第76話『悪と罪』
「ユージーン!!」
それを確認してから今まで我慢していたマオがふらつく足で躓きながらもユージーンに駆け寄る。
ユージーンの側ではアニーが既に応急手当をしていた。
「大丈夫よマオ。とりあえず一命は取り留めたわ。でも宿屋でちゃんと治療しないと安心できない状態なの」
「だったら俺が話をつけてきてやるよ」
「僕も行くよ!」
アニーの話を聞いたティトレイが申し出ると、カインと共に2人は宿屋へ走って行った。
「ファルブはどうなったんだ?消えたように見えたが、あれは死んだのか?」
ブライトはマオとヴェイグに訪ねると、マオが首を横に振った。
「ファルブのフォルス反応が遠ざかっているから、一応まだ生きてるみたい」
「てことは逃げたのか。あいつ、どんだけしぶといんだよ?」
ジークが言いながら歩み寄ってくる。
すると、猛スピードでダッシュしてきたフィオナが勢いはそのままで拳を振りかぶると、突き出された拳がジークの顔面にめり込んだ。
顔面にナックルをくらったジークはそのまま地面をバウンドしながら転がった。
「あんたが言うな!」
「フィオナさん怪我人を増やさないでください!!」
気絶して動かなくなったジークにアニーが慌てて駆け寄る。
「だ、だって……ジークが勝手に死にそうになるから……」
「フィオナ……ツッコミに力を入れすぎだ」
「ご、ごめんなさい……」
ヴェイグが溜息交じりに言うと、フィオナはばつが悪そうな顔をした。
「お〜い!話つけてきたぜ〜!」
そこへティトレイが手を振りながらこちらに走ってくる。
しかしその隣を走っていたカインは倒れて動かなくなっているジークを確認するなり猛ダッシュで駆け寄った。
「ジーク君どうしたの!?もしかしてファルブに……!!」
カインが険しい顔つきで周囲を見渡す一方で、フィオナは視線を逸らして口笛を吹いていた。
「兎に角ユージーンを運ぼう。ティトレイ、手伝ってくれ」
「おうよ!」
「俺も手伝うぜ!」
ユージーンの重量をヴェイグとティトレイ、そしてブライトの三人で何とか持ち上げる。
「じゃあジーク君は僕が運ぶね」
カインがジークの脇の下に自分の肩を通していると、フィオナが一歩歩み寄った。
「わ、私も……手伝おうかしら」
「別に僕1人でも大丈夫だけど……何で?」
カインが心底怪しむような目付きで見上げてくるためフィオナは踏み出した一歩とは反対に一歩後ずさった。
「なっ何でも良いでしょ!良いから手伝わさせなさいよ!」
「そうでもしないと罪悪感が半端無いもんね〜」
「うるさい!」
ジンが後ろで冷やかすのに対してフィオナが怒鳴ると、カインは首を傾げた。
「まぁいいや。じゃあ反対側を頼むよ」
カインはジークの右側の脇に肩を入れており、左側が空いていた。
そこへフィオナが肩を入れ、同時に立ち上がると先に宿屋へ向かったヴェイグ達を追いかける。
* * *
アニカマルの宿屋は入り口にも中にも扉は無く吹き抜け状態となっていた。
ただ受け付けの隣に暖簾(のれん)があり、それをくぐると広い1室を客室とした部屋が一部屋あるだけだった。
リラックス効果があるのかお香も焚かれており、そんな中ジークとユージーンは同時に目を覚ました。
「ユージーン!」
「マオ……」
ユージーンが上体をゆっくりと起こすと、一目散にマオが抱きついた。
「心配かけたな」
「まったく、二度も死なれたらたまったもんじゃないわ」
ヒルダが腰に手をあて、溜息を吐く。
「マオも良かったね!」
ルルは微笑みながらマオを見守り、ほっとして緊張の糸が切れたのかブライト達もユージーンの周りで談笑を始める。
「……俺も気が付いたんだが」
そこで1人ポツーンと取り残されたジークが呟いた。
するとジークとユージーンの間にいたカインがジークの方へ振り返る。
「ジーク君は勝手に気絶しただけなんでしょ?本当に人騒がせなんだから」
カインは笑うと再びユージーンへ向き直った。
「……だよな。心配されるようなことでもねぇか」
逆に心配されても困る、と思いながらジークは自分の両手に視線を落とす。
