第81話『決戦と混戦』
ヴェイグは大剣を突き出す。
振り下ろすよりも命中精度は落ちるが敵への到達速度は断然に早い。
それをユリスは跳躍することで回避すると、突き出たままの大剣を踏み台にしもう一度軽やかに、ステップを踏むように飛び跳ねヴェイグの右側から周り込んでいたジークの飛燕連脚が眼下を通過していくのを尻目にヴェイグの顔面を蹴り飛ばす。
「くっ!」
大剣を踏み台にされ体勢が前のめりになっていたヴェイグは横に転がりながら回避した。
「「ぉおおおあ!!!」」
ユリスが着地したのと同時に、右からティトレイが拳を突き出し、左からジンが剣を振り下ろす。
「……」
ユリスは成すすべなく、拳が右の頬に食い込み剣が左肩へ振り下ろされた。
だが、それだけだった。
「どうした?」
二つの攻撃を受けた状態のまま、ユリスは気味の悪い笑みを浮かべながら問いかける。
ティトレイの拳はユリスの頬に直撃はした。
しかしユリスの顔の向きは1ミリたりとも動いていない。
ジンの剣にいたってはまるで岩盤を叩いたかのように切り裂くこともできず、いくら力を込めようとも剣先がユリスの白色の肩へ沈む気配はなかった。
「離れろ!」
そこへヴェイグがすかさず跳躍することで勢いをつけながら大剣を振り下ろす。
ティトレイとジンは咄嗟にユリスとの距離をとる。
「絶氷斬!!」
「てめぇのフォルスを間近で見るのも久し振りだな」
今度は氷のフォルスを纏わせた大剣で頭上から降ってくるヴェイグを見上げながら、ユリスは片手を伸ばすと大剣を左の掌で受け止めた。
「何!?」
「なんだ、案外ぬるいじゃねぇか」
ユリスは大剣を掴んだままの左手に力を込めるとミシミシミシッという音が鳴り始める。
そこへ今度はジークとティトレイ、ジンの三人で同時に攻撃をしかける。
「掌底破!」
「轟裂破!」
「蒼破刃!」
ジーク、ティトレイの両手が斜め後方左右から、ジンの衝撃波が正面から迫り来る。
「お前等……多数で仕掛ける時は立ち位置に気を付けるようにデュナルスん時に学習しなかったのか?」
ユリスは大剣を放り投げると、それに付随してヴェイグも宙を舞う。
そしてユリスもそれを追いかけるように跳躍すると、眼下にてジークとティトレイがぶつかりそこへジンの放った衝撃波が2人へ直撃する。
一方でジンも二人の掌から放たれた衝撃波を受け後ろに転がる。
そしてユリスが跳躍した先にはヴェイグが宙を舞っており、ユリスは下半身を捻るとヴェイグを地上へ蹴り飛ばした。
背骨から嫌な音が鳴るが、それを意識した瞬間にはヴェイグは床に埋まっていた。
「こんのぉ!!」
フィオナは前衛が離れた瞬間を見計らって扇を振り抜く。
扇から発生した突風は空中にいるユリスを簡単に飲み込むと軽々と後方へと吹き飛ばした。
身長はマオ程しかなく体重が軽いため易々と吹き飛んだが、ジンの剣やヴェイグの大剣さえも無傷で受け止めるあの体には疾風の刃でもっても傷は付けることはできず、ユリスは埃を払いながら立ち上がる。
「降り注げ閃光、我が敵を葬れ」
L(リミテッド)・ソーサリーにより詠唱時間を短縮したヒルダは詠唱を終えると腕をクロスさせる。
「シャイニングレイ!」
ユリスの頭上に数多の光が降り注ぐ。
* * *
「アサルトバレット!」
走り回るジルバに向かってブライトは両方の銃を乱射するが銃弾はジルバの軌跡をなぞるように地面へ当たるだけだった。
そこへカイン、ユージーンの2人が斜め前方左右からジルバを挟む。
ジルバにとっての抜け道は正面しかないが、このまま進めばユージーンとカインが中央に寄り、逃げ道もなくなる。
今から進路変更しようにも右に逸れればカインが、左に逸れればユージーンが即座に進路変更することでどちらにしろどちらか一方とはぶつかることになる。
そこで、ジルバはそのまま2人を同時に相手にすることになる正面のルートを選択する。
すぐにユージーンとカインの2人との距離も縮まり3人が鉢合わせになる。
「瞬迅槍!」
