第79話『クレアとフィオナ』
ジークはこう見えても13年間フリィース家の食卓を支えてきた男である。
料理のさしすせそは心得ているし包丁捌きにも自信はあった。
おかげでラキアとクレアの足を引っ張ることはなく、2人もジークの腕前に目を見張る程だった。
しかしそれはあくまでもテクニックの話。
ジークにとって今立っている場所は何時も立っている場所とは別次元だった。
これが本当の戦場と言うのならジークがやっていたのはただのチャンバラにすぎない。
そう思えるほど別世界だった。
計算された手順に一切の無駄の無い動き、自然の素材の味をそのまま生かそうと味付けは最小限、無駄な時間を省くための時短テクニック、だがそこには食べるヒトへの配慮が必ず施される。
やはり、13年という年月を積み重ねても男の料理と女の料理では違いがはっきりと出てしまう。
所詮男の料理は味やロマンを突き詰めていっただけだ。
確かに美味しいかもしれない。
だが食材食器調理器具に拘り、手間暇をかければ誰でも美味しい料理は作れる。
だが彼女等はその先を見据えている。
ジークが13年かけても見えなかった景色を彼女達は当たり前のように見ていた。
「完敗だ……」
「えぇっと〜……ジークは何と戦っていたの?」
料理をテーブルに並べ終わったクレアが跪(ひざまず)いてるジークを見て苦笑いをこぼす。
と、そこへラキアが歩み寄り膝を折ってジークに目線の高さを合わせると、ポンと右手をジークの肩に置いた。
「料理は奥が深い。勉強したくなったらいつでもおいで」
ジークは顔をあげ、ラキアを見つめる。
「せ、先生……」
「呼んだか?」
壁に貼り付けてあったヴェイグが昔描いた絵を眺めていたブライトが振り返ると、ジークが物凄い形相で睨んでいた。
「あ、お呼びでねぇと……」
「言っておくけど私のレッスンは厳しいよ!?免許皆伝まで最低3年は覚悟しな!」
「はい!」
そんな会話を下の階で聞いていたルルがジンの腕を揺する。
「ジ、ジン兄さん!ジーク兄さん帰って来なくなっちゃうの!?」
「は?いや、あんなのただのノリだろ。そもそもジーク兄さんがルルを放っておけるわけないじゃん」
「そんなの分かんないもん……」
俯きながら頬を膨らませるルルを見てジンは、今までのジークの様子を見て何故分からないのか不思議でしょうがなかった。
「そんなことよりご飯みたいだしさ、俺達も行こう」
「うん」
ジンとルルが上に戻ってから暫くして全員が集まった。
と、思われたが1人足りない人物がいた。
「フィオナがいねぇな」
ジークの言うとおり、フィオナの姿が無かった。
「珍しいですね、フィオナさんがご飯の時間になっても来ないなんて……」
アニーが頬に手を当てながら失礼なことを言っていると隣にいるニノンが羽をパタパタさせた。
「そ、そういえばさっき、村の奥へ歩いていくのを見ました!」
「集会所か」
ヴェイグの一言でジークの脳裏にフィオナにビンタされた時のことを思い出した。
確かあの場所は廃虚になった状態ではあったが集会所の前だった。
「探してくる」
ジークが家から出ようとすると、不意に後ろから腕を掴まれた。
「待って。私が探しにいくわ」
振り向くと腕を掴んでいたのはクレアだった。
「調度フィオナさんとは話たいこともあったの。だから、私に任せてくれないかしら?」
「あ、あぁ……」
ジークは渋々了承するとクレアはニコリと笑みを浮かべ、外へ走って行った。
* * *
地元民からは集会所と呼ばれている木造の教会のような建物の扉をクレアは開くと、中にフィオナはいた。
「フィオナさん、ごはんできましたよ」
クレアが歩み寄りながら言うと、フィオナはゆっくりと振り返った。
「クレア……ありがとう、すぐに行くわ」
「その前に、ちょっとお話しませんか?」
「え?」
クレアが笑みを浮かべるのに対してフィオナは一瞬戸惑う。
が、すぐに頷いた。
「別に良いけど……でも何で今なの?」
「だって折角の食事なのに悩み事抱えてたら美味しさが半減しちゃうじゃないですか。だから食べる前にすっきりしてもらいたいな〜って思ったんです」
フィオナは相変わらず笑みを浮かべているクレアの顔を見て目を見開いた。
彼女とは今回が初対面のようなものだ。
