セネリオは一人アルビオールにいた。
脱走兵としてオラクルから指名手配を受けている以上ダアトの街へは近づけない。
その上女装もウルドに知られてしまったためにもはや効果は薄いのである。
「まあ、それに関しては嬉しい限りだがな…」
女装が嫌で嫌で仕方なかった彼からすれば、アルビオールでの一人野宿など何倍もマシである。
まあ、その代わりにリンが残念そうにしていたが。
「ん?」
どうやら誰か来たようだ。
スクルドだろうか。
「よ、セネリオ」
「…なんだお前か」
目の前に現れたのは、ミステリアスだった。
「なんだとは失礼な言い草じゃねえかよ。誰か他のやつを期待してたのか?ん〜?」
「別に」
「スクルドじゃなくて残念だったな!はっはっは!」
「…何か用か?」
ミステリアスの言葉を無視して、セネリオは尋ねた。
「いや〜、別に。ただちょっと暇つぶしにな」
「それならこんなところに来なくとも、街を見回ればいいだろう」
「そうはいってもよ〜、ここ俺の出身地だし今さら面白いもんもないしよ」
「…そうだったのか?初耳だぞ」
「…そういえば、お前はダアト式封呪の解除が出来たな」
「ああ」
ダアト出身という話を聞いたセネリオは、ふとセフィロトでのミステリアスの封呪解除を思い出して話を振ってみた。
「あれは本来導師にしか使えないはずだ」
「そうだな」
「にもかかわらずなぜお前が使える?」
セネリオは食い下がるが、対するミステリアスは取り付くしまもない。
「んなことどうでもいいだろうよ〜。使えるから使える、それだけだよ」
「だが…」
「黙れ」
なおも追求を続けようとしたセネリオだったが、いきなりこちらを睨みつけ、黙れと押し殺した声で言ってきたミステリアスの気迫に押し黙った。
「…セネリオ。お前が思っているように俺には隠してることがたくさんある。そしてそれをお前たちに話す気は今のところない」
「………」
「だがな、これだけははっきり言っておいてやる。俺は絶対にクラノスを倒す!もちろん、誰一人欠けさせることなくだ!」
「…信じて、いいんだな?」
「ああ」
やがてミステリアスは、アルビオールを出て街へ戻っていった。
再び一人になるセネリオ。
「ミステリアス・ソルジャーか…」
奴には謎が多い。
得体が知れず、何を考えてるのか分からないため疑念はまだまだ尽きない。
だが……
「絶対にクラノスを倒す。誰一人欠けさせずに、か……」
あの言葉だけは、なぜだか信じてもいい気がした。
普段のおちゃらけた言動と違い、彼の真剣さを肌で感じることができた気がした。
そして、あの言葉が真実ならば少なくとも仲間としては疑念を挟まず信用しても問題はないだろう。
「お前の言葉、信じているからな…ミステリア」
「はあ、たくセネリオのやつ、油断ならない奴だぜ…」
ダアトの街へと向かいながら、ため息をつくミステリアス。
「…絶対にクラノスを倒す。誰一人欠けさせずに、か……」
ふと、先ほどの自分のセリフを思い出す。
珍しく熱くなって語ってしまったが、あの言葉に偽りはない。
「そうだ、俺たちは絶対に負けない、今度こそな…!」
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