T章〜仲間達〜
バキィッ!
「うッ!」
「こんの、キィ――ック!!」
ヒョイッ
「HAHA、当たってないぞ、ファルコン。」
「ぬかせ。次はどうだ。」
ゴォォ
「ハイッと。何だ全然当たってないぞ。それが本気?ん?」
「くおんのぉ、よけんな髭野郎!」
ひゅひゅんひゅん
しゃっしゃっ。
「とと、ちょっとはましになってきたが、まだ駄目だな。そんなんじゃ まだ弟の方がましだぜ。」
「ぬぬぬ。まだだぁ」
だだだだだだ…
「ふふ、自棄になって自滅にでもなりに来るか?まあ直に吹き飛ばしてや んよ。」
「とぁっ。」
ダンッ
「ふむ、空へ飛んだか。だが格好の的じゃねーか。そらいくぞ。」
ダンッ
「ああああ、ファルコンパ――ンチ!!」
「おおおおお、ファイヤ掌底(しょうてい)!!」
ドゴ、バギ
「ぎゃああああぁぁぁ…。」
『両者場外への落下によりこの勝負は引き分けです。次の挑戦者は…』
幾数打かの手合わせでスマブラのリーダー的存在、マリオとスマブラメンバー1暑くてむさ苦しい漢、K・ファルコンの息詰まる攻防はあっさりとした結果で幕を閉じた。二人の試合の終了と次の試合の始まりを告げるスピーカーが淡々とスタジアム全体に流れている中、今日も満杯の客が占める観客席のvipで腰を下す一団の中の一人、スマブラ新メンバーのリュカがつまらなそう顔を隣へ腰掛ける友人、初期メンバーのネスへと向けて口を開いた。
「なーんか思ってたよりつまんないなーネスぅ。」
「いやいや、十分楽しいじゃないか、リュカ。」
「でもさぁ、もうちょっとなんかこう、押し合いへし合いみたいな展開を期待してたのに。」
拳を固め、目の前をなぐる動作をしながら熱く語るリュカだが、それを半ば面白そう口元を歪めながら、それでも平然とした表情で返した。
「んー、やっぱり実力者vs実力者の戦闘だからじゃないかな。マリオさんは確かに強いし、僕でも未だに歯が立たないけど、ファルコンだってそんなに弱くないよ。見かけは暑苦しくいだけで役に立たなそうだけど、いざって時はなんたらの馬鹿力ってやつ?急に動きが良くなって手ごわくなるのさ。」
それでも釈然としないリュカだったが、急に後ろから抱きつかれたせいでその思考は途切れてしまった。続けて背後から聞こえてきた艶やかな声と背中の柔らかい感触に、リュカは完全に顔を真っ赤にして俯くことになった。
「そうよネス君。あのエロ馬鹿、私がこの姿に変身するときに限ってファルコン・ダイブして股に顔を当ててくんのよ。キモいからウィップで巻き取ってボコボコにしてからぶっ飛ばすんだけど、あのしぶとさにはいつもぞっとするわぁ。」
つまりある意味ではそれぐらい手ごわい、と言いたいのだろう、とリュカもネスをおのずと察したが、それは単にファルコンが変態なだけだ。でもそのしぶとさもファルコンの打たれ強さが伴って成りたっているから、強引に言えばそれだけ実力はあるということだと結論付けることにした。それにしても…
(サムスさんいつまでああしてんだろ。おっ○いなんかおしつけちゃって、うらやましいなぁ、もお!)
一通り語り終えステージへと視線を変えたサムスだが、未だにうつむいたままのリュカに後ろから抱きついたまま離さない光景に若干嫉妬するネスだった。だが敢えて気にしないことにし、次の対戦相手を確認するために視線を前面に配置されたモニターへと向けじっと見据えた。
『次の対戦は…カ―ビイvsピカチュウ!』
ウオオォ!