にもかかわらず心情を見抜かれている。
「フィオナが悩むとしたらやっぱり……ジークのことかしら?」
クレアは人差し指を下唇に当て、視線を斜め上に向け独り言のように呟く。
「なっ、何で分かるの!?クレアって能力者じゃないのよね!?」
フィオナはあまりの衝撃に一歩後ずさったが、クレアは再び笑みを浮かべる。
「ふふふっ、私ヒトの表情を読むのにはちょっと自信があるの。誰かさんのおかげでね」
「クレアも苦労したのね……」
フィオナはヴェイグのことを思い出しながら苦笑いするもクレアは「そんなことはなかったわよ?」と、キョトンとしていた。
「ヴェイグとクレアが羨ましい……。以心伝心って感じで何も言わなくても通じ合ってるのが誰がみても分かるもん」
「そうかしら?」
クレアは首を傾げる。
「ねぇクレア。もし、もしもなんだけど、今まで通じ合ってたのに突然相手の考えてることが分からなくなったら、クレアならどうする?分かってもらってると思ってたのに、何時の間にかそれは勘違いに変わってたら……」
フィオナは拳をぎゅっと握りしめる。
声が震えてしまい、これ以上話そうしても声が消えてしまう。
一方クレアは頬に片手を当て、「そうね〜」と思考を巡らせる。
「私だったら、泣いちゃうかもしれないわね」
「ク、クレアでも泣くことなんてあるの!?」
「私だって泣くことくらいあるわ?」
クレアは表情はそのままで続ける。
「たくさん泣いて、たくさん食べて、その後ちゃんと自分が納得するまで話をすると思うわ。まずは心が満たされないと何もできないもの」
「心……」
フィオナは最近ずっとざわついている自分の胸に手を当てる。
「でもみんながみんな話し合いで解決できるわけではないわ。言葉足らずで全部話してくれないヒトだっているだろうし、本人に聞かれたくない事だってあるものね」
最後は悪戯っぽくクレアは笑いながら言うが今度は逆にフィオナがキョトンとした。
「さっきヴェイグから聞いたのだけど、フィオナのフォルスは『声』なんですってね!とっても素敵なフォルスだと思うわ♪」
「あ、ありがとう……」
「そのフォルスがあれば言葉にできない想いも伝えられるのかしら?」
「それができたら苦労はしないわ」
フィオナが視線を落としながら言った言葉を聞いて、わざとらしく頬に手を当てて悩む振りをしていたクレアがニヤリと笑みを浮かべた。
「なるほどね、ジークに『声』が届かないから、それで悩んでいたのね?」
「なぁっ!?ち、ちが……」
戸惑うフィオナにクレアが真正面から瞳を見据える。
「違うの?」
「……違わない」
フィオナは諦めたかのように脱力した。
「降参よ、さすがクレアね。ヴェイグ達から聞いてた通りだわ」
「お褒めに預かり光栄です♪」
フィオナはニコリと笑みを浮かべてから今度は真剣な表情に切り替わる。
「今フィオナの『声』はヴェイグ達には聞こえているのよね?」
「うん……そうみたい」
「ヴェイグ達にはどうやって伝えているの?」
フィオナは首を横に振る。
「分からない。いつも無意識に使ってるから」
「自分から使おうとしたことは?」
フィオナは記憶を遡ってみる。
「そういえばない……かも」
それを聞いてクレアは胸の前で手をポンと叩いた。
「それだわ!フォルスのことはいまいち分からないのだけど、使おうと意識しないと使えなくて当然じゃないかしら?想いだって伝えようとしないと伝わらないわ!実際の声だって無意識に喉から出してるけど、意識して出そうとしないと音にはならないでしょ?」
フィオナは再び目を見開き、自分の両手を見つめた。
「た、確かに、クレアの言うとおりかも……!!」
視界にかかっていたモヤが少し晴れた気がした。
だが、完全には晴れていない。
「でもどうやって……今まで自分から使おうとしたことなんて……」
言いかけて、フィオナの脳裏に記憶が浮上してきた。
一度だけあった。
もう遠い昔のように感じるが1人でギュナルスを追い掛けていた時、誰かに助けを求めるため『声』を送り続けた。
結果、応えてくれたのが彼ではなかったか。
だが先程アニカマルでファルブと戦った後、本当にジークに『声』が届いていないのか偶然ではあるが能動的に試してみた。
だが、届かなかった。