ユージーンが槍を振り回しながら突撃するが、それをジルバは鞭を振ることで槍を弾く。
「連牙弾!」
射程距離の短いカインが遅れて連続蹴りを繰り出す。
対してジルバはユージーンの槍を払うために振り下ろした鞭を斜め上に振り上げる。
「月閃光!」
ジルバが月の軌道をなぞるように振り上げた鞭から満月を象(かたど)った閃光が生じると巨大な刃物となった月がユージーンとカインに襲い掛かる。
2人は咄嗟に防御するも衝撃に吹き飛ばされ、これまで走っていたジルバの速度が緩む。
「そいつを止めるな!!」
ブライトが怒号を飛ばすが、直後にジルバを黒い影が覆う。
ジルバは振り返り真上を見上げると巨大な如意棒が振り下ろされようとしていた。
「どっせぇえええい!!!」
ゴォッッ!!!と、床に直撃した如意棒が塔の床を砕き砂煙が巻き上がる。
その中からジルバが顔を顰めながら飛び出す。
(無傷か……。だがターゲットが見えないと導術を使えねぇことは分かった。砂埃の中からすぐに出てきたのがその証拠だ)
ブライトは再びジルバに向かって銃を乱射する。
今回は一切詠唱はしない。
「飛天翔駆!」
ブライトの銃を回避し続けるジルバに向かってカインがはるか上空から落下してくる。
ジルバは逆に向かって行き、カインとの距離が縮まったところで姿勢を低くする。
するとカインはジルバの頭上を通過し地面に突き刺さった。
「必ずしも攻撃を当てる必要はねぇ!とにかくあいつが導術を使う隙さえ作らなければ勝機は絶対来る!」
ジルバは無詠唱で多彩な導術を駆使してくる。
しかしいくら無詠唱とは言えターゲットを絞り、ほんの一瞬集中する必要がある。
その一瞬さえ作らせないよう攻撃を続ける。
そのためにジルバ相手に後衛は用意しておらず全てユリスに割いた。
逃げながらチャンスを伺うジルバと追いながらチャンスを潰していくユージーン。
どちらか一方の集中力が切れた瞬間、一気に均衡が崩れる。
* * *
光の雨が止み、ユリスを覆い隠していた砂埃が晴れる。
すると、ユリスは首をぐるっとまわしていた。
「効いてない……?」
「いや、」
ヒルダは眉をひそめるがヴェイグは再びユリスに向かって走り出す。
「少なからずダメージにはなっているはずだ!このまま攻めるぞ!」
ヴェイグは大剣を振り上げる。
「素手で相手するのも面倒だな」
一方でユリスの片手に粒子のような物が猛スピードで集まり瞬時に棒状の物へと形状を成形していく。
それを頭上で真横に構えることでヴェイグの大剣を受け止めた。
「なっ!?」
ヴェイグは息を呑んだ。
最早ユリスに片手で受け止められようとも驚きはしない。
だが、ユリスがたった今成形しヴェイグの大剣を受け止めた物を見てさすがに冷静ではいられなかった。
ユリスが右手で持っている物は氷でできたレイピアだ。
「よっ」
ユリスは足でヴェイグの腹部を蹴り飛ばし、ヴェイグの体はくの字にへし曲がると耐え切れなくなった体が後方へと吹き飛ぶ。
そのヴェイグと擦れ違うようにティトレイがユリスへ接近する。
ユリスは手に入れたばかりのおもちゃを試すように横に振るとティトレイがしゃがむことで回避し、曲げた膝のバネを利用してアッパーを入れようとする。
が、その直後にユリスが振り下ろしたレイピアがティトレイの肩を切り裂いた。
「ぐっ……」
ティトレイはそれでも歯を食いしばりながら腕を伸ばすがユリスは一歩後ろに下がることで眼前スレスレで回避した直後にティトレイの腕を左手で掴みユリスの後方へと放り投げる。
するとユリスの後方から走ってきていたジンに直撃した。
「疾風の爪にて引き裂かん」
マオは詠唱を終えるとトンファーを空へ掲げる。
「ウィンドスラッシュ!」
「幻竜斬!」
同時にフィオナが扇を大きく仰ぎ、ヴェイグが剣を突き出しながら突進してくる。
「ガースティネイル!!」
巨大な疾風の爪がユリスの右側から3爪襲い掛かる。
しかしユリスは気にも留めずにヴェイグへ向かっていく。
