「ただいま」
「ヤッホ〜漆黒ー♪」
トールとシンシアとの邂逅から数分が経った頃、リンとクノンがセネリオのもとに戻ってきた。
「いやあ、漆黒ナンパされまくってモッテモテだったみたいだね♪」
「…見てたのか?」
「へ?イヤその…」
クノンがからかうように軽口をたたくと、セネリオはじろりとクノンを睨みつけてドスの利いた声でつぶやいた。
セネリオの様子に、クノンの表情が固まる。
「それと街の中で漆黒と呼ぶな。怪しまれるだろ」
「は、ハイ…」
セネリオの殺気すらこもったその雰囲気に、さすがのクノンも閉口して黙った。
その後セネリオは二人に情報収集の成果の報告を聞くが、どちらもいい情報にありつけなかったようだ。
まだレイノスが戻ってきていないが、そちらもあまり期待ができそうにない。
「やっぱり、明日の導師様からの情報をあてにするしかなさそうね…」
しょんぼりとしながら、リンが言う。
リンの言う通り、こうなってしまっては導師ロストロの情報網が最後の頼みの綱だ。
「あ、お坊ちゃん戻ってきたヨ」
そういってクノンが指差した方向には、確かにレイノスがいた。
そして、レイノスの隣には…女性が一人。
「うっはあ!漆黒…じゃなくて、お姉さんがナンパされてるかと思ったら、お坊ちゃんが女の子ナンパしてくるなんてネ」
「なっ…!?ちょっとレイノス、あんたねえ…!」
「お、おいクノン!いい加減なこと言うな!」
女性を連れてきたレイノスをナンパだなんだと囃し立てるクノン。
クノンの話を聞き、リンはレイノスを睨むと、怒りをあらわにする。
そんなリンの様子に戦慄しつつも、レイノスは余計な誤解を与える発言をしたクノンをたしなめる。
「そ、その!誰だか知らないですけど、レイノスだけは止めておいた方がいいですよ!」
「あ、あの、私は…」
「お、おいリン!落ち着けって!」
「バカだし寝坊助だし鈍感だし…取り柄といえば剣くらいしかないんだから」
「なにっ!おい本人の前で失礼なこと言うなよ!」
ヒートアップするレイノスとリンの二人と、そんな二人に挟まれて戸惑った様子の少女。
そんな様子を、クノンは面白そうに眺め、セネリオは呆れた様子でそっぽを向いて他人のふりをしていた。
「…というわけで、私はアルセリア・ステファニーといいます。これからよろしくお願いします」
騒ぎが一段落した後、ようやく事情を話すことができた少女――アルセリアは、一同に自己紹介をしていた。
「ヨロシクー♪」
元気に挨拶するクノン。
「さっきはその…ごめんね」
「いえ、気にしていません」
「ありがとう…これからよろしくね」
リンも先ほどの騒ぎを謝りつつ、アルセリアを歓迎した。
「……………」
「あの、そちらの方は…?」
一方でフードをかぶった美少女――セネリオは何も言わない。
「なあ、これから一緒に旅するんだし、事情を話すべきじゃないか?」
「…そうだな」
レイノスの言に、セネリオが重い口を開いた。
「…え?今の男の人の声?」
「事情は落ち着いた場所で話す。ここだと人が多い」
アルセリアは、美少女から放たれた声が男性のものであることに驚いているようだ。(トール達やナンパ男たちの前では声を作っていた)
驚くアルセリアに対し、セネリオは落ち着いた場所で事情を話すことを提案した。
「…あ、それなら私の家に来ませんか?街からは少し離れた森の中なんですが」
自分の家に来るのはどうかというアルセリアの提案に、一同は皆同意する。
街から離れた場所というのは、変に街の人の耳に入る危険も少なく、好都合といえた。
こうして一行は、アルセリアの案内のもと、彼女の家へと向かうことになった。
「着きましたよ」
アルセリアの家は、なるほど確かに街の外の森の中にあった。
家というより、小屋といった方が正しいだろうか。
「それで、そちらの方は一体…?」
「……俺の名はセネリオ・バークハルスだ」
「え!?」
セネリオから名を告げられ、驚きの声をあげるアルセリア。
「え、セネリオって、まさか、でも……」
「聞いてくれアルセリア、実はな…」
混乱している様子のアルセリアに対し、レイノスは事情を説明する。
スクルドの誘拐に主席総長クラノスが関わっている可能性があること。
クラノスの野望を止めるために、セネリオが神託の盾を抜け出し、自分たちに協力してくれていることを。
「そういうことだったんですか…」
「ああ、信じられねえかもしれねえけど…」
実際、レイノス自身まだクラノスのことについては半信半疑なのだ。
ましてやアルセリアはダアトの人間だ。
こんな話を聞かされても受け入れがたいのは仕方がないだろう。
「いえ、信じます」
が、アルセリアはレイノスの話をあっさりと受け入
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