シノンは、闇の中を走っていた。
前方に見える背中を追って。
『待って!待ってよ!』
しかし、追えども追えども背中は遠ざかっていくばかりで。
こちらを振り返ることすらなく、離れていく。
『行かないで!クノン!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…さん、シノンさん」
「クノン……クノン!」
「シノンさん!」
「……はっ!セリア…?」
アルセリアに揺すられて、シノンは目を覚ました。
どうやら、今のは夢だったらしい。
「あはは、なんだ夢か…」
「ものすごくうなされてましたよ、大丈夫ですか?」
アルセリアは心配そうにシノンの顔を覗き込む。
それに対してシノンは笑顔で返す。
「大丈夫大丈夫!ちょっと嫌な夢見ただけだから…」
「…クノンさんの名前、呼んでましたね」
「うん、なんかクノンが私達のところから離れていなくなっちゃう夢でさ…」
「え…!?」
シノンの話に、アルセリアは驚きで目を見開く。
そして、なにやら気まずそうな表情となった。
「?…どしたの、セリア」
その表情に、嫌な予感がした。
まさか…
「その…クノンさんの姿が、今朝から見えないんです」
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
しばらくして、全員が宿屋に戻ってきた。
シノンとセリア以外は、街の内外にクノンを探しに行っていたのだ。
しかし…
「街の中にも、外にも、クノンの姿は見つからなかった」
ミステリアスの言葉通り、クノンを見つけることは出来なかったのだ。
「私は宿を色々と調べたんだけど、クラノスとシンシアのいた部屋は、もぬけの殻だったわ」
リンが、宿屋での捜索の成果を語る。
宿屋の主人から話を聞いたところによれば、クラノスとシンシアは自分達の連れ――クノンを連れて宿屋を出た所を目撃したそうだ。
「つまり、クノンはクラノス達によって捕らわれたということか…チッ」
たどり着いた結論にセネリオは舌打ちする。
奴らがクノンを狙っていることは分かっていた。
にもかかわらず、まんまとやられてしまったのだ。
「そうと分かったら、今すぐクノンを取り戻しにダアトに行こうぜ!」
「無理だ」
レイノスの提案に、しかしセネリオは首を振った。
「アルビオールの操縦者がいなくなったんだ。今すぐダアトまで行くことはできない」
そう、セネリオの言う通り、今すぐにダアトへ向かおうと思えばアルビオールで海を渡る必要がある。
しかし、そのアルビオールの操縦者がいない現状、それは不可能だった。
一応セネリオは少しだけ運転したことがあるが、それは陸地を短距離移動しただけだ。
別の大陸まで海を渡って走行させるのは、無茶だった。
「ダアト行きの船は明日まで出ないそうだ」
港の方で捜索活動をしていたミステリアスが言った。
どうやらクノンを探すついでに、船の便についても調べていたようだ。
「………………」
シノンは、彼らの会話がほとんど頭に入らないまま放心していた。
クノンがいない。
捕まってしまった。
その事実に、嫌でも昨夜の悪夢が頭をよぎってしまう。
(嫌…嫌だよ。そんなの嫌)
必死にその悪夢を頭から追い出そうとしても、こびりついて離れない。
嫌な考えばかりが浮かんできて、胸が痛い。
「シノンちゃん」
スクルドが声をかけてきて、シノンは沈んだ表情で顔を上げた。
「その、さ…実はまだハノンをお医者さんの所に預けたままなの」
「ハノン…」
「だからさ…その……今から一緒に迎えにいってあげよう?」
「…うん」
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
医者の家に着いたシノンとスクルドは、医者と話をした後ハノンを受け取った。
「良かった、ハノン元気になったんだね」
『うん!シノンとクノンが採ってきたルグニカ紅テングダケのおかげだよ!』
「っ!」
伝わってきたハノンの言葉に、シノンの顔が歪んだ。
そうだ。
クノンとは、つい数日前まで、ルグニカ紅テングダケを見つける為に一緒にキノコロードを探し回っていた。
それなのに…今は、そのクノンはいない。
「みゅうみゅうみゅうみゅう?」
「あのね…クノンはクラノス達に捕まっちゃったみたいで、姿を消しちゃったの」
悲しげな顔で俯いてしまったシノンに、ハノンはスクルドに助けを求めるように声をかけた。
言葉は分からずとも言いたいことをなんとなく察したスクルドは、ハノンに事情を説明する。
『クノンが…本当なの、シノン!?』
「うん…」
『そっか…』
クノンが捕まったと聞いたハノンは、思案する。
彼がクラノス達に捕まった理由については、幸か不幸か見当はついている。
おそらく…クノンが自分にだけ明かしてく
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