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FINAL FANTASY Z

960

INDEX

  • あらすじ
  • 01 序章T 「その戦士、孤独」
  • 02 序章U 「その戦士、焦る」
  • 03  第一話 「ザックス」
  • 04 第二話 「ウータイ」
  • 05 第三話 「灯」
  • 06 第四話 「夢・記憶@」
  • 07 第五話 「曲者揃い」
  • 08 第六話 「対面」
  • 09 第七話 「シスネ」
  • 10 第八話 「黒の訪問者」
  • 11 第九話 「ルシア」
  • 12 第十話 「四人」
  • 13 第十一話 「戯れ」
  • 14 第十二話 「邂逅」
  • 15 第十三話 「エアリス」
  • 16 第十四話 「騒動」
  • 17 第十五話 「神の都市」
  • 18 第十六話 「少女」
  • 19 第十七話 「胎動」
  • 20 第十八話 「虚実」
  • 21 第十九話 「ペア@」
  • 22 第二十話 「ペアA」
  • 23 第二十一話 「夢・記憶A」
  • 24 第二十二話 「夢・記憶B」
  • 25 第二十三話 「宣告」
  • 26 第二十四話 「リバーシ」
  • 27 第二十五話 「接触」
  • 28 第二十六話 「見据える者」
  • 29 第二十七話 「ルーツ」
  • 第十二話 「邂逅」




     神羅を背負って立つソルジャークラス1stの昔話は、それこそ彼らも自分と同じ感情を持つ一人の人間なのだということを実感させた。中でも英雄の称号を手にするこの男の印象は、威厳ある近寄りがたい絶対的な存在といった堅いものであった為、その口から自分と親しい1stの慣れ親しんだ姿が語られることは、ザックスのこのセフィロスという男への印象を更に和らげるものとなった。
     それでも、いやだからこそか。自分たちに襲い掛かってきたモンスターの鼻先にかつての友の顔が付いているという事実は、かの男が自分たちとは敵対した側に付いてしまったことを嫌でも身に沁みさせた。何故アンジールは向こうに付いていってしまったのか。セフィロスの口から出た“ホランダー”という科学者のことも気になる。
     二人は引き続き伍番魔晄炉の捜査に当たった。





     施設を調べるうちに、何となくだがジェネシスとアンジールの繋がりが見えてきた。事は単なる幼馴染という関係から起こったものではなく、どうやらG系ソルジャーなるものが大きく関係しているようだった。

    「『プロジェクト・G』によって生み出されたのがジェネシスだ。」

    「プロジェクト・G―――――。」

    プロジェクト・ジェネシス。そうセフィロスが呟く。聡明な男は散りばめられた研究資料や数々の断片的なレポート、そして自身の思い出を軸に事の概要を掴みつつあった。彼の口から紡がれる言葉には確証にも似た何かが含まれており、それは度重なる任務での経験しか軸がないザックスをも納得させるだけの論拠があるように聞こえた。
     しかし、ここで彼の口を止めたのは背後から聞こえた金属音、そして聞こえるはずのない人物の声であった。

    「セ、セフィロス!?」

     振り返った先にいたのはラフな服装の上から汚れた白衣を羽織った少々肥満体系の男。無精髭をそのままに、清潔感からは程遠い外見のその男は、明らかに懐疑の目を持って目の前に佇む銀髪の巨躯を見詰めている。ザックスにとっては馴染み無い顔でも、もう一人―――英雄にとってはそうではないらしい。互いが互いを注視しながら歩み寄る中、セフィロスは威嚇にも似た態度で男を睨み付ける。
     そんな中だった。両者の距離が僅か3メートルと数える間もない程にまで縮まったとき、『それ』は弱者を守るように、或いはかつての友に立ちはだかるように舞い降りたのだった。
     今度はザックスでもその存在は認識できる。グリーフィングルームのモニターに映し出された姿と何一つ変わらない『赤』は、手にしていた愛刀の切っ先を英雄の喉元へ向けて容赦なく突き出した。