すると、自分の背中に誰かの頭が当たった感触がした。
「心配したわよ……」
声はフィオナのものだった。
フィオナは頭をジークの背中に乗せたまま続ける。
「すごく心配したんだから……」
「……わるい」
ジークも姿勢を動かさずに応える。
「ジークが死んじゃうんじゃないかって思ったわ……」
「俺は死なねぇよ」
「だったら……」
フィオナは一層強く頭を押し付けてくる。
「だったら簡単に死にそうになってんじゃないわよ」
「あぁ……」
「水もらってきたよ〜」
そこへカイトが入ってくるとフィオナは咄嗟に正座して姿勢を正した。
「フィオナ、何で正座してるの?」
「こっ、このほうが落ち着くからよ!それより水ありがとう!」
フィオナはカイトが持っているお盆に並べられたコップの一つを取ると一気に飲み干した。
「それにしてもブライト、お前がモールス信号を使えたとはな」
ユージーンもカイトから水をもらいながら闇の空間での出来事を思い出していた。
フィオナの声を頼りに集まったのは良いが、その後は何もできないでいた。
そんな時にブライトからまわってきた連絡手段がモールス信号だった。
「モールス信号って?」
ルルが首を傾げる。
「モールス信号とはある一定のリズムを記号とし、それを言葉として相手に伝える信号のことだ。例えば短音と長音の二つを組み合わせることによりAという意味になる」
ルルの頭に疑問符が大量に浮かび上がる。
そこでヒルダがピ・ピーと口笛を吹いた。
「これでAとなるのよ」
「ふぇ〜」
「でもあの空間だと音が聞こえなかっただろ?いつのまにそんな信号出してたんだ?」
ティトレイが眉を八の字にして質問すると、ジンが溜息を吐いた。
ヴェイグがティトレイの肩を軽く叩く。
「あの空間で何回か叩かれただろう?あれがモールス信号だったんだ」
ブライトは頷いた。
「モールス信号の伝え方は音だけじゃねぇからな。光の点滅でだってできるし今回みたいに叩くことでも伝えることができるんだぜ?ただ、ヒルダやマオもモールス信号を知っているかどうか分からなかったから、かなりの賭けだったけどな」
「軍に入ると規律と一緒に覚えさせられるんだよね。あの時は無駄だと思ってたけど、ユージーンに言われてちゃんと覚えておいて良かったよ」
マオは後ろ髪をかきながら苦笑いした。
「ヒルダさんもですか?」
アニーはヒルダの方を見て訪ねるとヒルダは眉をピクリと動かした。
「何か引っかかるけど、ちゃんと覚えたわよ。当時私の教育係だったトーマから強制的にだったけどね」
ヒルダは黒い髪をかきあげる。
「それより私は軍にも入っていないブライトがモールス信号を知ってることのほうが意外だと思うんだけど?」
「お、俺か?俺は一応教師として一通り教えられるように幅広く知識を持っているべきだと思って勉強しただけだぜ?」
「だからってモールス信号は教師が教える範囲を超えていると思うけど」
「細かいことは良いじゃねぇか!それより、ファルブのフォルスが暴走して闇に飲み込まれた時、何か見なかったか?」
ブライトが全員に問いかけるとヴェイグが腕を組んだ。
「ファルブの過去……のようなものを見た」
「私も見たわ。多分同じだと思う」
フィオナが言うと、ユージーン以外の全員が頷いた。
「そうか……全員見たのか」
ユージーンが視線を落としながら言うと、全員の視線がユージーンに集中する。
「あれは実際にあったことなのか?ファルブの捏造とか幻想じゃねぇのか?」
ジークが質問すると、ユージーンは首を横に振った。
「あれは現実にあったことだ。そうは言ってもあの記憶を見るまでは俺も無意識のうちに忘れていたのだがな」
「ユージーン……」
アニーが心配そうに胸の前で拳を握る。
「ヴェイグ達には以前話したが俺はいくつもの戦場を駆けてきた。そしてワルトゥも俺のよき右腕として働いてくれていた。だが、とある抗争で俺たちは負ける一歩手前まで追い詰められたことがあったのだが、まさかその時のリーダーがファルブだったとはな……」
「ということは、爆弾を持ってきたあの男はワルトゥの暗示にかかってたんだね」
