞がってきた)
カインは肩の力を緩めた。
ここまでくれば濃度を薄めても一命は取り留められる。
「ちょ、ちょいとお兄さん……あんたヒューマだろ?何でガジュマなんか治療してんだい?」
麦藁帽子をかぶり、すっかり腰の曲がったヒューマの老婆が、宿屋から出てくるなりカインの正面に立ち問いかけてくる。
「お兄さんは知らないだろうけど、この村はガジュマに襲われたんだ。お兄さんが今助けようとしている男と同じガジュマにね」
「知ってますよ」
カインは老婆には目もくれず治療を続ける。
それが余計に気に入らないのか老婆は肩をわなわなと震わせ、興奮し始めた。
「し、知ってるなら尚更だよ!そいつはあたし達を襲った男と同族なんだ!自業自得なのさ!だから死んで当然なんだよ!」
そうだそうだ!と、民家に隠れて老婆と同じように状況を見ていたヒューマがはやし立てる。
それでもカインは冷静を乱すことなく、回復を続ける。
「それでも、このヒトを見殺しにする理由にはならない」
「ガジュマの肩をもつってのかい!?だ、だったらあんたも同罪だよ!」
老婆はカインの手をガジュマから離そうと彼の手を掴もうと手を伸ばす。
しかし即座に回復を中止したカインは片手で老婆の腕を掴んだ。
「いい加減にしてよお婆さん。あなたはガジュマが悪いみたいに言うけど、同じヒューマの僕も悪いって言うならお婆さんの味方って一体誰なのさ?敵って誰?」
「あたしは敵とか味方とかそんな稚拙なことを言ってんじゃない!」
老婆は怒鳴りながらカインの手を振り解くと、カインはガジュマの治療を中断し立ち上がる。
「ガジュマやハーフはあたし達とは違うって言ってんだよ!!」
老婆は禁句に触れた。
もしガジュマだのヒューマだの話だけならカインも穏やかに説得していたかもしれない。
むしろ最初から老婆とは口論するつもりもなかった。
とりあえずどんな形でもいいから納得してもらい、はやく治療に戻りたかった。
だがカインにとって、ハーフの話題を持ち出されることは全ての建前を崩すトリガーと成り得てしまう。
「ハーフも僕達とは違うって?」
カインは俯きながら最終確認するように呟く。
「何か間違ってるかい?他のヒューマにも聞いてごらんよ、全員が頷くはずさね」
老婆は得意気な表情で詫びれも無く言い放つ。
カインは拳を握り締める。
「重症人に種族なんて関係無いだろうが!!!」
「え……?」
辺りが一瞬にして静寂に包まれる中、アニーだけが一言無意識に漏らした。
「このヒトはあんたと『同じ』ここの村の住人じゃないのか?もしこのヒトがあんたの家族か親戚でも同じことが言えるのか?今ここで見殺しにすればあんたは立派な殺人者にるんだぞ?その覚悟はできてんのか!?」
カインが畳み掛けるように言うと老婆は腰を抜かし、震えていた。
そんな老婆を見てカインの頭に上っていた血が一気に下がり、冷静さを取り戻すと同時に罪悪感が襲ってきた。
「あ……」
謝ろうかと思った。
だが、ここで謝ればこの男性を侮辱することになると思った。
だからカインは何も言わずにガジュマの治療に戻った。
そこへティトレイが来るとしゃがみ込んだ。
「ほ〜らばあちゃん肩貸すぜ?大人しく宿屋で休んでな。話なら俺がゆっくり聞いてやるからよ」
老婆はティトレイにおぶさると宿屋へと消えて行った。
「カインさん……」
そんな様子をアニーもまた治療をしながら眺めていた。
「アニーさん、嬉しそうですね」
「えっ?そうですか?」
ニノンは難しそうな顔をアニーに近付ける。
「はい……そんな顔をしてます」
「そ、そうなんですか」
何時もとは逆にアニーが戸惑ってしまう。
だが確かに嬉しいと感じていたのかもしれない。
ニノンがお辞儀してからパタパタと走り去ってから、アニーはもう一度カインを見た。
* * *
独りになった野営テントで、ジークは相変わらず海賊証を眺めていた。
眼帯や子分、追っ手。
いまいち噛み合わなかった少女の言葉も、彼女が海賊だと仮定すれば全てが納得できる。
となると彼女が言っていた追っ手というのは軍の関係者なのだろう。
以前マティアスが海賊を掃除してやると息巻いていたことを考えると、もしかしたら王の剣のうちの誰かと出会ったのかもしれない。
「何それ?」
突然足元から声がしたためジークは咄嗟に海賊証をアイテムポーチに突っ込んだ。
「……何隠したの?」
声の主であるナイラがジークの足元の影から顔だけ覗かせるとジト目で質問してきた。
流石に挙動が怪しすぎたため完全に疑われている。
「か、影の中から監視してたんだったら分かってんだろ?」
問うまでもなくナイラはこの短い間、自分を監視していなかったのは分かっている。
でなければ今隠したものについて質問されることはないうえに海賊証を受け取った時点でジークもナイラのクナイの錆になっているはずだ。
故にこの問いかけは話を逸らすための導入でしかない。
「仲間が海賊退治に苦戦してたから応援に行っていた。だからさっきまで見てなかった」
「王の剣が苦戦する相手ってことは、夏のフォルスを使うやつに苦戦したのか」
「アルティスは居なかった。でもその代わりにファルブが介入してきた所為で不意を突かれたから苦戦した」
そういえば、さっき眼帯の少女もゴリラに助けてもらったと言っていた。
「ちっ、こんな時に呼び出しとかあのジジイ達はホントに空気読めない」
突然ナイラは舌打ちするなりそれだけ言い残して影の中に姿を消してしまった。
