朝になり、セネリオは目を覚ます。
辺りを見回せば、レイノスはまだ眠っているものの、クノンの姿が見えなかった。
もう起きたのだろうか。
「さて、どうするか…」
ベッドから出たセネリオは、これからどうするかを考える。
ファブレ邸もそうだが、この屋敷もとにかく広い。
下手に動かず、部屋に留まって朝食ができるのを待つべきだろう。
コンコン
ドアを叩く音が聞こえる。
それに続けて、ドアの向こう側から声が発せられる。
「セネリオさん、起きてますかー?」
「…スクルドか」
声の正体を理解したセネリオは、ドアを開く。
そこにいたのは、案の定スクルド・フォン・ファブレであった。
「おはようございます、セネリオさん」
「ああ、何か用か?」
訪ねてきたスクルドに、用件を訊ねる。
「その…ちょっと来てほしいんです」
「? ああ」
「さ、こっちです!」
スクルドに腕を引っ張られながら、セネリオは歩く。
先導するスクルドは、ニコニコしながらセネリオの腕をとってずんずんと進んでいく。
やがて、一つの部屋の前で立ち止まった。
「さ、着きましたよ」
「この部屋に何かあるのか?」
「ええ、ここは衣装部屋です」
「衣装…部屋?」
なんだろう。
何か嫌な予感がする。
スクルドの表情を見ると、相変わらずニコニコとした笑顔を絶やさない。
「さあ、入りましょう」
「ま、待て、一体何を…」
制止の言葉もむなしく、セネリオはスクルドに引っ張られる形でその部屋に入った。
「オ〜!御令嬢、オツカレ〜♪」
「ふふ、よくやったわスクルド」
そこにいたのは、クノンとリンだった。
二人は、スクルド同様笑顔であった。
そして二人の後ろには…沢山の衣装が用意されていた。
その衣装は、見た所全て女性ものであり…
(…まさか)
セネリオはゾクリと悪寒を覚えた。
よく見ると、リンの表情は【あの時】のものと酷似していた。
そう、かつての旅でシェリダン港からダアト行の船に乗る直前のあの時に…
「セネリオさん」
隣にいたスクルドが声をかけてくる。
その笑みは、先ほどまでと違って悪戯っぽい笑みへと変わっていて…
「前に言いましたよね?セネリオさんの罰ゲームを考えるって」
「…まさかとは思うが、その罰ゲームというのは」
スクルドの言葉を引き継ぐ形で、リンが宣言した。
「セネリオ、あなたにはここにある衣装で女装をしてもらうわ!」
セネリオはすぐにドアへ向けてダッシュした。
冗談じゃない。
なんだってこんなことに付き合わされなければならない。
女装は以前のダアトで懲りている。
再びあのような格好をさせられるなど、勘弁ならなかった。
「おっと、逃がさないヨ〜♪」
しかしまわりこまれてしまった!
クノンがいち早くセネリオの前へと立ちはだかったのだ。
「どけ!」
「そんなにイヤがらなくてもイイじゃん〜♪」
セネリオはクノンを睨みつけるが、クノンは動じることなくいつものふざけた調子で応じる。
そうこうしている内に、後ろからはリンとスクルドがやってくる。
「ふふふ、観念しなさいセネリオ」
「お兄ちゃんに話を聞いてから、ずっと見てみたいと思ってたんです!お願いしますセネリオさん」
リンは不敵な笑みを浮かべ、スクルドは目を輝かせている。
せめてスクルドが反対してくれればと期待したかったが、そういうわけにもいかないようだ。
実力行使で逃げられないこともないだろうが、指名手配の身であるのにこんな馬鹿げたことで目立つような真似をするのは愚の骨頂というものだ。
恐らくこの3人も、そのことを分かっているからこそ自分が逆らえないと踏んでいるのだろう。
「…分かった。やってやる」
がっくりとうなだれながら、セネリオは降伏した。
こうして、セネリオの変装もとい女装は行われることとなった。
スクルドとクノンはいったん衣装部屋から出る。
途中目を覚ましたレイノスがやってきて、二人と共にセネリオの女装が完成するのを待つこととなった。
彼の女装をバチカルにてスクルドに提案した張本人であるレイノスであったが、寝起きが悪いため作戦遂行の人員としては全く期待されていなかった。
「てか、この罰ゲームの言いだしっぺって坊ちゃんなんだっケ?女装を提案するって、なんかヘンタイっぽい〜♪」
「う、うるせー!あいつが嫌がりそうなことが、他に思いつかなかったんだよ!」
…そして1時間ほどたったころ。
セネリオの女装は完成し、3人は衣装部屋に入った。
リンの隣に現れたセネリオ。
それはまさに絶世の美女だった。
「オオ〜!スゲー!どっからどう見ても女の子ダヨ♪ププッ」
「はは、セネリオ、似合ってるぜ。ククッ」
「うるさい!」
クノンとレイノスの称賛に、声を荒げるセネリオ。
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