「こいつは・・・」
ソロは、拍子抜けしてしまった。
それも無理はない。なぜなら、渦の中心から出てきたのはスライムだったのだ。
しかも、一匹だけ。
ソロは、殺気を抑え、剣から手を離した。
恐怖に震えるスライムが哀れに見えたのだ。
それに、何やら後ろから視線を感じる。
この状態では、スライムを無に帰す事はできない。
誰だって好きな人の前で手は汚したくない。もっとも、害を及ぼすのなら話は別だが。
突然、スライムが口を開いた。
「ぼ、僕は悪いスライムじゃないよ!? 気がついたら、ここに出たんだ。本当だよ、信じてよ!」
「黙れ。斬るぞ」
冷たく言い放ったのはソロだった。再び剣に手をかける。
「シンシア、少し目を瞑っててくれ。見たくない物を見る事になる」
「待って、ソロ! 私、しゃべるスライムなんて初めて見たわ。もう少しだけ、話を聞いてみたい」
一時の静寂が流れる。
その静寂を破ったのはソロだった。
「・・・シンシアに少しでも妙な事をしてみろ、貴様の体を真っ二つにしてやる」
という条件で、対話が許された。
「初めまして、スライムさん。私はシンシアっていうの。よろしくね?」
「よ、よろしく・・・」
その後、シンシアとスライムは見事に打ち解けてしまった。
会話を横で聞いていたソロは、軽い嫉妬を覚えた。何度となくスライムを斬ろうとしたが、シンシアの悲しむ顔を考えたら、できなかった。
「ねえ、ソロ。この子とっても面白いよ! 私、この子を斬るのは嫌だな・・・」
「そうか・・・」
旅を始めてから魔物を斬るのに何の抵抗もなかったソロだが、この時だけは迷いを感じた。
勇者として魔物を斬るか、シンシアのために見逃すか。
決断は下された。
「シンシアがそこまで言うなら、斬るのは止めよう。ただし! あまりシンシアに近づかない事だな。貴様の事を信用したわけではない」
シンシアの表情が明るくなった。それを見たソロは、斬らないで正解だと思った。
ここに来た目的も忘れて、シンシアは嬉しそうな顔で、ソロは複雑な表情で地下室を後にした。
「なあシンシア、これだけは約束してくれ。奴が妙な事をしたら、すぐに教えてくれ。いいな?」
「わかった。約束するね!」
一段落したが、なぜか胸騒ぎのするソロだった・・・
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