ジンが言うと、ユージーンは頷いた。
野営テントにいた何十人ものヒトを一瞬で焼き払った光景が脳裏に蘇る。
「暗示をかけるよう提案し実行したのはワルトゥだが、指示を出したのはこの俺だ。言い逃れをするつもりはない」
「そんな……」
アニーは胸の前で握った拳をさらに強く握り締める。
ユージーンはたとえ自分に直接責任がなくとも全ての責任を負おうとするヒトだということをアニーは知っている。
それはアニーが自分の父親を殺した犯人がユージーンだと迫った時にも同じように言い訳せずに認めていたから。
「僕がファルブの噂を聞いて初めて会った時さ、ファルブは歩けない状態だったんだ。それにアニカマルの人達からも嫌われてたみたいだし、いろいろ不思議だったんだけど今回のことでピースが埋まったよ。反抗勢力として戦っている間は英雄かもしれないけど、負けたら国に逆らった反逆者だもんね……」
カインは外に視線を向けながら言う。
カインとファルブが初めて出会った時、ファルブがアニカマルの人達から迫害を受けていたのなら、ファルブがこの村の住人を全滅させようとしていたことにも納得ができる。
「その魔物を産んでしまったのは俺だ。俺は大量殺人鬼と呼ばれても仕方の無いことをしてきた。お前達には俺に対して恐怖心を与えてしまうかもしれんが、この罪から逃れることは断じてしない」
ユージーンは言い切った。
「でも……」
そこへジークが立ち上がった。
「でも、ユージーンは罪って言うほど悪いことをしたのか?」
ジークはこちらを鋭い眼光で見つめてくるユージーンと目を合わせる。
「あんたは悪いことをしたって思ってんのかよ?軍の隊長として国の治安を守ろうとして戦ったんじゃねぇのか?」
「確かにお前の言うとおりだジーク。しかし、大量にヒトを殺したのもまた事実だ」
「それでもあんたは大切なモノを護ろうとしたんだ。そんで護ったんだよ。だから今もアニカマルはアニカマルのまま存在してるんだろうが」
そう、国という大きなモノを相手にすれば下手をすればアニカマルという村が一つ無くなっても不思議ではない。
「あんたの行いは……罪じゃない」
「……」
ユージーンは黙って全員の顔を見た。
ユージーンはユージーンの信念に基き罪を認めてきたが、ジークはジークで信念に基き護りたいモノを必死で守ろうともがいている。
そんな彼の言葉だからこそユージーンも言い返せずに、彼にしては珍しく迷っていた。
「あのね、ユージーン」
ルルが言葉を捜すように手をもじもじさせながら語りかけてきた。
「私にはよく分からないけど、ユージーンのやりたいようにやったら良いんじゃないかな?」
「ルル……」
ユージーンはルルの頭の上に手を乗せると、微笑んだ。
こんな小さな仲間に心配させて何をしてるんだと、バカバカしくなってきた。
「ファルブってさ、いつも打倒ユージーンって言ってて復讐というよりも勝つことに執着してるみたいなんだ。だから、次に会ったら全力で相手すればそれでファルブも満足だと思うんだ」
カインが笑いながら言うと、ユージーンは力強く頷いた。
「あぁそうだな。次は全身全霊をかけて挑ませてもらう!」
「そうですよユージーン。それに、私達はいつでもユージーンの味方ですからね」
アニーは嬉しそうに微笑み、ティトレイはリンゴにかじりつく。
「また闇の空間に引きづり込まれたら俺に任せな!」
「あー!!ティトレイ何1人だけ食べてるのさ!?ズルイよ〜!!」
マオが羨ましそうに指をさすがティトレイは構わずまた一口かぶりついた。
「み、みなさん!宿屋の店主さんがリンゴをくれたので、も、持ってきました!」
見るとニノンが両手の翼一杯にしてリンゴを抱えていた。
「美味しそう!私にもちょうだい!」
ルルがニノンに飛びつき、話は完全にリンゴへ持っていかれた。
〜続く〜
それを確認してから今まで我慢していたマオがふらつく足で躓きながらもユージーンに駆け寄る。
ユージーンの側ではアニーが既に応急手当をしていた。