ユリスの正面からフィオナの、そして背中をマオの疾風の爪が切り裂く。
しかしユリスは少しもスピードを緩めずにヴェイグとの距離を縮めると、ユリスは氷のレイピアをおもちゃを振り回すように振るう。
するとヴェイグが突き出していた大剣を横へ弾きヴェイグの足が止まる。
「おらおらァ!」
そこへユリスが無数の突きを繰り出す。
「ぐぁあ!!」
ユリスの突きはヴェイグの服を裂き肉を裂く。
致命傷にはならなかったのが不思議なくらいだったが、ヴェイグは片膝を付くもすぐに立ち上がり下から大剣を振り上げる。
「おぉっと!力の差は歴然だってのに頑張るじゃねぇか!」
ユリスはバックステップをして回避した後再び一歩踏み出しながらレイピアを振るう。
対してヴェイグも大剣を振り下ろし大剣とレイピアが擦れ合いながら交差する。
「力の差があることは戦う前から分かっていた。だが勝機は必ずある。だから、俺は絶対に諦めない!!」
ヴェイグは大剣を突き出すとユリスは手首を返しレイピアを下に向け軌道を逸らす。
(以前にユリスの領域内で戦った時に比べて体が軽い。これならいけるはずだ!)
1年前、ユリスの領域に初めて足を踏み入れた時身体が重く、まるで風邪を引いたかのようなだるさを感じた。
少しの運動だけで疲労が蓄積し、バイラスを相手にするだけでも精一杯だった。
しかし今回はいきなりユリスを目の前にしても体調に変化は無い。
(思念を押さえ込んだ効果は明らかに出てる!後は俺達の心の問題だ!)
ヴェイグは大剣を縦に振り抜く。
ギンッという音が木霊する。
ユリスのレイピアが折れた音だ。
「瞬連刃!」
ヴェイグはユリスの腹部、下腹部、そして胸部を突き刺す。
「岩砕滅殺陣!」
ユリスが後ろへよろけた所へユリスの右側からジークが床を殴る。
すると縦一線に床が割れ、ユリスは足元を挟まれるのと同時に大粒の岩片がユリスの身体を殴る。
「ちぃっ!」
ユリスは顔をしかめながら足を強引に引っこ抜くように上空へ飛び上がる。
「おせぇ!!」
「っ!!」
ユリスは目を見開く。
つさっきまで地面に拳を突いていたジークがもう目の前にいる。
ジークはオーバーヘッドをするように空中で回転するとカカトがユリスの頭部を捉え屋上に叩きつける。
「凍牙衝裂破!!」
ジークが上空に飛び上がった瞬間に跳躍していたヴェイグが、床にめりこんでいるユリスに着地しながら大剣を振り下ろす。
氷を纏った大剣が床をユリス諸共叩き割り、氷の波動が『V字』に床の上を走る。
「ぐああああ!!!」
ヴェイグの奥義をうけたユリスの身体が凍る中、ヴェイグはバックステップで距離を取る。
その少し後ろにジークが着地する。
「ヴェイグ、これで良いんだよな?」
ジークが肩で息をしながらヴェイグに確認する。
ヴェイグとジークの両サイドをティトレイとジンが追撃するために走り抜けるのを横目にヴェイグは頷く。
「あぁ、俺達なら必ずユリスを倒せる」
ユリスは身体の氷を砕きながら立ち上がるがそこへティトレイがボウガンを放つ。
「樹砲閃!」
ユリスは咄嗟にバックステップで回避する。
しかし地面に当たった矢はバウンドしユリスへ向かう。
それをユリスは左手の掌で掴む。
「瞬迅剣!」
ティトレイのトリッキーな矢に意識が向いているところへジンがユリスの左から剣を突き出す。
剣はユリスの脇腹に突き刺さるが、それでも筋肉へ突き刺さることはなくユリスの身体だけが右へよろける。
「濁流よ、全てを吹き飛ばせ!」
ヒルダが再び腕をクロスさせる。
「アクアストリーム!」
ユリスの足元から高圧力の水圧が噴射され、ユリスは左手を伸ばすが濁流に全身を飲み込まれ後方へ流された。
〜続く〜
振り下ろすよりも命中精度は落ちるが敵への到達速度は断然に早い。
それをユリスは跳躍することで回避すると、突き出たままの大剣を踏み台にしもう一度軽やかに、ステップを踏むように飛び跳ねヴェイグの右側から周り込んでいたジークの飛燕連脚が眼下を通過していくのを尻目にヴェイグの顔面を蹴り飛ばす。
「くっ!」
