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第2章『シェリダンの兎』 1

ようやく船はシェリダン港へと到着した。
港からでも、シェリダンへは距離は短く、現れる魔物も三人は蹴散らし、戦闘は大した時間は掛からない。
だから、それほど長くは無い時間で、シェリダンに到着する事が出来た。

「着いたけど、誰を尋ねればいいんだ?」
「ノエルさんって人が、父さんたちを乗せてアルビオールを操縦してたっていうから、その人に会えばいいと思う」
「では、そのノエルというのは、どんな人でどこにいる?」
「…………………………」

だが、ついて早々壁にぶち当たる。
訪ねるべきノエルの外見的特徴を二人は一切聞かされていない。
その様子には、セネリオも呆れを隠せずに盛大な溜息をつく。

「ま、まあ……聞けば分かるだろ?………多ぶ……」


「待てぇぇぇ!待ちやがれこの糞ウサギィィィィィィッッ!!」


レイノスの自信に欠ける声を掻き消し、男の怒号が耳に飛び込んだ。
その怒号が気にかかり、レイノスとリンの二人は即座に声のする方へと向かい、そんな二人に呆れながらセネリオも少し遅れて後を追う。

「この糞ウサギ!!また勝手に俺の音機関をいじりやがったな!」
「にゃひははははははははははっ!捕まえらレるもンなら、捕まえてみテよーっ♪」

着くと、大柄な職人の男が屋根の上に立つ子供に怒号を飛ばしていた
屋根の上の子供はそんな真剣に叫ぶ男を無視して笑う。
その子供も、白い作業着を着ており、職人のようだ。
といっても、、顔の方は白銀の腰まで届く長い髪を二つに纏め、色白の肌に赤い瞳と、ウサギを思わせる愛らしい顔立ちで、おおよそ職人とは思えなかったが
いまいち状況をつかみきれず、リンは通行人に事情を聞いた。

「ああ、いつものことさ。クノンがオーズの音機関を勝手にいじって、屋根の上に逃げただけだ。しかし身が軽いなーあいつ」
「そうですか」

どうやら悪いのは子供――クノンの方らしい
リンはすかさず屋根の上のクノンに声をかける

「クノンくーん!人の音機関勝手にいじっちゃ駄目でしょー!」
「ンー?誰?旅の人〜〜?音機関の扱い知らない素人に口出しさレる筋合いはないヨー」
「反省の色なしだな。いっそ捕まえるか?」

クノンに反省の様子はない。
レイノスの提案により、彼を捕まえる事となった
その様子を見て、クノンはニッと笑うと屋根から飛び降り、着地して右へと逃げる
レイノス達はそれを追うものの見失ってしまい、仕方なく三手に分かれてそれぞれクノンを探すこととなった
こうして、クノンとの追いかけっこが始まった。



「はあ、はあ……リン、見つかったか?」
「レイノス…それが、何度か見つけたんだけど、あの子足が速くて、見つけても追いつけないの…」
「俺もだ…」

十数分後。
レイノスとリンは肩で息をしていた。
二人とも、クノンを見つけても、彼の足が速すぎて捕まえる事が出来ずにいたのだ。

「向こうに地の利があるのは確かだけど…」
「ああ…それ以上にアイツの足が速すぎる。ガキとは思えねえ速さだ」



「いた………」

一方その頃、セネリオもまたクノンを見つけ、後を追う
真っ直ぐにのびる道を一直線に追うセネリオ。
ここからはセネリオとクノンの追っかけだ
レイノスやリンと違って距離が離されることはないセネリオだったが、かなり速めに走っているにもかかわらず差は一向に縮まらない

「漆黒ー出会った中で一番速いヨ〜」
「その変な発音のしゃべり方は何だ……」
「気にシなーい。気にすると老けルよ〜大雑把に生きル事が若さの秘訣w」

セネリオも、今度は全速力で追う
これ以上馬鹿馬鹿しい追いかけっこに付き合わされるのは面倒だ。
そうして、段々距離も縮まっていき……


       ガシッ


ついには、クノンの腕をつかむことができた。
これにて追いかけっこはセネリオの勝利…のはずだが……

「あっ!!」

次の瞬間、クノンはセネリオの掴む腕を引き寄せ、胸倉をつかんだ。
そして、そのままセネリオの身体は地面に叩きつけられた。

「……………」

子供に投げ飛ばされた。
その事実に、セネリオは地面に倒れて青い空を眺めながら、しばらく呆然としていた。

(俺を投げ飛ばした時のあの身のこなしの速さは今まで以上だ。先ほどまでの逃走は本気じゃなかったのか?オレと同じ……いや、身のこなしに関してはオレ以上か……?)

空を見上げつつ、思考を巡らせた
その間にクノンは逃げようと後ろへ向き直るが………


ゴンッ


「ふぎゃっひ!!容赦なイよーギンジさンー…………」

すぐ後ろに立っていた銀髪の男の鉄拳であっけなく捕まった。
男はクノンを掴んだままセネリオに歩み寄る

「うちのクノンが迷惑かけてごめんなさい。後でおいらからキツク叱っておきます」
「……ああ」

そして男はセネリオを助け起こ
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