翌日。
ガイに別れの挨拶を済ませた一行は、グランコクマを発った。
「なあリン、本当にいいのか?ガイさんのとこに残らなくて」
出発前、レイノスはリンにそう訊ねた。
ここはリンの故郷で、帰るべき場所だ。
せっかく戻ってきたのだし、そのまま残ってもいいのではという、レイノスなりの気づかいだった。
「何言ってるのよ、ここまで来たら最後まで付き合うわよ」
「で、でもよ、フォルクスとか、主席総長とかやばそうな奴が関わってるかもしれないんだぜ?これからもっと危険な目にあうかもしれねえし…」
これまでに何度かあった不自然な魔物の襲撃。
セネリオによれば、それらは第三師団師団長フォルクス・ソレイユの仕業である可能性が高いのだという。
「危険だっていうなら、なおさら後には退けないでしょ」
「まあ、そうだけどよお…」
なおも煮え切らない様子のレイノスに、リンはしゅんとした表情となる。
「…ついてきたの、迷惑だった?」
「ち、違う!それは絶対ない!ただ…」
「ただ?」
「な、何でもない!とにかく、ついてくるっていうなら、早く出発しようぜ!」
そういうとレイノスは、そそくさと逃げるように街の入り口で待つ仲間たちのもとへ向かった。
「あ、もう…待ちなさいよ!」
「それでドコに向かうわけ?」
グランコクマを出ると、クノンが次の目的地について訊ねる。
「そうだな…ここから次の街へ向かうとすれば、エンゲーブだ。やや遠いが、そちらを目指して進むとしよう」
クノンの問いに、セネリオは次の目的地を定める。
こうしてエンゲーブに向かうことになった一行だったが、セネリオの言うようにグランコクマからエンゲーブまでは遠い。
一日歩き通しにもかかわらず、まだまだ道のりは遠かった。
「なあセネリオ、今どの辺なんだ?」
「地図でいうとこの辺りだな。エンゲーブまではまだもう数日はかかるだろう」
間もなく日が暮れようという頃、レイノスはセネリオに現在地を尋ねる。
しかしセネリオによればエンゲーブまではまだかかるようで、それを聞いたレイノスはげんなりとした表情となった。
「はあ、ふう…」
「大丈夫か?セリア」
一日中歩き続けて疲労困憊な様子のアルセリア。
そんな彼女にミステリアスが心配げに声をかける。
セリアだけでなく、レイノスとリンもかなり疲れた様子であった。
「今日はもう限界そうだな…明日に疲れを残さないためにも、今日はもう休んだ方がいいんじゃねえか?」
「さんせ〜い♪ボクもうクタクタ〜」
ミステリアスの提案に真っ先に賛成の意を示したのはクノンだった。
クタクタといいつつ、レイノスやセリア達より余裕がありそうな様子だった
が…
他の一同も了承し、その日は野宿することとなった。
「そういえば、こうやってみんなで野宿するのって、初めてじゃない?」
うきうきした様子でクノンが言う。
「俺とリンとセネリオは旅の初日に一回野営してるけどな」
「あの時は無理に先を急ごうとするお前に手を焼かされたな」
「わ、悪かったな!」
「それで、料理は誰が作るんだ?」
ミステリアスが訊ねる。
ちなみに3人だったときはレイノスもリンも料理をしたことがないということで消去法でセネリオが作った。
「あ、それじゃあ私が作りましょうか?一人暮らしをしてましたし、それなりのものは作れますよ」
アルセリアが料理を作ることを申し出る。
特に断る理由もないため、彼女に任せることとなった。
「どうですか?お口に合うといいんですが…」
アルセリアが心配そうな様子で料理を食べる一同を見る。
「おう、うまいぜ!」
「うん、美味しいわ」
「そうですか…良かった」
おいしそうに食べているレイノスとリンの様子にホッと胸を撫で下ろす。
「ウンウン、これならいつおヨメに出しても問題ないネ♪」
「や、やだ、クノンさんったら、そんな…」
そんな和やかな時間を過ごしつつ、夜は更けていった。
二日目も一行はエンゲーブ目指して進んだが、やはり着くことはなかった。
やがて夕暮れが近づきつつある頃、レイノス達は一人の青年と出会った。
「本当か、アラン!?」
「ああ、オイラの辻馬車に乗れば、明日の昼頃にはエンゲーブに着くぜ」
青年、アランは辻馬車屋であった。
馬を休ませている所をレイノス達と出会い、話を聞いて辻馬車に乗せてくれるというのだ。
その話を聞き、思わず身を乗り出して聞き返すレイノスに対し、アランは明日の昼頃にはエンゲーブに着くだろうと返した。
普通に歩けば着くのは明日の深夜か明後日になるだろうという見通しだったため、アランの申し出は非常にありがたいものであった。
「お代は…6人だし、3000ガルドでいいぜ」
「げ、金とるのかよ」
「当たり前だろ、これでも安くして
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