「大丈夫よマオ。とりあえず一命は取り留めたわ。でも宿屋でちゃんと治療しないと安心できない状態なの」
「だったら俺が話をつけてきてやるよ」
「僕も行くよ!」
アニーの話を聞いたティトレイが申し出ると、カインと共に2人は宿屋へ走って行った。
「ファルブはどうなったんだ?消えたように見えたが、あれは死んだのか?」
ブライトはマオとヴェイグに訪ねると、マオが首を横に振った。
「ファルブのフォルス反応が遠ざかっているから、一応まだ生きてるみたい」
「てことは逃げたのか。あいつ、どんだけしぶといんだよ?」
ジークが言いながら歩み寄ってくる。
すると、猛スピードでダッシュしてきたフィオナが勢いはそのままで拳を振りかぶると、突き出された拳がジークの顔面にめり込んだ。
顔面にナックルをくらったジークはそのまま地面をバウンドしながら転がった。
「あんたが言うな!」
「フィオナさん怪我人を増やさないでください!!」
気絶して動かなくなったジークにアニーが慌てて駆け寄る。
「だ、だって……ジークが勝手に死にそうになるから……」
「フィオナ……ツッコミに力を入れすぎだ」
「ご、ごめんなさい……」
ヴェイグが溜息交じりに言うと、フィオナはばつが悪そうな顔をした。
「お〜い!話つけてきたぜ〜!」
そこへティトレイが手を振りながらこちらに走ってくる。
しかしその隣を走っていたカインは倒れて動かなくなっているジークを確認するなり猛ダッシュで駆け寄った。
「ジーク君どうしたの!?もしかしてファルブに……!!」
カインが険しい顔つきで周囲を見渡す一方で、フィオナは視線を逸らして口笛を吹いていた。
「兎に角ユージーンを運ぼう。ティトレイ、手伝ってくれ」
「おうよ!」
「俺も手伝うぜ!」
ユージーンの重量をヴェイグとティトレイ、そしてブライトの三人で何とか持ち上げる。
「じゃあジーク君は僕が運ぶね」
カインがジークの脇の下に自分の肩を通していると、フィオナが一歩歩み寄った。
「わ、私も……手伝おうかしら」
「別に僕1人でも大丈夫だけど……何で?」
カインが心底怪しむような目付きで見上げてくるためフィオナは踏み出した一歩とは反対に一歩後ずさった。
「なっ何でも良いでしょ!良いから手伝わさせなさいよ!」
「そうでもしないと罪悪感が半端無いもんね〜」
「うるさい!」
ジンが後ろで冷やかすのに対してフィオナが怒鳴ると、カインは首を傾げた。
「まぁいいや。じゃあ反対側を頼むよ」
カインはジークの右側の脇に肩を入れており、左側が空いていた。
そこへフィオナが肩を入れ、同時に立ち上がると先に宿屋へ向かったヴェイグ達を追いかける。
* * *
アニカマルの宿屋は入り口にも中にも扉は無く吹き抜け状態となっていた。
ただ受け付けの隣に暖簾(のれん)があり、それをくぐると広い1室を客室とした部屋が一部屋あるだけだった。
リラックス効果があるのかお香も焚かれており、そんな中ジークとユージーンは同時に目を覚ました。
「ユージーン!」
「マオ……」
ユージーンが上体をゆっくりと起こすと、一目散にマオが抱きついた。
「心配かけたな」
「まったく、二度も死なれたらたまったもんじゃないわ」
ヒルダが腰に手をあて、溜息を吐く。
「マオも良かったね!」
ルルは微笑みながらマオを見守り、ほっとして緊張の糸が切れたのかブライト達もユージーンの周りで談笑を始める。
「……俺も気が付いたんだが」
そこで1人ポツーンと取り残されたジークが呟いた。
するとジークとユージーンの間にいたカインがジークの方へ振り返る。
「ジーク君は勝手に気絶しただけなんでしょ?本当に人騒がせなんだから」
カインは笑うと再びユージーンへ向き直った。
「……だよな。心配されるようなことでもねぇか」
逆に心配されても困る、と思いながらジークは自分の両手に視線を落とす。
すると、自分の背中に誰かの頭が当たった感触がした。
「心配したわよ……」
声はフィオナのものだった。
フィオナは頭をジークの背中に乗せたまま続ける。
「すごく心配したんだから……」
「……わるい」
