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第4章『魔獣使いとパートナー、その絆』 5

「うん、これでよしっと」

一度宿屋の女性部屋に戻ったシノンは、自分の就寝用のベッドの上に1枚の紙切れを置くと、静かに部屋を出た。

「行こう、クノン」
「ホントにみんなに何も言わずに行くワケ?」
「……うん、みんなにはハノンのこと看ててほしいし、それに…これは、私自身の力でやらなきゃいけないことだから」

キノコロードにあるルグニカ紅テングダケを採ってきて、ハノンの病気を治す。
それがシノンの目的だった。
そしてこれは、仲間達の手を借りず、自分自身の手でやり遂げなくてはならない。
その為、仲間達には書置きだけを残して黙って行くつもりだ。

「ハノンに、見せてあげるんだよ。私の強さを。ハノンが無茶しなくても大丈夫なくらい強いんだって」
「フ〜ン、それで移動要因のボク以外は置いてって、自力で頑張ろうってワケね」

クノンとしては、病気を治すキノコさえ確実に手に入ればいいと思っているし、キノコロードの魔物は結構手強いのであまり賛成できなかった。
しかし、シノンの意志は揺るがないようだ。

「一緒に行くからには、ボクも戦うからネ。イヤとは言わせないヨ」
「うん、分かってるよ。私だって、一人じゃきついってのは感じてるし…」
「…オッケー。それじゃ行こっか」





「ねえ、一つ聞いてイイ?」
「ん〜?どしたのクノン」

夜の暗い空を、アルビオールが駈ける。
そんなキノコロードへと向かう最中、クノンがシノンに尋ねた。

「ハノンといい、お嬢ちゃんといい、なんでそんなムチャするわけ?」
「ハノンは私のパートナーだもん!助けるために、多少のムチャくらいするよ!」
「いやでもさ、ハノンを助けるってだけなら、わざわざ危ない森にこんな少人数で行く必要ないじゃん?」
「う…そ、それはそうだけど」

どうにもクノンには、彼ら魔獣使いとそのパートナーとやらの関係についてよく分からないでいた。
なにか、仲間とは違う、友達とも違う、特別な繋がりのようなものを感じずにはいられないのだ。

「お嬢ちゃん、言ってたよネ。ハノンに自分の強さを見せるんだって。魔獣使いってのは、パートナーの魔物に強さを認められないといけないってコト?」
「それはそうだよ。魔物は、基本的に凶暴な生き物なんだから。そんな魔物を手なずけるには、強くないといけないのは当然だよ」

なるほど、確かにシノンの言う事はもっともだった。
弱肉強食の世界を生きる魔物にとって、強さと言うのは重要なパロメータに違いない。
そしてそれは、人間と魔物との間でも変わらないのだろう。

「でも、チーグルって人を襲わないおとなしい生き物じゃん?別に強くなくたって仲良くできるんじゃないの?」
「仲良くなる『だけ』ならね。だけど、私は…私だけじゃない、ハノンも、『友達』じゃなくて相棒…『パートナー』でいたいんだよ」
「パートナー…」
「…あ、あれだよ!あれがキノコロード!」

深い霧の中、一際異彩を放つ森が見えてきた。
あれが、キノコロードだ。


「探すのは朝になって明るくなってからにするヨ」


森への離陸作業をしながら、クノンが探すのは朝になってからだと指示を出す。
暗い森で探すのは非効率で体力の余計な消耗になりかねないからだ。

「うん、分かった!ハノン…待っててね」
15/08/13 08:03更新 / わっくん

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