アナウンスの声と同時にモニターの画面にはピンクの球体ことポップスターの住人、星のカ―ビイと可愛いピンクの電気ネズミ、ピカチュウの画像と名前が表示された。
会場からはどっと歓声が沸き起こり、ある客席からは黄色い声とともに”ピカチュウlove you❤”とピンク色の文字が書かれた横断幕を明一杯広げて周囲にアピールしていたりもした。そしてそれに対抗するように”カ―ビイmy engel❤"と書かれた横断幕を広げて歓声をあげている客達もいた。
「…すごく人気ですね。あの二人。」
ようやくサムスからの拘束(誘惑?)から放たれたリュカは、まだ少し頬を薄く染めながら、通路の出口から出てきてステージへと向かう両者を見やるサムスに問いかけた。
「そうねぇ。あの二人(1匹と一人)はメンバーの中じゃマスコットみたいな存在だもの。このスマブラが世界中で有名なように、あの二人に特別人気があるのも寧ろ当然と言えば当然ね。」
「当然、か。まあその分強い、ってことでもあるんだけどね。」
サムスの軽い返しに肩を透かして言葉を補ったネスは、ふとステージの中心に微かな異変を感じた。それは超能力者であるネスだからこそ気づけたのかもしれない。ネスは試しにリュカに視線を変えると、リュカもその小さな異変に気づいたらしく、目をパチクリさせながらその空間をじっと凝視していた。それを見て、ネスは明らかに何かおかしなことが、目の前で起きようとしていることを実感した。やはりおかしいと。今度はサムスの方へ視線を変えたが、サムスは気付いてないか、もしくは自分達のように見えていないらしく、歓声の渦に包まれながらステージに登った二人しか見ていないようだった。
「ね、ネス。あそこの歪み。」
「ああ、リュカ。やっぱり見えてるんだね。僕もだ。」
もう我慢できなかったのだろう。おずおずとリュカはこちらにあの歪みのことを尋ねてきた。だがお互い分かったとしてもいったいあれをどう止めればいいのだろうか?一応あれを確認できるのは僕とリュカだけなのだから。ネスは不安げに見詰めるリュカとあの空間の歪みを見やりながら、頭の中で考えという考えが湧いては消え湧いては消えてと忙しく動いていた。だがさっぱりいい考えは浮かばなかった。するとリュカはあっと小さく声に出すと、切羽詰まったような感じで僕の体を揺さぶった。
「何だ、リュカ?」
「見てよネス、あれ…。」
リュカが指をさした先には先程から出現した空間の歪みから、何やら閃光のような光の束が顔を出して今にも周囲に拡散しようとしているところだった。だがやはりその異変に気づいていたのはネスとリュカだけだったらしく、歓声とアナウンスは何事もないように進行し、ピカチュウとカ―ビイは残り数秒で開始する戦闘に向けて体をほぐしては互いに睨み合っている所だった。
「まずいよ、どうしよう、ネスぅ。」
とうとう涙を浮かべて泣きだしそうなリュカを見つめられないまま、ネスはサムスに声をかけようとした。だが幾ら声のボリュームを大きくしてみても、まるで二人とその周囲の境に壁があるかのようにこちらに視線さえも向けずに今から起こるであろう対戦に胸を高鳴らせているだけだった。一体どうしてしまったのだろうか?ネスもだんだんと落ち着きがなくなっていた。
(なんでいきなりこんなことに?でも、なんとかするんだ、なんとか…そうだ!応急措置だけど、これしか方法は、)
「リュカ!リュカ!」
「えぅ、ん?何、ネス。」
「サイマグネットを使うんだ!」
「だけどあれは回復する時に使うよ。防御には使えないよ!」
「けどもう時間がない。」
それは分かっていた。空間から漏れ出ていた閃光は、最早スタジアムの半分近くをまばゆいばかりに照らし、唯一聞こえるのはアナウンスのカウントを始める声と、先ほどより大きい歓声だけだった。ステージはもはや光の中に包まれて何も見えなくなっていた。しかし観客達は一向に気にも留めずに試合に熱中していた。
「それでもだよ。君は指をくわえてこのまま何もしないで光に呑みこまれて終わりだって言うのかい?」
ネスは声が苛立っていた。そして手にエネルギーを込めているのが感じ取れた。どうやら自分はやってみるらしい。
「い、いや。僕もやるよ。」