ジークも姿勢を動かさずに応える。
「ジークが死んじゃうんじゃないかって思ったわ……」
「俺は死なねぇよ」
「だったら……」
フィオナは一層強く頭を押し付けてくる。
「だったら簡単に死にそうになってんじゃないわよ」
「あぁ……」
「水もらってきたよ〜」
そこへカイトが入ってくるとフィオナは咄嗟に正座して姿勢を正した。
「フィオナ、何で正座してるの?」
「こっ、このほうが落ち着くからよ!それより水ありがとう!」
フィオナはカイトが持っているお盆に並べられたコップの一つを取ると一気に飲み干した。
「それにしてもブライト、お前がモールス信号を使えたとはな」
ユージーンもカイトから水をもらいながら闇の空間での出来事を思い出していた。
フィオナの声を頼りに集まったのは良いが、その後は何もできないでいた。
そんな時にブライトからまわってきた連絡手段がモールス信号だった。
「モールス信号って?」
ルルが首を傾げる。
「モールス信号とはある一定のリズムを記号とし、それを言葉として相手に伝える信号のことだ。例えば短音と長音の二つを組み合わせることによりAという意味になる」
ルルの頭に疑問符が大量に浮かび上がる。
そこでヒルダがピ・ピーと口笛を吹いた。
「これでAとなるのよ」
「ふぇ〜」
「でもあの空間だと音が聞こえなかっただろ?いつのまにそんな信号出してたんだ?」
ティトレイが眉を八の字にして質問すると、ジンが溜息を吐いた。
ヴェイグがティトレイの肩を軽く叩く。
「あの空間で何回か叩かれただろう?あれがモールス信号だったんだ」
ブライトは頷いた。
「モールス信号の伝え方は音だけじゃねぇからな。光の点滅でだってできるし今回みたいに叩くことでも伝えることができるんだぜ?ただ、ヒルダやマオもモールス信号を知っているかどうか分からなかったから、かなりの賭けだったけどな」
「軍に入ると規律と一緒に覚えさせられるんだよね。あの時は無駄だと思ってたけど、ユージーンに言われてちゃんと覚えておいて良かったよ」
マオは後ろ髪をかきながら苦笑いした。
「ヒルダさんもですか?」
アニーはヒルダの方を見て訪ねるとヒルダは眉をピクリと動かした。
「何か引っかかるけど、ちゃんと覚えたわよ。当時私の教育係だったトーマから強制的にだったけどね」
ヒルダは黒い髪をかきあげる。
「それより私は軍にも入っていないブライトがモールス信号を知ってることのほうが意外だと思うんだけど?」
「お、俺か?俺は一応教師として一通り教えられるように幅広く知識を持っているべきだと思って勉強しただけだぜ?」
「だからってモールス信号は教師が教える範囲を超えていると思うけど」
「細かいことは良いじゃねぇか!それより、ファルブのフォルスが暴走して闇に飲み込まれた時、何か見なかったか?」
ブライトが全員に問いかけるとヴェイグが腕を組んだ。
「ファルブの過去……のようなものを見た」
「私も見たわ。多分同じだと思う」
フィオナが言うと、ユージーン以外の全員が頷いた。
「そうか……全員見たのか」
ユージーンが視線を落としながら言うと、全員の視線がユージーンに集中する。
「あれは実際にあったことなのか?ファルブの捏造とか幻想じゃねぇのか?」
ジークが質問すると、ユージーンは首を横に振った。
「あれは現実にあったことだ。そうは言ってもあの記憶を見るまでは俺も無意識のうちに忘れていたのだがな」
「ユージーン……」
アニーが心配そうに胸の前で拳を握る。
「ヴェイグ達には以前話したが俺はいくつもの戦場を駆けてきた。そしてワルトゥも俺のよき右腕として働いてくれていた。だが、とある抗争で俺たちは負ける一歩手前まで追い詰められたことがあったのだが、まさかその時のリーダーがファルブだったとはな……」
「ということは、爆弾を持ってきたあの男はワルトゥの暗示にかかってたんだね」
ジンが言うと、ユージーンは頷いた。
野営テントにいた何十人ものヒトを一瞬で焼き払った光景が脳裏に蘇る。
「暗示をかけるよう提案し実行したのはワルトゥだが、指示を出したのはこの俺だ。言い逃れをするつもりはない」