「もしかして……何かが足りない……?」
フィオナが指を下唇に当てながら呟くと、同様に考え込んでいたクレアが何か閃いたのか閉じていた瞳を見開いた。
「歌とかどうかしら!?」
「う、歌?」
「そう、歌よ!昔のヒトは詠で想いを伝えたというわ。だから詩に想いを込めて歌に乗せたら届くんじゃないかしら!?」
フィオナの手を取り、自分のことのように喜ぶクレアを見て気持ちが軽くなった気がした。
そんなクレアにつられてフィオナも笑みをこぼす。
「そうね、やってみるわ!そして意地でもアイツに私の気持ちを伝えてやるわ!」
「ふふふっ、その意気よフィオナ!なんだかやっとフィオナに会えた気がするわ」
「ありがとう、クレア」
フィオナは暖かく自分より少し小さい両手を強く握りしめる。
「それじゃ、戻りましょうか。きっとヴェイグ達お腹を空かせて待ってるわ」
「先に全部食べられてなきゃ良いけど……」
悩みが解決した途端に食事の心配をするフィオナにクレアは笑みを浮かべながら家へと戻る。
* * *
家に戻ると食事はきちんと残っており、フィオナが戻ってきたところでようやく全員食べ始めた。
フィオナも悩みが吹き飛んだおかげか食欲全快で通常運転に戻っていた。
「しかし今日はよく食うな」
ジークは空になった皿をさげつつフィオナに視線を向けるとフィオナは一度口の中の物を飲み込んだ。
「まずは心を満たさないといけないのよ!」
「はぁ?」
ジークは眉をハの字に曲げながらも食器を台所へ運ぶ。
すると突然、背後からゴンッという鈍い音が響いた。
ジークの後ろにそんな音を出すようなものはテーブルしかなく、振り返ってみる。
すると、フィオナとヒルダの間にある隙間からテーブルの下でタンコブを作っているナイラの姿が見えた。
「何の音?」
フィオナがイスに手をつき身を屈ませテーブルの下を覗く。
すると涙目で頭頂部をさするナイラと目が合った。
「今日は何でピンクじゃなくて白なの?つまらない」
開口一番のナイラの台詞を聞いてフィオナの顔が一瞬で耳まで真っ赤に染まる。
「沈めぇ!!」
フィオナはイスに座りながら蹴り上げるとナイラの鳩尾にクリーンヒットし、ナイラは激痛にもがき苦しみ転がりながらテーブルの下から出てきた。
「わ、私に痛恨の一撃を入れるとは……剣に勧誘してあげてもいい」
「ふん!伊達に満たされてないのよっ」
四つん這いで見上げるナイラに対してフィオナは偉そうに胸を張る。
「それで?今回は何の用?まさかフィオナのパンツを見にきたわけじゃないんでしょ?」
ヒルダがフィオナの隣に立つ。
「そうだった」
ナイラも本来の用事を思い出したのか服の誇りを落としながら立ち上がる。
「ユリスの居場所が分かった」
「それは本当か!?」
ヴェイグが確認するように問うのと同時に一瞬にして空気が張り詰める。
〜続く〜
料理のさしすせそは心得ているし包丁捌きにも自信はあった。
おかげでラキアとクレアの足を引っ張ることはなく、2人もジークの腕前に目を見張る程だった。
しかしそれはあくまでもテクニックの話。
ジークにとって今立っている場所は何時も立っている場所とは別次元だった。
これが本当の戦場と言うのならジークがやっていたのはただのチャンバラにすぎない。
そう思えるほど別世界だった。
計算された手順に一切の無駄の無い動き、自然の素材の味をそのまま生かそうと味付けは最小限、無駄な時間を省くための時短テクニック、だがそこには食べるヒトへの配慮が必ず施される。
やはり、13年という年月を積み重ねても男の料理と女の料理では違いがはっきりと出てしまう。
所詮男の料理は味やロマンを突き詰めていっただけだ。
確かに美味しいかもしれない。
だが食材食器調理器具に拘り、手間暇をかければ誰でも美味しい料理は作れる。
だが彼女等はその先を見据えている。
ジークが13年かけても見えなかった景色を彼女達は当たり前のように見ていた。
「完敗だ……」
「えぇっと〜……ジークは何と戦っていたの?」
料理をテーブルに並べ終わったクレアが跪(ひざまず)いてるジークを見て苦笑いをこぼす。
と、そこへラキアが歩み寄り膝を折ってジークに目線の高さを合わせると、ポンと右手をジークの肩に置いた。
