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長編「シノンとハノン」 第1話「少女と魔物の出会い」

「うわ〜、これがチーグルの卵!?」
 
ここはチーグルの森のチーグル達の住処。
そこへ響いたのは未だたどたどしい発音でしゃべる幼い少女。
その表情は期待と好奇心に満ちており、無垢な瞳はらんらんと輝いている。

「おう、今日中には生まれるっていっちょったの」

少女の父親は、一風変わった口調で少女の言葉に答える。
少女の名前はシノン。古代イスパニアで『無垢なる瞳』という意味を持つ。
彼女は今年で2歳になるが、生まれた時からこの森で両親と暮らしている。
そんな彼女は今日、両親とともにチーグルの住処である巣へとやってきていた。


ピキッ!
ピキピキッ!!

「あ!!」

巣へとやって来てから5時間。
シノンは飽きもせずにずっと卵を見つめていた。
そんな様子に両親は呆れながらも、「好きにさせればいいさ」と、声もかけることなく見守っていた。
そんな中、ついに卵から亀裂が走り、音を立てて割れていく!
そして……


卵の中から現れたのは、黄毛の小さなチーグルであった。


「可愛い〜〜〜〜〜!!」

シノンは歓声を上げてそのチーグルを抱きしめる。

「ちょっとシノン…」
「みゅう〜♪」

慌てて母親が制止しようとする。
しかし抱きしめられたチーグルの方はおびえることなく、シノンに頬ずりをしていた。

「ねえ、この子に名前をつけてもいい?」

両親の方を向いて尋ねるシノン。

「何を勝手なこと…」
「構わないですの!」

呆れた様子の母親の言葉を遮ったのは…チーグルの長、ミュウであった。
彼は、突然この森に越してきた人間であるエルメス家を邪険にすることなく、積極的に迎合してくれた。
エルメス家の人たちもその厚意に応えるべく、チーグル達とも積極的に交流を重ねていた。

「その子はシノンになついてるみたいだし、特別に名前を決めさせてあげるですの」
「本当!?ありがとう長老様!」

シノンが満面の笑みでミュウに礼を言う。

「それじゃあ…あなたの名前は……」

シノンはしばらくの思案の後、答えた。

「ハノン!…あなたの名前は『ハノン』だよ!!」
「みゅう〜〜〜♪♪」

命名されたチーグル…ハノンは無邪気な瞳で、喜びの声を上げた。


「なあ、『ハノン』ちゅうのは、どういう意味の名前なんじゃ?」

シノンの父は妻に尋ねた。

「…確か古代イスパニア語で『無邪気なる瞳』だったかしら」


こうして、一人の少女と一匹のチーグル……シノンとハノンは出会った。
14/03/11 10:50更新 / わっくん
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