「そんな……」
アニーは胸の前で握った拳をさらに強く握り締める。
ユージーンはたとえ自分に直接責任がなくとも全ての責任を負おうとするヒトだということをアニーは知っている。
それはアニーが自分の父親を殺した犯人がユージーンだと迫った時にも同じように言い訳せずに認めていたから。
「僕がファルブの噂を聞いて初めて会った時さ、ファルブは歩けない状態だったんだ。それにアニカマルの人達からも嫌われてたみたいだし、いろいろ不思議だったんだけど今回のことでピースが埋まったよ。反抗勢力として戦っている間は英雄かもしれないけど、負けたら国に逆らった反逆者だもんね……」
カインは外に視線を向けながら言う。
カインとファルブが初めて出会った時、ファルブがアニカマルの人達から迫害を受けていたのなら、ファルブがこの村の住人を全滅させようとしていたことにも納得ができる。
「その魔物を産んでしまったのは俺だ。俺は大量殺人鬼と呼ばれても仕方の無いことをしてきた。お前達には俺に対して恐怖心を与えてしまうかもしれんが、この罪から逃れることは断じてしない」
ユージーンは言い切った。
「でも……」
そこへジークが立ち上がった。
「でも、ユージーンは罪って言うほど悪いことをしたのか?」
ジークはこちらを鋭い眼光で見つめてくるユージーンと目を合わせる。
「あんたは悪いことをしたって思ってんのかよ?軍の隊長として国の治安を守ろうとして戦ったんじゃねぇのか?」
「確かにお前の言うとおりだジーク。しかし、大量にヒトを殺したのもまた事実だ」
「それでもあんたは大切なモノを護ろうとしたんだ。そんで護ったんだよ。だから今もアニカマルはアニカマルのまま存在してるんだろうが」
そう、国という大きなモノを相手にすれば下手をすればアニカマルという村が一つ無くなっても不思議ではない。
「あんたの行いは……罪じゃない」
「……」
ユージーンは黙って全員の顔を見た。
ユージーンはユージーンの信念に基き罪を認めてきたが、ジークはジークで信念に基き護りたいモノを必死で守ろうともがいている。
そんな彼の言葉だからこそユージーンも言い返せずに、彼にしては珍しく迷っていた。
「あのね、ユージーン」
ルルが言葉を捜すように手をもじもじさせながら語りかけてきた。
「私にはよく分からないけど、ユージーンのやりたいようにやったら良いんじゃないかな?」
「ルル……」
ユージーンはルルの頭の上に手を乗せると、微笑んだ。
こんな小さな仲間に心配させて何をしてるんだと、バカバカしくなってきた。
「ファルブってさ、いつも打倒ユージーンって言ってて復讐というよりも勝つことに執着してるみたいなんだ。だから、次に会ったら全力で相手すればそれでファルブも満足だと思うんだ」
カインが笑いながら言うと、ユージーンは力強く頷いた。
「あぁそうだな。次は全身全霊をかけて挑ませてもらう!」
「そうですよユージーン。それに、私達はいつでもユージーンの味方ですからね」
アニーは嬉しそうに微笑み、ティトレイはリンゴにかじりつく。
「また闇の空間に引きづり込まれたら俺に任せな!」
「あー!!ティトレイ何1人だけ食べてるのさ!?ズルイよ〜!!」
マオが羨ましそうに指をさすがティトレイは構わずまた一口かぶりついた。
「み、みなさん!宿屋の店主さんがリンゴをくれたので、も、持ってきました!」
見るとニノンが両手の翼一杯にしてリンゴを抱えていた。
「美味しそう!私にもちょうだい!」
ルルがニノンに飛びつき、話は完全にリンゴへ持っていかれた。
〜続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート56】
takeshi「ども〜!録画したアニメのCMカットができることを知ってから編集作業に終われてたtakeshiです」
チャリティ「あの安物BD、そんなこともできたのね」
takeshi「ディスク内では削除できませんがね……。ただ夏は夏で結構残しておきたいアニメが多かったので編集大変でした。ディスク、15枚ぐらいは使いましたよ……」