ジジイということは元老院に呼び出されたのだろう。
ジークは上手く誤魔化せたことに安堵して溜息をつく。
* * *
池のほとりにある民家を調べていたヴェイグ、ユージーン、ヒルダ、フィオナ、ジン、ルルの6人は一旦広場に集まっていた。
「どうやら村を襲ったのはファルブで間違いないようだな」
住人から話を聞き、全員で共有した結果どの民家の住人もゴリラのようなガジュマが来たと口々に言っていた。
「でも何で途中でいなくなったのかな?」
ルルは首を傾げるが他の面々もそれに関しては謎だった。
「そういえば、「あっちのほうが面白そうだ」とか言って突然村の外へ走って行ったと聞いたけど、何か関係があるのかしら?」
ヒルダは下唇に指を当てながら言うと、ジンは眉をひそめた。
「もしかして、近くに強そうな相手でも見つけたのかな……。あいつ戦闘マニアだから任務よりも強い相手を探す癖みたいのがあるんだ」
「そうなのか?」
ヴェイグが確認するとジンは「多分だけど……」と自信なさそうに頷く。
だがジンは短い期間だが今の6芒星と行動を共にしていたことがある。
ジンの仮説も強ち間違ってはいないのではないか。
そう思っていた時である。
黒雲のような物が猛スピードでアニカマル上空に到達すると、その塊はスライムのように地上へ溶けるように降下した。
「ここに落ちるぞ!」
ユージーンが注意を促すと、ヴェイグ達は四方八方へと散らばった。
その中央に先程まで黒雲だったものが落下するとスライムがまるで見えない手で捏ねられているかのようにグニャグニャとヒトの形を形成していった。
そのシルエットはゴリラのように見える。
同じように上空の異変に気付いたアニー達や、ジークも駆け付ける。
そして全員が揃ったのと同時に、闇が完全なヒトの形を成す。
「ガッハハ!ちょっとばかし遊びに行ってた間におもちゃが増えたみてぇだな!」
ファルブは既に大鎌を肩に乗せ、臨戦態勢だった。
「今度は村の住人を全滅してやるから覚悟しな!」
「そのようなことは絶対にさせん!!」
ユージーンが咆えながら槍を構える傍らで、他の面々も各々の武器を構える。
そして、両者同時に走り出す。
* * *
霧に覆われた島にポツンと佇む収容所の付近に、二つの影が降り立った。
「ここで間違いないな?ジルバ」
全身真っ白な身体にとさかのように跳ね上がった髪をもつユリスに問われたジルバは静かに頷く。
「フォルス探知をしてみろ。ここの特殊な装置が邪魔してできないはずだ」
「おいおい邪魔とか言うなよ。お前達ヒトにとっては貴重な文明の一つなんだろ?それに、俺にとっても邪魔にはならねぇし、むしろ感謝してるくらいなんだぜ?」
ユリスは裂けんばかりに口を横に広げる。
「おかげでこうして見つけることができたんだからな!」
不気味な笑顔を浮かべた直後、ユリスは首を傾げた。
すると、ユリスのヒトなら耳に相当する部分スレスレを一本の矢が通り過ぎていった。
「歓迎感謝するぜぇ!!」
ユリスは子供のような無邪気な笑みを浮かべたまま、地面を強く蹴る。
飛来する矢を左右に回避しつつ、それでもスピードは落とすばかりか加速させ、拳を握る。
「うるぁあ!!」
ユリスの突き出した拳からメキメキメキッという乾いた音がした。
手応えはある。
だがそれは相手が防御に使った槍を砕いた音だった。
「よぉ、お前がここにいるってことは、マジでビンゴなんだな?」
「愚問だな」
槍を砕かれたウォーレスはオレンジのサングランスのブリッジを抑えながら後退した。
「ユリス、時間の無駄だ。ここは私が抑えておくから貴様はさっさとターゲットを確保しにいけ」
「ふざけんなよジルバ、たまには俺にも遊ばせろ。どうせあいつはここを出た所で俺様からは逃げられねぇんだ」
「ふっ、言っておくが遊んでいるうちに死んでいても俺は知らんぞ」
ウォーレスは弓を構え、そこに矢をつがえる。
それに対してユリスは準備体操をするかのように伸脚していた。
「どっちがウサギか、すぐに分からせてやるよ!」
直後、二つの大きな力が激突した。
* * *
収容所に、階段を下ってくる足音が響く。
「ウォーレス?終わったの?」
ヤコはベッドに座ったまま足をぶらぶらさせながら言葉を投げかける。
だが返事は返ってこなかった。
代わりに、白い悪魔が姿を現す。
「よぉ、会いたかったぜ?」
ユリスはオレンジのサングラスを牢の中に放り投げる。
それをヤコは取り乱すことなく、ただただ見つめていた。
「愛しいあの人に別れの挨拶はちゃんとしたか?」
ユリスは鉄格子に腕を突きながら、満面の笑みで問う。
ヤコは首を横に振る。
「できなかった……。でも言いたいことは伝えたから大丈夫」
「随分信用してんだな」
さっきまでの笑みとは一変して、急に不機嫌そうな顔になった。
「今のあなたには分からないかもね。でも、そのうちきっと彼が教えてくれるから。だからそんなに泣きそうな顔しなくていいんだよ」
「残念だが、俺にそんなヒトみたいな感情はねぇよ」
「無いんじゃない。ただ知らないだけ」
ヤコは微笑むが、ユリスは舌打ちして牢の扉を開けた。
そのまま階段の方へ歩いて行き、待機していたジルバと擦れ違う。
「ジルバ、後はお前が連れて来い。俺様はあの中に入れないからよ」
「分かった」
ジルバは短く返事をしてからヤコの牢屋へ入った。
〜続く〜
少しでも純度を高めすぎれば己の寿命を持っていかれてしまうが、薄すぎても傷口から出血が止まらず失血死してしまう。