大剣を踏み台にされ体勢が前のめりになっていたヴェイグは横に転がりながら回避した。
「「ぉおおおあ!!!」」
ユリスが着地したのと同時に、右からティトレイが拳を突き出し、左からジンが剣を振り下ろす。
「……」
ユリスは成すすべなく、拳が右の頬に食い込み剣が左肩へ振り下ろされた。
だが、それだけだった。
「どうした?」
二つの攻撃を受けた状態のまま、ユリスは気味の悪い笑みを浮かべながら問いかける。
ティトレイの拳はユリスの頬に直撃はした。
しかしユリスの顔の向きは1ミリたりとも動いていない。
ジンの剣にいたってはまるで岩盤を叩いたかのように切り裂くこともできず、いくら力を込めようとも剣先がユリスの白色の肩へ沈む気配はなかった。
「離れろ!」
そこへヴェイグがすかさず跳躍することで勢いをつけながら大剣を振り下ろす。
ティトレイとジンは咄嗟にユリスとの距離をとる。
「絶氷斬!!」
「てめぇのフォルスを間近で見るのも久し振りだな」
今度は氷のフォルスを纏わせた大剣で頭上から降ってくるヴェイグを見上げながら、ユリスは片手を伸ばすと大剣を左の掌で受け止めた。
「何!?」
「なんだ、案外ぬるいじゃねぇか」
ユリスは大剣を掴んだままの左手に力を込めるとミシミシミシッという音が鳴り始める。
そこへ今度はジークとティトレイ、ジンの三人で同時に攻撃をしかける。
「掌底破!」
「轟裂破!」
「蒼破刃!」
ジーク、ティトレイの両手が斜め後方左右から、ジンの衝撃波が正面から迫り来る。
「お前等……多数で仕掛ける時は立ち位置に気を付けるようにデュナルスん時に学習しなかったのか?」
ユリスは大剣を放り投げると、それに付随してヴェイグも宙を舞う。
そしてユリスもそれを追いかけるように跳躍すると、眼下にてジークとティトレイがぶつかりそこへジンの放った衝撃波が2人へ直撃する。
一方でジンも二人の掌から放たれた衝撃波を受け後ろに転がる。
そしてユリスが跳躍した先にはヴェイグが宙を舞っており、ユリスは下半身を捻るとヴェイグを地上へ蹴り飛ばした。
背骨から嫌な音が鳴るが、それを意識した瞬間にはヴェイグは床に埋まっていた。
「こんのぉ!!」
フィオナは前衛が離れた瞬間を見計らって扇を振り抜く。
扇から発生した突風は空中にいるユリスを簡単に飲み込むと軽々と後方へと吹き飛ばした。
身長はマオ程しかなく体重が軽いため易々と吹き飛んだが、ジンの剣やヴェイグの大剣さえも無傷で受け止めるあの体には疾風の刃でもっても傷は付けることはできず、ユリスは埃を払いながら立ち上がる。
「降り注げ閃光、我が敵を葬れ」
L(リミテッド)・ソーサリーにより詠唱時間を短縮したヒルダは詠唱を終えると腕をクロスさせる。
「シャイニングレイ!」
ユリスの頭上に数多の光が降り注ぐ。
* * *
「アサルトバレット!」
走り回るジルバに向かってブライトは両方の銃を乱射するが銃弾はジルバの軌跡をなぞるように地面へ当たるだけだった。
そこへカイン、ユージーンの2人が斜め前方左右からジルバを挟む。
ジルバにとっての抜け道は正面しかないが、このまま進めばユージーンとカインが中央に寄り、逃げ道もなくなる。
今から進路変更しようにも右に逸れればカインが、左に逸れればユージーンが即座に進路変更することでどちらにしろどちらか一方とはぶつかることになる。
そこで、ジルバはそのまま2人を同時に相手にすることになる正面のルートを選択する。
すぐにユージーンとカインの2人との距離も縮まり3人が鉢合わせになる。
「瞬迅槍!」
ユージーンが槍を振り回しながら突撃するが、それをジルバは鞭を振ることで槍を弾く。
「連牙弾!」
射程距離の短いカインが遅れて連続蹴りを繰り出す。
対してジルバはユージーンの槍を払うために振り下ろした鞭を斜め上に振り上げる。
「月閃光!」
ジルバが月の軌道をなぞるように振り上げた鞭から満月を象(かたど)った閃光が生じると巨大な刃物となった月がユージーンとカインに襲い掛かる。