チャリティ「多いわね……」
takeshi「とりあえず今期のアニメはコックリさんがオススメですね!あと狼少女と黒王子もなかなか良いのでこの2作品は既に永久保存決定です!」
チャリティ「そういえばもうあんたが新アニメの感想を言う季節になったのね〜。ホント、季節が過ぎるのが速いわ」
takeshi「ではアニメの話ついでにここのところ全然していなかった映画の話でもしましょうか」
チャリティ「最近してなかったら見てないんだと思ってたけど見てたの?」
takeshi「どこまでここで話したのか忘れてしまったのですが先々月はゴジラ、先月は剣心と頭文字Dを見てきました。……剣心は先々月だったかな?」
チャリティ「ゴジラと剣心の感想は私聞いたような気がするわよ?」
takeshi「本当ですか?先々月って8月ですよね?確かお盆月間だったからゲスト呼んでわちゃわちゃしてて観想とか言う暇無かったような気がするのですが……」
チャリティ「あの時は楽しかったわ♪」
takeshi「チャリティさんはね……」
チャリティ「不安ならこの場でまとめて言っちゃえば?」
takeshi「まず剣心なのですがアクションすごかったです!次にゴジラなのですが流石ハリウッドなだけあってお金かかってました!しかもストーリーやら何やら日本のゴジラ準拠という感じで小さい頃からゴジラを見てきた人間としては非常に満足でした!しかも光線を吐く時、胸が膨らんでいかにも溜めていることが分かるのも細かかったです!そして頭文字Dなのですが映画館で聞くエンジン音は半端無いです!なんかもうすっごい迫力でした!ただ気になったのがヒロイン、あんなにビッチ臭したっけな〜?というのと主人公の親友のかませ感が物足りないというところです。記憶が曖昧なのですが確かヒロインはビッチじゃなかった気がするんですよね」
チャリティ「はいそこまで!」
takeshi「剣心アクションがすごいとしか言ってない……」
チャリティ「2か月分の感想をそのまま書いたらそれこそとんでもない量になっちゃうでしょうが」
takeshi「そうですね……」
チャリティ「本編の話とかはしなくていいわけ?」
takeshi「なにかあります?」
チャリティ「ニノンいらないんじゃない?とか」
takeshi「いりますよ!!確かに今は全然出番ありませんし、何で付いてこさせたの?って思ってる人もいるかもしれませんが、まだ半分もいってませんから!」
チャリティ「でもそろそろ半分いくわよ?」
takeshi「だからちょっと待っててください!ちゃんとニノンはニノンでいる意味がちゃんとありますので!あれですよ?急かしてばっかりで忍耐力がないのは最近の若者の欠点ですよ!」
チャリティ「あんた誰よ……?」
takeshi「とにかく急いでも何も良いことはありませんから!早いと嫌われますよ?」
チャリティ「何の話!?」
takeshi「あ〜でも女性は早いほうが……」
チャリティ「昔は私のほうが速かったけど、最近はジークのほうが速いかもしれないわね」
takeshi「えっ?」
チャリティ「え?」
takeshi「しかしオマケがないとスースーしますね」
チャリティ「オマケといえばあの終わり方何なの?打ち切りなの?」
takeshi「打ち切りじゃないですよ!エヴァだって終わり方はあんなんでしたが、打ち切りというわけではなかったじゃないですか」
チャリティ「でも確かにオマケがないとなんか切ないわね」
takeshi「そこに愛しさと心強さがあると良いですね!」
チャリティ「さすがに心強さは無いわ……」
takeshi「さてさて、モンハン4Gの発売日も近いことですし、今月中にアニカマルを脱出したいですね!」
チャリティ「やらなきゃ良いのに」
takeshi「それは無理ですよ。ではまた〜」
takeshi「ども〜!録画したアニメのCMカットができることを知ってから編集作業に終われてたtakeshiです」
