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第6章『森を駆ける少女』 6

シノンとハノンを仲間に加えた一行は、チーグルの森を後にしてエンゲーブへ戻ろうとしていた。
既に日は沈みかけている。
今日もエンゲーブで一泊することになりそうだ。


「レイトラスト!」


その道中に現れた魔物。
シノンのチャクラムがオタオタに命中する。

「今だよハノン!」
「みゅみゅう〜っ!」

追撃するべく、シノンの指示でハノンが炎を噴き、オタオタは黒焦げとなって戦闘不能となった。

「やったねハノン!」
「みゅう!」

シノンとハノンが、パチンとお互いの手を叩きあう。

「ふむ、お前の武器はナイフとチャクラムとそのチーグルか」

そうつぶやいたのはセネリオだった。
シノンの戦力の把握のために、今の戦闘は極力シノンに任せるように指示を出していた。

「うん、私とハノンのコンビネーションは無敵なんだから!」
「みゅ!」
「魔物の使役に投擲武器…あいつらを思い出すな」

セネリオの脳裏に浮かんだのは、かつての同僚であった女性二人の姿であった。
無論、あの二人に比べれば未熟ではあるが、魔物の住む森に住んでいたこともあってか、この幼さでそれなりに戦闘慣れしているようだった。

「しかしチャクラムか…」
「ん?どしたのレイ兄(にい)?」

なにやらバツの悪そうな顔をしたレイノスを見て、シノンが不思議そうな顔をする。

「いや、チャクラム武器にした魔物使いってのにいい思い出がなくてな…」
「この子をフォルクスと一緒にするのは失礼よ」

フォルクスの事を思い出すレイノスに対し、それを察したリンが少し非難をこめた表情で一緒にするのは失礼だと返す。

「フォルクスって、魔物を操って私達の森を襲わせた奴だよね?そいつも私と同じ武器使ってるの!?」
「ウン、そうだヨ」
「うう、なんかやだなあそれ…」

シノンの問いにクノンが肯定する。
するとシノンはしょんぼりと顔を俯かせて落ち込んだ様子を見せる。
どうやらフォルクスのことをかなり嫌悪しているようだ。

そうこうしている内に、一行はエンゲーブへとたどり着いた。



「みなさん!無事でなりよりです!」

エンゲーブに着いて早々、現れたのは辻馬車屋のアランであった。

「アランおじさん!」
「あれ、その子は魔獣使いの夫婦の…」
「シノンは俺たちと一緒に旅することになったんだ」

シノンがいることにキョトンとしているアランに対し、ミステリアスが事情を話す。

「アランおじさん、助っ人を呼んでくれてありがとうね!」
「その様子だと、あの魔物は倒すことができたんすね、良かった」

アランは、魔物が倒されたことに心底ホッとしているようだった。

「それじゃあ、あっしは仕事に戻ります!また出会う事があったらごひいきに!」

そういうとアランは辻馬車と共に村を去って行った。



アランと別れた後、レイノス達は村の人たちに賊の居所について尋ねた。
が、成果はなかった為、宿で一泊して明日はセントビナーへと向かう事となった。

「それにしても、人やお家がいっぱいだねえ♪」

夜、散歩がしたいと外へ出たシノンが、ウキウキした様子で歩く。
子供の一人歩きは危ないということで、リンとアルセリアが付き添っている。

「ふふ、バチカルやグランコクマには、この何倍もたくさんの人がいるのよ」

そんなシノンを微笑ましい様子で眺めながらリンが言う。

「そっかあ、楽しみ♪」
「シノンさんは、ずっと森に住んでたんですか?」

楽しそうな様子のシノンに対し、アルセリアが訊ねる。

「うん!人なんてそんなに来ないから、不思議な感じ」
「…寂しくなかったんですか?」
「全然!だって、パパやママやハノン、それに他にもチーグルのお友達がいっぱいいたもの!」
「パパやママ…ですか」

シノンの言葉に、少し寂しそうな表情を見せるアルセリア。
しかし、夜の闇に隠され、そのことに気づく者はいなかった。


「じゃあ、そろそろ寝ましょうか」
「おやすみなさい」
「ねえねえ」

宿に帰り、眠ろうとしている時。
ベッドに入ろうとしていたリンとアルセリアに、シノンが声をかける。

「ん?どうしたのシノンちゃん?」
「なんでレイ兄たちとは部屋を分けるの?一緒の部屋で寝ればいいのに」
「な!?」

シノンの爆弾発言に、リンは驚きの表情を浮かべる。

「そ、それはその、レイノスさんたちは男性なので…」
「でも、パパはいつも私やママと一緒に寝てるよ?」
「ふ、夫婦なら問題はないんです」

必死に説明を試みるアルセリア。

「ふうん…でもそれなら、ハノンもレイ兄のところに連れていくべきなのかな?」
「みゅみゅ!?」

シノンの言葉に、ハノンは悲しそうな表情を浮かべる。

「ハノンは大丈夫よ」
「なんでハノンはよくてレイ兄たちはだめなの?」
「そ、それは、その…」

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