2人は咄嗟に防御するも衝撃に吹き飛ばされ、これまで走っていたジルバの速度が緩む。
「そいつを止めるな!!」
ブライトが怒号を飛ばすが、直後にジルバを黒い影が覆う。
ジルバは振り返り真上を見上げると巨大な如意棒が振り下ろされようとしていた。
「どっせぇえええい!!!」
ゴォッッ!!!と、床に直撃した如意棒が塔の床を砕き砂煙が巻き上がる。
その中からジルバが顔を顰めながら飛び出す。
(無傷か……。だがターゲットが見えないと導術を使えねぇことは分かった。砂埃の中からすぐに出てきたのがその証拠だ)
ブライトは再びジルバに向かって銃を乱射する。
今回は一切詠唱はしない。
「飛天翔駆!」
ブライトの銃を回避し続けるジルバに向かってカインがはるか上空から落下してくる。
ジルバは逆に向かって行き、カインとの距離が縮まったところで姿勢を低くする。
するとカインはジルバの頭上を通過し地面に突き刺さった。
「必ずしも攻撃を当てる必要はねぇ!とにかくあいつが導術を使う隙さえ作らなければ勝機は絶対来る!」
ジルバは無詠唱で多彩な導術を駆使してくる。
しかしいくら無詠唱とは言えターゲットを絞り、ほんの一瞬集中する必要がある。
その一瞬さえ作らせないよう攻撃を続ける。
そのためにジルバ相手に後衛は用意しておらず全てユリスに割いた。
逃げながらチャンスを伺うジルバと追いながらチャンスを潰していくユージーン。
どちらか一方の集中力が切れた瞬間、一気に均衡が崩れる。
* * *
光の雨が止み、ユリスを覆い隠していた砂埃が晴れる。
すると、ユリスは首をぐるっとまわしていた。
「効いてない……?」
「いや、」
ヒルダは眉をひそめるがヴェイグは再びユリスに向かって走り出す。
「少なからずダメージにはなっているはずだ!このまま攻めるぞ!」
ヴェイグは大剣を振り上げる。
「素手で相手するのも面倒だな」
一方でユリスの片手に粒子のような物が猛スピードで集まり瞬時に棒状の物へと形状を成形していく。
それを頭上で真横に構えることでヴェイグの大剣を受け止めた。
「なっ!?」
ヴェイグは息を呑んだ。
最早ユリスに片手で受け止められようとも驚きはしない。
だが、ユリスがたった今成形しヴェイグの大剣を受け止めた物を見てさすがに冷静ではいられなかった。
ユリスが右手で持っている物は氷でできたレイピアだ。
「よっ」
ユリスは足でヴェイグの腹部を蹴り飛ばし、ヴェイグの体はくの字にへし曲がると耐え切れなくなった体が後方へと吹き飛ぶ。
そのヴェイグと擦れ違うようにティトレイがユリスへ接近する。
ユリスは手に入れたばかりのおもちゃを試すように横に振るとティトレイがしゃがむことで回避し、曲げた膝のバネを利用してアッパーを入れようとする。
が、その直後にユリスが振り下ろしたレイピアがティトレイの肩を切り裂いた。
「ぐっ……」
ティトレイはそれでも歯を食いしばりながら腕を伸ばすがユリスは一歩後ろに下がることで眼前スレスレで回避した直後にティトレイの腕を左手で掴みユリスの後方へと放り投げる。
するとユリスの後方から走ってきていたジンに直撃した。
「疾風の爪にて引き裂かん」
マオは詠唱を終えるとトンファーを空へ掲げる。
「ウィンドスラッシュ!」
「幻竜斬!」
同時にフィオナが扇を大きく仰ぎ、ヴェイグが剣を突き出しながら突進してくる。
「ガースティネイル!!」
巨大な疾風の爪がユリスの右側から3爪襲い掛かる。
しかしユリスは気にも留めずにヴェイグへ向かっていく。
ユリスの正面からフィオナの、そして背中をマオの疾風の爪が切り裂く。
しかしユリスは少しもスピードを緩めずにヴェイグとの距離を縮めると、ユリスは氷のレイピアをおもちゃを振り回すように振るう。
するとヴェイグが突き出していた大剣を横へ弾きヴェイグの足が止まる。
「おらおらァ!」
そこへユリスが無数の突きを繰り出す。
「ぐぁあ!!」
ユリスの突きはヴェイグの服を裂き肉を裂く。