「料理は奥が深い。勉強したくなったらいつでもおいで」
ジークは顔をあげ、ラキアを見つめる。
「せ、先生……」
「呼んだか?」
壁に貼り付けてあったヴェイグが昔描いた絵を眺めていたブライトが振り返ると、ジークが物凄い形相で睨んでいた。
「あ、お呼びでねぇと……」
「言っておくけど私のレッスンは厳しいよ!?免許皆伝まで最低3年は覚悟しな!」
「はい!」
そんな会話を下の階で聞いていたルルがジンの腕を揺する。
「ジ、ジン兄さん!ジーク兄さん帰って来なくなっちゃうの!?」
「は?いや、あんなのただのノリだろ。そもそもジーク兄さんがルルを放っておけるわけないじゃん」
「そんなの分かんないもん……」
俯きながら頬を膨らませるルルを見てジンは、今までのジークの様子を見て何故分からないのか不思議でしょうがなかった。
「そんなことよりご飯みたいだしさ、俺達も行こう」
「うん」
ジンとルルが上に戻ってから暫くして全員が集まった。
と、思われたが1人足りない人物がいた。
「フィオナがいねぇな」
ジークの言うとおり、フィオナの姿が無かった。
「珍しいですね、フィオナさんがご飯の時間になっても来ないなんて……」
アニーが頬に手を当てながら失礼なことを言っていると隣にいるニノンが羽をパタパタさせた。
「そ、そういえばさっき、村の奥へ歩いていくのを見ました!」
「集会所か」
ヴェイグの一言でジークの脳裏にフィオナにビンタされた時のことを思い出した。
確かあの場所は廃虚になった状態ではあったが集会所の前だった。
「探してくる」
ジークが家から出ようとすると、不意に後ろから腕を掴まれた。
「待って。私が探しにいくわ」
振り向くと腕を掴んでいたのはクレアだった。
「調度フィオナさんとは話たいこともあったの。だから、私に任せてくれないかしら?」
「あ、あぁ……」
ジークは渋々了承するとクレアはニコリと笑みを浮かべ、外へ走って行った。
* * *
地元民からは集会所と呼ばれている木造の教会のような建物の扉をクレアは開くと、中にフィオナはいた。
「フィオナさん、ごはんできましたよ」
クレアが歩み寄りながら言うと、フィオナはゆっくりと振り返った。
「クレア……ありがとう、すぐに行くわ」
「その前に、ちょっとお話しませんか?」
「え?」
クレアが笑みを浮かべるのに対してフィオナは一瞬戸惑う。
が、すぐに頷いた。
「別に良いけど……でも何で今なの?」
「だって折角の食事なのに悩み事抱えてたら美味しさが半減しちゃうじゃないですか。だから食べる前にすっきりしてもらいたいな〜って思ったんです」
フィオナは相変わらず笑みを浮かべているクレアの顔を見て目を見開いた。
彼女とは今回が初対面のようなものだ。
にもかかわらず心情を見抜かれている。
「フィオナが悩むとしたらやっぱり……ジークのことかしら?」
クレアは人差し指を下唇に当て、視線を斜め上に向け独り言のように呟く。
「なっ、何で分かるの!?クレアって能力者じゃないのよね!?」
フィオナはあまりの衝撃に一歩後ずさったが、クレアは再び笑みを浮かべる。
「ふふふっ、私ヒトの表情を読むのにはちょっと自信があるの。誰かさんのおかげでね」
「クレアも苦労したのね……」
フィオナはヴェイグのことを思い出しながら苦笑いするもクレアは「そんなことはなかったわよ?」と、キョトンとしていた。
「ヴェイグとクレアが羨ましい……。以心伝心って感じで何も言わなくても通じ合ってるのが誰がみても分かるもん」
「そうかしら?」
クレアは首を傾げる。
「ねぇクレア。もし、もしもなんだけど、今まで通じ合ってたのに突然相手の考えてることが分からなくなったら、クレアならどうする?分かってもらってると思ってたのに、何時の間にかそれは勘違いに変わってたら……」
フィオナは拳をぎゅっと握りしめる。
声が震えてしまい、これ以上話そうしても声が消えてしまう。
一方クレアは頬に片手を当て、「そうね〜」と思考を巡らせる。
「私だったら、泣いちゃうかもしれないわね」
「ク、クレアでも泣くことなんてあるの!?」
「私だって泣くことくらいあるわ?」
クレアは表情はそのままで続ける。