だからこそカインは精神を研ぎ澄ませ、針の穴に糸を通すような感覚でフォルスを使っていた。
(よし!なんとか傷口は塞がってきた)
カインは肩の力を緩めた。
ここまでくれば濃度を薄めても一命は取り留められる。
「ちょ、ちょいとお兄さん……あんたヒューマだろ?何でガジュマなんか治療してんだい?」
麦藁帽子をかぶり、すっかり腰の曲がったヒューマの老婆が、宿屋から出てくるなりカインの正面に立ち問いかけてくる。
「お兄さんは知らないだろうけど、この村はガジュマに襲われたんだ。お兄さんが今助けようとしている男と同じガジュマにね」
「知ってますよ」
カインは老婆には目もくれず治療を続ける。
それが余計に気に入らないのか老婆は肩をわなわなと震わせ、興奮し始めた。
「し、知ってるなら尚更だよ!そいつはあたし達を襲った男と同族なんだ!自業自得なのさ!だから死んで当然なんだよ!」
そうだそうだ!と、民家に隠れて老婆と同じように状況を見ていたヒューマがはやし立てる。
それでもカインは冷静を乱すことなく、回復を続ける。
「それでも、このヒトを見殺しにする理由にはならない」
「ガジュマの肩をもつってのかい!?だ、だったらあんたも同罪だよ!」
老婆はカインの手をガジュマから離そうと彼の手を掴もうと手を伸ばす。
しかし即座に回復を中止したカインは片手で老婆の腕を掴んだ。
「いい加減にしてよお婆さん。あなたはガジュマが悪いみたいに言うけど、同じヒューマの僕も悪いって言うならお婆さんの味方って一体誰なのさ?敵って誰?」
「あたしは敵とか味方とかそんな稚拙なことを言ってんじゃない!」
老婆は怒鳴りながらカインの手を振り解くと、カインはガジュマの治療を中断し立ち上がる。
「ガジュマやハーフはあたし達とは違うって言ってんだよ!!」
老婆は禁句に触れた。
もしガジュマだのヒューマだの話だけならカインも穏やかに説得していたかもしれない。
むしろ最初から老婆とは口論するつもりもなかった。
とりあえずどんな形でもいいから納得してもらい、はやく治療に戻りたかった。
だがカインにとって、ハーフの話題を持ち出されることは全ての建前を崩すトリガーと成り得てしまう。
「ハーフも僕達とは違うって?」
カインは俯きながら最終確認するように呟く。
「何か間違ってるかい?他のヒューマにも聞いてごらんよ、全員が頷くはずさね」
老婆は得意気な表情で詫びれも無く言い放つ。
カインは拳を握り締める。
「重症人に種族なんて関係無いだろうが!!!」
「え……?」
辺りが一瞬にして静寂に包まれる中、アニーだけが一言無意識に漏らした。
「このヒトはあんたと『同じ』ここの村の住人じゃないのか?もしこのヒトがあんたの家族か親戚でも同じことが言えるのか?今ここで見殺しにすればあんたは立派な殺人者にるんだぞ?その覚悟はできてんのか!?」
カインが畳み掛けるように言うと老婆は腰を抜かし、震えていた。
そんな老婆を見てカインの頭に上っていた血が一気に下がり、冷静さを取り戻すと同時に罪悪感が襲ってきた。
「あ……」
謝ろうかと思った。
だが、ここで謝ればこの男性を侮辱することになると思った。
だからカインは何も言わずにガジュマの治療に戻った。
そこへティトレイが来るとしゃがみ込んだ。
「ほ〜らばあちゃん肩貸すぜ?大人しく宿屋で休んでな。話なら俺がゆっくり聞いてやるからよ」
老婆はティトレイにおぶさると宿屋へと消えて行った。
「カインさん……」
そんな様子をアニーもまた治療をしながら眺めていた。
「アニーさん、嬉しそうですね」
「えっ?そうですか?」
ニノンは難しそうな顔をアニーに近付ける。
「はい……そんな顔をしてます」
「そ、そうなんですか」
何時もとは逆にアニーが戸惑ってしまう。
だが確かに嬉しいと感じていたのかもしれない。
ニノンがお辞儀してからパタパタと走り去ってから、アニーはもう一度カインを見た。
* * *
独りになった野営テントで、ジークは相変わらず海賊証を眺めていた。
眼帯や子分、追っ手。
いまいち噛み合わなかった少女の言葉も、彼女が海賊だと仮定すれば全てが納得できる。
となると彼女が言っていた追っ手というのは軍の関係者なのだろう。
以前マティアスが海賊を掃除してやると息巻いていたことを考えると、もしかしたら王の剣のうちの誰かと出会ったのかもしれない。
「何それ?」
突然足元から声がしたためジークは咄嗟に海賊証をアイテムポーチに突っ込んだ。
「……何隠したの?」
声の主であるナイラがジークの足元の影から顔だけ覗かせるとジト目で質問してきた。
流石に挙動が怪しすぎたため完全に疑われている。
「か、影の中から監視してたんだったら分かってんだろ?」
問うまでもなくナイラはこの短い間、自分を監視していなかったのは分かっている。
でなければ今隠したものについて質問されることはないうえに海賊証を受け取った時点でジークもナイラのクナイの錆になっているはずだ。
故にこの問いかけは話を逸らすための導入でしかない。
「仲間が海賊退治に苦戦してたから応援に行っていた。だからさっきまで見てなかった」
「王の剣が苦戦する相手ってことは、夏のフォルスを使うやつに苦戦したのか」
「アルティスは居なかった。でもその代わりにファルブが介入してきた所為で不意を突かれたから苦戦した」
そういえば、さっき眼帯の少女もゴリラに助けてもらったと言っていた。
「ちっ、こんな時に呼び出しとかあのジジイ達はホントに空気読めない」