そこまで言うのなら僕だって引き下がれないじゃないか?と心の中で呟くこととにした。そしてもう一席前まで迫ってきた閃光から身を守るため、リュカとネスは得意技、サイマグネットを放った…。
◆
「う…ん…。」
「リュカ、リュカ。起きろ。」
ぺちぺち
「んん、なんだぁネスか。」
「なんだぁ、じゃないとにかく周りを見てくれよ、どう思う?」
「どうって-」
あれ?という呆けた声とともに目を開けて見渡したその光景に、リュカは茫然とし、最早そこから目をそむけることも、夢だったと笑って済ませることもできないと、のしかかってきた現実を前にして、へたり込むしかなかった。
-そう、周りには、誰もいなかった。まるで最初から居なかったかのように。
to be continued…
「うッ!」
「こんの、キィ――ック!!」
ヒョイッ
「HAHA、当たってないぞ、ファルコン。」
「ぬかせ。次はどうだ。」
ゴォォ
「ハイッと。何だ全然当たってないぞ。それが本気?ん?」
「くおんのぉ、よけんな髭野郎!」
ひゅひゅんひゅん
しゃっしゃっ。
「とと、ちょっとはましになってきたが、まだ駄目だな。そんなんじゃ まだ弟の方がましだぜ。」
「ぬぬぬ。まだだぁ」
だだだだだだ…
「ふふ、自棄になって自滅にでもなりに来るか?まあ直に吹き飛ばしてや んよ。」
「とぁっ。」
ダンッ
「ふむ、空へ飛んだか。だが格好の的じゃねーか。そらいくぞ。」
ダンッ
「ああああ、ファルコンパ――ンチ!!」
「おおおおお、ファイヤ掌底(しょうてい)!!」
ドゴ、バギ
「ぎゃああああぁぁぁ…。」
『両者場外への落下によりこの勝負は引き分けです。次の挑戦者は…』
幾数打かの手合わせでスマブラのリーダー的存在、マリオとスマブラメンバー1暑くてむさ苦しい漢、K・ファルコンの息詰まる攻防はあっさりとした結果で幕を閉じた。二人の試合の終了と次の試合の始まりを告げるスピーカーが淡々とスタジアム全体に流れている中、今日も満杯の客が占める観客席のvipで腰を下す一団の中の一人、スマブラ新メンバーのリュカがつまらなそう顔を隣へ腰掛ける友人、初期メンバーのネスへと向けて口を開いた。
「なーんか思ってたよりつまんないなーネスぅ。」
「いやいや、十分楽しいじゃないか、リュカ。」
「でもさぁ、もうちょっとなんかこう、押し合いへし合いみたいな展開を期待してたのに。」
拳を固め、目の前をなぐる動作をしながら熱く語るリュカだが、それを半ば面白そう口元を歪めながら、それでも平然とした表情で返した。
「んー、やっぱり実力者vs実力者の戦闘だからじゃないかな。マリオさんは確かに強いし、僕でも未だに歯が立たないけど、ファルコンだってそんなに弱くないよ。見かけは暑苦しくいだけで役に立たなそうだけど、いざって時はなんたらの馬鹿力ってやつ?急に動きが良くなって手ごわくなるのさ。」
それでも釈然としないリュカだったが、急に後ろから抱きつかれたせいでその思考は途切れてしまった。続けて背後から聞こえてきた艶やかな声と背中の柔らかい感触に、リュカは完全に顔を真っ赤にして俯くことになった。
「そうよネス君。あのエロ馬鹿、私がこの姿に変身するときに限ってファルコン・ダイブして股に顔を当ててくんのよ。キモいからウィップで巻き取ってボコボコにしてからぶっ飛ばすんだけど、あのしぶとさにはいつもぞっとするわぁ。」
つまりある意味ではそれぐらい手ごわい、と言いたいのだろう、とリュカもネスをおのずと察したが、それは単にファルコンが変態なだけだ。でもそのしぶとさもファルコンの打たれ強さが伴って成りたっているから、強引に言えばそれだけ実力はあるということだと結論付けることにした。それにしても…
(サムスさんいつまでああしてんだろ。おっ○いなんかおしつけちゃって、うらやましいなぁ、もお!)
一通り語り終えステージへと視線を変えたサムスだが、未だにうつむいたままのリュカに後ろから抱きついたまま離さない光景に若干嫉妬するネスだった。だが敢えて気にしないことにし、次の対戦相手を確認するために視線を前面に配置されたモニターへと向けじっと見据えた。
『次の対戦は…カ―ビイvsピカチュウ!』
ウオオォ!
