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長編「シノンとハノン」 第2話「ハノンの決意」

「こんにちは!ハノン♪」

ここはチーグルの巣の中。
そこへ、少女の明るい声が響く。

「みゅみゅみゅ♪」

呼ばれたチーグル…ハノンは元気よく返事をする。

シノンとハノンが初めて出会ってから3年の月日が流れていた。
二人は出会ったころからとっても仲良しで毎日のように一緒に遊んでいた。

「パパ、ママ、ハノンと遊んでくるね!」
「おう、あんま遠くにいかんようにな」
「気を付けてね」

そして今日も二人は一緒だ。
シノンは両親に声をかけると、ハノンと共に巣の外へと出た。


「うわ〜!すごいねハノン!火を噴けるようになったんだ〜!」

僕はハノン。今年で3歳になるチーグルだ。
今日も僕は目の前にいる少女、シノンと遊んでいる。
シノンは僕が口から火を噴くと、驚き、そしてとても喜んでくれた。
喜んだシノンの表情を見て、僕の表情も緩む。
彼女の邪気のない笑顔は、見ていてとても気持ち良くて、こっちまでうれしくなってくる。
僕は、そんな彼女の笑顔を見るのが大好きだった。

「ね、ね、もう一回やってみて!」

シノンが期待を込めたまなざしでこちらを見つめている。
気をよくした僕は、もう一度炎を吐く。
数メートル先の前方にいる魔物に気付かないまま。


「グルルルル……」

顔を黒こげにしたウルフが、こちらを睨みつけている。
そう。ハノンが発した炎が直撃したのである。

「ウガァァ!!」

雄叫びをあげたウルフがこちらに走り寄ってくる。
ハノンはあわてて炎を吐いて応戦する。
しかし、所詮は身につけて間もない炎だ。通用するはずもない。
ウルフは炎を気にする様子もなく、そのままハノンに飛びかかる。

「あぶない!ハノン!」

その時、シノンがハノンをかばって抱きかかえた。
ウルフの体当たりを受け、シノンの体が木に叩き付けられる

「う、く…」

痛みで苦悶の表情のシノン。
その腕には、いまだハノンの小さな体が抱きかかえられていた。


その後もウルフは邪魔だといわんばかりにシノンに体当たりを続け、そのたびにシノンの体は吹き飛ばされる。
しかし彼女は、けっしてハノンを離そうとはしない。

「みゅみゅみゅみゅみゅー!!(シノン、僕のことはいいから逃げて!)」
「大丈夫……だよ………ハノン…」

諭すように優しくハノンを励ますシノン。
そして、目の前にいるウルフを睨みつける。

「ハノンをいじめたら…許さないんだから!」

そういうとシノンは、木の枝をエルフめがけて投げつける。

「ギアアアアアアアアア!!」

木の枝はウルフの目に直撃した。
激しい痛みで雄叫びをあげながらのたうちまわり、その場から逃げだした。

「よか……た………」

逃げ出すウルフを見て、シノンは安堵の表情を浮かべながら気を失って倒れた。

「みゅみゅ!みゅみゅ!みゅみゅみゅーー!!(シノン!シノン!しっかりして!)」


やがて、ウルフの雄叫びを聞いたシノンの両親たちが現れ、シノンとハノンを保護した。
幸いシノンは眠っているだけで、大事にはいたらないようである。
両親はシノンを抱きかかえると、急いで家のほうへと帰って行った。



(僕の……せいだ)

あの時ちゃんと前方を確認していれば。
火を噴いたりしなければ。
それになにより……

(僕がもっと……強かったら!)

あんな魔物にやられることもなかった。
シノンがあんな傷だらけになることもなかった。
シノンの顔を、苦痛でゆがめることもなかった。


そう…力があったなら!


(強く……なるんだ)

シノンを傷つけさせないために。
シノンに悲しい思いをさせないために。
シノンの……笑顔を守るために。

(強くなって…今度こそシノンを守ってみせる!)


それは、小さな戦士の……強い決意だった。
14/03/11 10:53更新 / わっくん
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