リン、スクルドの二人はアルセリアの案内の下ダアトの街を歩いていた。
「こうやって女3人で一緒に街を歩くのも、悪くないわね」
「そうですね」
リンの言葉にスクルドが同意する。
「そうですね…普段はお二人とも一緒に街を歩く男性がいらっしゃいますからね…」
それに対して、少し陰りのある表情でそうつぶやいたのはアルセリアだ。
彼女ははあ、とため息をつく。
「私なんて…いつも一人です」
「せ、セリア、元気出して」
「そうですよ、きっといつか素敵な出会いがありますよ」
突然落ち込んでしまったアルセリアを、あわてて慰めるリンとスクルドであった。
「そういえば、セリアさんってどこに住んでるんですか?」
そう尋ねたのはスクルドだ。
「街の外れにある森に山小屋を建ててるんです」
「そういえば、木こりとして生計を立ててるんだったわね」
納得してつぶやくリン。
つまりアルセリアは、人里離れた森で暮らしているわけだ。
その理由は何となく分かっていたが、彼女はあえて口に出さなかった。
「へー、ここがセリアさんが住んでるとこなんですね!」
「なんにもないところですよ」
彼女たちが現在いるのは森の中の一軒の山小屋。
話の流れで、彼女が住む山小屋に行ってみようということになったのだ。
スクルドの言葉に、アルセリアは申し訳なさそうにつぶやいた。
「でも、こんな森の奥で一人暮らしなんて大変そうね」
辺りをキョロキョロと見回しながらリンが行った。
山小屋は完全に森の中に隠れていて、こうやって案内されなければたどり着くのは容易ではないだろう。
「ひと目のつかない場所でないといけませんでしたから…」
「セリア…」
アルセリアは1年前に両親と仲違いして家出したのだ。
ゆえに、連れ戻されないために人目につかないこの場所を選んだのだ。
そして、先日ダアト港で1年ぶりに父親と再開し、彼の本音を知った……
「今でもまだ完全には信じられないんです…父のこと」
彼女の父親は高圧的な男だった。
娘に軍人になることを強制し、逆らったり機嫌が悪かったりするとすぐに暴力を振るった。
実際その暴力行為により彼女は片方の目の視力が極端に悪い。
「だけど信じてみようと思います。あの涙は…きっと本物だと思うから」
先日父と出会ったとき、彼は娘の写真に対して涙を流しながら謝っていたのだ。
それを見て彼女は衝撃を受けたのだ。
今まで自分は父に愛されてなどいないと思っていたから。
「人ってきっと、ちゃんとお互いに向き合わないと想いを伝え合うことができないんですよね」
おそらく、自分も父もちゃんと正面から相手と向き合って来なかったのだろう。
だから何年もの間、すれ違いを続けてきたのだ。
「だから…旅が終わったら、父と話をします。きちんと…正面から向き合って」
「おい、お前たち何をしている」
突然どこからか声が聞こえてきた。
「セネリオさん!」
「まったく…お前らが街を出て行くのを見かけて後をつけてみれば…こんな森の奥まで無断で出ていくとはな」
ため息をつきながら苦言をこぼすセネリオ。
「そ、そういえばセネリオ、アニスさんから伝言を預かってるの」
慌てて話題をそらすリン。
まあ、伝言を預かってるのは本当だが。
「夕食振舞ってやるからセネリオも来なさいって言ってたわ」
「…分かった、ともかく戻るぞ。日も暮れかけているし、他のやつに心配かけるからな」
そういうわけで、4人はダアトへの帰路についた。
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