致命傷にはならなかったのが不思議なくらいだったが、ヴェイグは片膝を付くもすぐに立ち上がり下から大剣を振り上げる。
「おぉっと!力の差は歴然だってのに頑張るじゃねぇか!」
ユリスはバックステップをして回避した後再び一歩踏み出しながらレイピアを振るう。
対してヴェイグも大剣を振り下ろし大剣とレイピアが擦れ合いながら交差する。
「力の差があることは戦う前から分かっていた。だが勝機は必ずある。だから、俺は絶対に諦めない!!」
ヴェイグは大剣を突き出すとユリスは手首を返しレイピアを下に向け軌道を逸らす。
(以前にユリスの領域内で戦った時に比べて体が軽い。これならいけるはずだ!)
1年前、ユリスの領域に初めて足を踏み入れた時身体が重く、まるで風邪を引いたかのようなだるさを感じた。
少しの運動だけで疲労が蓄積し、バイラスを相手にするだけでも精一杯だった。
しかし今回はいきなりユリスを目の前にしても体調に変化は無い。
(思念を押さえ込んだ効果は明らかに出てる!後は俺達の心の問題だ!)
ヴェイグは大剣を縦に振り抜く。
ギンッという音が木霊する。
ユリスのレイピアが折れた音だ。
「瞬連刃!」
ヴェイグはユリスの腹部、下腹部、そして胸部を突き刺す。
「岩砕滅殺陣!」
ユリスが後ろへよろけた所へユリスの右側からジークが床を殴る。
すると縦一線に床が割れ、ユリスは足元を挟まれるのと同時に大粒の岩片がユリスの身体を殴る。
「ちぃっ!」
ユリスは顔をしかめながら足を強引に引っこ抜くように上空へ飛び上がる。
「おせぇ!!」
「っ!!」
ユリスは目を見開く。
つさっきまで地面に拳を突いていたジークがもう目の前にいる。
ジークはオーバーヘッドをするように空中で回転するとカカトがユリスの頭部を捉え屋上に叩きつける。
「凍牙衝裂破!!」
ジークが上空に飛び上がった瞬間に跳躍していたヴェイグが、床にめりこんでいるユリスに着地しながら大剣を振り下ろす。
氷を纏った大剣が床をユリス諸共叩き割り、氷の波動が『V字』に床の上を走る。
「ぐああああ!!!」
ヴェイグの奥義をうけたユリスの身体が凍る中、ヴェイグはバックステップで距離を取る。
その少し後ろにジークが着地する。
「ヴェイグ、これで良いんだよな?」
ジークが肩で息をしながらヴェイグに確認する。
ヴェイグとジークの両サイドをティトレイとジンが追撃するために走り抜けるのを横目にヴェイグは頷く。
「あぁ、俺達なら必ずユリスを倒せる」
ユリスは身体の氷を砕きながら立ち上がるがそこへティトレイがボウガンを放つ。
「樹砲閃!」
ユリスは咄嗟にバックステップで回避する。
しかし地面に当たった矢はバウンドしユリスへ向かう。
それをユリスは左手の掌で掴む。
「瞬迅剣!」
ティトレイのトリッキーな矢に意識が向いているところへジンがユリスの左から剣を突き出す。
剣はユリスの脇腹に突き刺さるが、それでも筋肉へ突き刺さることはなくユリスの身体だけが右へよろける。
「濁流よ、全てを吹き飛ばせ!」
ヒルダが再び腕をクロスさせる。
「アクアストリーム!」
ユリスの足元から高圧力の水圧が噴射され、ユリスは左手を伸ばすが濁流に全身を飲み込まれ後方へ流された。
〜続く〜
■作者メッセージ
【楽談パート61】
takeshi「ども〜!年内滑り込みセーフ!!なtakeshiです」
チャリティ「ギリギリ間に合ったわね〜」
マティアス「メリークリスマス♪」
チャリティ「……何から突っ込んだら良いのかしら?」
マティアス「私はなにもボケてないのだから、つっこむ必要はないわよ?」
チャリティ「じゃあ言わせてもらうけど、まず生きてるはずのあんたがここに来てることがおかしいでしょ!」
マティアス「あぁ、そのことね。今私は気絶してる設定だからここにいても問題はないわ」
チャリティ「そうなの?」
takeshi「まぁ……時間軸的には……」
マティアス「他には?」
チャリティ「メリークリスマスって、もうクリスマスは終わったわよ?明日にはもう元旦だってのに季節はずれも甚だしいわね」