アナウンスの声と同時にモニターの画面にはピンクの球体ことポップスターの住人、星のカ―ビイと可愛いピンクの電気ネズミ、ピカチュウの画像と名前が表示された。
会場からはどっと歓声が沸き起こり、ある客席からは黄色い声とともに”ピカチュウlove you❤”とピンク色の文字が書かれた横断幕を明一杯広げて周囲にアピールしていたりもした。そしてそれに対抗するように”カ―ビイmy engel❤"と書かれた横断幕を広げて歓声をあげている客達もいた。
「…すごく人気ですね。あの二人。」
ようやくサムスからの拘束(誘惑?)から放たれたリュカは、まだ少し頬を薄く染めながら、通路の出口から出てきてステージへと向かう両者を見やるサムスに問いかけた。
「そうねぇ。あの二人(1匹と一人)はメンバーの中じゃマスコットみたいな存在だもの。このスマブラが世界中で有名なように、あの二人に特別人気があるのも寧ろ当然と言えば当然ね。」
「当然、か。まあその分強い、ってことでもあるんだけどね。」
サムスの軽い返しに肩を透かして言葉を補ったネスは、ふとステージの中心に微かな異変を感じた。それは超能力者であるネスだからこそ気づけたのかもしれない。ネスは試しにリュカに視線を変えると、リュカもその小さな異変に気づいたらしく、目をパチクリさせながらその空間をじっと凝視していた。それを見て、ネスは明らかに何かおかしなことが、目の前で起きようとしていることを実感した。やはりおかしいと。今度はサムスの方へ視線を変えたが、サムスは気付いてないか、もしくは自分達のように見えていないらしく、歓声の渦に包まれながらステージに登った二人しか見ていないようだった。
「ね、ネス。あそこの歪み。」
「ああ、リュカ。やっぱり見えてるんだね。僕もだ。」
もう我慢できなかったのだろう。おずおずとリュカはこちらにあの歪みのことを尋ねてきた。だがお互い分かったとしてもいったいあれをどう止めればいいのだろうか?一応あれを確認できるのは僕とリュカだけなのだから。ネスは不安げに見詰めるリュカとあの空間の歪みを見やりながら、頭の中で考えという考えが湧いては消え湧いては消えてと忙しく動いていた。だがさっぱりいい考えは浮かばなかった。するとリュカはあっと小さく声に出すと、切羽詰まったような感じで僕の体を揺さぶった。
「何だ、リュカ?」
「見てよネス、あれ…。」
リュカが指をさした先には先程から出現した空間の歪みから、何やら閃光のような光の束が顔を出して今にも周囲に拡散しようとしているところだった。だがやはりその異変に気づいていたのはネスとリュカだけだったらしく、歓声とアナウンスは何事もないように進行し、ピカチュウとカ―ビイは残り数秒で開始する戦闘に向けて体をほぐしては互いに睨み合っている所だった。
「まずいよ、どうしよう、ネスぅ。」
とうとう涙を浮かべて泣きだしそうなリュカを見つめられないまま、ネスはサムスに声をかけようとした。だが幾ら声のボリュームを大きくしてみても、まるで二人とその周囲の境に壁があるかのようにこちらに視線さえも向けずに今から起こるであろう対戦に胸を高鳴らせているだけだった。一体どうしてしまったのだろうか?ネスもだんだんと落ち着きがなくなっていた。
(なんでいきなりこんなことに?でも、なんとかするんだ、なんとか…そうだ!応急措置だけど、これしか方法は、)
「リュカ!リュカ!」
「えぅ、ん?何、ネス。」
「サイマグネットを使うんだ!」
「だけどあれは回復する時に使うよ。防御には使えないよ!」
「けどもう時間がない。」
それは分かっていた。空間から漏れ出ていた閃光は、最早スタジアムの半分近くをまばゆいばかりに照らし、唯一聞こえるのはアナウンスのカウントを始める声と、先ほどより大きい歓声だけだった。ステージはもはや光の中に包まれて何も見えなくなっていた。しかし観客達は一向に気にも留めずに試合に熱中していた。
「それでもだよ。君は指をくわえてこのまま何もしないで光に呑みこまれて終わりだって言うのかい?」
ネスは声が苛立っていた。そして手にエネルギーを込めているのが感じ取れた。どうやら自分はやってみるらしい。
「い、いや。僕もやるよ。」
そこまで言うのなら僕だって引き下がれないじゃないか?と心の中で呟くこととにした。そしてもう一席前まで迫ってきた閃光から身を守るため、リュカとネスは得意技、サイマグネットを放った…。
◆
「う…ん…。」
「リュカ、リュカ。起きろ。」
ぺちぺち
「んん、なんだぁネスか。」
「なんだぁ、じゃないとにかく周りを見てくれよ、どう思う?」
「どうって-」
あれ?という呆けた声とともに目を開けて見渡したその光景に、リュカは茫然とし、最早そこから目をそむけることも、夢だったと笑って済ませることもできないと、のしかかってきた現実を前にして、へたり込むしかなかった。
-そう、周りには、誰もいなかった。まるで最初から居なかったかのように。
to be continued…
■作者メッセージ
はい、何だか登場人物が少ないですね、スマブラなのにw。
他キャラについては、ストーリーの進行具合でちょっとずつ出していくつもりです。
他キャラについては、ストーリーの進行具合でちょっとずつ出していくつもりです。