突然ナイラは舌打ちするなりそれだけ言い残して影の中に姿を消してしまった。
ジジイということは元老院に呼び出されたのだろう。
ジークは上手く誤魔化せたことに安堵して溜息をつく。
* * *
池のほとりにある民家を調べていたヴェイグ、ユージーン、ヒルダ、フィオナ、ジン、ルルの6人は一旦広場に集まっていた。
「どうやら村を襲ったのはファルブで間違いないようだな」
住人から話を聞き、全員で共有した結果どの民家の住人もゴリラのようなガジュマが来たと口々に言っていた。
「でも何で途中でいなくなったのかな?」
ルルは首を傾げるが他の面々もそれに関しては謎だった。
「そういえば、「あっちのほうが面白そうだ」とか言って突然村の外へ走って行ったと聞いたけど、何か関係があるのかしら?」
ヒルダは下唇に指を当てながら言うと、ジンは眉をひそめた。
「もしかして、近くに強そうな相手でも見つけたのかな……。あいつ戦闘マニアだから任務よりも強い相手を探す癖みたいのがあるんだ」
「そうなのか?」
ヴェイグが確認するとジンは「多分だけど……」と自信なさそうに頷く。
だがジンは短い期間だが今の6芒星と行動を共にしていたことがある。
ジンの仮説も強ち間違ってはいないのではないか。
そう思っていた時である。
黒雲のような物が猛スピードでアニカマル上空に到達すると、その塊はスライムのように地上へ溶けるように降下した。
「ここに落ちるぞ!」
ユージーンが注意を促すと、ヴェイグ達は四方八方へと散らばった。
その中央に先程まで黒雲だったものが落下するとスライムがまるで見えない手で捏ねられているかのようにグニャグニャとヒトの形を形成していった。
そのシルエットはゴリラのように見える。
同じように上空の異変に気付いたアニー達や、ジークも駆け付ける。
そして全員が揃ったのと同時に、闇が完全なヒトの形を成す。
「ガッハハ!ちょっとばかし遊びに行ってた間におもちゃが増えたみてぇだな!」
ファルブは既に大鎌を肩に乗せ、臨戦態勢だった。
「今度は村の住人を全滅してやるから覚悟しな!」
「そのようなことは絶対にさせん!!」
ユージーンが咆えながら槍を構える傍らで、他の面々も各々の武器を構える。
そして、両者同時に走り出す。
* * *
霧に覆われた島にポツンと佇む収容所の付近に、二つの影が降り立った。
「ここで間違いないな?ジルバ」
全身真っ白な身体にとさかのように跳ね上がった髪をもつユリスに問われたジルバは静かに頷く。
「フォルス探知をしてみろ。ここの特殊な装置が邪魔してできないはずだ」
「おいおい邪魔とか言うなよ。お前達ヒトにとっては貴重な文明の一つなんだろ?それに、俺にとっても邪魔にはならねぇし、むしろ感謝してるくらいなんだぜ?」
ユリスは裂けんばかりに口を横に広げる。
「おかげでこうして見つけることができたんだからな!」
不気味な笑顔を浮かべた直後、ユリスは首を傾げた。
すると、ユリスのヒトなら耳に相当する部分スレスレを一本の矢が通り過ぎていった。
「歓迎感謝するぜぇ!!」
ユリスは子供のような無邪気な笑みを浮かべたまま、地面を強く蹴る。
飛来する矢を左右に回避しつつ、それでもスピードは落とすばかりか加速させ、拳を握る。
「うるぁあ!!」
ユリスの突き出した拳からメキメキメキッという乾いた音がした。
手応えはある。
だがそれは相手が防御に使った槍を砕いた音だった。
「よぉ、お前がここにいるってことは、マジでビンゴなんだな?」
「愚問だな」
槍を砕かれたウォーレスはオレンジのサングランスのブリッジを抑えながら後退した。
「ユリス、時間の無駄だ。ここは私が抑えておくから貴様はさっさとターゲットを確保しにいけ」
「ふざけんなよジルバ、たまには俺にも遊ばせろ。どうせあいつはここを出た所で俺様からは逃げられねぇんだ」
「ふっ、言っておくが遊んでいるうちに死んでいても俺は知らんぞ」
ウォーレスは弓を構え、そこに矢をつがえる。
それに対してユリスは準備体操をするかのように伸脚していた。
「どっちがウサギか、すぐに分からせてやるよ!」
直後、二つの大きな力が激突した。
* * *
収容所に、階段を下ってくる足音が響く。
「ウォーレス?終わったの?」
ヤコはベッドに座ったまま足をぶらぶらさせながら言葉を投げかける。
だが返事は返ってこなかった。
代わりに、白い悪魔が姿を現す。
「よぉ、会いたかったぜ?」
ユリスはオレンジのサングラスを牢の中に放り投げる。
それをヤコは取り乱すことなく、ただただ見つめていた。
「愛しいあの人に別れの挨拶はちゃんとしたか?」
ユリスは鉄格子に腕を突きながら、満面の笑みで問う。
ヤコは首を横に振る。
「できなかった……。でも言いたいことは伝えたから大丈夫」
「随分信用してんだな」
さっきまでの笑みとは一変して、急に不機嫌そうな顔になった。
「今のあなたには分からないかもね。でも、そのうちきっと彼が教えてくれるから。だからそんなに泣きそうな顔しなくていいんだよ」
「残念だが、俺にそんなヒトみたいな感情はねぇよ」
「無いんじゃない。ただ知らないだけ」
ヤコは微笑むが、ユリスは舌打ちして牢の扉を開けた。
そのまま階段の方へ歩いて行き、待機していたジルバと擦れ違う。
「ジルバ、後はお前が連れて来い。俺様はあの中に入れないからよ」
「分かった」
ジルバは短く返事をしてからヤコの牢屋へ入った。
〜続く〜
