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キングダムハーツ【Five・Blade/短編集】

レイラ

INDEX

  • あらすじ
  • 01 “運命”の日
  • 02 君を守るから
  • 03 恋愛相談
  • 04 アイスの思い出
  • 05 相棒と過ごす日
  • 06 お楽しみは取っておくもの
  • 07 外伝:キーブレードのゆうしゃクロナ『1』
  • 08 イメージネタで困惑!?その1
  • 09 イメージネタで困惑!?その2
  • 10 戦線離脱の後
  • 11 突然の来傍者
  • 12 プロメッサの頼み
  • 13 (お知らせ)主役はお前らだけじゃないんだぜ!(新作発表)
  • 14 激突!クイズバトル!ルール説明
  • 15 激突!クイズバトル!第一回戦@前半
  • 16 激突!クイズバトル!第一回戦@後半
  • 17 激突!クイズバトル!第一回戦A前半
  • 18 クリスマス&鈴神誕生日特別記念
  • 19 天然巫女の誕生祝祭(予告)
  • 20 天然巫女の誕生祝祭【奇跡を起こせるなら、涙を止めて】
  • 21 天然巫女の誕生祝祭【ANOTHER】
  • 22 風光の勇者の誕生祝祭【平行世界の存在との出逢い】
  • 23 生存報告&ちょっとした変更
  • 24 七夕編 【まさに外道なスペシャル回】
  • 25 宿題が、終わらないっ!?
  • “運命”の日



    俺の名前はレイ・ディアス。基本的には下の名前で呼ばれる事は無いけど、たくさんの友達にも囲まれて今は仲間と共にこのデスティニーアイランドで暮らしている。

    仲間と過ごす日々はとても楽しい物で、これからも変わることなく続いてほしいと思っていたが、それはある日を境に変わった。

    2月13日の夜に届いた、あのメールが切っ掛けだった。

    『明日、大切な話があります。一人で高台まで来てください
    クロナより』

    俺の幼馴染みで一番の親友であるクロナ・アクアスからのメールの内容は明らかに何時もと違った。普段ならまるで俗に言うマシンガントークのように大量な内容なのだが、今回ばかりは珍しく一言しか書かれていなかった。

    「俺、何かしたかな?」

    明らかに何時もと違うメールの内容に俺の不安はざわつき、俺はさっさと布団の中へ入りその日を終えた。

    次の日の朝、デスティニーアイランドの俺の家はアースにある実家程では無いが広く、軽く五人家族ならごく普通に暮らせそうだ。少し前までこの家に慣れていなかったなんて今ではとても信じられない。

    そう言えばクロナのメールには詳しい日時などが書かれていなかった。幼馴染みだからこそわかるがクロナは普段七時に起きる俺よりも早く起きていたはず。それほど大切な話ならもうすでに起きて高台へ向かっているのだろうか。

    朝食は簡単な物を作り、急いで仕度して家を出た。扉の鍵を閉めて暫く歩くと、何時もの二人に出くわした。

    「よっ、相棒!」
    「お早うレイ!」

    藍色逆立ち頭の自称俺の相棒ことダークと、小学生並のルックスに定評のあるフィオ。クロナほどではないが長い付き合いの親友だ。

    「お早う二人とも、これからどっか行くの?」
    「いや、お前を誘いに来たんだよ」
    「とかなんとか言って、本当は宿題手伝って欲しい癖にー」

    ダークの発言は呆れるフィオの言葉ですぐに嘘だとわかった。いや、一応本当なのだが、普段宿題などの課題をやらず俺達といる事の多いダークの事を考えるとやはりフィオの言った通りになるだろう。

    「う、うっせ!それよかソラ達もくっからさ、お前もどうよ?」
    「ごめん、俺大事な用事があるから」

    俺を誘う親友二人に素直に頭を下げた。何時もなら断る理由など無いのだが、今回ばかりは話が別だ。人生で最も付き合いの長いクロナの様子が何時もと違うとなると気になって急ぎたくなるのだ。現に暑くもないこの気温の中額から流れる汗がそれを物語っている。

    「まだ八時なのに、それほど大事な事なのか?
    「もしかして、学校の補習?」
    「そ、そうそう!」

    ダークとフィオはやはり怪しんでいるようで、俺はフィオの話に合わせることで誤魔化そうとしたが、すぐに突っ込まれた。

    「補習?お前しょっちゅう85点取ってただろ。そんな優等生が何で補習なんだ?」
    「こ、今回は赤点だったんだよ!」

    流石は相棒を自称する男。ダークはかなり観察力が良いようだ。実際俺がそのような点数を取っているのは本当だ。低くても65点ほどなので仲間達からはよく誉められていたのだが、逆に覚えられていたとは思わなかった。

    「ふーん、じゃあなんで制服じゃねーんだ?」
    「確かに、これから学校行くのに私服な訳無いもんね!」

    永遠に終わらないダークの質問責め。しかもさらにそれをフィオが後押しするように付け足す。ここで素直に言えばこの質問のスパイラルは止まるだろう。しかしクロナの事を正直に言ってしまって良いのだろうか。彼女なら駄目と言うだろう。