    「―――ジェネシス・・。」

    「ホランダーは渡さない。」

     その言葉を合図にホランダーが一目散に逃げだすのを視界の端で捉えると、セフィロスは後ろで光景に目を奪われていた新米1stに向かってその跡を追うように指示を出した。声にすかさず反応したザックスは階段付近でうろちょろしている科学者向かって自慢の足を走らせる。あっさり追わせたところを見ると、どうやらジェネシスはザックスよりも自分の方を余程優先したいらしい。あっという間に二人きりになった空間の中、先に口火を切ったのはセフィロスの方だった。

    「―――クロウがいなくて良かったのか、それとも悪かったのか。」

    「俺たちにとってはこの方が好都合だった。だからコイツに足止めしてもらったのさ。」

    「―――そのとーり。」

    「――――――!?」

     ジェネシスの声に呼応する形で聞きなれない声が空間にこだました。瞬間、背後に魔法陣が現れ、その中から何かがずるりと抜け出る。現れたのは見知った友を黒く染めたような容貌の少年。真紅の眼と喉元から聞こえる笑い声からは常識を酷く逸脱した印象を与える。

    「初めまして、セフィロス。噂通り完璧超人!って感じだねぇ、いずれアンタとも戦ってみたいなぁ〜!」

    効果音を付けるならウキウキとかワクワクとかそんな感じか。まるでおやつを目の前に頬を上気させる子どものような仕草は、先程までいた通称仔犬と似たような幼さを感じさせる。が、ジェネシスは先程この少年にクロウの足止めを頼んだと言っていた。何をしたかは知らないが、1stの中では最も好戦的なクロウがこんな得体の知れない敵を前にしておとなしくしているとは思えない。付け加え、直接対戦した経験は少ないにしろ、クロウが1stの一人として数えられる理由はセフィロス自身分かっているつもりだ。傷一つ見当たらず、しかも飄々とした態度から推察するに、この少年の実力はかの子どもソルジャーを余裕で下すレベルなのだということが窺い知れよう。

    「お前は大人しく見ていろ。セフィロスとは俺がやる。」

    「何だよ、出番なしかよ。なら何で呼んだんだよ、折角いいところだったのにさぁ〜?」

    ぶつぶつ不平を垂れ始めた少年はジェネシスの背後―――この研究施設へと通じる階段まで足を運ぶと、大きなため息をつきながらそこに座り込んだ。
     少年を完全に蚊帳の外へと追いやると、ジェネシスは待ってましたと言わんばかりにかの古書の文面を口にする。もうそのフレーズを何度聞いたことか。さして興味もなかったのに、この物好きのせいで今や自分もこのフレーズを覚えてしまった。『LОVELESS』好きなところは昔と変わらなというのに、何故自分たちの関係は180度も回転してしまったのか。

    「―――3人の友は戦場へ。ひとりは捕虜となり、ひとりは飛び去り、残ったひとりは英雄となった。」

    「よくある話だ。」

     ジェネシスが何を言わんとしているかは分かる。古書に記された人物を、よく自分たちに当てはめて考えることが好きだった。

    「俺たちが演じるとすれば、英雄の役は俺か?お前か?」

     その度にいつも仲間外れは誰だと騒いだ記憶もまだ新しい。そう、いつもはしゃいでつるんでいた人数と、古書に登場する人数は一致しない。そんな些細な理由が元で、セフィロスをはじめアンジールもロゼもその内容を鵜呑みにはしていなかった。

