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第1章『旅立ち』 4

スクルドの部屋に向かう最中、使用人たちはスクルドの部屋から遠ざかるように走っていく。
その使用人たちとぶつからないようにしながらも、全速力でレイノスとリンとガイの3人は走っていく。
そして、開け放たれたスクルドの部屋ではルークとティア、そして顔などを隠し武装をした集団が睨み合っていた。

「親父!!母さん!!」

部屋にたどり着いた3人、レイノスは真っ先にこの緊迫した状況とスクルドがいないことに不安を覚える。
そして、レイノスの方を振り返ったルークとティアの表情から、レイノスはすぐに状況を察する。

「おい、お前ら何者だ!!スクルドをどうしたんだ!!」
「うるさいガキだ、俺たちの用件はもう済んだんだ、さっさと撤退するぞ……」

レイノスはすぐに謎の集団を睨みつけ、怒声をあげながら訓練用ではあるが木刀を構える。
すると、この場を束ねる頭のような存在はレイノスの怒号など気にも留めず、唸っているように低い声で他の仲間に撤退するように指示を出す。

「オイオイ、逃がすと思ってるのか?」

ガイは腰に下げた剣を抜き、撤退しようとする集団に睨みを利かす。
そして、すでに武器を構えているルークとティアもすぐにでも戦闘を始められるような体勢を取る。
オールドラントを救った英雄、さすがに戦闘態勢をとっているこの3人から醸し出される空気は異質であった。

「はは、さすがに俺達もかつての英雄様と戦おうなんざ思っちゃいねぇよ」

謎の集団の頭も、レイノスの怒声には怯みもしていなかったが、ルークとティア、ガイの3人の醸す空気に完全に呑まれたようだ。
3人に対する戦意は無いと、少し震えるような声色で告げる。
だが、抵抗せずにこのまま捕まるという雰囲気でもない。
刹那、その頭は今まで隠し持っていた煙玉を床に叩きつけた。
その行動に全員の視界が煙で遮られ、その煙が晴れた時には既に賊の姿は消えていた。



「親父、スクルドを探しに行く!!」

スクルドが連れ去られ、何時間が経過しただろうか。
既に日は沈み、バチカルには夜の闇が降りている。
そんな中、ファブレ邸の応接室にレイノスの声が響き渡った。

「駄目だ!ナタリアが国をあげて捜索してくれてるからお前は黙ってろ!!」

しかし、ルークはレイノスのスクルドを探しに行くという意思を少し苛立ちのこもる声ではねつけた。
スクルドが誘拐されたと知った現キムラスカの女王ナタリアは国をあげて捜索している。
しかし、妹想いのレイノスは全く納得いかない様子で捜索を許してくれないルークを睨みつけている。
ルークはレイノスを心配して認めないのだろうが、親の心子知らずといったものだ。
レイノスは今にもルークに掴み掛かるのではといった雰囲気だ。

「ナタリア殿下はマルクトやオラクルにも協力を要請してくれている。見つかるのは時間の問題だ。わざわざレイノスが危険をおかす必要はない」

ガイは補足を加えてレイノスをなだめようとフォローを入れる。
レイノスの傍らに立っているリンもあからさまに気が立っているレイノスが気が気でない。

「そうよレイノス。それに母さんスクルドはもちろん心配だけど、あなたも大事な息子なの。だから分かって……」

ガイのフォローに少し勢いが落ちるレイノス
そこに、ティアがゆっくりと歩み寄っていき、レイノスをゆっくりと抱きしめる。
そして、少しだけ震えているような声でティアは心境を告げる。

「分かったよ……」

ティアの心境が痛いほどに伝わってきたレイノスはこれ以上何も言えなくなってしまった。
まだ納得はいかないが、レイノスはしぶしぶこの場は食い下がった。
そして、もう寝ると言い残し、レイノスは応接室を後にし、部屋へと戻っていった。



そして、さらに時間が経過し時刻は深夜
ファブレ邸は静まり返っていた。
そんな中、レイノスの部屋の窓が唐突に開かれ、窓からレイノスは飛び降りた。
荷作りがされた軽い荷物と勝手に持ち出した真剣を片手に……

そう、レイノスはやはりスクルドを探しにこの屋敷を後にしようとしているのだ。
巡回する警備兵に見つからないようにレイノスは慎重に屋敷を抜け出せる場所へと向かっている。
だが、そんなレイノスの肩が唐突に叩かれた。
レイノスはしまったと、一瞬固まり、背後を振り返る。

「やっぱり、探しに行くのね……」

そこには、リンの姿があったのだ。
そして、レイノスの手荷物などを見て、溜息を吐きながら予想していたかのような言葉を漏らす。

「おい、リンどうしたんだよその荷物……」

だが、レイノスはそんなことよりも、リンが持つ荷物が気になった
レイノスと同じように彼女も真剣――『レーヴァテイン』という名を持つ綺麗な剣だ――を持っている。

「私も一緒に行くわ、レイノス一人じゃ心配だもん」
「なっ!…
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