マティアス「だって貴方達クリスマスパーティしてないんでしょ?」
チャリティ「……」
takeshi「してないです……」
マティアス「私が仕入れた情報によれば貴方、また体調を崩して入院してたそうね」
takeshi「えぇ、そのおかげで余裕で更新できるはずが年末ギリギリになってしまいました。ていうか誰情報ですかそれ?」
マティアス「ナイラ情報よ?」
チャリティ「あの子、こんな所にまで探りを入れられるのね……」
マティアス「王の剣の情報網を舐めないことね!」
takeshi「おかげでクリスマスイベントも何もできなかったことですし、ここでクリスマス兼年越しパーティをするのも良いかもしれませんね!」
マティアス「でしょ?でもそれにはパーティの華を飾る特別ゲストが必要でしょ?だから私が来てあげたってわけ!感謝しなさい?」
チャリティ「いや華なら私が……」
takeshi「チャリティさん!花瓶って知ってますか!?」
チャリティ「いきなり大声出して何!?勿論知ってるわよ」
takeshi「花瓶ってすごく大事だと思うんですよ。どんなに綺麗な花でも花瓶がペットボトルなのと焼物の花瓶では見栄えが雲泥の差じゃないですか!私はねチャリティさん、あなたのことを国宝級の花瓶だと思っているのですよ」
チャリティ「つまり、マティアスを活かすも殺すも私次第ってこと?」
takeshi「そうです!」
チャリティ「国宝級の美しさを誇るこの私にしかできないってこと!?」
takeshi「そうです!!」
チャリティ「しょ、しょうがないわねぇ〜」
マティアス「チョロイわね……」
takeshi「あんまり大きな声で言わないでください……」
マティアス「まぁそんな訳で、これからしばらくよろしくお願いするわ」
takeshi「ちなみに今回も連続投稿です。なんとですね、今回で最後の連続投稿となります!」
チャリティ「そりゃ泣いても笑ってもこれが2014年のラスト投稿でしょうよ」
takeshi「いえいえ、そうじゃないんです。今回の連続投稿でこの第2部は完結なのです!なので完結までこの3人でいきますよ!」
マティアス「そんなもったいぶらなくても、先に最新話のタイトルを見てれば全員分かってることじゃない」
チャリティ「そうよね」
takeshi「うるさいなぁ。そんな訳で最後まで一気に読んでくださるとありがたいです」
チャリティ「それよりパーティって何やんの!?」
マティアス「飾りつけはしてあるようね」
takeshi「クリスマスツリーの上にリースのようにしめ縄が飾ってあって大分カオスなことになってますけどね……。今回は特に企画とか用意してないので鍋でもつつきながら何時も通り本編の補足をしていきましょう」
チャリティ「鍋があるの!?」
マティアス「どこにもそれらしき物は見当たらないけれど?」
takeshi「当然です。これからチャリティさんに獲って来てもらうのですから」
チャリティ「はぁ!?」
マティアス「なぜ、取るという字が獲るなのかしら?」
takeshi「それは後のお楽しみです。ではチャリティさん、この台本を持ってちょっくら行ってきてください」
チャリティ「台本?って、これ外伝!?」
takeshi「次回からオマケ欄を使って行うので頑張ってください!」
チャリティ「ちょ、私居なくなったら花瓶はどうすんのよ!?」
マティアス「あら、誰が活け花と言ったかしら?野原に自生している花だって立派な華じゃない」
チャリティ「は、ハメたわね!?」
takeshi「ではまた〜」
〜続く〜
takeshi「ども〜!年内滑り込みセーフ!!なtakeshiです」
チャリティ「ギリギリ間に合ったわね〜」
マティアス「メリークリスマス♪」
チャリティ「……何から突っ込んだら良いのかしら?」
マティアス「私はなにもボケてないのだから、つっこむ必要はないわよ?」
