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第6章『森を駆ける少女』 2

チーグルの森は、エンゲーブからはそう遠くない。
しばらく歩くと、一行は森へとたどり着いた。


グオオオオオオオオ!


遠くで、魔物の雄叫びが聞こえる。
恐らく、フォルクスが放った魔物だろう。

「声はこっちから聞こえてきた!急ごうぜ!」
「待って、レイノス!」

雄叫びの聞こえてきた方向へ向かおうとしたレイノスを、リンが呼び止めた。

「なんだよリン、どうしたんだ?」
「あそこ、人がいるわ!」
「なに!?」

慌ててリンが指差した方向を見てみると、確かにいた。
少し離れたところに、急いだ様子で走っている人がいる。

「って、女の子!?」

よく見てみれば、その人の正体は女の子で、しかも自分達よりずっと歳下の少女だった。
そして走っている方向は…先ほど魔物の雄叫びが聞こえてきた方向だ。

「ボク、追いかけてトめてくるヨ!」

クノンがそういうと、俊敏な走りで少女のもとへ向かった。



「捕まえタ!」
「ふぇ!だ、誰!?」
「みゅみゅ!?」

幸いにも、少女にはすぐに追いつくことができた。
クノンは少女の腕をつかんで止める。
突然腕を掴まれた少女と、少女の頭に乗っていたチーグルは驚いた様子を見せる。


「!そのチーグル…」
「放して!行かないといけないの!」


少女の頭に乗っているチーグルに、一瞬クノンは驚いた表情となる。
が、少女の声を聞くとすぐに我に返った。

「ダメだよ〜お嬢ちゃん。この先にはヤバイ魔物がいるんだから」
「だからこそだよ!パパとママに代わって、私が倒さないと!」
「ヘ?パパとママ?」
「お〜いクノン!」

レイノス達がこちらに遅れてやってきた。
とりあえず、彼らを交えてこの少女と話をしてみる必要がありそうだ。



「なるほど…お前は魔獣使いの夫婦の娘なのか」
「うん!シノン・エルメスだよ!よろしくね」
「みゅみゅ!」
「こっちはハノン!ハノンは私のお友達で、大事なパートナーだよ」

セネリオの言葉を肯定すると、少女は明るい笑顔で名前を名乗り、頭に乗っているチーグルの紹介をした。

「こっちも自己紹介って行きたいとこだけど…今はそれどころじゃないよな」

レイノスの言葉にシノンはコクリと頷く。
そう、今は一刻も早くフォルクスの放った魔物を倒さなければいけない。

「もしかしてみんなは、アランさんが呼んでくるって言ってた助っ人さん?」
「ああ…実は、あの魔物がここに連れてこられたのには、俺達にも多少責任がある。手伝わせてくれないか?」

セネリオのその言葉に、シノンはしばらくう〜んと頭をひねっていたが、

「…分かった!一緒に倒そう!」

セネリオの申し出を快く了承してくれた。

「よし、そういうことなら早く…」
「待ってレイノス!」
「今度はなんだよ!?」

改めて魔物の所へ向かおうとしたレイノスを再びリンが止めた。

「ねえシノンちゃん、ご両親は重傷を負ってるって聞いたんだけど…」
「うん…パパもママも、パパとママのパートナーの魔物も、かなりのダメージを負ってる。放っておくと危ないかも…」
「それなら、彼らがいる場所に案内してくれないかな?私、治癒術が使えるからあなたのパパたちの怪我、少しは治してあげられると思うから」
「本当!?……あ、でも」

シノンは魔物がいる方向を見る。

「心配しないでくださいシノンさん。魔物は私たちがなんとかしますから。だからリンさんを案内してあげてください」

アルセリアが安心させるようにシノンの頭をなでてあげながら、言う。

「…分かった。それじゃあ頼むねみんな!リンを連れて行ったら、私もすぐそっちに行くから!」

そういうとシノンは、リンを連れて去って行った。

「よし、それじゃあ行くとしますか」

ミステリアスの言葉に他の一同も頷くと、リンとシノンが去って行ったのとは別の方向へと歩き出した。


グオオオオオオオオオオ!!


目指すは今もなお雄叫びをあげ続ける魔物の所だ。


スキット「シノンについて」
ミステリアス「しかし、シノンだったか?あの子、俺達が来なかったらマジで一人で戦うつもりだったのか?」
アルセリア「かもしれないですね。止められて良かったです」
レイノス「ていうか、魔獣使いの夫婦の娘って言ってたけど、親子でこんなとこに住んでるのか?」
セネリオ「だからこそ単身魔物に挑むような逞しい子に育ったのかもしれないな」
クノン「ハノンか…。あのチーグル、アイツに似てたな…」
14/03/10 02:32更新 / わっくん
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