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第1章『旅立ち』 6

セネリオと簡単な自己紹介を済ませたレイノスとリン。
三人はこうしてシェリダンに向け、夜の道を歩いていく。
それにしても世の中一寸先など誰にも分からないものだ。
まさに驚くべきこの現状をレイノスとリンは予想もしていなかった。
まさか、自分たちがあの漆黒のセネリオと共にスクルド奪還の旅に出ることになるとは……

セネリオ・バークハルス
ここ数日前まではオラクル騎士団の特務師団長にして他国にも名を馳せるオラクルの顔ともいえる六神将の一角だった男
驚異の剣術と第一音素の闇属性の譜術を得意とし、六神将随一の速力で敵を圧倒していた
だが、ある日突然彼は脱走兵としてオールドラント中に指名手配となった。
その脱走の際に多くのオラクル兵を殺害した殺人鬼として世間一般には情報公開されている。
そういえば逃走の際に封印術(アンチフォンスロット)を掛け、能力を抑制されているという情報も聞いている。
封印術とは、対象の身体能力や譜術能力を大幅に抑制する装置だ。
過去にルークたちと同じ英雄、ジェイド・カーティスも同じく封印術に掛けられ、彼の持ち味の譜術を大幅に抑制されたと聞いている。

(まじで封印術掛けられてるのかよ、あの時の剣捌き速いなんてもんじゃなかった……)

レイノスはセネリオが封印術を掛けられていることをふと思い出したが、とてもその情報が信じられなかった。
それもその筈、レイノスの双牙斬を受け止め剣を弾き飛ばした際、彼は本当に直前まで剣に手をかけていなかった。
そして、技を放った瞬間には既に剣は鞘から抜かれ、自分の技を受け止め剣を弾かれていたのだ。
正直、封印術を掛けられた人間の動きとはとても思えない。

「セネリオ、お前封印術を掛けられてるって本当か?」

レイノスはある意味情報が嘘であってほしいという心境の中、自然とランプを持ち先頭を歩くセネリオに確認を取ってみる。
すると、セネリオは不機嫌そうな表情を浮かべて、あぁ、と小さく頷いた。
その返答にレイノスは改めて驚愕する。
そして、封印術に掛けられてなお、あれだけの剣捌きをしてのけたセネリオを思い出し、世界の広さを目の当たりにしたような気分となった。

「封印術というのは面倒なものだな、本来の力には程遠い……」
「お前化け物だろ……」

レイノスが衝撃を受けているのを知ってか知らずか、セネリオは皮肉交じりに一言だけ言葉を漏らした。
そんな言葉にレイノスは一言だけ、本心がこぼれた。
すると、セネリオは突然立ち止まるとランプを足元に置き、すぐ後ろを歩いていたレイノスは彼にぶつかってしまう。

「魔物が近づいてきている……」
「へ、あぁ魔物か……」

化け物といったことが気に食わなかったのか。
レイノスは立ち止まった理由をそう思って、とっさに謝罪の言葉を考えたが、セネリオが告げたのは魔物が現れたという事だった。

しばらくして、ボアが三頭一行の前に現れた。
レイノスとリンは魔物が視界に入ると鞘から剣を抜き、臨戦体勢に入った。


「幻影刃」


だが、その刹那にセネリオの消え入るような声とボアの断末魔が暗闇に響き渡った。
そして、レイノスとリンがセネリオがさっきまでいたはずの場所にいないことを確認した時には、すでにセネリオはもう一匹のボアを両断し、断末魔が響き渡っていた。


「イービルスピア」


そして、セネリオの姿を確認した時にはセネリオはボアの斜め前に跳躍していた。
彼の剣に第一音素が集約し、剣は黒く怪しい輝きを放つ。
セネリオがその剣をボアに向けて突きを繰り出すように前へと突き出すと、第一音素が刃となりボアを串刺しにした。
確かに弱いボアであるが、それにしても速すぎる。
一瞬のうちに三頭を全滅させてしまった。

「す、すごい……」

レイノスの剣を弾き飛ばした時などの比ではない、圧倒的すぎる力差を二人は目の当たりにし、リンは無意識のうちに驚嘆の言葉を漏らしていた。
セネリオは剣を鞘に納めながらゆっくりと二人の元へ戻っていく。
闇に溶け込むようなその黒ずくめの衣服が不気味にも思えてくる。

「やはり、夜に明かりを灯しながら歩行となれば魔物を引き寄せてしまうな。…ところでシェリダンに向かうんだったな?」
「はい」

セネリオは驚愕の表情を浮かべている二人を尻目に地に置いたランプに手をかける。
そして、リンに行き先の確認を取り、リンはその声で我に返ったように返事をする。

「シェリダンに向かうにはベルケンド港から船に乗る必要があるが、まだベルケンド港は遠い。今日は安全地帯を見つけ野営し明日ベルケンドを目指すぞ……」
「俺はスクルドを早く助けたいんだ、そんな悠長なこと言ってられるか!!」

セネリオはリンの返事を聞き、有無を言わさないような物言いで、本格的な移動を明日にすることを告げる。
確か
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