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長編「シノンとハノン」 第4話「闇夜の襲撃」

(『』内のセリフはハノンのセリフを人間語にしたものです)

『ただいま』
「みゅう、おかえりですの!ハノン」

陽が暮れ始めたころ、ハノンは巣の中へと帰ってきた。
帰ってきたハノンに、ミュウが声をかける。

「また森の外で特訓をしてたんですの?」
『うん!だいぶ強く火が噴けるようになったよ!』
「頑張るのはいいけど、無理はしちゃダメですの」
『分かってるよ!無理して倒れて、いざという時にシノンを守れなくなっちゃ嫌だし』

この二年間、ハノンは強くなるためと、時間を見つけては森の外で火を噴く特訓をしていた。
そんなことしなくても大人になれば強く噴けるようになる、と他のチーグル達は言うのだが、それに対してハノンは、

『大人になるまで待ってられないし、それに普通に噴けるんじゃダメなんだ!シノンをどんな敵からも守れるくらいに強く噴けるようにならないと!』

そういって聞く耳を持たなかったのだ。

(ハノンを見ていると、昔を思い出すですの…)

ハノンの姿にミュウは、昔の自分の姿を重ねていた。
ご主人様…ルークの助けになりたいと、彼らについて旅をした自分の姿を。


「すまん!邪魔するぞ!!」

いきなり巣の中に大声が響いた。
その声の主は…シノンの父であった。

「シノンは来ちょらんかの?」
「シノンは来てないですの。そんなに慌ててどうしたんですの?」
「シノンが…家を飛び出してどっかに行ってしもうたんじゃ!」

シノンの父の言葉に、ミュウとハノンは驚きの表情を浮かべる。
夜の魔物は危険だ。早く見つけないと危険だ!

『ミュウ長老、僕、シノンを探しに行ってくる!』
「分かったですの、気を付けるですの」

ハノンはミュウの言葉を聞き終える間もなく、一目散に飛び出していった。


「ワイの…ワイのせいじゃ……」

巣の中で自分を責めるシノンの父。
その様子を見て、ミュウはなんとなくだが何があったのか理解した。
しかし、いつまでもこのままにしておくわけにはいかない。

「落ち込んでる場合じゃないですの!急いでシノンを見つけるですの!」
「……そうじゃの、すまんかった!」

シノンの父はなんとか立ち直ると、シノンを探すため再び駆け出した。



「うう……ひっく………」

すっかり暗くなった森の中で、シノンは泣いていた。
思い出すのは、先程聞かされた養子の話。

確かに森の外には興味があった。
しかし、両親のもとを離れ、別の家の子になるとなると話は別だ。
パパやママは、自分のことを嫌いになったのだろうか。

(それに…ハノンがいる)

ハノン。
この森で出来た最初の友達。
ハノンとお別れするなんて、シノンにはとても考えられなかった。


ガサッ!ガサガサ!

「え!?」

突然の茂みの音に、シノンはびくっとする。
辺りを見渡せば、無数の瞳が、茂みの奥でシノンを睨みつけていた。

「い、いや……怖いよ」

そういってシノンは恐怖でその場にぺたりと座りこんだ。
その瞬間、魔物の一匹がシノンに飛び掛かってきた!


「みゅみゅうううううーー!!」


突然聞こえてきたチーグルの声と続けて放たれる紅蓮の炎。
炎の直撃を受けた魔物は、ドサリと倒れた。

「ハノン!!」

そこにいたのは、小さな親友の姿だった。


「みゅううううーー!みゅううううううーーー!!」

次々現れる魔物たちは、ハノンの吐き続ける炎の前に、次々と倒れていく。

(すごい…ハノン強い)

その様子を見て、シノンは感嘆している。
この小さな体のどこに、これだけの力があふれているのだろう。

しかし、ハノンの優勢は長くは続かなかった。
いくら並のチーグルよりも強力といっても所詮は直線的な炎だ。
魔物たちも対応に慣れてくる。
おまけにハノンは、何度も火を放ち続けて消耗していた。


「ガウ!」
「みゅうう!」
「ハノン!」

魔物のタックルを受けたハノンが倒れる。
ハノンが起き上がらないことを確認すると、魔物たちは再びシノンを標的に定める。

「もう……ダメ…」
「シノン!無事か!」

シノンがあきらめかけたその時。
再び聞き覚えのある声が聞こえてきた。
そこにいたのは、シノンをかばうように立っている父の姿であった。



結局、魔物たちは父と、遅れてやってきた母、二人が従える魔物たちの連携によって駆逐された。

「まったく。無事でなによりじゃ」
「パパ…ごめんなさい。それから…ありがとう」

シノンは謝罪と礼を同時に口にした。
謝罪は勝手に森の奥へ入って行ってしまったこと。
お礼は助けてくれたこと。

「…気にすんな。それより、ハノンの様子はどうじゃ?」
「あ!」

父の言葉にシノンは急いで倒れているハノンのもとへ駆け寄る。

「ハノン!ハノン!しっかりして!」
「こいつはえらい弱
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