1-0
空を見ると、そこには囀り跳ぶ鳥でも風に流される雲でもなく。
人が空を舞っている。
自由に飛ぶことができる翼を手に入れたように、自分の意思で空を舞っている。
「――――」
杖先から子供の頃にみたロボットが撃ちだすビーム砲のようなものと、空が一瞬歪んで圧縮された空気のようなものらが轟音を立てて飛び交う。
それはまるでたまたまに見てしまった女児向けの魔法を使って戦う少女のアニメのような現実離れした光景が目の前には平然と繰り広げられている。
「」
俺は魔法を軽く、甘く見ていたのだろう。
架空のおとぎ話に出てくるような、杖を一振りするだけでなんでも叶えてくれるまったくもって都合の良いものだと。
しかしそれは違った。
魔法を使うことで戦いが巻き起こりそして傷つくのだ。
その様を今俺は目の当たりにしてしまった
「雨野っ!」
何かの見えない壁のようなものに叩きつけられた彼女に放った言葉が、彼女の名字だった。
それでも空遠く、その声は届くはずもないのだ。そうして少女はボロボロの体で体勢を立て直してまた飛び立った。
俺はおとぎ話、架空、幻想を毛嫌いしていた。理由がなかった訳ではない。
それは自分で考えても非常に馬鹿馬鹿しい物で虚しいもので他者に否定されてしまえばそれまでのことなのだ。
それに腹立て、俺は非確定的なことを信じなくなった。そんなことに抵抗も生まれたのだ。
”ありえないこと”でもそれは現実に存在している、少なくとも今俺が呆然と見ている光景がそれだ。
その”ありえないこと”を俺が認識してしまった時点で非確定から確定に変わり、虚実が真実になった。
それでも俺はそれを拒み続けた。これは嘘だ、タチの悪い冗談できっとタネが有って、出来そこないの頭が見ている痛々しい夢なのだと。
しかし今気づいた、気づいてしまった。
何が少女を動かしているんだ、と。その疑問が俺を拒ませた。
そんな空想みたいなこと、夢みたいなことになぜそこまでしている?
自分に得な事なんて無さそうなのに、体を張ってまで自分を傷つけてまで。
損得勘定、有益不益。到底俺には理解が出来なかった。”魔法”で傷を治せたとはいえ、あれほどまでの重症を負ってそれでも戦いに挑んだ彼女に。
逃げだせばいい、そう俺は思う。もちろん俺なら確実にそうしていただろう。謝って許してもらえるもならいいし、そうでなければ駆けだしてそれから逃げるだろう。
しかし彼女は逃げず、敵へと向かった。
”魔法"って何だ? 夢を叶えるおとぎ話とは到底違う。でも彼女はそれを”魔法”という。
自らの体を削ってまで戦う理由――俺にはわからないよ。分からない。
そして瞬間的な爆発のような砕けるコンクリートの音が響くと共に――戦い続けていた一人の少女が地面に落ちた。
その様を俺はしっかりと脳裏に焼きつくほどに凝視し叫んでしまった――
「雨野ぉ!」
* *
壊れていた。この世界は壊れていた。
なぜ魔法は存在するのか、なぜ戦わなければならないのか。
なぜ誰かが傷つかなければならないのか、苦しまなければならないのか。
理不尽に思えても、世界はそう出来てしまっているから騒いでも仕方がないけども。
力を持てたモノと持てぬモノ。残酷すぎるその違いは運命を左右した。
脆く、醜く、欠陥だらけのこの世界を皆は生きていくしかないのだろうか?
そもそも魔法なんてなければ良かったのに。力さえ無ければ狂うこともなかったのに。
俺がこんな力を持たなければ、知らなければ――日常に居て皆と平凡な日々を過ごすことが出来たのに。
人が空を舞っている。
自由に飛ぶことができる翼を手に入れたように、自分の意思で空を舞っている。
「――――」
杖先から子供の頃にみたロボットが撃ちだすビーム砲のようなものと、空が一瞬歪んで圧縮された空気のようなものらが轟音を立てて飛び交う。
それはまるでたまたまに見てしまった女児向けの魔法を使って戦う少女のアニメのような現実離れした光景が目の前には平然と繰り広げられている。
「」
俺は魔法を軽く、甘く見ていたのだろう。
架空のおとぎ話に出てくるような、杖を一振りするだけでなんでも叶えてくれるまったくもって都合の良いものだと。
しかしそれは違った。
魔法を使うことで戦いが巻き起こりそして傷つくのだ。
その様を今俺は目の当たりにしてしまった
「雨野っ!」
何かの見えない壁のようなものに叩きつけられた彼女に放った言葉が、彼女の名字だった。
それでも空遠く、その声は届くはずもないのだ。そうして少女はボロボロの体で体勢を立て直してまた飛び立った。
俺はおとぎ話、架空、幻想を毛嫌いしていた。理由がなかった訳ではない。
それは自分で考えても非常に馬鹿馬鹿しい物で虚しいもので他者に否定されてしまえばそれまでのことなのだ。
それに腹立て、俺は非確定的なことを信じなくなった。そんなことに抵抗も生まれたのだ。
”ありえないこと”でもそれは現実に存在している、少なくとも今俺が呆然と見ている光景がそれだ。
その”ありえないこと”を俺が認識してしまった時点で非確定から確定に変わり、虚実が真実になった。
それでも俺はそれを拒み続けた。これは嘘だ、タチの悪い冗談できっとタネが有って、出来そこないの頭が見ている痛々しい夢なのだと。
しかし今気づいた、気づいてしまった。
何が少女を動かしているんだ、と。その疑問が俺を拒ませた。
そんな空想みたいなこと、夢みたいなことになぜそこまでしている?
自分に得な事なんて無さそうなのに、体を張ってまで自分を傷つけてまで。
損得勘定、有益不益。到底俺には理解が出来なかった。”魔法”で傷を治せたとはいえ、あれほどまでの重症を負ってそれでも戦いに挑んだ彼女に。
逃げだせばいい、そう俺は思う。もちろん俺なら確実にそうしていただろう。謝って許してもらえるもならいいし、そうでなければ駆けだしてそれから逃げるだろう。
しかし彼女は逃げず、敵へと向かった。
”魔法"って何だ? 夢を叶えるおとぎ話とは到底違う。でも彼女はそれを”魔法”という。
自らの体を削ってまで戦う理由――俺にはわからないよ。分からない。
そして瞬間的な爆発のような砕けるコンクリートの音が響くと共に――戦い続けていた一人の少女が地面に落ちた。
その様を俺はしっかりと脳裏に焼きつくほどに凝視し叫んでしまった――
「雨野ぉ!」
* *
壊れていた。この世界は壊れていた。
なぜ魔法は存在するのか、なぜ戦わなければならないのか。
なぜ誰かが傷つかなければならないのか、苦しまなければならないのか。
理不尽に思えても、世界はそう出来てしまっているから騒いでも仕方がないけども。
力を持てたモノと持てぬモノ。残酷すぎるその違いは運命を左右した。
脆く、醜く、欠陥だらけのこの世界を皆は生きていくしかないのだろうか?
そもそも魔法なんてなければ良かったのに。力さえ無ければ狂うこともなかったのに。
俺がこんな力を持たなければ、知らなければ――日常に居て皆と平凡な日々を過ごすことが出来たのに。