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第4章『仮面の戦士』 1

「ほう、ファブレ家の御子息が、妹を助けるために動き回っていると…」

私室にて優雅に紅茶を飲みながら部下の報告を聞く人物が一人。
歳はまだ二十代半ばだろうか。
どことなく高貴で、かつ強い威厳と意志を秘めた表情のその男の名は、クラノス・グラディウス。
神託の盾騎士団を束ねる主席総長だ。

「ああ」

クラノスの言葉に短く肯定の言葉を紡いだ女性は、シンシアやトールと同じ六神将の一人、グレイシア・ローグだ。

「奴らに今、ファブレ家の令嬢を奪われては、まずいのではないか?」
「そうだな…分かった。フォルクスに彼らの足止めをしてもらおう」
「フォルクスに…ですか?」

クラノスの人選に、やや納得がいかないような表情を浮かべるグレイシア。

「彼は新たな六神将としてセネリオの後釜を狙っているようだったからね。せっかくだ、チャンスを与えてやってもいいだろう」
「…分かった。奴には私から話をつけておく」

グレイシアはそういうと、踵を返して部屋から出て行った。



「待たせたな」
「セネリ……むがむが!」
「こんな人ごみの中で名前を大声で呼ぶ奴があるか」

ダアト港にて、レイノス達とセネリオは合流していた。
現れたセネリオを見て、思わずその名を呼ぼうとしたレイノスの口を、セネリオが塞ぐ。

「それで、何か情報はつかめたのか?」
「むぐ〜!むぐぐ〜!」

レイノスの口をふさぎながら、セネリオは他のメンバーに聞く。

「ええ、賊はグランコクマへ向かったらしいわ」
「グランコクマか…それならあそこの船から向かえるな。行くぞ」

リンの話を受けて、セネリオは一隻の船を示す。
どうやらあれがグランコクマ行きの船らしい。

「そういえばグランコクマって、お嬢様が暮らしてるとこなんだッケ?」
「ええ、そうよ」
「お嬢様って、貴族なんデショ?ウハァ♪どんな豪邸に住んでるのか、楽しみだなア♪」

貴族であるリンの家の荘厳だろうことを想像して、ワクワクした表情を浮かべるクノン。

「おいクノン、俺達は観光の為に旅してるわけじゃないんだぞ!」

そんなクノンの気楽な様子に、レイノスが釘をさす。

「分かってるってェ…もう、お坊ちゃまは真面目でお固いなあ」
「クノンさん、レイノスさんは妹さんをさらわれてるんですから…そんなことを言うのは失礼ですよ」

レイノスの注意にぶつくさ言うクノンを、アルセリアがたしなめる。

「とりあえず、あの船だな?もうすぐ出航みたいだし、急ごうぜ!」
「あ、待ちなさいよレイノス!」

船に向かって走り出したレイノスを、他のメンバーも追いかける。

「うわっ!いてて…」
「すまない、大丈夫か?」
「い、いえ……!?」

と、走っていたレイノスが、誰かにぶつかって転倒する。
レイノスとぶつかった人物は、謝りながら転倒したレイノスを助け起こす。
立ち上がったレイノスは、ぶつかってしまった人の顔を見て…驚きの表情となった。


「君たちもこの船に乗るのかい?また会えるといいな」


そういって船へ乗船していったその人物――声からして男性は、顔に仮面を着けていたのだ。


「今の人、ヘンな仮面してたネー。いったい何者なんだろうネ」

レイノスに追いついたクノンが、そんな感想を漏らした。



ともかくレイノス達は、グランコクマへと向かうため、船へと乗り込むのであった。

「あれがファブレ家令嬢を奪還しようとしている人達ですね…ふふふ、逃がしませんよ」

そんな彼らの様子を、一人の男が見ていた。

「しかも彼らの内の一人…フードで姿を隠しているようですが、セネリオ・バークハルスで間違いありません。彼らを追う前に、クラノス様に報告しましょうか」

そういうとその男は、魔物のフレスベルグに乗り、港からダアトへと引き返すのであった。


スキット「仮面の男」
レイノス「なんだったんだろうな、あの仮面の男」
リン「さあ…」
クノン「そういえば、昔の預言大戦の時の六神将にも、仮面つけた奴がいたらしいヨ!」
アルセリア「あ、知ってます。確か…【烈風のシンク】でしたっけ?」
セネリオ「第五師団師団長で、参謀総長だったそうだ。それ以上の事は、俺もよく知らないが」
レイノス「へえ、どんな奴だったんだろうな」
13/11/03 22:22更新 / わっくん
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