ワイヨン峡窟での激闘を終えたレイノス達一行。
彼らは六神将を退けると、グランコクマへと戻らず近くの町であるシェリダンへ向かった。
仲間の一人でアルビオールの操縦士でもあるクレアが意識不明の重傷を負ったからだ。
「傷の方も癒えてきたし、これで安心です。きっともうすぐ目を覚ますはずです」
クレアの自室で彼の治癒を行っていたスクルドの言葉に、一行は胸をなでおろす。
「ねえスクルド、目を覚ますまでクレアのそばにいてあげたいんだけど…ダメかな?」
シノンがおずおずと申し出た。
その声には普段のような明るさはない。
クレアが倒れてから、シノンは元気がない。
なぜなら、クレアが倒れたのは彼女の秘奥義を受けたためなのだ。
ゆえにシノンは責任を感じ、ショックから立ち直れていなかったのだ。
「うん、いいよ。クレアのとこに行ってあげて」
「ありがとう!」
スクルドの承諾をもらい、シノンはすぐさまクレアの自室へと駆けていった。
『へえ、やるじゃないか。そんなにあの負け犬が大事なのかい?』
戦いの最中にルージェニアが放った言葉。
あの言葉を聞き、シノンは確かな怒りを感じた。
『クレアは私を…私たちを、何度も助けてくれた』
【クノン】としておちゃらけたキャラで振舞っていた時も。
【クレア】として無愛想な素の性格を出すようになった今でも。
彼の優しさは変わることなく、何度もピンチを助けてくれ、落ち込んでいるときには励ましてくれた。
そんな彼をバカにする言葉が…許せなかったのだ。
『だから…今度は私たちがクレアを助ける!』
そうして怒りのままに放った秘奥義。
その軌道は単純で、ルージェにもあっさり見切られているようだった。
そして…技を避けようとしたルージェの体をクレアが捕まえて…
「……」
自分のせいだ。
あの時もっと冷静に、秘奥義を発動するタイミングを見極めていたら…クレアが体を張ってルージェの動きを止める必要はなかった。
「クレア…ごめんね!」
どれくらい時間がたったのだろうか。
シノンはあいかわらず目を覚まさないクレアをじっと見つめる。
(クレア…なんであんな無茶したの?)
確かに彼が重傷を負ったのは自分の責任だ。
しかし、あの時のクレアの行動はやはり無茶だったように思う。
確かにあの時の彼の行動がなければシノンの秘奥義はかわされていただろう。
しかし、もしそうだとしてもかわされただけなので一気に敗北につながるとは言い難い。
なにも、あんな命を捨てるような行為におよぶ必要などないはずだ。
いったい、何が彼をあそこまで駆り立てたのだろう。
「ん……」
「クレア!?」
やがて、クレアが目を覚ました。
「よう、シノン」
「クレア…クレア……私の所為で…ごめんね」
声をかけてきたクレアに、シノンは謝った。
自分の所為で、彼に大怪我をさせてしまったことを。
「あれはお前の所為じゃない」
「でも…」
「俺が勝手に突っ込んでいったんだ、もう気にするな」
そういうとクレアは、慰めるようにシノンの頭をなでた。
一見無愛想に見えるその表情は、やはりどこか優しさを感じられた。
(クレア…また同じようなことが起きたとき、またあんな無茶をする気なの?)
思えば、かつてザオ遺跡でルージェと戦闘をしたとき。
あの時もクレアは自分とハノンをかばって、秘奥義の攻撃範囲へと突っ込んでいき、重傷を負ったではないか。
助けてくれるのは嬉しいしありがたい。
しかし、それで彼自身が犠牲になったのでは、喜べるはずもない!
「一つ、約束して」
「約束?なんだシノン?」
だから…シノンはぶつけた。
自分の想いを。
「もう、あんな無茶しないで!」
「シノン……!」
「私は…ううん、私だけじゃない。レイ兄やリン、他のみんなだってクレアのこと大切に思ってるんだよ。だから…クレアにはもっと自分を大切にしてほしいの!」
助けてもらっておきながら、恩知らずな失礼な物言いかもしれない。
それでもシノンは、言わずにはいられなかった。
大切な仲間を…失いたくはないから。
「…分かった。約束だ」
クレアがそういい、小指を出してきた。
それに対しシノンも小指をだし、二人は指切りをした。
「無茶をするな…か」
シノンが部屋を去り、入れ替わりでやってきたノエルとギンジもいなくなって一人になった後、クレアは指切りをした小指を眺めながらつぶやいた。
クレアにとって、レイノス達はかけがえのない仲間だ。
たとえ自分の命が尽きようとも失いたくない、大切な存在だ。
ナタリア女王に彼らの護衛を命じられて以来、その思いはより一層強くなった。
だが…
『あんな無茶しないで!』
あの言葉で目が覚めたような気がした。
シノンの言うとおりだ。
仮
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