■作者メッセージ
―――オマケ―――
ユーリ「エステル!さっさとザギを召喚して手っ取り早く決めるぞ!」
エステリーゼ「分かりました!」
パティ「ちょっと待ったなのじゃあああああ!!!」
フレン「パティ!」
リタ「あいつ、今までどこに……!?」
ジュディス「あら、なんだかんだ言って心配してたのね」
リタ「ち、ちがっ」
レイヴン「リタッチ優し〜!フゥ〜♪」
リタ「うっさい黙れ!燃やすわよ!?」
ユーリ「つうかザギも一緒にいるじゃねぇか。何時の間に召喚したんだ?」
エステリーゼ「いいえ?私はまだユーリの寝言を録音したボイスレコーダーを投げてませんけど……」
リタ「ちょっと待って!てことは何?エステルあんた、こいつの寝室に侵入したの!?」
エステリーゼ「テヘ☆」
フレン「テヘじゃありませんエステリーゼ様!万が一のことがあったらどうするんですか!?」
エステリーゼ「試しに添い寝までしてみましたが、何も起きませんでしたよ?えぇ、それはもう本当に何からナニまで起きませんでした」
リタ「誤字!その誤字危険だから!」
エステリーゼ「ユーリって、技の名前に狼って付ける割には夜はワンちゃんなんですね♪」
ユーリ「ぶっ殺すぞてめぇ!!」
カロル「ユーリそれじゃ反乱者になっちゃうよ!!」
ユーリ「目の前のプライドも護れないやつが正義なんか貫けるかよッ!!」
パティ「ウ、ウチの話を聞くのじゃ!」
フレン「そうだった。それで、突然どうしたんだ?」
パティ「そこの無口男を倒すなら、まずはウチ達を倒すのじゃ!」
レイヴン「どったの急に?」
パティ「ユーリがその男を倒したらエンディングになってしまうのじゃ」
ユーリ「やっぱあいつラスボスなのか」
パティ「でもそしたらユーリはザギと結婚してしまうのじゃ!!エステルやリタ姐が認めてもウチは認めんのじゃ!!」
リタ「わ、私だって認めてないわよ……」
ジュディス「そもそも何であなたがザギと一緒にいるの?」
パティ「話し合いの結果なのじゃ」
レイヴン「どういう話し合いをしたらそういう結果になんの!?」
パティ「ウチが負けたらザギとの結婚は認めるが、ウチが勝ったらユーリはウチと結婚するのじゃ!」
カロル「え?それでザギは納得してるの?」
ザギ「超納得だぜヒャッハー!」
エステリーゼ「本人達が納得しているのなら良いのですが……」
ユーリ「いや良くねぇよ。本人達よりもまず当人である俺が納得してねぇからな?」
フレン「仕方無い。そういうことならば僕もユーリの騎士として本気で戦わせてもらおうか」
ユーリ「格好付けてるとこ悪いんだが、俺の騎士って何?」
パティ「ちなみに、ここに来る前にザギを少〜し改造しての。ベルセリオスという魔剣しか効かないから要注意なのじゃ☆」
レイヴン「べ、べる、べるせりおす?バルサミコ酢の親戚か何か?」
エステリーゼ「ベルセリオス……かつて天上の王が振るったという魔剣、です」
リタ「天上王?ってことはミクトランが持ってるってこと?」
エステリーゼ「おそらくは」
ジュディス「そういえばミクトランに1億5千万の賞金がかかっているって何処かで聞いたわよ?」
カロル「あれ?そもそも僕達ってミクトランを倒して1億5千万を稼ぐために冒険を始めたんじゃなかったっけ?」
ユーリ「そういやそうだ!うし!1億5千万稼ぐついでにベルセリお酢を取りにいくぞ!」
リタ「確か居住区で見たわ!」
エステリーゼ「急ぎましょう!」
パティ「あ、あ……ウチも行くのじゃ!」
『救いの塔・収容施設』
レイヴン「ちょっ、タンマタンマ!青年タンマ!」
ユーリ「どうしたおっさん!?まさか散々休んだくせにもう疲れたとか言わねぇだろうな!?」
レイヴン「違うって!牢屋で最初に捕まった時、兵士が『ミクトランは宙の戒典(デインノモス)じゃないと倒せない』って言ってなかった?」
ユーリ「そういやそうだ……。チッ、まずはそっちへ行くか!」
エステリーゼ「宙の戒典(デインノモス)だったらシャイコス遺跡でデュークが守護しているはずです!」
フレン「目指すはシャイコス遺跡だね!」
リタ「ねぇエステル、あんたが読んだ文献ってどこのブックオフに売ってたの?」
エステリーゼ「えっとぉ……」
ジュディス「エステル、答えなくて良いわよ♪」
エステリーゼ「ジュディスの笑顔が恐いです……」
『シャイコス遺跡』
兵士A「ここから先に行きたければ通行証が必要である!」
兵士B「いくら姫様が一緒と言えど、規則故提示願います!」
シュバーン「これだからお役所仕事ってのは嫌よね〜」
フレン「わざわざその格好に着替えて言わないでください……」
エステリーゼ「通行証はキュモールが発行してくれることになっています!」
ユーリ「で、そいつがケーブモック大森林にいるから俺たちも向かってたんだよな。通行証ついでに離婚届も発行してもらうか」
パティ「それは名案なのじゃ!そしたらウチもユーリと戦わなくてすむのじゃ!」
ラピード「ワオーン♪」
レイヴン「んじゃ、次はデイドン砦ってことで」
ユーリ「いや、迂回して森を抜けるべきだ」
フレン「どうしてだい?」
ユーリ「砦を通るとヨーデルに会う可能性が高いからだ」
『クオイの森』
ヨーデル「おや皆さん!こんな所で奇遇ですね」
ユーリ「何でてめぇがここに居るんだ!?」
ヨーデル「皆さんが帰ってくる間ただ待つのも暇なので森林浴でもしようかと思いまして。ほら、ここら辺の魔物って変な道に迷わなければ弱い個体ばかりですし」
