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第3章『魔剣ラグネル』 3

「ここがダアトだ」

フードをかぶった美少女(※男です)セネリオはそうつぶやく。
レイノス達一行はロストロと別れた後、第四石碑の丘を抜け、ダアトの街へとたどり着いた。

「ここがローレライ教団の総本山、なのね…」

リンの言う通り、このダアトは世界的な宗教団体であるローレライ教団の総本山だ。

「預言を詠んでるんだったっけか…」
「ああ」

レイノスの言葉をセネリオは肯定すると、彼は説明を始めた。

「知っていると思うが、預言はユリア・ジュエが詠んだ未来の出来事を記したものだ。今でこそよく当たる占い程度の認識となっているが、20年ほど前までは預言に従って生きるのが当たり前だった」
「母さんからその話はよく聞くけど、やっぱり信じられねえな…預言通りに従って生きるなんてよ…」
「そうね…」

セネリオの説明を聞き、素直な感想を漏らすレイノス。
そしてそれを肯定するリン。
二人のそのやりとりに、セネリオは少し顔をしかめて言った。


「…無理もないが、あまりそういう事は言うな。お前たちにとって信じられない話でも、それを常識として生きてきた人間はたくさんいる。…今、俺たちの目の前にいる奴もな」
「え……?……あっ!」

セネリオの言葉にキョトンとしていたリンだったが、その言葉の意味を悟ると慌ててクノンの方を見た。
そう、見た目こそ子供なクノンだが、実年齢は27歳。
つまり…彼は当時の預言遵守の世界を知り、それを常識として生きてきたのだ。

「ご、ごめんなさいクノンさん!私達、無神経なことを…!」
「イイヨイイヨー。その頃ボクまだ子供だったし。それに今になって思えば確かにバカバカしい話だしねェ…」

そう話すクノンの表情は、どこか遠い目をしていて少し悲しそうに見えた。

「クノン、俺もごめ…うわっ!」

そんなクノンの様子を見てレイノスも謝ろうとしたその時、一人の子供がレイノスと衝突した。
レイノスは思わずその場で尻もちをつく。

「いてて…大丈夫か?」
「ふん、前見て歩けよな!」
「な!?なんだと!?そっちからぶつかってきたくせに」

子供の失礼な物言いに怒るレイノス。
子供は怒るレイノスを無視し、黙ってその場を立ち去…

「ちょっと待って」

…ろうとしたところを、リンに腕を掴まれた。

「なんだよ」
「盗んだもの、返しなさい。今なら、怒らないから…」
「なんだよ!勝手に人を泥棒扱いすんなよな!」


「…ああっ!財布がない!?」
「うすらバカ♪」
「鈍い奴め…」

財布を盗まれたことに今更気づくレイノスに、あきれ果てるクノンとセネリオであった。


「…チェ!こんな時代に、無防備に歩いてるやつが悪いんだよ!」

子供はそういうと、レイノスに向けて財布を投げつけ、走って去って行った。

「こんな時代、か……預言の絶対遵守の世が終わって以降、犯罪に手を染める者が多くなっている。預言という道しるべを失い、道を踏み外す者が後を絶たない」

子供が走って行った方を見ながら、セネリオがそうつぶやいた。

「預言から縛られなくなって自由になったっていうのに、その自由を抑制できずに暴走する人が増えているってことね。悲しいことだわ」

セネリオの話を聞き、そう語るリンの表情はやはり悲しそうだった。

「……………」
「クノン?どうかしたか?」
「へ、坊ちゃん!?いや、なんでもないよ。犯罪ってイヤだよね〜」
「あ、ああ…」

複雑そうな表情を浮かべるクノンに、レイノスは声をかける。
クノンは突然呼ばれて驚いたような表情になるが、すかさずまたいつもの無邪気な表情に戻って話し始めた。



「それじゃあセネリオ、俺とリンとクノンは手分けして街の人から話を聞いてくるから、お前はここで待っててくれ」
「オラクルのお尋ね者である俺がここで派手に動くことは出来ないからな…頼むぞ」

ついて早々財布盗難騒動にあった彼らだったが、気を取り直して情報収集を行う事となった。
レイノス、リン、クノンはそれぞれ思い思いの場所へと散り、セネリオが一人その場に残されることとなった。



スキット「ナンパ」
セネリオ「久しぶりに一人か。うるさい奴がいないと落ち着くな」
 

〜5分後〜


セネリオ「3人の男にナンパされた…おまけにすれ違う男がそろってこっちをジロジロと見てくる…全然落ち着かん……!レイノス達、早く戻ってきてくれ…!」
13/08/11 06:49更新 / わっくん
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