翌日、ミステリアスを除く一行は朝早くにダアトを出発し、ダアトの港にて船に乗り込んだ。
ダアトからシェリダンまではそれほど距離は遠くないので、昼頃にはたどり着いた。
シェリダンの港から徒歩で街へと足を踏み入れる。
「おお、あんた達は!」
街に入ってすぐ、声をかけられた。
いつもクノンと喧嘩をしているオーズだ。
「ちょうどいい所に……ん?クノンの奴いないのか?」
どうやらクノンに用事があるらしく、キョロキョロと辺りを見回す。
「く、クノンはちょっと野暮用で、いまは一緒にいないんだよ」
レイノスがごまかすように言う。
同じ街で暮らし、それなりに親交のあるだろう彼に本当のことを話すのは、なんとなく憚られた。
「そうなのか…せっかく新作の音機関を見てもらおうと思ってたのによ。あ、あんた達、代わりに試してくれないか?」
「わ、私達ギンジさんとノエルさんに用事があるので!」
音機関を試させようとするオーズに対し、リンは慌てて断る。
隣ではレイノスとセネリオも顔を苦くしていた。
彼らはオーズの作る音機関がろくなことにならないことをよーく知っていたので、逃げるようにオーズのもとを離れ、事情を知らない他の面々もレイノス達の後を追ってその場を離れた。
そうして、シェリダンの集会所にやってきた一行は、ギンジとノエルの兄妹と対面した。
そして案の定クノンが一緒にいないことを不思議がる二人に対し、事情を話した。
クノンの正体がかつての凶悪殺人鬼『兎』であり、今はダアトにて捕らえられていることを。
「そう…ですか」
「クノンが…」
二人はそれだけ言うと、黙って俯いてしまった。
その反応に、レイノスは首をかしげる。
二人の顔からは、悲しみが見て取れる。
しかし、ずっと暮らしてきた人物が殺人犯だという衝撃の真実を知らされたにしては、反応が薄いように思う。
もっと驚いたり、否定したっていいはずなのに。
「随分あっさりと俺達の話を受け入れるんですね。もっと驚いてもおかしくないと思うのですが…」
同じことはセネリオも感じたらしく、二人の反応への疑問を口にする。
セネリオの言葉に対して、ノエルが口を開いた。
「…ごめんなさい。実は私達、最初から…クノンを拾ったあの日から知ってたんです。クノンの正体が、『兎』だって事」
「「「「「「!!!!!!」」」」」」
ノエルの告白に、逆にレイノス達が驚かされることになった。
「知っていて、クノンさんをずっと育ててきたんですか!?」
スクルドの問いに、ギンジとノエルは頷く。
「本当なら、通報して捕らえるべきだったんだろうな。でも、おいら達の前に現れたあいつは、傷だらけの身体で、言ってたんだ。『死にたくない』『生きたい』って」
「助けを求める子供を、私達は見捨てることができなくて…それで、素性も聞かずに保護したの」
その後も、二人の話は続く。
クノンと過ごしてきた日々の事を。
その語り口からは、クノンへの強い愛情が感じられた。
「みなさん、私達をクノンに会わせてもらえないですか?」
「クノンにどんな処分が下ろうとも異議を唱えるつもりはねえ…あいつは、それだけのことをしたんだからな。でも、せめて…家族として、ちゃんと話はしてえんだ」
やがて話が一段落すると、ノエルたちはそう頼んできた。
「…分かりました。共にダアトへ行きましょう」
二人の頼みに対し、セネリオは了承した。
アルビオールの調整をする必要があるため、出発は明日の朝ということになった。
それまでは、自由時間という事で、レイノス達はいったん解散することとなった。
「ねえハノン」
『どうしたの、シノン』
「クノンは…どういう人なのかな」
『え?』
「私達と旅をしてきたあのクノンは偽物で、殺人鬼として人をいっぱい殺してきたのが、本当のクノンなの?」
シノンの知ってるクノンは、明るくていたずら好きで…だけどもいざという時は優しくて、強くて頼もしくて。
しかし、昨日知らされたクノンの正体は、それらとはとてもかけ離れた、暗く冷たいもので。
少女の中でクノンの存在が大きくなっていたからこそ、そのギャップへのショックは人一倍大きかった。
『そんなこと、ないよ』
ハノンは、シノンの言葉を否定する。
彼はクノンから、罪の告白を聞いていた。
そのことを語るクノンの悲しげな表情は、決して嘘ではなかった。
『シノンたちと一緒に旅をした「クノン」も、殺人鬼として活動していた「クレア・ラスティーヌ」も、どっちもまぎれもない真実なんだよ』
「どっちも…真実」
『シノン、君の悲しみは分かるよ。だけど目をそらしちゃダメだ。『彼』のことを大切に思うなら、「クノン」も「クレア・ラスティーヌ」も、事実として受け入れるんだ』
「ハノン…」
シノンは、
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