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第4章『魔獣使いとパートナー、その絆』 12

翌朝、レイノス達はキノコロードを発ち、ケセドニアへと戻った。
アルビオールはあっという間に目的地へと到着し、そして街に入るとすぐに医者のところへ持っていった。

「ごめんなさい、私はクラノス様のところへ戻るわ」

しかし、シンシアはクラノスのところへ戻る必要があるということで、街に入ってすぐ別れることとなった。
元々仕事でこちらに来ていたのだし、仕方がないだろう。
ともかく一行は、医者のもとへ急いだ。




「これは…この希少なキノコを、君たちが見つけてきたのかい?」

医者は驚く。
このキノコは非常に希少であり、そう簡単に見つけることができない代物であった。

「これで、ハノンのこと治してあげてください!」
「…うむ、分かった。すぐに薬を調合しましょう」

シノンの言葉に、医者は了承する。
そして、ルグニカ紅テングダケの薬の調合を始めた。
慣れないものを扱うためか時間はかかったが、翌日の晩、ようやく完成した。

「これが薬です。…君が飲ませてやるといい」
「…はい」

医者はシノンに薬を渡した。
彼女の頑張りに敬意を表したのだろう。
シノンは、緊張した面持ちで薬を受け取る。
そして、ハノンに薬を飲ませた。
ハノンは、シノンから与えられたそれをごくりと飲み込む。

「これで大丈夫。明日の朝には元気になっていることでしょう」

医者の言葉に、シノンはホッとする。
周りにいた他の一同からも、笑みが浮かぶ。

「あの、ハノンとお話していいですか?ちょっとだけでいいんです」
「分かりました、少しだけですよ」

医者も、仲間達も部屋から出て。
その場には、シノンとハノンだけが残された。




「ハノン、もう大丈夫だからね。明日にはきっと元気になってるよ!」
「みゅう…」
「大丈夫!私だって何日も続いた熱が、一晩で治ったんだから!ルグニカ紅テングダケは、どんな病気でも治しちゃうんだから!」

母の受け売りな言葉を、シノンは自信を持って言う。
思えば、あの時のスープを食べた翌日だった。
父に、魔獣使いになる決意表明をしたのは。
そこから、全ては始まったんだ。

「ハノン、いつか言ったよね。私を守るために強くなったんだって。もう私に傷ついて欲しくなかったからって」
「みゅう…」
「でも、私はそれが嫌だった。守られるだけなんて嫌で、私もハノンを守りたかった。だから、強くなった」

結局、原点は同じだったのだ。
相手を守りたいという想いは。
だけどそれ故に、すれ違いを起こしてしまった。

「私もハノンも、強くなったと思ってた。だけど、森の外にはもっと強い人がいて。自分がちっぽけな存在なんだって思い知らされた」
「みゅうう…」

シノンの言葉に、ハノンは顔を曇らせた。
やっぱり、そうだったんだ。
ハノンは…

「だから、強くなろうとしたんだよね。昔そうしたように」
「みゅう!」
「だけどね、ハノン…それじゃあダメなんだよ。一人で強くなろうとしちゃ、ダメだったんだよ」
「みゅう?」
「『シノンは僕の事を守ってよ。その代わりに僕は君を守るから』。…ハノンがあの時言ってくれた言葉、覚えてる?」
「!」

ハノンが、ハッとした表情になる。
どうやらハノンも、気づいたみたいだ。

「あの時ハノンが言ってたんだよ?『シノンは僕の事を守ってよ』って。この気持ちを、私達は忘れてたんだよ」

今回クノンと二人だけでキノコロードに向かい、仲間達には何も言わなかった。
自分の強さを見せる為なんてクノンには言ったが、それじゃあダメなのだ。
仲間に、パートナーに辛い時頼ることができないようでは、魔獣使いとしては失格だったんだ。

「修行なら私も付き合うよ。一人で頑張らないで、一緒に頑張ろう?二人でなら、厳しい訓練だって、苦しみ半分だよ!」

私達魔獣使いとパートナーは、二人三脚みたいなものだ。
一緒に足を動かし、歩むことによって力を発揮する。
そうすることで、その力は2倍にも3倍にもなる。
だから…

「一緒に歩こう、ハノン。私の大切な、パートナー」

ハノンの瞳から、涙がこぼれる。
無邪気なる瞳から流れる雫をぬぐうと、ハノンは言った。


『うん、一緒に歩こう。シノン…僕の大切な相棒』



今この瞬間、幼い魔獣使いとそのパートナーは。

真の意味で、強い絆で結ばれた。
15/12/12 06:44更新 / わっくん
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