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第5章『フォルクス・ソレイユ』 2

「クラノスの企みを止めるために、脱走ね…」

屋敷にてセネリオの話を聞いたガイは、難しそうな顔で俯く。
そして、しばらくして顔をあげると、じっとセネリオを見る。

「正直に言うと、そう簡単に君の言う事を信じるわけにはいかないな」
「お父さん!」

ガイの言葉に、リンは声をあげる。
リンの叫びを無視し、ガイは続ける。

「だけど、君がリンやレイノスをここまで守ってくれたのは確かなようだし、神託の盾にいたころの君の声望も知っている。とりあえず軍に突き出すようなことはしないと約束するよ」

ガイの言葉に、一同はホッとする。
当のセネリオ本人はまだ警戒を解いていないらしく、ガイの事を軽く睨んでいるが。

「スクルドをさらった賊なんだが、確かにそれらしい集団がやってきたよ」
「本当ですか!」
「ああ、だけどあいつら、軍がやってくるとすぐに煙玉を使って、姿を消してしまったらしい」
「そんな……」

ガイの話に、レイノスはガクリとうなだれる。
そんなレイノスの様子をガイは申し訳なさそうに見つめたのち、しばらくすると真顔に戻ってセネリオの方へ顔を向けた。

「それとさっきの君の話だが…今はあまり多くの人に耳に入れるわけにはいかないよな?」
「はい」
「そうか…」

セネリオの短い返答に、ガイは少し困ったような表情になって俯く。

「ガイサン、なんか気になることでもあるノ?」

そんなガイの様子に、クノンがなにか気になることがあるのかと訊ねる。

「ああ、実は一人だけ…ジェイドの奴には話しておきたいと思ったんだが」
「ジェイド…ジェイド・カーティス元帥か」

ガイの言葉に、セネリオは苦い顔をしながらその名を呟いた。
ジェイド・カーティス。
ルークやガイたちと共に世界を救った英雄の一人だ。
当時は大佐という階級だったが、今は元帥にまで上り詰めている。
ちなみにリンの譜術の師匠でもある。

「マルクトとはいえ、あまり軍の人間に素性は知られたくないのだが…」
「分かってるさ。だが、君がクラノスのことを探っているのなら、話くらいは聞いておいてもいいと思う」
「…どういう事ですか?」
「ああ…実は1年くらい前から最近まで、クラノスがジェイドの奴を何度か訪ねたみたいでな」
「なんだと!?」

ガイの話に、セネリオは驚きで目を見開く。

「ジェイドの話だと、その面談は秘密裏に行われたらしくて、他言しないようにクラノスから頼まれたらしい。俺とピオニー陛下にも面談があった事実だけしか教えてくれなくて、その内容までは知らないんだが…」
「…分かった、ジェイド元帥と話をしよう」
「お、おいおい待てよ!賊の奴らはもう街を出てるんだろ!?それなら早く追おうぜ!」

ガイの話を聞き、しばらく考え込んでいたセネリオは、ジェイド元帥と面談することを了承した。
が、スクルドを早く追いたいレイノスはそれに対して否定的だった。

「だが、ジェイド元帥から話を聞けばクラノスが何を企んでいるのかもわかるかもしれない。話を聞くべきだ」
「そんなの後回しでいいだろ!」

クラノスの真意を知りたいセネリオは、ジェイドから話を聞くべきだと説くが、レイノスはそれを突っぱねる。

「まあまあ落ち着けよお二人さん」

一触即発な二人の間に入ったのは、ミステリアスだった。

「セネリオ、ここはレイノスの言うようにスクルドの救出を優先してさっさと出発するべきだと思うぜ」
「だが…」
「お前がクラノスの企みを止めたいのは分かるけどな。その企みがなんにせよ、スクルドの誘拐が関わってることは確かだろ?誘拐するって事は、なんらかのことにスクルドを利用してるってわけで…それなら、利用される前にスクルドを取り戻して、それから話を聞いたって遅くはないだろ?」
「…………」

ミステリアスの言葉に、セネリオは押し黙る。
そうしてしばらくして、口を開いた。

「…確かに、そうだな。俺としたことが、目先のことにとらわれて優先順位をはき違えていた」

セネリオは、レイノスの方へ顔を向ける。

「すまなかったレイノス。今はスクルドを取り戻すために、出発しよう」
「セネリオ…」

頭を下げて謝るセネリオに、レイノスはバツの悪そうな表情となる。

「いや、俺こそ悪かったよ。怒鳴ったりして、ごめん…」



「ガイ様、大変です!」

その時、一人のメイドが部屋に入ってきた。
なにやら慌てている様子だ。

「どうした!」
「は、はい!その、街に魔物の群れが現れたらしくて…」
「なんだって!?」

報告を受けて、ガイは驚きの声をあげる。
そばにいた一同も、突然魔物襲来という報に驚きの表情を浮かべる。

「今は軍の方が応戦しているのですが…あまりにも突然の事で、しかも数が多くて、対応し切れてないみたいで…」
「そうか…報告ありがとう」


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