ユーリ「そうか。じゃあ俺たちは急ぐから」
ヨーデル「そういえば、父の仇はもうとってくれたのですか?」
エステリーゼ「あ、そういえば……」
ヨーデル「父の仇もそうですがいつ魔界の軍勢が襲ってくるか分かりません。皆さん、この世界をよろしくお願いします」
ラピード「バウ!」
ユーリ「……魔界は遺跡船から行くんだったな」
リタ「え、えぇ……」
パティ「ウチのバンエルティア号ならいつでも使えるから安心するのじゃ」
『遺跡船・光跡翼』
ジェイ「これはこれは皆さん、また来たんですか?」
ジュディス「またお願いできるかしら?」
ジェイ「燃料などは一切使わないので何度も使えます。なので安心してください」
カロル「ちゃんと魔界に着いたら安心するよ」
レイヴン「カロル少年の場合は着いたで着いたでパニックになりそうだけどね」
ポッポ「いつでも出発できるキュ!」
ジェイ「では御武運を」
ポッポ「出発進行キュー!」
ジェイ「そういえば、前回何か忘れ物しなかったっけ?」
ポッポ「気のせいだキュ!」
ジェイ「だよね〜」
『ダイクの家』
ユーリ「結局ここかよ……」
ジュディス「でもダオスを倒すためにはエターナルソードが必要なのよね?だったらここは避けて通れないんじゃないかしら?」
ユーリ「そう言われてみればそうか」
エステリーゼ「ごめんくださーい!エターナルソードできましたでしょうか?」
ダイク「おぉあんた達か?アルテッサ殿は助けてくれたのか?」
レイヴン「ダイク殿、お久し振りです」
ダイク「誰だお前さんは?ふざけてんなら作らんぞ?」
フレン「隊長、これは一体……」
レイヴン「あ!アルテッサの衣装救いの塔にぬぎっぱだわ!」
ジュディス「まさかまた登るの?」
レイヴン「すまん!」
ユーリ「ったく、さっさと行くぞ!」
『救いの塔・居住区』
ルドガー「……」
エル「どこに逃げたのかと思えばこんな所にいたのか。覚悟しろ!だって」
ジュディス「……」
リタ「あんまりしつこいと嫌われるわよ?だって」
レイヴン「ジュディスちゃん、アイツの前では相変わらずそれなのね……」
フレン「僕達を探してこんなところまで降りてきたのか」
ユーリ「まずはこいつから片付けるか」
パティ「ザギ!ルドガーを一緒に護るのじゃ!」
ザギ「グハハハハハ!俺を倒したければベルセリオスを持ってくるんだな!」
ユーリ「ベルセリお酢……まずはシャイコス遺跡か!」
リタ「1億5千万はあたし達のものよ!!」
ラピード「バウ!」
〜以降無限ループ〜
【楽談パート53】
takeshi「ども〜!オマケが完結したtakeshiでっす!」
チャリティ「アレで終わりなの!?」
takeshi「アレでって……十分やったほうじゃないですか?」
チャリティ「ん〜そうね〜、てっきりあんたのことだから2、3話やって終わりにするかと思ってたけど、結構続いたものね〜。ま、いっか!」
takeshi「私も前回のオマケでやり残したことも全部できたので、オマケのアフターストーリーをやった後は外伝やら何やらに回そうかと思います」
チャリティ「何やらって何?」
takeshi「具体的には特に決まってないので、また新たなオマケが来る可能性が高いです」
チャリティ「またやるの!?」
takeshi「外伝をやらない時だけですけどね。それにしてもワーキング3期の製作が決定したらいいですね?」
チャリティ「そうなの?ロディが「早く終わらせないと3期が始まっちゃうよ!」とか言ってたのが懐かしいわね〜」
takeshi「ですね〜。本編も70話を越えましたし、本当に遠いところまで来たものです」
チャリティ「ねぇ!ロディをここに呼べないの!?メルタンでも良いわよ!?」
takeshi「前も言いましたがここに来れるのは基本的にリバースのキャラだけですから。それにメルタンって……。この前の惨状を見たらもし来れたとしたって来たくなりますよ」
チャリティ「え〜、そう?ヴィ」
takeshi「おっとそこまでだ!」
チャリティ「なに?」
takeshi「それ以上はよくない」
チャリティ「そうなの?」
takeshi「そうなのです。にしても急に2人になるとやはり何か虚しいというか寂しいですね」
チャリティ「そうね〜」
takeshi「とりあえず本編を振り返りましょうか」
チャリティ「ヤコ逃げて!超逃げて!!」
Takeshi「散々引っ張ってきた伏線をすこし回収できました」
チャリティ「ウォーレス弱過ぎ!何アイツ?散々強そうなオーラ出しといてその程度なの?まだ紙の方がマシな盾になるわよ!」
takeshi「相手は本編のラスボスですし、あそこで勝たれても逆に私が困ってしまうのですが……」
チャリティ「知るかボケ!そこをなんとかするのがあんたの仕事でしょ!?」
takeshi「何と言うか、最近チャリティさんの裏設定を隠すのが大変になってきました……」
チャリティ「口が悪いところ?」
takeshi「いえ、チャリティさんの口の悪さは隠す必要がないので大丈夫です」
チャリティ「そうなの?」
takeshi「そうなのです」
チャリティ「あんたイチオシのアイスは?」
takeshi「爽なのです」
チャリティ「……なんかごめん」
takeshi「いえ、謝ってもらえれば滑るくらい別に……」
チャリティ「次回からはまた戦闘パートね!」
takeshi「ちょっと日常パート多目だったので張り切っていきますよ!」
チャリティ「お楽しみに!」
