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最終章 闇を切り裂く者

ケーリーは地面に倒れた。
「………」
ルークはケーリーに近寄る。
「……」
返事がない。ただの屍のようだ。
「…うっ」
「ケーリー!?」
息を吹き返した、というよりも最後の力で意識を保っているだけのように見える。
「ルー、ク。お、俺は……そうか、あのとき剣にふれて…
…ルーク、ヤツが、来る…!……最後に、こいつを…」
剣をルークに託した。
「ケーリー、ケーリー…」
彼の目から一粒の涙がこぼれた。そのまま、もう目を開けることはなくなった。
「ケーリーー!!」
ルークも思わず涙をこぼす。流れる液体が顔を滑り、手に落ち、剣に滑って行く。
「…!?」
剣が輝く。二つの剣が輝き、宙に昇がって行く。
そして、まばゆい光と共に剣は一つになった。
(ルーク、ずっと…)
声が聞こえた気がした。しかし、その直後、
「よくも我が野望を邪魔してくれたな…」
どこからか声が聞こえた。
「我が名はデスタ・ムーア。復活した我が力、見せてくれる…」
ゴゴゴ、地面が大きく揺れる。そして、枯れた大地が裂け、地中からピンク色の何とも生々しい顔が出てきた。
人ではなく、悪魔の。
その顔だけでルークよりもでかい。それに加え、顔と同じくらいの大きさの両手も出てきた。
腕ではなく、手首から先だけ。どれも皮膚がはがれたような生々しい色を見せている。
「今回の封印は素人がやってくれたおかげで早く解けた。かつての賢者なら、もっとましな封印をしたであろうに」
ルークはジャックのことを思い出す。
「たった十年の封印では力も衰えてはいない…見せてくれる。我が力を!」
ゴォ、とすさまじい邪気が辺りを包んだ。
しかし、ルークはその場に平然と立っていた。まるで何事もなかったかのように。
「!?」
驚いたのはルークの方だった。自分は何もしていないのに何も感じない。
ふと気が付くと、先ほどの剣が光り輝きルークの手に収まっている。
前の剣の二倍以上の大きさを誇るその剣は、前より軽く感じる。
「ばかな!?きさま、いったい何者だ!?」
ムーアをよそに、ルークは目を閉じる。
(ルーク、ごめん。俺のせいで…)
ケーリーの声が聞こえた。
(俺も力を貸す。だから、奴を倒すんだ!…今の俺たちには、奴を封印する術はない。頼む…)
ルークはゆっくりと目を開けた。
そして、手に持っている剣を見て改めて確認する。
強く握りしめる。
重心を下げ、一気に飛び出るように力を込める。
「死ねぇ!!」
ムーアの右手と左手が、空からルークを潰そうと襲いかかってくる。
ダッ、とかけだして攻撃をかわし、ムーアの顔へと接近する。
「なに!?」
ムーアは一瞬の出来事に頭が追いつかず、そのまま顔面を裂かれた。
そして、ムーアは灰になって消えた。

(ルーク、ありがとう。そして、さようなら。俺はもう戻れないけど、お前は戻ってやり直せ。
俺なんかのために、これまですまなかった。闇ははれた。でもこのままじゃお前は戻れない。
だから、この剣を犠牲にして、お前を元の世界に帰す。剣に宿っている俺も消えるが、どっちみち俺はもう持たない)
「まっ…」
既に遅かった。剣は光り、粒子となって消えてゆく。必死にかき集めようとしたが、何も変わらなかった。
そして、闇に包まれた世界が白く輝いた…
12/04/06 14:26更新 / デロリン・デ・ローデ
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