「たくさん泣いて、たくさん食べて、その後ちゃんと自分が納得するまで話をすると思うわ。まずは心が満たされないと何もできないもの」
「心……」
フィオナは最近ずっとざわついている自分の胸に手を当てる。
「でもみんながみんな話し合いで解決できるわけではないわ。言葉足らずで全部話してくれないヒトだっているだろうし、本人に聞かれたくない事だってあるものね」
最後は悪戯っぽくクレアは笑いながら言うが今度は逆にフィオナがキョトンとした。
「さっきヴェイグから聞いたのだけど、フィオナのフォルスは『声』なんですってね!とっても素敵なフォルスだと思うわ♪」
「あ、ありがとう……」
「そのフォルスがあれば言葉にできない想いも伝えられるのかしら?」
「それができたら苦労はしないわ」
フィオナが視線を落としながら言った言葉を聞いて、わざとらしく頬に手を当てて悩む振りをしていたクレアがニヤリと笑みを浮かべた。
「なるほどね、ジークに『声』が届かないから、それで悩んでいたのね?」
「なぁっ!?ち、ちが……」
戸惑うフィオナにクレアが真正面から瞳を見据える。
「違うの?」
「……違わない」
フィオナは諦めたかのように脱力した。
「降参よ、さすがクレアね。ヴェイグ達から聞いてた通りだわ」
「お褒めに預かり光栄です♪」
フィオナはニコリと笑みを浮かべてから今度は真剣な表情に切り替わる。
「今フィオナの『声』はヴェイグ達には聞こえているのよね?」
「うん……そうみたい」
「ヴェイグ達にはどうやって伝えているの?」
フィオナは首を横に振る。
「分からない。いつも無意識に使ってるから」
「自分から使おうとしたことは?」
フィオナは記憶を遡ってみる。
「そういえばない……かも」
それを聞いてクレアは胸の前で手をポンと叩いた。
「それだわ!フォルスのことはいまいち分からないのだけど、使おうと意識しないと使えなくて当然じゃないかしら?想いだって伝えようとしないと伝わらないわ!実際の声だって無意識に喉から出してるけど、意識して出そうとしないと音にはならないでしょ?」
フィオナは再び目を見開き、自分の両手を見つめた。
「た、確かに、クレアの言うとおりかも……!!」
視界にかかっていたモヤが少し晴れた気がした。
だが、完全には晴れていない。
「でもどうやって……今まで自分から使おうとしたことなんて……」
言いかけて、フィオナの脳裏に記憶が浮上してきた。
一度だけあった。
もう遠い昔のように感じるが1人でギュナルスを追い掛けていた時、誰かに助けを求めるため『声』を送り続けた。
結果、応えてくれたのが彼ではなかったか。
だが先程アニカマルでファルブと戦った後、本当にジークに『声』が届いていないのか偶然ではあるが能動的に試してみた。
だが、届かなかった。
「もしかして……何かが足りない……?」
フィオナが指を下唇に当てながら呟くと、同様に考え込んでいたクレアが何か閃いたのか閉じていた瞳を見開いた。
「歌とかどうかしら!?」
「う、歌?」
「そう、歌よ!昔のヒトは詠で想いを伝えたというわ。だから詩に想いを込めて歌に乗せたら届くんじゃないかしら!?」
フィオナの手を取り、自分のことのように喜ぶクレアを見て気持ちが軽くなった気がした。
そんなクレアにつられてフィオナも笑みをこぼす。
「そうね、やってみるわ!そして意地でもアイツに私の気持ちを伝えてやるわ!」
「ふふふっ、その意気よフィオナ!なんだかやっとフィオナに会えた気がするわ」
「ありがとう、クレア」
フィオナは暖かく自分より少し小さい両手を強く握りしめる。
「それじゃ、戻りましょうか。きっとヴェイグ達お腹を空かせて待ってるわ」
「先に全部食べられてなきゃ良いけど……」
悩みが解決した途端に食事の心配をするフィオナにクレアは笑みを浮かべながら家へと戻る。
* * *
家に戻ると食事はきちんと残っており、フィオナが戻ってきたところでようやく全員食べ始めた。
フィオナも悩みが吹き飛んだおかげか食欲全快で通常運転に戻っていた。
「しかし今日はよく食うな」
ジークは空になった皿をさげつつフィオナに視線を向けるとフィオナは一度口の中の物を飲み込んだ。
「まずは心を満たさないといけないのよ!」
「はぁ?」
ジークは眉をハの字に曲げながらも食器を台所へ運ぶ。