    「も、もう行くね!」
    「「あっ!」」

    流石に質問責めに耐えきれず俺は走って逃げ出した。幸い二人は追ってこず、ポカンとした表情を浮かべるのみだった。

    「なんだあれ?」
    「……さぁ?」

    なんとか二人を振り切り、俺はやっとのことで高台にたどり着いた。ここは俺とフィオとダークが三人でよくアイスを食べたり語り合ったり、遊んだりした場所であり、ここから見える町の景色は絶景その物だ。特に夕暮れではそれがさらに輝くのは言うまでもない。

    この高台は山の近くにある。その近くで俺はとりあえず何時も通りアイスを購入し、この場所へと来たのだが、やはり彼女はいた。高台の丁度真ん中辺りに立っていたのだ。

    「レイ君遅いよ」
    「ご、ごめんクロナ」
    「一時間十二分三秒遅刻だよ!何してたの?」
    「一々細かいよ!て言うか正確な時刻書いてなかったよね!?」

    あまりにも一方的に怒るのでそう言ってやると、クロナはすぐに気付き、頭を下げた。

    「ごめんなさい、あまりに大事な事だったから忘れてたわ」
    「良いよ、で……話って何?」

    その言葉を言い放った時、クロナは一瞬頬を赤らめた。それに疑問を抱いたのも束の間、クロナは俺に背を向け、右腕をもう片方の手で後ろで取り、顔のみがこちらを見た。

    「レイ君、私達色んな事があったよね。突然私が浚われたり、それをレイ君達に助けられたり、χブレードが復活したり、レイ君が変わっちゃって暫く会えなかったり、本当…色んな事があった」
    「……」
    「でもね、私それだけじゃ足りなくなったんだ。君のいない期間が長すぎて気づいちゃったんだ。“私には君が必要”だって言う事がね」

    その表情は照れながらも微笑んでいた。自分の素直な気持ちを伝えられて嬉しいのだろう。

    「だから……聞いていい?レイ君は、私の事どう思う?」

    クロナの遠回しな問い掛けに心臓の高鳴りが何時にも増した。俺は心底ドキドキしながらもクロナを後ろから抱き締めた。

    「っ!」
    「これでもわからない?」
    「ううん……はっきりわかったよ」

    俺は傍にいるクロナを感じながら彼女の言いたいことを予想してみた。しかしその前にクロナが例の言葉を言った。

    「好きだよ、レイ君……」

    その言葉に俺は心の底から喜びを覚えた。クロナのメールの文がおかしかったのは俺が何かをやらかしたからではなく、単純にクロナが俺への想いを伝えようとしていただけだとやっとわかった。俺は一旦クロナを解放し、その右手を左手で握り崖の方まで連れていった。

    「レイ君達、何時もここでアイスを食べてるんだよね?」
    「うん!」

    俺とフィオとダークの三人は何時も集まったらまずアイスを買って崖に座って食べるのが日課となっている。端から見れば完全に危険と隣り合わせだが、一番景色が見れる場所と言うことで三人とも気に入っている。

    そのように何時も通りに俺は崖に腰を掛け、その左隣にクロナが腰を掛けた。そして先程買っていたアイスをクロナに手渡す。

    「確かこれ“シーソルトアイス”って言うんだっけ?」
    「あぁ、前にお母さんが他の世界に言ったときにお土産物として持ってきてくれて、それ以降作り方も覚えて、デスティニーアイランドに広めたらとうとう市販化までしちゃったよ」
    「フフっ、そうなんだ。あっ、確かに甘くてしょっぱい!でも美味しい〜!」

    初めて体験するシーソルトアイスの味に感激するクロナ。その笑顔は昔から見てきたはずなのに今回は何時にも増して可愛く見えた。それは多分今日が特別な日だからだろう。先程の出来事を見ていればすぐにわかるはずだ。最も、この出来事は俺達二人しか知らないのだが。

    「ねぇレイ君、波は行ったり来たりする物だよね」

    突然クロナが遠くにある海を指差して言った。この高台からはデスティニーアイランドの町だけでなくほぼ全てが見渡せるので当然海も見える。その海の波はクロナの言う通り確かに行ったり来たりを繰り返している。

    「でも、私は何処かへ行ったりもしないし、引き返したりもしない。だって、ずっと君と同じ場所にいたいから…」
    「俺も、君を置いていったりしない……」
    「うん、レイ君……隣で私の事、ずっと見ててね」

    俺は笑顔で、そして強く頷いた。今日と言う特別な日は俺達に絆を超えた物をくれた。これまで一番大切だと思っていたクロナが、本当に一番大切な存在となっている。これももしかしたら一つの“運命”なのかもしれない。

    「クロナ、これから空白埋めてこうぜ」
    「もちろんだよ」

    再び手を繋ぎ、町の景色とは反対側を見るようにして立ち上がった。

    「そろそろみんなの所行こうか。ソラ達も来てるみたいだし」
    「まだ二人でいたいけど……まあ良いよ!」

    その日から俺達の新たな友情の形が始まった。そんな気がする。

    14/05/09 00:38 レイラ   

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