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プロローグ『旅立ち前の物語』 1

レイノス達と別れてから一週間ばかり経った頃。
セネリオ・バークハルスは、シノン・エルメスをチーグルの森に送った後、カイツールへ向かっていた。
エンゲーブやセントビナーよりも人の出入りが多く、有益な情報が手に入ると踏んだからだ。

(しかし、単独での聞き込みというのは面倒なものだな)

セネリオは現在指名手配を受けている身だ。
正体を明かすわけにもいかず、フードを深くかぶって聞き込みをしなければならない。
当然ながら、不審に思うものも少なくなかった。
そうして、やりにくい聞き込みをしばらく続けていると、

「コーラル城?」
「ああ、あそこはもう30年も前から廃墟のはずなんだけどよ、最近なんか変な音が聞こえてくることがあるんだ。それで、お化けでも住み着いてるんじゃないかって噂だ」
「そうか、情報の提供、感謝する」

街の住人の一人から、コーラル城についての噂を聞いたセネリオは、さっそくコーラル城へと向かった。
かつてはファブレ家の別荘であったそこはまさに廃墟と言った感じで、とても人などいそうにない。
だが、しかしセネリオは、ついてすぐにその場所についての違和感を感じ取っていた。

「…人が出入りしている痕跡がある。それもごく最近だ」

ともかくセネリオは、先へと進んだ。



「これは…!」

コーラル城をしばらく探索していると、奇妙な物を見つけた。
それは、巨大な音機関だった。
しかも、長年使われていないだろうこの屋敷の中で、しっかりと稼働している。

「なんだこの音機関は…まさか」

セネリオには一つ、心当たりがあった。
このコーラル城では、かつてフォミクリー…レプリカを作る音機関が存在していた。
22年前の大戦の後、ジェイド・カーティスによってここの音機関は完全に撤去されたと話に聞いているが…

(…これは、クラノスが関わっているのかもしれないな)

かつてグランコクマでジェイド・カーティスは、クラノスがフォミクリーについて話を聞きたがっていたと話していた。
もしかするとこれは、クラノスが極秘に作成したフォミクリーの音機関かもしれない。

「さて、どうしたものか」

調べてみたいところだが、セネリオにはこの手の機械を操る知識など持ち合わせていない。
素人が下手にいじるのは、得策とはいえないだろう。

(ジェイド・カーティス元帥に確認を取ってみるか)

彼はフォミクリーの生みの親であり、現在のフォミクリー研究の権威だ。
そして、このコーラル城にかつて存在したフォミクリー機器の撤去に関わったのも彼なのだ。
今ここにある音機関に彼が関わっているという可能性は充分にある。

コーラル城を後にしたセネリオは、グランコクマへと向かうためカイツールの軍港へと向かった。
レイノス達と旅をしていた時は、レイノスやリンの存在が身分の証明となっていた為堂々と船に乗ることができたが、今はそうもいかない。
なにより今のセネリオはフードを深くかぶったいかにも不審な人物であり、まともに船に乗ろうと思えば怪しまれること間違いなしだ。
かつてダアトから脱出した時のように、密航するしかないだろう。

(まったく、一人旅というのは不便なものだ)
14/07/31 10:56更新 / わっくん
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