    「―――お前がやればいい。」

     投げやりに言って見せる。そう、英雄なんて肩書は後から付いてきたもの。自分にとっては誰がやろうが興味のないことだった。

    「ああ。あんたの名声は本当なら俺のものだった。」

    「くだらん。」

    「今となっては、な。俺が最も手に入れたいのは、『女神の贈り物』だ。」

     片手を上げ、天を仰ぐ様はまさしく胸中を占めるそれを欲さんとする者の姿だった。
     自分には分からない。自分たちを古書にぞらえる意味が。ジェネシスが何を目指しているのか。『女神の贈り物』とは何なのか。
     英雄の目に影が差した瞬間だった。





     追い詰めた先で、ザックスは怒りとも分からぬ曖昧な感情を抱いていた。あと少しというところで自分を制止したその剣は、かつて彼が誇りと称したそれだった。いや、そんなことはよかった。彼に理解できなかったのは、男が何を思い今の行動に出ているか、そこに尽きた。決して自分の言葉は曲げない、芯の通った熱血漢だったこの男が今取っている行動は、男が貫いてきた姿勢に反するものばかりだったからだ。アンジールは、訳もなしにそんなことをする男ではない。

    「一体何がしたいんだよ!?」

     悲痛にも似た叫びに返ってきたのは、自嘲気味の表情と、真っ白な羽だった。

    「俺はモンスターになってしまった。モンスターの目的など、復讐か世界征服くらいしか思いつかん。」

     どこかやるせない色を含んだその表情に、ザックスは直感的に思った。
    ああ、アンジールは今苦しんでいるのだ、と―――。
     そうして意を決したように力強い足取りで近付いたザックスは、曇りのない目でしっかりとその姿を捉えると、先程出会ったばかりの少女が切なげに呟いていた言葉を発した。

    「翼はモンスターの証じゃない。“天使の翼”なんだ。」

    「―――なるほど。ならば天使はどんな目的を持てばいいんだ?俺は―――どんな夢を見ればいいんだ―――――っ!!」

     もがき苦しんでいるのだと。一目で分かる友の叫びはザックスの心に大きく刺さった。
     アンジールは手にしていたバスターソードを傍らへ突き刺すとザックスへ歩み寄り、ザックスはそれに圧倒されてか後ずさりながら互いに言葉を交わす。



     “天使の夢は一つだけ―――――”



     “教えてくれ、アンジール!”










     襲い喰った衝撃にザックスは足場もろとも崩れ落ちていく。
     最後に聞いた友の声は、これまでに聞いたものとは違った力強さが込められていて。それでいて、これ以上ない程悲しげだった。

     薄れていく意識の中、それが反復される。


     “天使の夢は一つだけ―――――”







     “人間になりたい”

















     暗闇の中、ふわふわと舞い降りる白い羽だけが見える。
     闇の中こだまするのは、聞きなれた優しいヒトの声―――――。いる筈のない母親が、自分を心配する声。
     「何があったんだい?」そう尋ねる母の声に、自分の思いを告げる。


     “俺・・・友達を助けてやりたいんだよ・・・。”


     “でも、どうしたら良いのか、わからないんだ・・・。”


     母なら何と答えるだろう。そんな考えが浮かんだ矢先、聞こえてきたのは―――――・・・




    「もしも〜し!」





     母にしてはやけにトーンが高く活発な印象の声に違和感を感じ、ザックスはゆっくりと暗闇を解放する。途端視界を覆った光のまぶしさに一瞬目を細めるが、次の瞬間、飛び込んできたのは、純白のワンピースに身を包んだ、茶髪の少女の顔だった。



    16/06/06 19:56 960   

    ■作者メッセージ
    更新が遅いわ。
    って自分でも思いました、まだ続いてたのね、この小説と。

    昨日初めてACを観たのですが、Z本編を未プレイの私には所々内容を飲み込むのが辛かったです!
    いやそれでも美麗CGにド迫力のアクション、タークス2人のボケがいい感じにまとまった素晴らしい作品でした!!

    影響されて就活にもかかわらず執筆しようと思い立った次第です!
    今年にあと十話くらいは更新していく予定です!今更ながらに皆さまよろしくお願いしますです!
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