すると突然、背後からゴンッという鈍い音が響いた。
ジークの後ろにそんな音を出すようなものはテーブルしかなく、振り返ってみる。
すると、フィオナとヒルダの間にある隙間からテーブルの下でタンコブを作っているナイラの姿が見えた。
「何の音?」
フィオナがイスに手をつき身を屈ませテーブルの下を覗く。
すると涙目で頭頂部をさするナイラと目が合った。
「今日は何でピンクじゃなくて白なの?つまらない」
開口一番のナイラの台詞を聞いてフィオナの顔が一瞬で耳まで真っ赤に染まる。
「沈めぇ!!」
フィオナはイスに座りながら蹴り上げるとナイラの鳩尾にクリーンヒットし、ナイラは激痛にもがき苦しみ転がりながらテーブルの下から出てきた。
「わ、私に痛恨の一撃を入れるとは……剣に勧誘してあげてもいい」
「ふん!伊達に満たされてないのよっ」
四つん這いで見上げるナイラに対してフィオナは偉そうに胸を張る。
「それで?今回は何の用?まさかフィオナのパンツを見にきたわけじゃないんでしょ?」
ヒルダがフィオナの隣に立つ。
「そうだった」
ナイラも本来の用事を思い出したのか服の誇りを落としながら立ち上がる。
「ユリスの居場所が分かった」
「それは本当か!?」
ヴェイグが確認するように問うのと同時に一瞬にして空気が張り詰める。
〜続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート59】
チャリティ「あ〜調子悪いわ〜」
takeshi「ちょっとチャリティさん、本編が良い感じで切れたんですから余韻をぶち壊さないでください」
チャリティ「そんなこと言ったって新月なんだからしょうがないでしょ?」
takeshi「あの、念のために訊きますが、これ連続更新だってこと覚えてます?さっきまでピンピンしてましたよね?」
チャリティ「いや〜これはダメね。全ッ然やる気出ない。熱とかある感じするし」
takeshi「それはさっきチャリティさんが「フィオナの下着私も見たい!」とか散々騒いでた所為じゃないですか?」
チャリティ「あっ、これ本当にダメなやつだわ。もう本当無理。ここまで力が出なくなるとは思わなかったわ」
takeshi「ナイラが言ってましたけどフォルスが不安定になるだけでパワーにはなんら影響はありませんよ?」
チャリティ「そんなの分かってるんだゾ!キャハッ☆」
takeshi「それは精神が不安定になってるだけです……。病院行きます?」
チャリティ「さ!今回も張り切って楽談やりましょうか!」
takeshi「前振り今までで一番長かったかもしれませんね……」
チャリティ「今回の冒頭、モノローグ長すぎじゃない?」
takeshi「そうですか?」
チャリティ「最早物語変わってるわよ」
takeshi「サブイベントなんですし、たまには良いじゃないですか!」
チャリティ「後さ、前回書いてあったけどスールズって山に囲まれてるのよね?」
takeshi「そうですよ?」
チャリティ「第1部の時ノルゼンからスールズまで漆黒の翼の船で乗りこんで来たと思うんだけど、どこに船を着けたの?山に囲まれてるんだから海からの進入はできないはずよね?」
takeshi「アニカマルの時もそうだったのですが、第1部が遠い昔の記憶すぎて当時何を考えていたのかあまり覚えていないんですよね……。当時は何でカレーズまで通ったのにデスガロ熱に触れなかったのか分かりませんし、よくよく思い出してみると矛盾点とか盛り沢山なんです」
チャリティ「じゃあ第1部の時は山を無かったことにして上陸してきたの?」
takeshi「今ワールドマップを確認した所ですね、ありましたよ橋が!」
チャリティ「橋?」
takeshi「私は最初、漆黒の翼が爆破したエトレー橋に船をつけてそこから上陸したと思ったのですが、その付近にはヴェイグ達がゲーム本編で始めて休憩した小屋があるんです。小屋で休憩するくらいですからスールズから小屋まで大体新宿から原宿までの距離があると推測すると、船を下りていくらダッシュしようとすぐさま駆け付けるのは無理なんです。しかし当時は船から下りて直後にかけつけた記憶だけはあったのでワールドマップを確認したところ、エトレー橋とスールズの間にラルレン大橋という初めて漆黒の翼と戦った橋があったんです!その橋からならスールズは代々木から新宿と同じ距離なのでダッシュすればすぐに着けるし大橋なので大きな船も着けられる。大変理に叶ったロケーションなのです!」