takeshi「ではまた〜」
ユーリ「エステル!さっさとザギを召喚して手っ取り早く決めるぞ!」
エステリーゼ「分かりました!」
パティ「ちょっと待ったなのじゃあああああ!!!」
フレン「パティ!」
リタ「あいつ、今までどこに……!?」
ジュディス「あら、なんだかんだ言って心配してたのね」
リタ「ち、ちがっ」
レイヴン「リタッチ優し〜!フゥ〜♪」
リタ「うっさい黙れ!燃やすわよ!?」
ユーリ「つうかザギも一緒にいるじゃねぇか。何時の間に召喚したんだ?」
エステリーゼ「いいえ?私はまだユーリの寝言を録音したボイスレコーダーを投げてませんけど……」
リタ「ちょっと待って!てことは何?エステルあんた、こいつの寝室に侵入したの!?」
エステリーゼ「テヘ☆」
フレン「テヘじゃありませんエステリーゼ様!万が一のことがあったらどうするんですか!?」
エステリーゼ「試しに添い寝までしてみましたが、何も起きませんでしたよ?えぇ、それはもう本当に何からナニまで起きませんでした」
リタ「誤字!その誤字危険だから!」
エステリーゼ「ユーリって、技の名前に狼って付ける割には夜はワンちゃんなんですね♪」
ユーリ「ぶっ殺すぞてめぇ!!」
カロル「ユーリそれじゃ反乱者になっちゃうよ!!」
ユーリ「目の前のプライドも護れないやつが正義なんか貫けるかよッ!!」
パティ「ウ、ウチの話を聞くのじゃ!」
フレン「そうだった。それで、突然どうしたんだ?」
パティ「そこの無口男を倒すなら、まずはウチ達を倒すのじゃ!」
レイヴン「どったの急に?」
パティ「ユーリがその男を倒したらエンディングになってしまうのじゃ」
ユーリ「やっぱあいつラスボスなのか」
パティ「でもそしたらユーリはザギと結婚してしまうのじゃ!!エステルやリタ姐が認めてもウチは認めんのじゃ!!」
リタ「わ、私だって認めてないわよ……」
ジュディス「そもそも何であなたがザギと一緒にいるの?」
パティ「話し合いの結果なのじゃ」
レイヴン「どういう話し合いをしたらそういう結果になんの!?」
パティ「ウチが負けたらザギとの結婚は認めるが、ウチが勝ったらユーリはウチと結婚するのじゃ!」
カロル「え?それでザギは納得してるの?」
ザギ「超納得だぜヒャッハー!」
エステリーゼ「本人達が納得しているのなら良いのですが……」
ユーリ「いや良くねぇよ。本人達よりもまず当人である俺が納得してねぇからな?」
フレン「仕方無い。そういうことならば僕もユーリの騎士として本気で戦わせてもらおうか」
ユーリ「格好付けてるとこ悪いんだが、俺の騎士って何?」
パティ「ちなみに、ここに来る前にザギを少〜し改造しての。ベルセリオスという魔剣しか効かないから要注意なのじゃ☆」
レイヴン「べ、べる、べるせりおす?バルサミコ酢の親戚か何か?」
エステリーゼ「ベルセリオス……かつて天上の王が振るったという魔剣、です」
リタ「天上王?ってことはミクトランが持ってるってこと?」
エステリーゼ「おそらくは」
ジュディス「そういえばミクトランに1億5千万の賞金がかかっているって何処かで聞いたわよ?」
カロル「あれ?そもそも僕達ってミクトランを倒して1億5千万を稼ぐために冒険を始めたんじゃなかったっけ?」
ユーリ「そういやそうだ!うし!1億5千万稼ぐついでにベルセリお酢を取りにいくぞ!」
リタ「確か居住区で見たわ!」
エステリーゼ「急ぎましょう!」
パティ「あ、あ……ウチも行くのじゃ!」
『救いの塔・収容施設』
レイヴン「ちょっ、タンマタンマ!青年タンマ!」
ユーリ「どうしたおっさん!?まさか散々休んだくせにもう疲れたとか言わねぇだろうな!?」
レイヴン「違うって!牢屋で最初に捕まった時、兵士が『ミクトランは宙の戒典(デインノモス)じゃないと倒せない』って言ってなかった?」
ユーリ「そういやそうだ……。チッ、まずはそっちへ行くか!」
エステリーゼ「宙の戒典(デインノモス)だったらシャイコス遺跡でデュークが守護しているはずです!」
フレン「目指すはシャイコス遺跡だね!」
リタ「ねぇエステル、あんたが読んだ文献ってどこのブックオフに売ってたの?」
エステリーゼ「えっとぉ……」
ジュディス「エステル、答えなくて良いわよ♪」
エステリーゼ「ジュディスの笑顔が恐いです……」
『シャイコス遺跡』
兵士A「ここから先に行きたければ通行証が必要である!」
兵士B「いくら姫様が一緒と言えど、規則故提示願います!」
シュバーン「これだからお役所仕事ってのは嫌よね〜」
フレン「わざわざその格好に着替えて言わないでください……」
エステリーゼ「通行証はキュモールが発行してくれることになっています!」
ユーリ「で、そいつがケーブモック大森林にいるから俺たちも向かってたんだよな。通行証ついでに離婚届も発行してもらうか」
パティ「それは名案なのじゃ!そしたらウチもユーリと戦わなくてすむのじゃ!」
ラピード「ワオーン♪」
レイヴン「んじゃ、次はデイドン砦ってことで」
ユーリ「いや、迂回して森を抜けるべきだ」
フレン「どうしてだい?」
ユーリ「砦を通るとヨーデルに会う可能性が高いからだ」
『クオイの森』
ヨーデル「おや皆さん!こんな所で奇遇ですね」
ユーリ「何でてめぇがここに居るんだ!?」
ヨーデル「皆さんが帰ってくる間ただ待つのも暇なので森林浴でもしようかと思いまして。ほら、ここら辺の魔物って変な道に迷わなければ弱い個体ばかりですし」
ユーリ「そうか。じゃあ俺たちは急ぐから」