チャリティ「あの安物BD、そんなこともできたのね」
takeshi「ディスク内では削除できませんがね……。ただ夏は夏で結構残しておきたいアニメが多かったので編集大変でした。ディスク、15枚ぐらいは使いましたよ……」
チャリティ「多いわね……」
takeshi「とりあえず今期のアニメはコックリさんがオススメですね!あと狼少女と黒王子もなかなか良いのでこの2作品は既に永久保存決定です!」
チャリティ「そういえばもうあんたが新アニメの感想を言う季節になったのね〜。ホント、季節が過ぎるのが速いわ」
takeshi「ではアニメの話ついでにここのところ全然していなかった映画の話でもしましょうか」
チャリティ「最近してなかったら見てないんだと思ってたけど見てたの?」
takeshi「どこまでここで話したのか忘れてしまったのですが先々月はゴジラ、先月は剣心と頭文字Dを見てきました。……剣心は先々月だったかな?」
チャリティ「ゴジラと剣心の感想は私聞いたような気がするわよ?」
takeshi「本当ですか?先々月って8月ですよね?確かお盆月間だったからゲスト呼んでわちゃわちゃしてて観想とか言う暇無かったような気がするのですが……」
チャリティ「あの時は楽しかったわ♪」
takeshi「チャリティさんはね……」
チャリティ「不安ならこの場でまとめて言っちゃえば?」
takeshi「まず剣心なのですがアクションすごかったです!次にゴジラなのですが流石ハリウッドなだけあってお金かかってました!しかもストーリーやら何やら日本のゴジラ準拠という感じで小さい頃からゴジラを見てきた人間としては非常に満足でした!しかも光線を吐く時、胸が膨らんでいかにも溜めていることが分かるのも細かかったです!そして頭文字Dなのですが映画館で聞くエンジン音は半端無いです!なんかもうすっごい迫力でした!ただ気になったのがヒロイン、あんなにビッチ臭したっけな〜?というのと主人公の親友のかませ感が物足りないというところです。記憶が曖昧なのですが確かヒロインはビッチじゃなかった気がするんですよね」
チャリティ「はいそこまで!」
takeshi「剣心アクションがすごいとしか言ってない……」
チャリティ「2か月分の感想をそのまま書いたらそれこそとんでもない量になっちゃうでしょうが」
takeshi「そうですね……」
チャリティ「本編の話とかはしなくていいわけ?」
takeshi「なにかあります?」
チャリティ「ニノンいらないんじゃない?とか」
takeshi「いりますよ!!確かに今は全然出番ありませんし、何で付いてこさせたの?って思ってる人もいるかもしれませんが、まだ半分もいってませんから!」
チャリティ「でもそろそろ半分いくわよ?」
takeshi「だからちょっと待っててください!ちゃんとニノンはニノンでいる意味がちゃんとありますので!あれですよ?急かしてばっかりで忍耐力がないのは最近の若者の欠点ですよ!」
チャリティ「あんた誰よ……?」
takeshi「とにかく急いでも何も良いことはありませんから!早いと嫌われますよ?」
チャリティ「何の話!?」
takeshi「あ〜でも女性は早いほうが……」
チャリティ「昔は私のほうが速かったけど、最近はジークのほうが速いかもしれないわね」
takeshi「えっ?」
チャリティ「え?」
takeshi「しかしオマケがないとスースーしますね」
チャリティ「オマケといえばあの終わり方何なの?打ち切りなの?」
takeshi「打ち切りじゃないですよ!エヴァだって終わり方はあんなんでしたが、打ち切りというわけではなかったじゃないですか」
チャリティ「でも確かにオマケがないとなんか切ないわね」
takeshi「そこに愛しさと心強さがあると良いですね!」
チャリティ「さすがに心強さは無いわ……」
takeshi「さてさて、モンハン4Gの発売日も近いことですし、今月中にアニカマルを脱出したいですね!」
チャリティ「やらなきゃ良いのに」
takeshi「それは無理ですよ。ではまた〜」