チャリティ「ごめん、聞いておいてなんなんだけど、この話読者興味あるかしら?」
takeshi「チャリティさん、前に言ったじゃないですか。楽談は読者のことより自己満足重視で喋っていると!」
チャリティ「そういえばそうだったわね……」
takeshi「さぁ果たしてユリスはどこに居るのか!?」
チャリティ「心の中っていうオチだったらぶっとばすわよ?」
takeshi「ではまた〜」
チャリティ「あ〜調子悪いわ〜」
takeshi「ちょっとチャリティさん、本編が良い感じで切れたんですから余韻をぶち壊さないでください」
チャリティ「そんなこと言ったって新月なんだからしょうがないでしょ?」
takeshi「あの、念のために訊きますが、これ連続更新だってこと覚えてます?さっきまでピンピンしてましたよね?」
チャリティ「いや〜これはダメね。全ッ然やる気出ない。熱とかある感じするし」
takeshi「それはさっきチャリティさんが「フィオナの下着私も見たい!」とか散々騒いでた所為じゃないですか?」
チャリティ「あっ、これ本当にダメなやつだわ。もう本当無理。ここまで力が出なくなるとは思わなかったわ」
takeshi「ナイラが言ってましたけどフォルスが不安定になるだけでパワーにはなんら影響はありませんよ?」
チャリティ「そんなの分かってるんだゾ!キャハッ☆」
takeshi「それは精神が不安定になってるだけです……。病院行きます?」
チャリティ「さ!今回も張り切って楽談やりましょうか!」
takeshi「前振り今までで一番長かったかもしれませんね……」
チャリティ「今回の冒頭、モノローグ長すぎじゃない?」
takeshi「そうですか?」
チャリティ「最早物語変わってるわよ」
takeshi「サブイベントなんですし、たまには良いじゃないですか!」
チャリティ「後さ、前回書いてあったけどスールズって山に囲まれてるのよね?」
takeshi「そうですよ?」
チャリティ「第1部の時ノルゼンからスールズまで漆黒の翼の船で乗りこんで来たと思うんだけど、どこに船を着けたの?山に囲まれてるんだから海からの進入はできないはずよね?」
takeshi「アニカマルの時もそうだったのですが、第1部が遠い昔の記憶すぎて当時何を考えていたのかあまり覚えていないんですよね……。当時は何でカレーズまで通ったのにデスガロ熱に触れなかったのか分かりませんし、よくよく思い出してみると矛盾点とか盛り沢山なんです」
チャリティ「じゃあ第1部の時は山を無かったことにして上陸してきたの?」
takeshi「今ワールドマップを確認した所ですね、ありましたよ橋が!」
チャリティ「橋?」
takeshi「私は最初、漆黒の翼が爆破したエトレー橋に船をつけてそこから上陸したと思ったのですが、その付近にはヴェイグ達がゲーム本編で始めて休憩した小屋があるんです。小屋で休憩するくらいですからスールズから小屋まで大体新宿から原宿までの距離があると推測すると、船を下りていくらダッシュしようとすぐさま駆け付けるのは無理なんです。しかし当時は船から下りて直後にかけつけた記憶だけはあったのでワールドマップを確認したところ、エトレー橋とスールズの間にラルレン大橋という初めて漆黒の翼と戦った橋があったんです!その橋からならスールズは代々木から新宿と同じ距離なのでダッシュすればすぐに着けるし大橋なので大きな船も着けられる。大変理に叶ったロケーションなのです!」
チャリティ「ごめん、聞いておいてなんなんだけど、この話読者興味あるかしら?」
takeshi「チャリティさん、前に言ったじゃないですか。楽談は読者のことより自己満足重視で喋っていると!」
チャリティ「そういえばそうだったわね……」
takeshi「さぁ果たしてユリスはどこに居るのか!?」
チャリティ「心の中っていうオチだったらぶっとばすわよ?」
takeshi「ではまた〜」