ヨーデル「そういえば、父の仇はもうとってくれたのですか?」
エステリーゼ「あ、そういえば……」
ヨーデル「父の仇もそうですがいつ魔界の軍勢が襲ってくるか分かりません。皆さん、この世界をよろしくお願いします」
ラピード「バウ!」
ユーリ「……魔界は遺跡船から行くんだったな」
リタ「え、えぇ……」
パティ「ウチのバンエルティア号ならいつでも使えるから安心するのじゃ」
『遺跡船・光跡翼』
ジェイ「これはこれは皆さん、また来たんですか?」
ジュディス「またお願いできるかしら?」
ジェイ「燃料などは一切使わないので何度も使えます。なので安心してください」
カロル「ちゃんと魔界に着いたら安心するよ」
レイヴン「カロル少年の場合は着いたで着いたでパニックになりそうだけどね」
ポッポ「いつでも出発できるキュ!」
ジェイ「では御武運を」
ポッポ「出発進行キュー!」
ジェイ「そういえば、前回何か忘れ物しなかったっけ?」
ポッポ「気のせいだキュ!」
ジェイ「だよね〜」
『ダイクの家』
ユーリ「結局ここかよ……」
ジュディス「でもダオスを倒すためにはエターナルソードが必要なのよね?だったらここは避けて通れないんじゃないかしら?」
ユーリ「そう言われてみればそうか」
エステリーゼ「ごめんくださーい!エターナルソードできましたでしょうか?」
ダイク「おぉあんた達か?アルテッサ殿は助けてくれたのか?」
レイヴン「ダイク殿、お久し振りです」
ダイク「誰だお前さんは?ふざけてんなら作らんぞ?」
フレン「隊長、これは一体……」
レイヴン「あ!アルテッサの衣装救いの塔にぬぎっぱだわ!」
ジュディス「まさかまた登るの?」
レイヴン「すまん!」
ユーリ「ったく、さっさと行くぞ!」
『救いの塔・居住区』
ルドガー「……」
エル「どこに逃げたのかと思えばこんな所にいたのか。覚悟しろ!だって」
ジュディス「……」
リタ「あんまりしつこいと嫌われるわよ?だって」
レイヴン「ジュディスちゃん、アイツの前では相変わらずそれなのね……」
フレン「僕達を探してこんなところまで降りてきたのか」
ユーリ「まずはこいつから片付けるか」
パティ「ザギ!ルドガーを一緒に護るのじゃ!」
ザギ「グハハハハハ!俺を倒したければベルセリオスを持ってくるんだな!」
ユーリ「ベルセリお酢……まずはシャイコス遺跡か!」
リタ「1億5千万はあたし達のものよ!!」
ラピード「バウ!」
〜以降無限ループ〜
【楽談パート53】
takeshi「ども〜!オマケが完結したtakeshiでっす!」
チャリティ「アレで終わりなの!?」
takeshi「アレでって……十分やったほうじゃないですか?」
チャリティ「ん〜そうね〜、てっきりあんたのことだから2、3話やって終わりにするかと思ってたけど、結構続いたものね〜。ま、いっか!」
takeshi「私も前回のオマケでやり残したことも全部できたので、オマケのアフターストーリーをやった後は外伝やら何やらに回そうかと思います」
チャリティ「何やらって何?」
takeshi「具体的には特に決まってないので、また新たなオマケが来る可能性が高いです」
チャリティ「またやるの!?」
takeshi「外伝をやらない時だけですけどね。それにしてもワーキング3期の製作が決定したらいいですね?」
チャリティ「そうなの?ロディが「早く終わらせないと3期が始まっちゃうよ!」とか言ってたのが懐かしいわね〜」
takeshi「ですね〜。本編も70話を越えましたし、本当に遠いところまで来たものです」
チャリティ「ねぇ!ロディをここに呼べないの!?メルタンでも良いわよ!?」
takeshi「前も言いましたがここに来れるのは基本的にリバースのキャラだけですから。それにメルタンって……。この前の惨状を見たらもし来れたとしたって来たくなりますよ」
チャリティ「え〜、そう?ヴィ」
takeshi「おっとそこまでだ!」
チャリティ「なに?」
takeshi「それ以上はよくない」
チャリティ「そうなの?」
takeshi「そうなのです。にしても急に2人になるとやはり何か虚しいというか寂しいですね」
チャリティ「そうね〜」
takeshi「とりあえず本編を振り返りましょうか」
チャリティ「ヤコ逃げて!超逃げて!!」
Takeshi「散々引っ張ってきた伏線をすこし回収できました」
チャリティ「ウォーレス弱過ぎ!何アイツ?散々強そうなオーラ出しといてその程度なの?まだ紙の方がマシな盾になるわよ!」
takeshi「相手は本編のラスボスですし、あそこで勝たれても逆に私が困ってしまうのですが……」
チャリティ「知るかボケ!そこをなんとかするのがあんたの仕事でしょ!?」
takeshi「何と言うか、最近チャリティさんの裏設定を隠すのが大変になってきました……」
チャリティ「口が悪いところ?」
takeshi「いえ、チャリティさんの口の悪さは隠す必要がないので大丈夫です」
チャリティ「そうなの?」
takeshi「そうなのです」
チャリティ「あんたイチオシのアイスは?」
takeshi「爽なのです」
チャリティ「……なんかごめん」
takeshi「いえ、謝ってもらえれば滑るくらい別に……」
チャリティ「次回からはまた戦闘パートね!」
takeshi「ちょっと日常パート多目だったので張り切っていきますよ!」
チャリティ「お楽しみに!」
takeshi「ではまた〜」