チャリティ「じゃあ言わせてもらうけど、まず生きてるはずのあんたがここに来てることがおかしいでしょ!」
マティアス「あぁ、そのことね。今私は気絶してる設定だからここにいても問題はないわ」
チャリティ「そうなの?」
takeshi「まぁ……時間軸的には……」
マティアス「他には?」
チャリティ「メリークリスマスって、もうクリスマスは終わったわよ?明日にはもう元旦だってのに季節はずれも甚だしいわね」
マティアス「だって貴方達クリスマスパーティしてないんでしょ?」
チャリティ「……」
takeshi「してないです……」
マティアス「私が仕入れた情報によれば貴方、また体調を崩して入院してたそうね」
takeshi「えぇ、そのおかげで余裕で更新できるはずが年末ギリギリになってしまいました。ていうか誰情報ですかそれ?」
マティアス「ナイラ情報よ?」
チャリティ「あの子、こんな所にまで探りを入れられるのね……」
マティアス「王の剣の情報網を舐めないことね!」
takeshi「おかげでクリスマスイベントも何もできなかったことですし、ここでクリスマス兼年越しパーティをするのも良いかもしれませんね!」
マティアス「でしょ?でもそれにはパーティの華を飾る特別ゲストが必要でしょ?だから私が来てあげたってわけ!感謝しなさい?」
チャリティ「いや華なら私が……」
takeshi「チャリティさん!花瓶って知ってますか!?」
チャリティ「いきなり大声出して何!?勿論知ってるわよ」
takeshi「花瓶ってすごく大事だと思うんですよ。どんなに綺麗な花でも花瓶がペットボトルなのと焼物の花瓶では見栄えが雲泥の差じゃないですか!私はねチャリティさん、あなたのことを国宝級の花瓶だと思っているのですよ」
チャリティ「つまり、マティアスを活かすも殺すも私次第ってこと?」
takeshi「そうです!」
チャリティ「国宝級の美しさを誇るこの私にしかできないってこと!?」
takeshi「そうです!!」
チャリティ「しょ、しょうがないわねぇ〜」
マティアス「チョロイわね……」
takeshi「あんまり大きな声で言わないでください……」
マティアス「まぁそんな訳で、これからしばらくよろしくお願いするわ」
takeshi「ちなみに今回も連続投稿です。なんとですね、今回で最後の連続投稿となります!」
チャリティ「そりゃ泣いても笑ってもこれが2014年のラスト投稿でしょうよ」
takeshi「いえいえ、そうじゃないんです。今回の連続投稿でこの第2部は完結なのです!なので完結までこの3人でいきますよ!」
マティアス「そんなもったいぶらなくても、先に最新話のタイトルを見てれば全員分かってることじゃない」
チャリティ「そうよね」
takeshi「うるさいなぁ。そんな訳で最後まで一気に読んでくださるとありがたいです」
チャリティ「それよりパーティって何やんの!?」
マティアス「飾りつけはしてあるようね」
takeshi「クリスマスツリーの上にリースのようにしめ縄が飾ってあって大分カオスなことになってますけどね……。今回は特に企画とか用意してないので鍋でもつつきながら何時も通り本編の補足をしていきましょう」
チャリティ「鍋があるの!?」
マティアス「どこにもそれらしき物は見当たらないけれど?」
takeshi「当然です。これからチャリティさんに獲って来てもらうのですから」
チャリティ「はぁ!?」
マティアス「なぜ、取るという字が獲るなのかしら?」
takeshi「それは後のお楽しみです。ではチャリティさん、この台本を持ってちょっくら行ってきてください」
チャリティ「台本?って、これ外伝!?」
takeshi「次回からオマケ欄を使って行うので頑張ってください!」
チャリティ「ちょ、私居なくなったら花瓶はどうすんのよ!?」
マティアス「あら、誰が活け花と言ったかしら?野原に自生している花だって立派な華じゃない」
チャリティ「は、ハメたわね!?」
takeshi「ではまた〜」
〜続く〜