あの事件後、ロクサスが誘ってからクローネがよくいつもの場所に顔を出すようになった。出会った当初とはだいぶイメージがかけ離れ、控え目に思われた性格は実はとんでもないおてんばだったりしたのだから、これにはさすがのハイネも驚かずにはいられなかった。
「私クローネ、15歳!!今はロクサスの家の近所に住んでて、実はここに来る以前の記憶がないんだぁ。でもずっと友達が欲しかったの、よろしくねっ!」
それでもみんなすんなりとクローネの事を受け止めた。いや、そもそも抵抗はあまりなかったのだが、やはり出会った当初とは性格というか感じが一変した為、俺は慣れるのに時間がかかった。しかしそれよりも俺が気になったのは、彼女に越してくる以前の記憶がないことだ。話を聞く限りじゃ今は1人暮らしらしいが、本人に両親の記憶さえないのは何か引っかかる。その割に本人は驚くほど元気だけど、記憶をなくして不安だ、とかそういうのは一切ないんだろうか。
「じゃあまた!」
そうこう考えてるうちに今日ももう夕暮れを迎えていた。一日を本気で夢中になって楽しんでいると、それは本当に一瞬で切なさを感じるくらいに短い。とは言っても俺たち学生の場合は宿題が終わらずに日々過ぎてゆく夏休みが終わりを告げようとしている事が悲しいだけなのだが―――――。
「なぁ、クローネはさ・・・何にも覚えてない事に不安とか感じたりしないのか?」
「―――――え?」
ハイネたちと別れてから、俺は思い切ってクローネに疑問をぶつけてみた。クローネは一瞬目を丸くしてそれから少し黙りこんだが、その後俺の方を振り返って少しはにかんだ。
「不安、か・・・。ないわけじゃないけど、私は今みんなでいれる事が凄く楽しいから、問題なんてないよ!」
「―――でもさ、こうやって一日一日は過ぎていくのに、思い出がないなんて寂しくないか?今までクローネが積み重ねてきた大事な思い出が、今思い出せないんだろ?」
「ほんとに大丈夫!心配してくれてありがとう、ロクサス。」
そうやってクローネは走って自身の家に帰って行った。残された俺は1人とぼとぼと帰宅する。簡単に、あっさりとかわされてしまった。でも何故だろうか。俺にはあのクローネの笑いが、どこか寂しそうに映ってならなかった。記憶がない経験が俺にはないから、クローネが今どんな心境なのかは分からない。もしかしたらクローネの態度の変わりようはその事が原因なのかもしれない。もしそうだとしたら納得もいく。何にも覚えてない状況で知らない世界にたった1人でいる孤独。出会う人々に素をさらけ出せない抵抗。そうだよな。
「夏休みもあと5日か・・・。」
俺にとっての最後の夏休みがカウントダウンを始めた。そんな事はつゆ知らず、俺達5人は思い出作りの為の海の話題で持ち切りだった。
「今年は全然行ってないし、クローネもたくさん思い出作っとかなきゃね。」
オレットはそう言って再び海への資金を稼ぎに行った。そう、昨日から俺達は毎年行っている海への旅資金を稼ぐ為、街中の掲示板を見て回ってクエストをこなし、着実にマニーを集めていた。が、それを昨日、俺は変な黒いコートを着た男に奪い取られてしまう。
「―――何でクローネ以外みんな奴の事知らないんだ・・・。」
折角皆で汗水流して溜めたお金を知らない男に取られ、訳の分からない事は囁かれ、挙句の果てにクローネ以外は男の存在どころか俺の言う事すら信じてくれない。
“―――――ソラを感じているか・・・。”
「・・・知るかっての。会ったことないのに。」
そして追い打ちをかけるかのごとく今朝は全く知らない金色の髪の女の子が夢に出てきた。夢で会ったカイリって女の子とも違う。クローネとも、違う。あれは一体誰なんだろう。
ロクサスはハイネが書いたであろう置手紙にあった通り駅前へと向かう途中の商店街に差し掛かりながらも、一人ぶつぶつと小言を呟いていた。そうして空地へと足を踏み入れると、そこにサイファーの取り巻きであるフウとライ、そしてサイファー自身も集まって何やら話し合っていた。
「よう、ロクサス。」
サイファーが空き地にやってきたロクサスの存在に気が付き声をかける。すろとその瞬間、再び空間が歪んだ。
「ロクサス!」
「クローネ!?」
空間が歪むのと同時に空き地に走ってやって来たクローネがロクサス向かって大声でその名を呼んだ。そしてその場にいた全員を、写真を盗んだものと同じ、銀色の奇妙な生き物が取り囲む。
「また!?」
「―――激しく気に入らないぜ。」
ロクサスに、サイファーが身構える。サイファーはロクサスにストラグルバトル用の剣を投げ渡すと、生き物向かって果敢に立ち挑んでいった。それにロクサスも続くが、やはりこの前と同じよ
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